とある月の記憶

「……ん…」

目を覚ました月は、まだ瞼が重い中、ゆっくりとその体を起こした。

「………」

なんだか頭がぼー…としている。
まるで永遠の眠りから目覚めたようだった。

「……」

目をこすりながら、キョロキョロと辺りを見回す。
見渡す限り灰色の世界が広がるその場所で、何かを探しているかのようだ。
ぼんやりとした月色の目が、何かを求めていた。
…すると、そんな月の後ろから、声が聞こえた。

「大丈夫かい?」

月が振り返ると、そこには黒い衣装を着た男…『死』がいた。
美しく微笑みながら、月へと近寄ってくる。
月は、そんな死に声をかけた。

「死。そこにいたか」

「……?」

…死は、不思議そうに首を傾げた。

「? …死?」

何かおかしなことでもあるのかと、月も首を傾げる。
瞬きをしながら死を見ていると、死は何かを察したかのように「……ああ」と呟いた。

「…おはよう。月よ。眠る前のことは覚えているかい?」

「眠る前……確か、死の帰りを待っていて、その時に酷い眠気を感じて、横になって…死と話している時に眠ってしまったような。合っているか?」

「…ああ。お前がそう覚えているなら、そうなのだろう」

どこか歯切れの悪い言い方をした死に、月はまたしても首を傾げる。
なんだかいつもの死と少し様子が違うように思えた。
月はどうしたのかと死にたずねようとしたが…なんとなく、教えてくれそうな雰囲気ではないと感じた。
…それなら、無理に問いただすこともない。きっと死の中では伝える必要がないのだろう。

「……そうか」

死との付き合いが " 長い " 月はそう思い、それ以上 何かをたずねることはなかった。







それからしばらく経った頃のことだ。
月は少しだけ しゅん…としていた。その理由は、先ほど交わした死との会話だ。
月は死に、「前に城の中で遊んだあの遊びをまたやりたい」と伝えた。…しかし、死はその遊びがすぐに思い浮かばなかったようだ。
二つほど遊びの名を挙げていたが、どちらもしたことはなかった。三つ目でようやく「追いかけっこ」の名を口にしていたが…いつも間違えない死にしては珍しかった。
もしかしたら役目で疲れているのかと思い、結局追いかけっこはせずにそこで会話は終了した。

「……」

あの場所でのあの遊びは月にとっては思い出深いものだったのだが、どうやらそれは自分ひとりが思っているだけだったようだ。死の中では、あまり記憶に残っていないらしい。月はそれが少しだけ寂しいと思った。
…しかし、それだけのことで死を嫌いになるはずもなく、月はこれからはもっと死の印象に残るような遊びをやっていきたいと、そう前向きに考えているのだった。
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