太宰
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自分の呻き声で目が覚めた。
内側を這いずり回る恐怖に頭が揺らぐ。
居た堪れず飛び出した。行く先など何処にも無い。
ひたすらに走り続ける。
外は、雨が降っていた。
昔から、雨は好きだ。
溢れる涙も、滴る血も、ぐちゃぐちゃな思考も、
全て有耶無耶にしてくれるから。
短く荒れた呼吸を吐き出す。
地面には絶え間なく、線が描いた円が重なる。
足はもう、動かなかった。
どれ程の間、立ち尽していたのだろう。
全身を打たれる感覚が、ふと遮断された。
「酷い天気だね」
太宰さんの、声がする。
「――また、なのかい」
答えられずに、俯くだけ。
狭い空間に、当たっては弾ける粒が反響する。
「なまえ、」
重く転がる、漆黒の傘。
添えられる、優しい手。
包み込む、柔らかな体温。
「…こんなに、冷たくなって」
降り注ぐ雨を、一緒になって受け入れる。
貴方の所作で、声色で、表情で。
じわじわと、わたしの心は浸食されていく。
「だざい、さん」
「何だい?」
小さく落とした言葉は、それでも彼に拾われて。
「このまま、死ねたら善いのに」
「…存外、悪くないかもね」
細い身体に縋り付けば、同じ力で抱き締めてくれる。
高い瞳を見上げれば、同じ視線を交わしてくれる。
薄い唇を求めれば、同じ熱を与えてくれる。
最期まで、この関係だけは。
どうか有耶無耶にならないで。
雨は未だ、止まない。
続※R18
内側を這いずり回る恐怖に頭が揺らぐ。
居た堪れず飛び出した。行く先など何処にも無い。
ひたすらに走り続ける。
外は、雨が降っていた。
昔から、雨は好きだ。
溢れる涙も、滴る血も、ぐちゃぐちゃな思考も、
全て有耶無耶にしてくれるから。
短く荒れた呼吸を吐き出す。
地面には絶え間なく、線が描いた円が重なる。
足はもう、動かなかった。
どれ程の間、立ち尽していたのだろう。
全身を打たれる感覚が、ふと遮断された。
「酷い天気だね」
太宰さんの、声がする。
「――また、なのかい」
答えられずに、俯くだけ。
狭い空間に、当たっては弾ける粒が反響する。
「なまえ、」
重く転がる、漆黒の傘。
添えられる、優しい手。
包み込む、柔らかな体温。
「…こんなに、冷たくなって」
降り注ぐ雨を、一緒になって受け入れる。
貴方の所作で、声色で、表情で。
じわじわと、わたしの心は浸食されていく。
「だざい、さん」
「何だい?」
小さく落とした言葉は、それでも彼に拾われて。
「このまま、死ねたら善いのに」
「…存外、悪くないかもね」
細い身体に縋り付けば、同じ力で抱き締めてくれる。
高い瞳を見上げれば、同じ視線を交わしてくれる。
薄い唇を求めれば、同じ熱を与えてくれる。
最期まで、この関係だけは。
どうか有耶無耶にならないで。
雨は未だ、止まない。
続※R18
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