過去篇
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今回の任務は、そう手間取る事なく片付いた。
後は拠点に戻り、首領に報告を済ませるだけだ。
裏道を抜けようと建物の隙間に潜ると、先には小さな影が一つ。
(餓鬼か…)
家出か孤児か、それとも捨てられたのか。
少女が一人、膝を抱えて座り込んでいた。
ただの路地裏の景色として横切ろうとした、その時。
靴底に、何かが触れた感覚があった。
「あ…、おうちが、」
ぽつりと聞こえた言葉が引っ掛かり、思わず立ち止まる。
「わたしのつくった、おうち…」
「お前が作った家?」
「いいん、です。わたししか、見えないから…」
俺にではなく、自分に言い聞かせるような。
哀しげで、諦めの混じった声。
「だいじょうぶ、です」
腕を解いて座り直し、手をふわふわと動かし始める。
何も無い空間なのに、まるで物に触れているかのようだった。
「オイ、今も何か作ってんのか」
「…とりさん、を」
「作って如何すんだ」
「一人は、さみしいから…いっしょに、います」
暫くして、完成したのだろう。
鳥をそっと肩に乗せた。と思われる、仕草をした。
「お前、異能持ちか」
「…いのう…?」
「空気で、鳥を作ったんだな?」
「…はい。空気をあつめたら、かたちが、できます」
「俺には何も見えねぇが、踏んだ感触はあった」
「さわる…のは、みんなできるみたい、です」
「成程な」
目線を合わせるように屈み、餓鬼の肩に手を伸ばしてみる。
驚いたようだが、抵抗される事は無かった。
指先が何かにぶつかり、鳥の背中であろう曲線が、はっきりと感じられた。
これは、使える。
そう確信すれば、行動に出るのは直ぐだった。
「お前、名前は」
「みょうじ、なまえ…です」
「なまえ。俺について来い」
「…?」
「今のお前じゃ、宝の持ち腐れだ。その異能、最大限に生かしてやる」
「…!」
伏せがちだった目が、大きく開き此方を見つめる。
先程までの曇った表情に、僅かに光が灯ったようだった。
「この力で…なにかできるんです、か」
「此れからのお前次第だ。可能性は、幾らでも在る」
「!…がんばり、ます」
「決まりだ」
手を差し出してやると、少し戸惑いながらも掴み、立ち上がった。
コイツの小さい手は、一体何を生み出し、何を壊すのか。
答えは、俺と行く先に在る。
「あの!…おにいさんの、なまえは」
「中原中也だ」
「…なかはら、さん。…よろしく、おねがいします」
なまえは静かに笑うと、肩に乗せた鳥を、空へと放った。
後は拠点に戻り、首領に報告を済ませるだけだ。
裏道を抜けようと建物の隙間に潜ると、先には小さな影が一つ。
(餓鬼か…)
家出か孤児か、それとも捨てられたのか。
少女が一人、膝を抱えて座り込んでいた。
ただの路地裏の景色として横切ろうとした、その時。
靴底に、何かが触れた感覚があった。
「あ…、おうちが、」
ぽつりと聞こえた言葉が引っ掛かり、思わず立ち止まる。
「わたしのつくった、おうち…」
「お前が作った家?」
「いいん、です。わたししか、見えないから…」
俺にではなく、自分に言い聞かせるような。
哀しげで、諦めの混じった声。
「だいじょうぶ、です」
腕を解いて座り直し、手をふわふわと動かし始める。
何も無い空間なのに、まるで物に触れているかのようだった。
「オイ、今も何か作ってんのか」
「…とりさん、を」
「作って如何すんだ」
「一人は、さみしいから…いっしょに、います」
暫くして、完成したのだろう。
鳥をそっと肩に乗せた。と思われる、仕草をした。
「お前、異能持ちか」
「…いのう…?」
「空気で、鳥を作ったんだな?」
「…はい。空気をあつめたら、かたちが、できます」
「俺には何も見えねぇが、踏んだ感触はあった」
「さわる…のは、みんなできるみたい、です」
「成程な」
目線を合わせるように屈み、餓鬼の肩に手を伸ばしてみる。
驚いたようだが、抵抗される事は無かった。
指先が何かにぶつかり、鳥の背中であろう曲線が、はっきりと感じられた。
これは、使える。
そう確信すれば、行動に出るのは直ぐだった。
「お前、名前は」
「みょうじ、なまえ…です」
「なまえ。俺について来い」
「…?」
「今のお前じゃ、宝の持ち腐れだ。その異能、最大限に生かしてやる」
「…!」
伏せがちだった目が、大きく開き此方を見つめる。
先程までの曇った表情に、僅かに光が灯ったようだった。
「この力で…なにかできるんです、か」
「此れからのお前次第だ。可能性は、幾らでも在る」
「!…がんばり、ます」
「決まりだ」
手を差し出してやると、少し戸惑いながらも掴み、立ち上がった。
コイツの小さい手は、一体何を生み出し、何を壊すのか。
答えは、俺と行く先に在る。
「あの!…おにいさんの、なまえは」
「中原中也だ」
「…なかはら、さん。…よろしく、おねがいします」
なまえは静かに笑うと、肩に乗せた鳥を、空へと放った。
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