湖で戯れる死と月の話

死と月は、静かな森の中を歩いていた。

季節は夏。この時期は特に太陽が自分の出番だと張り切るようで、他の季節と比べ一段と活発に活動していた。毎日毎日ギラギラと容赦なく照りつける強い陽には、人間も動物も勝つことはできない。用がなければ外に出ることすらためらうほどの暑さだ。喜ぶのは虫と夏を楽しめる人間と、そして太陽本人くらいかもしれない。そんな太陽の光が木の葉に遮られ、チラチラとだけ届く森の中は、街の中と比べるとやはり若干だが涼しかった。それでも暑いことには変わりないが。
この森へとやってきたのは死の提案である。死は月に「暑いから涼しい場所に行こう」と声をかけた。死からのお誘いを断るはずもない月は、こくりとだけ頷いたのだ。
そして今に至る。
死の後をついていく月は、だらだらと汗を流していた。時折その汗を服の袖で拭っている。うだるような暑さの中、いつもの厚着のコート姿で歩く月は、傍から見れば異様な光景だった。
一方、月の前を歩いている死は、不快感を見せるどころか汗ひとつかいていないようだった。裸足の足で、どんどん森の奥へと進んでいく。月は暑さにふらふらとしながらも、死が晒した足を地面の枝や草で切ってしまわないかと少し心配していた。
…人気のない森の中をしばらく歩いていると、木々のない開けた場所に出た。代わりに目の前に広がったのは、陽の光でキラキラと輝く小さな湖だった。

「着いたよ」

死は月にそう告げた。どうやらここが目的地のようだ。
底も見えるほど透き通った美しい湖で、森の奥にひっそりと存在するまさに穴場のような場所だった。辺りに人の気配はなく、動物たちにとっては最高の涼み処なのかもしれない。穏やかな水面が、微風に撫でられゆらゆらと静かに揺れていた。
見ているだけでも涼しくなりそうな光景をぼー…と月は眺めている。
そんな月の前で、死は被っていた黒いフードを取り、衣装の前の銀色の留め具も手で外し始めた。

「…?」

不思議そうに見つめている月に、死は声をかける。

「お前も脱ぎな」

「…ん」

よく分からない月だが、死の言うことはなんでも素直に聞き入れる。自身も被っている白いフードを取り、重いコートをのそのそと脱ぎ始めた。
そうこうしている間に、死は身に纏っていた黒衣装をすべて脱ぎ終え、近くの大きな石の上へと丁寧に畳んで置いていた。手袋を外し、そして長い三つ編みもゆっくりと徐々に解いていく。
月はそんな死の後ろ姿に見惚れていた。白く綺麗な背中に、解かれた長い髪が流れていく様は酷く妖艶だった。細身なこともあり、女性のような美しさも兼ね備えていた。
死は残りひとつの三つ編みも解き終わると、未だにコートだけしか脱いでおらず、熱を帯びた視線を自分に向けている月を見て、ふ…と笑った。

「どうした。脱がしてほしいのか?」

月が見惚れていることなんてとっくに気付いていたが、気付かないふりをして月へと近寄る。あえてそのまま放置して自分だけ湖に飛び込んでもよかったのだが、暑苦しい格好をしたままの月を見ているとこちらまで不快な気分になる。それに、倒れられても面倒だ。
死はそう思い、動かず喋らずの月が着ているベストへと手を伸ばした。指先でボタンを外していき胸元を開けると、逞しい胸板、腹筋、へそがシースルーの上からでも透けて見えていた。控えめな性格だが、男の魅力溢れるいい身体をしている月。普段は厚いコートで隠れているからか、はだけたその身体はますます色気を感じさせていた。死はそんな月の肉体美を堪能しつつ、脱がしたベストを畳んで大きな石の上に置くと、今度はズボンのベルトへと手をかけた。
シースルーまで脱がしてやるつもりはない。そこまで甲斐甲斐しく世話は焼かない。
そんな視線をちらりと月へと向けると、月も察したのか自らシースルーを脱ぐような仕草を見せた。理解が早い月に「よしよし」と頷くと、しゃがみ込んだ死はカチャカチャとベルトを外し始める。

「ああ。先に靴を脱いでおこうか」

「…ん」

月は言われたとおりに靴とシースルーを脱ぎながらも、じっと死の様子を上から見ていた。

「……」

この光景は何度も見たことがある。それは決まって、いつものをする時だ。
いつものをする時、死はこうやって月のベルトを外し、ズボンを脱がせていた。月はいつもいつも、それがたまらなく嬉しい。死が自分を求めているかのように感じられて、ぞくり…と体が震えるのだ。今からそのいつものをするわけではないと思うのだが、しかしほんのわずかな期待感からでも月の腹の奥はずく…ずく…と熱くなっていく。
それに、目の前にいる死は裸だ。いつも身に纏っている衣装も、被っているフードもない。そして珍しく髪を下ろしている。その新鮮さや艶めかしさに、月は心を奪われていた。時折垂れ下がってくる邪魔な髪を耳にかける仕草は、危ないほどの色を放っていた。
やがて死がズボンをずらすと、すぐに月のそれは顔を出した。

「…ふふ」

期待しているのが丸わかりだ。少しだけ反応を見せているそれをからかうように、死は指でちょん、と先を突いた。

「…っ」

ぴくっ…と体が跳ねた月をくすくすと笑いながら、下へ下へとズボンを下げていく。足に引っかかると、月は片足を上げて抜き取る手伝いをしていた。その様子はまるで幼子の着替えのようだった。
月はいつの間にか 着ていたシースルーと両腕を覆うシースルーも脱いでいたようで、それらを受け取った死は脱がしたズボンと共に、またしても丁寧に畳んでベストの近くへと置いた。

「…さて、後は」

そう言いながら、死は月と向かい合った。身に纏っていた服をすべて取り払って、死と同じく全裸になった月の身体を死はまじまじと見つめる。彫刻のように完成された美しい裸体。いつ見ても大変好みな男の身体に、死もにっこりである。ほぅ…とうっとりとしたため息を吐きながら、月の首へと腕を回して自身の身体を密着させた。
月はふんわりと死と死の匂いに包み込まれる。ひんやりと伝わる体温がとても気持ちいい。

「…死」

死の耳元で、月は吐息混じりの低い声を出した。死はそれに答えるように笑みを浮かべ、少しだけ腰を動かして自身のものを月のものへと軽く擦り付けた。

「…はぁ…」

興奮したような熱い息を吐いた月。…しかし、思わせぶりなことをしておいて、死がそれ以上の行為をすることはなかった。
死は月の首に抱きついたまま、月の長い髪を縛っている一つ目の紐へと手を伸ばし、シュルシュル…とゆっくりと解いていく。やがて、後ろの髪はパサ…と真っ直ぐに落ちて、月の大きな背中へと覆い被さった。
続いて死は、前髪を縛っている二つ目の紐も指先で解いていく。それによって落ちた前髪は、色を含んだ月色の目を覆い隠した。しかし髪の間からでも、ギラギラと光る目は死を捕らえていたのだ。
そんな視線を受けながらも、死は絡めていた腕を引っ込め惜しみなく月から体を離した。欲を孕んだ男の顔が死を見つめているが、どうやら死は早く湖で遊びたいらしい。

「これから楽しい水遊びをするというのに、そんな怖い顔をするな」

そう言って畳んだ服の上へと2本の紐を投げ捨てると、月の手を引いて湖へと向かった。
死が水の中へ足を入れると、心地の良い冷たさが足へと伝わった。そのままちゃぷちゃぷと音を立てながら、死は湖の中を進んでいく。手を引かれている月の足元にも、その水は迫ってきた。しかし、水の中に入るのは初めてなのか、触れるギリギリのところで月は立ち止まってしまった。ぴたっと動きを止められた死は、月へと振り返る。

「怖くないよ。早くおいで」

優しく声をかけて手をくいくい引っ張ると、月は死と足元の水を交互にちらちら見た後に、ゆっくり水の中へと片足を入れた。その冷たさに驚いたのか一瞬ぴしっと体が固まったが、すぐに慣れたようでもう片方の足も水の中へと沈めていた。不快な暑さが、冷たい水によって和らいでいく感覚が気持ちいいのかもしれない。死と同じように、月もちゃぷちゃぷと湖の中を歩いていく。手を引かれながら、月は前を歩く死の後ろ姿を見つめていた。その姿はやはり美しかった。
…しばらく進んで水がへその上くらいまであるところまでくると、死は月の手をぱっと離した。両手をそろえて水へと浸し、そっとすくい上げる。透明に澄んだ美しい水は、指の隙間からこぼれ落ちていく音さえも心地良かった。

「綺麗な水だ。お前もすくって見てごらん」

死にそう言われ、月も両手で水をすくい上げた。手の平の中の水をじっと見てみるが、月にはただの水にしか見えなかった。

「…分からない」

「おや。残念。いつかお前にも分かる日が来るといいね」

そう言うと、目の前に広がる青々とした神秘的な世界に入り込むように、死は水中へとその体を沈めた。すぅ…と息を軽く吸ってから顔も水へと触れさせて、頭まで潜る。そしてそのまま優雅に泳ぎはじめたのだ。

「死…」

月は咄嗟に手を伸ばした。死が自分のそばから離れていくことに困惑した様子で、泳ぐ死の後を追いかける。しかし水の中は歩きにくく、なかなか思ったように前へと進めなかった。

「……」

月は睨みつけるように、邪魔な水へと嫌悪の表情を向けた。
…そうしていると、ようやく死がザパァッと水しぶきを上げて水中から姿を現した。キラキラと輝く水の粒が死の周りを舞っている。濡れた髪を耳へとかけながら、後ろにいる月を振り返った。すると、少し離れたところから、月が歩くのに苦戦しながらもこちらへと向かってきているのが見えた。気付けば、胸のあたりまで水があるところまで来ていたようだ。死はパシャパシャと手元の水で遊びながら、月が追いつくのを待っていた。

「………死」

「やっと来たか。お前も泳いでくればいいのに」

月が泳ぎ方を知らないことを知っている死はそう言った。悪戯するかのように、水をパシャッパシャッと手で跳ねさせて月の胸元や首へとかけている。水をかけられている月は抵抗することなく、大人しく死にされるがままである。死は月へと話しかけた。

「一度水の中へ潜ってごらん。水に顔を撫でられるのは気持ちがいいよ」

「…でも」

「大丈夫。怖がることはない。ほら、一緒に」

怖気付いている月の頬を死は両手でそっと包み込み、優しげな笑みを浮かべた。
…しかし、その存在ゆえに、それはまるで黄泉の国へと誘うモノの妖しげな笑みにも見えたのだ。

「……」

そんな恐ろしくも美しい死に魅了された月は、こくり…と頷いた。

「…いい子。それじゃあ息を吸って」

笑みを深めた死が月にそう指示を出すと、月は言われたとおりに息を吸い込んだ。それを確認した死は先に自分が水へと潜ると、その後すぐ引きずり込むように月を水へと沈めた。
…水の中、死が目を開けて月の様子を見てみると、泡に包まれた月はまるで眠っているかのように目を閉じていた。解いた長い髪が、青々と輝く水中で美しくなびいている。涼しげで見事な水月だった。
まるで芸術作品のような場面を見ることができた死は満足し、月と共に水面から顔を出した。

「…はあ…」

「ふふ。どうだった?」

「…ぷくぷくと音がしていた」

「ああ、私にも聞こえたよ。心地の良い音だろう」

月の感想に死はくすくすと笑いながら、髪も顔も水に濡れている月をじっくりと観察する。普段なかなか見ることのできない姿だ。しっとりとした色気が漂っていた。死は月の頬を片手で撫であげる。

「…ふふ。いいね。水も滴るいい男だ」

「…?」

意味がよく分からない月は、死の言葉に首を傾げるのだった。





…それからしばらくの間、死と月は水遊びを楽しんでいた。月は水の中のぷくぷくこぽこぽという音が気に入ったようで、最初は死と共に水中へと潜っていたのだが、途中からはひとりで水の世界へと旅立っていた。死はそんなちょっとした月の成長を見守りながら自身も涼しく過ごしていたのだが、死の飽きというものは唐突にやってくる。

「…なあ。月よ」

水を手ですくって眺めていた月に、死は声をかけた。死からの呼びかけに、月は死へと顔を向ける。

「こっちへおいで」

死がそう手招きをすると、月は素直に死へと近付いていった。手が届く位置まで来ると、死は水中で月の手を掴み、そのままどこかへ連れて行こうとしていた。

「…死?」

この湖へ入る時と同じように、月は手を引かれるまま大人しく死へとついていく。胸からへそ、腰、太ももと、どんどん水のない浅瀬へと死は向かっていった。
そしてついには、足首だけ水に浸かるところまでやってきたのだ。もうすでに森の一部へと足を踏み入れていた。
死は足元の緑を指差す。

「ここに寝転んで」

「…?」

「早く。いつもの楽しいことをしよう」

…いつもの。その言葉を聞いた月は、ぴく…と反応し死を見つめた。死は妖艶な笑みを月へと向けている。
そんな死の微笑みやこれから行う行為への期待感から、ドクン…と月の心臓は高鳴った。

「…ん」

ぱちゃ、ぱちゃと足音を立て、月は陸へと上がった。そしてすぐさま死へと振り向き、柔らかな草の上へと腰を下ろす。さわ…と地面の草を撫で、立っている死を見上げながら後ろへと体を倒して寝転がった。

「…ふ」

大人しく横になった まるで据え膳のような月が可笑しくて、死は目を細めて笑う。
…それじゃあ遠慮なく。
死は月の膝の上へと座ると、すでに反応し始めている月のを手の平で軽く握り込んだ。

「ん…」

月から小さく息が漏れる。つい先ほどまで水に浸され冷たかったものが、だんだんと熱を帯びていくのが分かった。
ゆっくりと上下に扱いていると、死の手の平の中で月のはどんどん成長していった。芯を持ち始めたため手も動かしやすくなったようだ。死は徐々にスピードを速めていった。

「んっ…ん、ッ」

口に手を当て、びくびくと体を震わせる月。死はそんな感じ入っている月を見てふっと笑い、手の平の中の熱くて固い感触を楽しみつつ月をさらに弄んだ。
やがて先からは透明な液体が滲み出し、死が手を動かすたびにぬちゅっぬちゅっという音がしていた。

「は…っ んっ ん…ッ」

「……おや」

月の表情ばかり見ていた死だが、気がつくと手の平の中のものは完全に勃ち上がっていたようだった。死は握っていた手を離し、目の前のそれをまじまじと見つめる。

「ふふ。もうこんなになって」

死としてはもう少し月を乱れさせたかったところだが、敏感な月がその手淫だけで果ててしまう可能性もあった。それじゃあつまらない。死だって気持ちよくなりたいのだ。
大きく育った雄をじっと眺めていると、死は後ろの口がきゅう…と疼くのを感じた。もじもじと物欲しそうに腰が揺れる。

「…はぁ……」

死は膝立ちの状態で少し前へと移動し、尻のすぐ下に月のがある位置で止まった。死の後ろの口は慣らさずとも充分柔らかい。腰を下ろせばすぐにでも挿入可能だった。
色を含んだ目で下にいる月を見下ろすと、月も恍惚とした表情で死を見上げていた。
ふたつはお互いが欲しくてたまらなかった。
死は月のを手で支え、その先に自身の口を押し当てる。

「…さあ、お前様。私とお戯れを」

その言葉を合図に、死は腰を下ろしてずぷずぷずぷ…と月を飲み込み始めた。

「んんっ…」

「う…ッ…」

死の喘ぎと月の呻きが重なった。
やがてすべて中に入りきると、死は月の腹に手を付いてゆさゆさと妖艶な腰使いで律動を始めた。死の濡れた髪から滴る雫が、動くたびに月の体へぽたぽたと落ちている。垂れ下がってくる髪を耳へとかけながら、死は自身のいいところへと月のを擦り付けるように夢中で腰を動かしていた。

「はぁっ…あっ あぁっ…」

「はぁ…っ はぁッ…」

体格のいい月に跨り、淫らに腰を振る細身の死。共に長い髪に裸であることも相まって、その様はまるで男神と女神の交わりのようだった。
決して誰も覗いてはならない、しかし誰もが目を奪われ離すことのできない淫靡な戯れであった。
死は律動しながら、下にある月の逞しい身体へと目を向ける。湖の水か、月の汗か、それとも死の髪から垂れた滴か。濡れたその身体は男の色気を放っていた。手を付いている腹もぬるぬると滑り始めている。死は少しだけ腰の動きをゆっくりにすると、滑りが良くなった月の身体へと指を這わせ、腹筋の溝をつー…となぞった。指越しに月の体がびくびくと震えているのを感じながら、徐々に上へと指を滑らせていく。…その先にあったのは胸の飾りだ。おそらく月は触れられたことがないであろうそれを、死はきゅっ…と摘まんだ。

「ッ…」

びくんっと大きく月の体が跳ねた。

「…ほう」

なかなか感度がいい。いずれはここをいじくるだけで達せるよう、ゆっくりと育て上げるのも楽しいかもしれない。死は密かに月の開発計画を考えつつ、最後にぴんっと弾いてからまた上へと指を滑らせた。
…月の表情を見るに、もう早くも限界が近いようだ。死は体を前へと倒し、髪を耳にかけながら月の頬に片手を添えた。そしてその唇へと深く口付ける。

「んっ…」

「ん…」

キスをしながら、死は再び腰の動きを速くしていった。繋がっている場所からはじゅぼじゅぼと水音が響く。

「んッ…んッ」

月は絶えず与えられる快楽に溺れていた。優しく頬を撫でてくれる死の手。あたたかくて気持ちのいい死とのキス。己を包み込んでよくしてくれる熱くて柔らかな死の中。全部。全部がたまらなく嬉しい。
月は自身の中で、熱いものがせり上がってくるのを感じた。

「ふ…っ 死、でッ… 出…」

「っはぁ ああ…出せ」

「んッ く…ッ」

ぶる…っ と震えた月は下半身をびくびくとさせて、死の中へと大量の精を吐き出した。…そして月が射精したすぐ後に、死は中にいるそれをぎゅっ…を締め付けたのだ。

「…───ッ」

射精したばかりの敏感なものに刺激を与えられ、声も出せないほどの快感に体を仰け反らせた月。まるで搾り取られるように、ビュ…ビュ…ッ と微量な液体を死の中に吐き続けていた。死は腹の中を満たしている熱さにうっとりとしながら、絶頂を迎えている月を見下ろし自身のを軽く扱いた。そして、月と同じように死も精を吐き出す。その白濁は月の腹の上へと流れ落ちた。

「はっ…はっ……は…」

「…はぁ…はぁ」

死は満足したのか、腰を上げて中からぬぽ…と白にまみれて萎えている月のものを抜き取った。蓋がなくなったことで中からは白濁液があふれ出て太ももへと垂れ落ちていたが、死は気にした様子もなく立ち上がり再び湖へと入っていった。
尻のあたりまで水に浸かると、手を後ろに回して自分で尻を弄っていた。どうやら中の液体を掻き出しているようだ。行為後にもかかわらず、死は平気で冷たい水を体に浴びせていた。
月は余韻でまだ起き上がることができず、横になったままの状態で体を清めている死を見ていた。


…それからしばらくして、禊を終えた死は月の元へと戻ってきた。白濁液で汚れている月の腹や下半身に目を向ける。

「お前も綺麗にしておいで」

「……ん」

月が上半身だけのっそりと起き上がらせると、細かい葉っぱがいっぱいついた長い髪が だらーん…と垂れ下がった。ぼさぼさと乱れた髪でいい体をしている全裸の月は、さながらターザンのようだった。

「…ふっ」

「…?」

くすくすと笑っている死を疑問に思いつつ、月はのっそりと立ち上がると、ふらふらとした足取りで湖へと向かっていった。
死はそんな月がうっかり溺れてしまわないよう、水浴び中の月をしっかりと見張っていたのだった。
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