好きな人が、夢に出た!
眩しく照りつける太陽。
沸き起こる歓声。
彼の凛々しい横顔。
ここまでは完璧だった。一つだけおかしいところがあった。
彼は『ペンギンの着ぐるみ』を着ていたのだ。普段はクールなサッカー少年なのに。
かき氷のカップに描いてあるような、ドン・キホーテのあいつのような、ペンギン。 着ぐるみは笑みを浮かべた口元の下がくり抜かれ、そこから顔を出せるようになっている。
ペンギンの凝り固まった笑顔と、彼の凛々しい表情がどうにもミスマッチだった。
そして、どこからかファンファーレが鳴り響くと、彼はペンギン歩きでどこかに登っていった。そこから引きの画になると、彼はスキージャンプばりの高所かつ急勾配な氷山の頂点にいた。
そして、凛々しい顔から神妙な面持ちになった。ゆっくりと3歩下がったかと思いきや、おもむろに助走をつけて氷山を下りていったのだ。しかも、腹ばいで。
彼が氷山を颯爽と駆け抜ける姿が色んなアングルで映し出される。真正面、氷山全体、横、右斜め、顔のどアップ。かっこよさそうに映っているが、彼は腹ばい。歓声は地響きのようだし、紙吹雪も舞っている。なぜだ、なぜなんだ。
そのまま彼がどこかにたどり着くわけでもなく、困惑したまま目が覚めた。
この夢を見たのは、小学五年生の7月のことだった。
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