狂聡ss

『わぬのお泊まり』


 その夜、わぬは聡実くんの暮らすアパートのおウチにお泊まりにきました。

「わぬ、そろそろ寝る時間やで」
 聡実くんはお布団を敷いて、ぽんぽんと枕を叩いて言いました。
「わぬ」
 とわぬはニコリと返事をして、お布団をぺろんとめくりました。
「ん? もうそんな時間か?」
 と座布団に座ってくつろいでいた狂児さんも、四つん這いで布団に寄ってきます。
「狂児さんはもうひとつのお客様用使ってください。僕は今日、わぬと一緒に寝るので」
「え~~。寂しいやん。俺も一緒が良い~~~」
「狭くなるから嫌です」
「いつもは一緒に寝てるのに~~~~~」
「…………」
 聡実くんは、じと~~~と狂児さんを見つめると、そっと手を伸ばして、狂児さんの手の甲をつねりました。
「痛い! 聡実くん!!」
「…………わぬ。一緒に寝よか」
 聡実くんが振り返って、優しくわぬに言います。けれど、わぬは「わぬ…」と少し元気のない返事をして、うつむいてしまいました。
 数秒の沈黙の後、
「わぬ?」
 と聡実くんが問いかけると、わぬは意を決した様子で顔を上げました。
「わぬ!」
 とわぬは聡実くんと狂児さんに布団から離れるよう指示します。二人が離れると、隙間を開けて並んでいたお布団を、わぬは一生懸命引っ張って、隙間無くピッタリくっつけたのです。
 そしてわぬは自分の両手を二人に片手ずつ差し出しました。
 片方には狂児さんの手が、もう片方には聡実くんの手が重なります。
「……これは……えーと…………。三人一緒に手を繋いで寝たら、寂しくないってこと?」
 聡実くんがわぬに尋ねます。

 わぬは大きく頷きました。

 聡実くんと狂児さんは互いに顔を見合わせてパチクリと瞼を瞬かせ、やがて頬をほころばせました。
「わぬ、かわいいなぁ!」
 と狂児さんがニコニコとわぬの頭を撫でます。
「自分で考えたんか? わぬは賢くて優しいなぁ」
 と聡実くんも穏やかな表情で、わぬをそっと撫でて言いました。

 わぬは二人に撫でられ、満足げに胸を張ります。

 その夜、聡実くんとわぬと狂児さんは、川の字になって、仲良く眠りにつきました。おかげでわぬはとても素敵な夢をみることが出来ました。その夢にはもちろん、聡実くんと狂児さんも出てきます。

 わぬは聡実くんのおウチのお泊まりに大満足しました。
 唯一、不満があるとすれば、目を覚ましたとたん、聡実くんと狂児さんが一緒の楽しい素敵な夢を忘れてしまったことだけです。

 起きたときは残念な気持ちになったわぬでしたが、早朝にまだ眠る二人の寝顔を見ることが出来たので、わぬは幸せいっぱいな気持ちになったのでした。

おしまい
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