22. 私の決意を容易く揺るがす
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「謙信様、おはようございます」
「〇〇…おはよう」
朝、廊下で謙信様とすれ違った私は、立ち止まって挨拶を交わした。
何か言いたげな謙信様を後目に、素早く頭を下げ、その場を立ち去ろうとする。
「おい、〇〇」
そう、今度こそ、私は決めた。
公の場では、謙信様のペースに流されずに日々を過ごすと。
人前でも変わらない過剰なスキンシップが、嬉しい反面、最近とても恥ずかしい…。
それを、やんわりと伝えたい。
「〇〇」
「はい、謙信様」
「何のつもりだ」
「何がですか?」
あー難しい…
他の女中さんみたいに、普通に接したいだけなのに。
ついつい冷たい態度を取ってしまう。
「こちらへ来い、〇〇」
「仕事がありますので」
「…来ないなら、俺から行くまでだ」
「え………わっ!」
そう言って、腕を掴まれる。
咄嗟に目を瞑ってしまった。
そして薄く目を開けると、目の前に謙信様が立っている。
…まずい
これは、完全にいつものパターンだ
何とか回避しないと
「け、謙信様。離して下さい」
俯き、目を合わせない様に、そう声を絞り出す。
謙信様は何も言わない。
ただ、掴まれた腕も離してはくれない。
感じるのは、言いようのない威圧感。
怒ってる…?
「け、謙信様…」
居た堪れなくなり、名前を呼んだ。
「〇〇、これ程そばに居ても、お前の頭の中は未だに理解し難い」
「謙信様…」
「俺を避けるつもりなら、もっと徹底して拒絶しろ」
「さ、避けるつもりなんてありません!」
「ほぅ…では、何故だ?何故その様な態度を取る」
「それは…」
言葉に詰まると、私の腕を掴んでいる謙信様の手に更に力が込められる。
痛み…いや、その空気に耐えられなくなり、私は顔を上げた。
謙信様は、無表情のまま私を見下ろしている。
「怒らないで下さい」
「怒ってなどいない。俺は理由を問うているだけだ」
「だから、その…。け、謙信様は恥ずかしくないんですか!?」
「何がだ?」
「皆さんが見ている前で、その、二人きりの時と変わらない行動をされて!」
「二人きりの時と変わらない行動とは何だ?」
「触ったり抱き締めたり、口付けしたりすることです!」
「…あぁ、そんなことか。別に恥ずかしくなどない」
「もうっ…!」
微笑を浮かべながら答える謙信様を、精一杯見つめ返して告げる。
「せめて、皆さんの前で口付けは辞めて下さいませんか?」
「断る」
「謙信様…んっ」
グッと、体ごと引き寄せられ、そのまま強引に唇を奪われた。
ふ、深いっ…
「…はぁっ」
苦しい。
息を整えていると、謙信様が自分の両手で私の頬を包み、優しい目で見つめながら名前を呼んだ。
「〇〇」
あぁ…やっぱり無理だ…
「はい、謙信様」
そんな目で見つめられたら、
「俺は、場所や時間など関係なく、何時でもお前に触れたい。…良いな?」
私は、この方に身も心も捕まっているのだと、改めて感じてしまう。
「はい…すみませんでした、謙信様」
「分かれば良し」
そこには、満足そうな謙信様がいて。
抵抗など、少しもさせてはくれなくて。
この方は、私の決意を容易く揺るがす。
でも、不思議とそれが心地好く感じる私は、謙信様に対しての想いが、本当に末期なのかもしれない。
謙信様に抱き締められながら、私はそんな事を考えていた。
End*2019/11/09
「〇〇…おはよう」
朝、廊下で謙信様とすれ違った私は、立ち止まって挨拶を交わした。
何か言いたげな謙信様を後目に、素早く頭を下げ、その場を立ち去ろうとする。
「おい、〇〇」
そう、今度こそ、私は決めた。
公の場では、謙信様のペースに流されずに日々を過ごすと。
人前でも変わらない過剰なスキンシップが、嬉しい反面、最近とても恥ずかしい…。
それを、やんわりと伝えたい。
「〇〇」
「はい、謙信様」
「何のつもりだ」
「何がですか?」
あー難しい…
他の女中さんみたいに、普通に接したいだけなのに。
ついつい冷たい態度を取ってしまう。
「こちらへ来い、〇〇」
「仕事がありますので」
「…来ないなら、俺から行くまでだ」
「え………わっ!」
そう言って、腕を掴まれる。
咄嗟に目を瞑ってしまった。
そして薄く目を開けると、目の前に謙信様が立っている。
…まずい
これは、完全にいつものパターンだ
何とか回避しないと
「け、謙信様。離して下さい」
俯き、目を合わせない様に、そう声を絞り出す。
謙信様は何も言わない。
ただ、掴まれた腕も離してはくれない。
感じるのは、言いようのない威圧感。
怒ってる…?
「け、謙信様…」
居た堪れなくなり、名前を呼んだ。
「〇〇、これ程そばに居ても、お前の頭の中は未だに理解し難い」
「謙信様…」
「俺を避けるつもりなら、もっと徹底して拒絶しろ」
「さ、避けるつもりなんてありません!」
「ほぅ…では、何故だ?何故その様な態度を取る」
「それは…」
言葉に詰まると、私の腕を掴んでいる謙信様の手に更に力が込められる。
痛み…いや、その空気に耐えられなくなり、私は顔を上げた。
謙信様は、無表情のまま私を見下ろしている。
「怒らないで下さい」
「怒ってなどいない。俺は理由を問うているだけだ」
「だから、その…。け、謙信様は恥ずかしくないんですか!?」
「何がだ?」
「皆さんが見ている前で、その、二人きりの時と変わらない行動をされて!」
「二人きりの時と変わらない行動とは何だ?」
「触ったり抱き締めたり、口付けしたりすることです!」
「…あぁ、そんなことか。別に恥ずかしくなどない」
「もうっ…!」
微笑を浮かべながら答える謙信様を、精一杯見つめ返して告げる。
「せめて、皆さんの前で口付けは辞めて下さいませんか?」
「断る」
「謙信様…んっ」
グッと、体ごと引き寄せられ、そのまま強引に唇を奪われた。
ふ、深いっ…
「…はぁっ」
苦しい。
息を整えていると、謙信様が自分の両手で私の頬を包み、優しい目で見つめながら名前を呼んだ。
「〇〇」
あぁ…やっぱり無理だ…
「はい、謙信様」
そんな目で見つめられたら、
「俺は、場所や時間など関係なく、何時でもお前に触れたい。…良いな?」
私は、この方に身も心も捕まっているのだと、改めて感じてしまう。
「はい…すみませんでした、謙信様」
「分かれば良し」
そこには、満足そうな謙信様がいて。
抵抗など、少しもさせてはくれなくて。
この方は、私の決意を容易く揺るがす。
でも、不思議とそれが心地好く感じる私は、謙信様に対しての想いが、本当に末期なのかもしれない。
謙信様に抱き締められながら、私はそんな事を考えていた。
End*2019/11/09
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