臨也
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カランコロンと、喫茶店の扉の鈴が鳴る。
入ってきたのは、知っているけど、出来れば一生知りたくなかった人物だった。
「…!いらっしゃい、ませ…」
声が途切れ、顔が強張る私を見て、臨也は満足そうに笑い席に着く。
ここに来たのは勿論、偶然ではないだろう。
私が働いていると知って、嫌がらせに来たに違いない。
臨也の異様な趣味は知っている。
目を付けた人間を唆し、自分の思うがままに弄び、興味が無くなれば捨てるのだ。
昔、高校で同じクラスだった頃。
臨也の思惑を阻止してやろうと、奔走した事がある。
しかし、それすらもコイツの計算内だったようで。
良いように扱われ、“人間観察”されてしまった。
静観が最善だと知った私は、それ以降、臨也と関わりを持たないよう努めた。
高校を卒業し、戻ってきた平穏な日々。コイツの事なんか、とうに忘れていたというのに。
何で、今更。
前触れもなく現れた問題に、くらくらと眩暈がする。
「ブレンドコーヒーお願い」
「畏まりました」
注文を取るのは後輩に任せて、自分は奥に引っ込む。
が、仕事中である為、完全に姿を隠す事はできない。
(見られてる……)
臨也は何をするでもなく、ずっとこちらに視線を向けていた。
ある程度の距離があるとはいえ、落ち着かない。
早く、一刻も早く立ち去れ…!
「すみません。そこの、店員さん?」
はっきり自分を見て呼ばれては、今この場では逃げようが無い。
観念して、臨也の近くに寄る。
「……何でしょう」
「久々の再会だよ?もっと喜んでくれても良いんじゃないかな」
「再会なんて金輪際望んでなかったです」
「酷いなぁ。俺となまえの仲じゃない」
「酷くて結構。ただ同級生なだけでしょう」
「そうかな?それ以上の諸々もあると思ってるけど」
「私は思ってません」
「ははっ、残念だなぁ。じゃ、会計頼むよ」
「500円になります」
目を合わさないようにして、一気に言う。
でも、見なくても分かる。コイツは今、絶対、笑ってる。
人を見下したように冷たくて、真意が渦に飲まれた表情。
それでいて、人を愛してる!なんて言うもんだから、ますます理解できない。
思っていると、視界にひらり、と一万円札が差し出された。
「お釣りは君が取っときなよ」
「アンタからのお金なんて要らない」
「まぁそう言わずに。今日は面白いものが見れたしね」
「私は見世物じゃない!」
「俺にとってなまえは充分、魅力的な見世物だよ」
「どういう事!?」
声が大きくなりそうなのを、必死に抑えて反論する。
臨也はそれには答えず、無理矢理私の手にお札を握らせて。
じゃあね、とドアの向こうの人混みへと消えていった。
(絶対、受け取らないからね…!)
手に力が篭る。
既に去った相手なのに、睨まずには居られなかった。
「まぁ掴みとしては、こんな所かな」
今日は、火種を撒いただけだ。
俺の方からなまえに会いに行く事はできるけど、それじゃつまらない。
(昔から、あの子は中々真面目だからね)
どんな理由であってもいい。 なまえが自分の意思で、俺の元にやって来る事に価値がある。
(懐かしい玩具。さて、どう遊んであげようか)
一人笑う俺を掻き消す、夜の雑踏。
そこから生まれる、新しい物語。
なまえは、この俺が。
もう一度、拾ってあげるよ。
入ってきたのは、知っているけど、出来れば一生知りたくなかった人物だった。
「…!いらっしゃい、ませ…」
声が途切れ、顔が強張る私を見て、臨也は満足そうに笑い席に着く。
ここに来たのは勿論、偶然ではないだろう。
私が働いていると知って、嫌がらせに来たに違いない。
臨也の異様な趣味は知っている。
目を付けた人間を唆し、自分の思うがままに弄び、興味が無くなれば捨てるのだ。
昔、高校で同じクラスだった頃。
臨也の思惑を阻止してやろうと、奔走した事がある。
しかし、それすらもコイツの計算内だったようで。
良いように扱われ、“人間観察”されてしまった。
静観が最善だと知った私は、それ以降、臨也と関わりを持たないよう努めた。
高校を卒業し、戻ってきた平穏な日々。コイツの事なんか、とうに忘れていたというのに。
何で、今更。
前触れもなく現れた問題に、くらくらと眩暈がする。
「ブレンドコーヒーお願い」
「畏まりました」
注文を取るのは後輩に任せて、自分は奥に引っ込む。
が、仕事中である為、完全に姿を隠す事はできない。
(見られてる……)
臨也は何をするでもなく、ずっとこちらに視線を向けていた。
ある程度の距離があるとはいえ、落ち着かない。
早く、一刻も早く立ち去れ…!
「すみません。そこの、店員さん?」
はっきり自分を見て呼ばれては、今この場では逃げようが無い。
観念して、臨也の近くに寄る。
「……何でしょう」
「久々の再会だよ?もっと喜んでくれても良いんじゃないかな」
「再会なんて金輪際望んでなかったです」
「酷いなぁ。俺となまえの仲じゃない」
「酷くて結構。ただ同級生なだけでしょう」
「そうかな?それ以上の諸々もあると思ってるけど」
「私は思ってません」
「ははっ、残念だなぁ。じゃ、会計頼むよ」
「500円になります」
目を合わさないようにして、一気に言う。
でも、見なくても分かる。コイツは今、絶対、笑ってる。
人を見下したように冷たくて、真意が渦に飲まれた表情。
それでいて、人を愛してる!なんて言うもんだから、ますます理解できない。
思っていると、視界にひらり、と一万円札が差し出された。
「お釣りは君が取っときなよ」
「アンタからのお金なんて要らない」
「まぁそう言わずに。今日は面白いものが見れたしね」
「私は見世物じゃない!」
「俺にとってなまえは充分、魅力的な見世物だよ」
「どういう事!?」
声が大きくなりそうなのを、必死に抑えて反論する。
臨也はそれには答えず、無理矢理私の手にお札を握らせて。
じゃあね、とドアの向こうの人混みへと消えていった。
(絶対、受け取らないからね…!)
手に力が篭る。
既に去った相手なのに、睨まずには居られなかった。
「まぁ掴みとしては、こんな所かな」
今日は、火種を撒いただけだ。
俺の方からなまえに会いに行く事はできるけど、それじゃつまらない。
(昔から、あの子は中々真面目だからね)
どんな理由であってもいい。 なまえが自分の意思で、俺の元にやって来る事に価値がある。
(懐かしい玩具。さて、どう遊んであげようか)
一人笑う俺を掻き消す、夜の雑踏。
そこから生まれる、新しい物語。
なまえは、この俺が。
もう一度、拾ってあげるよ。
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