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「じゃ、エマ!また明日!」
背後から飛んで来た友人の声に手を振って応えると、友達の足音が別れ道の反対方向へと遠ざかって行った。
鞄の持ち手を握り直して、いつも通りの帰り道を歩き出す。
左右に並ぶ家々、電球が切れかかっている街路灯、吹き抜ける風のにおいまで昨日と同じだと感じながら、わたしはふと足を止めた。
毎日毎日、同じ道に同じ風景…
別に嫌いじゃないけれど、それが今日は無性につまらなく思えて、目の前に伸びる見慣れた一本道から視線を横に滑らせる。
…夕日が差し込みづらいせいか少し薄暗い、入った事の無い道がある。
……この道の先を知らない、から。
「…ちょっとだけ」
冒険心と好奇心を胸に、わたしは角を曲がった。
―――――
薄暗い細道に入った途端、空気が変わった気がした。
住宅街特有の生活感や人の気配が減り、ひび割れたアスファルトと土の湿ったにおいが鼻をくすぐる。
夕日が建物の隙間からしか差し込まないせいで足元には影が落ちていて、歩く度に自分の足音だけが妙にはっきり聞こえた。
それでも怖いと言うよりはワクワクする、という方が正直なところで、わたしは好奇心の赴くまま奥へ奥へと進んでいった。
―――――
暫く歩いていると、道が少し広くなっている事に気付く。
…正確には道と言うより、背の高い古びた建物に四方を囲まれた、空き地の様な場所だった。
数十分は歩いたから周囲にはもう夜みたいな影が落ちている。
…辺りは暗いはずなのに、何故か空き地の真ん中がうっすらと明るい。
「……えっ」
思わず声が出たのは、そこに扉がぽつんと立っていたからだ。
ただ地面に立っているだけの、両開きの大きな扉。
左右それぞれの板の中央寄りに縦型の取っ手が付いていて、表面には見たことのない模様が細かく彫り込まれている不思議なデザインだった。
その扉をぼんやりとした光が照らしていて、なんとなく扉が浮かび上がって見える。
わたしは一歩、また一歩と近付いた。
…不安はあった。
迷子になりかけているのも分かっていたし、偶然辿り着いた場所に不自然な扉がある事がどう考えてもおかしいのも分かっていた。
引き返した方が良いんじゃ無いかと一瞬考えたが、目の前にある不思議な扉から目が離せず好奇心の赴くままに更に近付いて行った。
扉の周りをぐるりと一周して、裏側を確認して、側面を確認して、それでも何も無くて、地面や壁に固定されている訳でも無いのに倒れる事無く扉が立っていると言う事実が、意味不明で怖い…よりも不思議でたまらなくてドキドキする方に振り切れて行くのを感じた。
恐る恐る取っ手に手を伸ばす。
冷たくて、滑らかで、手のひらに吸い付く様なひんやりした感触があった。
すると、ぎ、と小さな音を立てて扉がわずかに動く。
わたしが取っ手に触れた途端、扉がひとりでに開き、隙間から強烈な光が漏れ出して来る。
…扉が開いたとしても向こう側には何も無いはずなのに。
光の眩しさに耐えきれずぎゅっと目を瞑った。
すると腕を誰かに引かれている様な、背中を押されている様な感覚を覚え背中がぞくりとした。
扉から離れようと一歩後ろに引いた瞬間、いつの間にか開ききっていた扉の向こう側、光の中へ吸い込まれるかの様にわたしの体は落ちて行った。
突然の浮遊感に声も出せなかった。
真っ白な光の中に見えた夜空もどんどん遠ざかって行く。
ここでわたしの意識は途切れた。
背後から飛んで来た友人の声に手を振って応えると、友達の足音が別れ道の反対方向へと遠ざかって行った。
鞄の持ち手を握り直して、いつも通りの帰り道を歩き出す。
左右に並ぶ家々、電球が切れかかっている街路灯、吹き抜ける風のにおいまで昨日と同じだと感じながら、わたしはふと足を止めた。
毎日毎日、同じ道に同じ風景…
別に嫌いじゃないけれど、それが今日は無性につまらなく思えて、目の前に伸びる見慣れた一本道から視線を横に滑らせる。
…夕日が差し込みづらいせいか少し薄暗い、入った事の無い道がある。
……この道の先を知らない、から。
「…ちょっとだけ」
冒険心と好奇心を胸に、わたしは角を曲がった。
―――――
薄暗い細道に入った途端、空気が変わった気がした。
住宅街特有の生活感や人の気配が減り、ひび割れたアスファルトと土の湿ったにおいが鼻をくすぐる。
夕日が建物の隙間からしか差し込まないせいで足元には影が落ちていて、歩く度に自分の足音だけが妙にはっきり聞こえた。
それでも怖いと言うよりはワクワクする、という方が正直なところで、わたしは好奇心の赴くまま奥へ奥へと進んでいった。
―――――
暫く歩いていると、道が少し広くなっている事に気付く。
…正確には道と言うより、背の高い古びた建物に四方を囲まれた、空き地の様な場所だった。
数十分は歩いたから周囲にはもう夜みたいな影が落ちている。
…辺りは暗いはずなのに、何故か空き地の真ん中がうっすらと明るい。
「……えっ」
思わず声が出たのは、そこに扉がぽつんと立っていたからだ。
ただ地面に立っているだけの、両開きの大きな扉。
左右それぞれの板の中央寄りに縦型の取っ手が付いていて、表面には見たことのない模様が細かく彫り込まれている不思議なデザインだった。
その扉をぼんやりとした光が照らしていて、なんとなく扉が浮かび上がって見える。
わたしは一歩、また一歩と近付いた。
…不安はあった。
迷子になりかけているのも分かっていたし、偶然辿り着いた場所に不自然な扉がある事がどう考えてもおかしいのも分かっていた。
引き返した方が良いんじゃ無いかと一瞬考えたが、目の前にある不思議な扉から目が離せず好奇心の赴くままに更に近付いて行った。
扉の周りをぐるりと一周して、裏側を確認して、側面を確認して、それでも何も無くて、地面や壁に固定されている訳でも無いのに倒れる事無く扉が立っていると言う事実が、意味不明で怖い…よりも不思議でたまらなくてドキドキする方に振り切れて行くのを感じた。
恐る恐る取っ手に手を伸ばす。
冷たくて、滑らかで、手のひらに吸い付く様なひんやりした感触があった。
すると、ぎ、と小さな音を立てて扉がわずかに動く。
わたしが取っ手に触れた途端、扉がひとりでに開き、隙間から強烈な光が漏れ出して来る。
…扉が開いたとしても向こう側には何も無いはずなのに。
光の眩しさに耐えきれずぎゅっと目を瞑った。
すると腕を誰かに引かれている様な、背中を押されている様な感覚を覚え背中がぞくりとした。
扉から離れようと一歩後ろに引いた瞬間、いつの間にか開ききっていた扉の向こう側、光の中へ吸い込まれるかの様にわたしの体は落ちて行った。
突然の浮遊感に声も出せなかった。
真っ白な光の中に見えた夜空もどんどん遠ざかって行く。
ここでわたしの意識は途切れた。
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