『それはなんて幸せな』(※夢注意です)

　風が、ふわりと花の香りを運んできた。
　花畑が広がる木陰にて座る、ブラウニーの髪を揺らし去っていく。
　暖かな日差しがあるからか、今日は過ごしやすいと微笑む。
　そうしてブラウニーの手は、膝へと伸びた。
　そこには柔らかな髪の感触と温もりがあった。
　ブラウニーの膝を枕代わりにして、少女が眠っているのだ。
　髪を優しく撫で、ブラウニーは口を開く。
「御侍様、そろそろ起きなければ風邪を召しますよ」
　ただの散策から、眠気に誘われた主を起こそうとした。
　しかし、少女は深く眠っているからか身動ぎひとつしない。
　ブラウニーは苦笑を浮かべた。
「毎日、頑張っておられますからね。お疲れでしょう」
　店の経営から、堕神との戦い。
　あどけなさの残る主には、酷な日々だ。
　そばで見守っているブラウニーは、少女の頑張りを知っている。
　だから、あまり強くは言えない。むしろ、このままでいたいとすら思うのだ。
「……御侍様」
　優しく呼び掛け、ブラウニーは幸せそうに目を細める。
「御侍様、目覚めましたら一瞬にお茶にしましょう」
　二人きりの時間。
　静かに過ごすのは、なんて幸福だろう。
　ブラウニーは少女の髪をすき、目を閉じた。
　願わくば、この時間が少しでも続きますように、と。