『あ…れ…？』



最後に〇〇ちゃんを見てから、どれくらい時間が経っただろう。
椅子から立ち上がりヘッドフォンを外すと、部屋がこんなに静かだったことに気付く。
秒針の音と、ヘッドフォンから聞こえる再生されたままのバレーの試合解説の声だけが部屋に反響する。


…ちょっと集中しすぎたかな。
そんなに広くはない家の中を探し始める。


寝室には…いない。作業部屋にも、いない。お風呂なんていたら音で分かりそうなものだけど一応開けてみる。いない。トイレもコンコン、とノックしてみたけどやっぱりいない。

………。

玄関に行くと、〇〇ちゃんの靴がない。
どうやら外にいるらしい。

ポケットの携帯を取り出して見るけど、何も連絡はない。
"どこ行ったの"とだけLINEをして返事を待とうとしたら、リビングのほうから聞き慣れた音がした。

…携帯も置いていってる。

まあ、携帯があるっていうことはそのうち帰ってくるだろう。
そう思ってまたリビングに戻った。


急に時間の流れが遅く感じるようだった。


付き合いたての頃こそ休みの度に水族館やらショッピングモールやら色々行ってはいたけど、最近は専ら家でのんびりすることが多かった。
まあ、僕も〇〇ちゃんもそんなにアウトドアな人間じゃないから、お互い通常運転に戻ったというのが正しいけど。


２人で何かしなくても同じ空間にいるだけでいいよね、なんて無意識の傲りを〇〇ちゃんは感じ取っていたのだろうか。


〇〇ちゃんが部屋からいなくったのに気付いてから、１時間経った。