死にお持ち帰りされた花婿と月が穴兄弟になる話5

……何故か真っ直ぐにここまで来てしまった…
花婿は自分の部屋の前で一度立ち止まり、はた…とそのことに気付いた。

彼は先ほどまで浴室でシャワーを浴びていたところ、いつの間にか現れた死に心も体も少々乱された。
…「やめろ」と口では言ったのだが…あのまま流れでそういうことをする展開になることも、ほんの少しだけ…期待…いや……っそう、死の術にかかっていたからだ。それで死のことを拒否できなかったため、本来ならあのまま風呂場で死が勝手に事を進めるとばかり……
花婿は心の中でぶつぶつとそう呟いていた。
しかし花婿の思いとは裏腹に、自由奔放な死は浴室での行為は気に入らなかったようだ。花婿の部屋で待っているとだけ伝え、花婿を置いて先にひとりで彼の部屋へと向かったのだった。ぽつんと取り残された花婿は、その後 自分の部屋へ行くべきか行かないべきか、かなり真剣に考えていた。

もし行くのだとしたら、それは死からの誘いに乗ったことになる。それに死は「待っている」と言っていたので、端から花婿が選ぶ選択肢はひとつだけだと思っているようだった。少し腹立たしいが。
反対に行かないのだとしたら…花婿は自室ではなく別の部屋で今夜は寝ることになる。兄の部屋はすでに月の部屋へとなっているため、今はいない月が帰ってきた時に花婿が部屋で寝ていたら、いくら無関心の月でもさすがに何か言ってくるかもしれない。
となると、母親のだった部屋のベッドになるだろうか。…それはそれで死に嗤われながら茶化されるかもしれない。「いまだに母親のベッドで眠りたいのかい?」とにやけ顔でたずねてくる死の姿が容易に思い浮かんだ。
リビングにも眠れそうなほど大きなソファはなかった。
死が花婿の部屋を選んだ理由もこれのためだろうか。花婿がどちらの選択肢を選んだとしても、死にとってはどちらも笑いのネタになるのだ。本当にたちの悪い男である。

と色々な考えが頭の中に思い浮かんだ結果……花婿は行くという選択肢を取ったのだった。
そもそも自分は自分の部屋に帰るだけだ。死が待っているからじゃない。死なんて追い出してやる。
花婿は言い訳のように、またしても心の中でぶつぶつと呟いていた。そして自分を落ち着かせるように、「ふう…」と息を吐きつつ下ろしている髪を耳へとかけた。
そして自室のドアに手をかけ、ガチャ…と開いたのだった。

「…ああ、来たか。花婿よ」

中を覗いてみると、死はベッドに腰掛けていた。花婿の姿が見えると、「やはり来たか」というように笑みを浮かべた。いつもの黒い衣装を身に纏っているがフードは被っておらず、髪は先ほどと同様に下ろしていた。スラリと長くて白い足を組んでおり、ベッドの上で男を待つその妖艶さは息を呑むほどだ。花婿は風呂場でのできごとを思い出し、不覚にも少しだけドキリと心臓が動いた。しかし、それを死に悟られないよう無表情を貫きながら言い放つ。

「…お前がいるから来たんじゃない。ここは俺の部屋だ」

だから早く出て行け、と花婿は態度でも表したが、当然ながら死が動く気配はなかった。それどころか、まるで素直ではない子供の相手をしているかのように、くすくすと笑っていた。そのことにむっとした花婿が文句を言うより先に死が口を開いた。

「私が選んだのがここではなかったとしても、お前は来たと思うがね」

そう言って、優雅に足を組み替えていた。その自信たっぷりな態度も、死がやることで酷く様になっている。

「そんなこと…!」

花婿は反論しようとしたが、しかし言葉に詰まってしまった。…なんというか、ここに来るまでの間、とても悩んでしまったのがその答えのようなものだ。死に一切興味がなければ、即決で行かない選択肢を選んだはずだろう。その場合 死から母親のことでいじられたとしても、死に興味がないわけだから、そのいじりだって無視すればいいだけのことだ。死からどう思われるのだろうかと考えている時点で、自分は死のことを少なからず意識しているのだ。
そう思ってだんまりとしてしまった花婿に、死は「はぁ…」とため息を吐いた。

「いいから早くおいで。ぐずぐずしてると、月が帰ってきてしまうよ」

「…あいつがいない間にするのか?ますます浮気みたいだな。俺とあいつどっちが本命か知らないが」

「ふふ。私はどちらも本命さ」

どちらにも媚びを売る下衆なことを言った死は、妖しく笑いながら花婿へと手招きをした。

「……」

…するとまた術にでもかかったのか、花婿は部屋のドアをパタン…と閉めると、死のいるベッドへと近寄っていった。
花婿が近くまで来ると、死はふわりと立ち上がり、反対に花婿をベッドへと座らせた。死はその足の間にぺたんと座り込み、花婿を見上げる。

「花婿よ。最初に言っておこうか。私はお前にも、これからの行為を楽しんでほしいと思っているんだ」

つ、と花婿のズボンのベルトへと触れながら、死は口を開いた。いよいよそういう雰囲気を感じ始め、花婿にも少し緊張が走る。
死はベルトに手をかけると、カチャカチャと外しながら言葉を紡いだ。

「お前は男との行為に抵抗があるようだ。それで私は考えたんだよ。…女を抱いていると思えば、お前も少しはよくなれるんじゃないかとね」

「…それは、それかもしれないが……」

ベルトを外した死は、次はズボンへと手をかけ下へとずらした。
…下着の下で、花婿のそれがビキ…と少しだけ反応を示した。そのことに花婿はカッと顔が熱くなる。死も目の前で見ていたようで、熱っぽい視線をそこへと向けていた。

「ふふ。だからね、私は行為中なるべく声を出さないようにしよう。…ただ、我慢できずに小さく息を漏らした声というのも、案外艶やかに聞こえるものさ」

死はそう言って、そっと下着越しに花婿のそれへと触れた。わずかな刺激であっても、花婿の心臓はドクドクといっそう激しくなる。
……もしかしたら死が髪を下ろしているのも、そのほうが女性的に見えるからかもしれない。
どこまでも自由で我の強い死だと思っていたが、そうした自分への配慮がチラチラとうかがえて、少しだけ胸がぎゅう、となった。花婿はそんな心情を抱えながら、死が下着もずらしていく様子を上から見ていた。
…半勃ちのそれが、ズル…と顔を出す。花婿は心臓が耳元で鳴り響いているのかと思うくらい、自分の鼓動をうるさく感じた。死は「ほぅ…」と息を吐いて、優しい手つきで花婿のものを両手で包み込む。

「は…っ」

直にその感触が伝わり、花婿は熱い吐息が漏れた。
死の手はひんやりとしているはずだが、自分のそれが熱を帯びすぎているせいか酷く心地がいい。
死は刺激に慣れさせるためか、それとも単純に触感を楽しんでいるのか、強さや動きに緩急をつけて握り込むのを繰り返している。その時もずっと死の視線はそこへと向いているので、いくら男同士であっても花婿はかなりの羞恥を覚えた。

「はぁっ… ふ…ッ」

それを隠すように口元に左手の甲を押し当て、しかし与えられる刺激に声を漏らし続けていた。長い髪も、あるじの真っ赤な顔を隠すのを手伝っているようだ。
…それから少しして、花婿の慣れていない雄は死からの愛撫と視線だけでどんどん元気に育っていった。今ではもう完勃ち状態だ。死も簡単すぎたのか、思わず小さく笑ってしまっている。
花婿は手で顔を覆い隠してうつむいた。自分の初心者具合を実感した瞬間である。

「……ふ」

死は吐息だけで笑うと、可愛いチェリーボーイへの悪戯のように、それの先へと顔を近付けてちゅ、と触れるだけのキスをした。

「はッ…?!!」

敏感で衛生的な問題もあるところへと不意打ちのキスを受けて、花婿は体を大きく跳ね上げた。
目を見開いて下にいる死を見てみると、死はにやぁ…と妖艶な笑みを浮かべていた。
最初に言っていた通り死は声を出すことはなくおまけに髪も下ろしているので、花婿は混乱のあまり、目の前で妖しく笑う死の性別というものが一瞬分からなくなった。何から何まで死の目論見通りである。

「どっどどどこにっき、ききっキスをしているッ…!??」

それよりも気になったのはキスをした場所だったようだ。興奮どころか引き気味に死へとそう言い放っていた。その初々しい反応がおかしくてたまらないのか、死はぷるぷると肩を震わせていた。
いいものが見られてご満悦といった表情を浮かべた死は、花婿の隣へと移動して、ギシ…とベッドへと乗り上げた。汗が滴り落ちている花婿がそちらに目を向けると、死は花婿のほうに背中を向けていた。その後ろ姿はとても美しい。

「……」

振り返った見返り美人は、艶やかに微笑んだ。
そしてゆっくりと体を倒し、花婿へと尻を突き出す四つん這いの体勢になったのだ。まだ衣装に隠れているとはいえ、思わず花婿も息を呑む。
死が誘うようにふりふりと尻を振っているが、花婿はその動きにも目が釘付けになってしまい、体が思ったように動かなかった。心臓も、下のそれも、ドクッ…ドクッ…と脈打っているのを感じた。

「………」

…なかなか触れてこない花婿に痺れを切らしたのだろう。死は自ら衣装をたくし上げて、中に秘めていたそれを花婿の眼前へと差し出した。

「ッ…」

白くて可愛らしい小ぶりな尻を前にして、花婿のそれはビキィッ…とさらに張り詰めたようだった。今まで経験したことがないくらいに苦しく、そしてそれを解放する方法も生まれて初めてする行為だ。
花婿は「ふー…ふーッ…」と呼吸を荒くしながら、その小さな尻へとそっと両手で触れた。…人肌のあたたかさを感じるそれの柔らかさも確かめつつ、欲が滲み出たのかぐっと掴んで左右にくぱぁ…と開いた。

「は…」

死も期待しているかのように吐息を漏らしていた。
花婿がさらにその口を拡げてみると、かわいい色をした中がチラリと顔を覗かせた。まるでねだっているかのように、口をぱく…ぱく…とさせながらうごめいている。
初心の花婿は最初はほぐしたほうがいいのかと指を入れようとしたが、

「んん…いいから、はやく…」

色をたっぷりと含んだ死の声が聞こえ、ぴたりと手の動きを止めた。

「…もう入れて、いいのか?」

花婿がそう問うと、死はこちらを見ずにこくこく…と頷いていた。
なるべく声は出さないようにすると言っていたが、つい待ちきれずに催促をしてしまったようだ。そんな健気さを見せた死に、花婿は腹の奥がぐっ…と熱くなった。
もう一度 尻を掴んで左右にぐっと拡げると、力強く勃ち続けている自身の先をその口へと押し当てた。
入り口に熱くて硬いものを感じた死は、ねだるように腰を揺らしていた。
するとその動きで、花婿のそれは徐々に先のほうから死の中へと飲み込まれていく。

「ま、待てっ…!」

花婿はあせあせっといったん腰を引いた。
死の強い欲に花婿のほうが喰われそうになっていた。あくまで今 主導権を握っているのは、男役の自分であるということにしたいらしい。
死はシーツに顔を押しつけて、「う"~…」と不満そうなうなり声をあげている。なんだかいつもの死とは違う可愛らしさを感じ、花婿は少しだけ胸がきゅん…としたのだった。

「ふう……よし…。…入れるぞ…」

気を取り直した花婿は、死の口へと再び先をあてがった。そして、ぐ…っと腰を前に進めた。
ずぷずぷずぷ…と、花婿は死の中へと入っていく。

「…っ……」

死はシーツをぎゅっと握り、声を殺しながら大きなそれを中へと受け入れていた。押し寄せてくる快感に耐えながら、背中を仰け反らせている。

「はッ…」

花婿もまた、初めての感覚に下半身が溶けてしまいそうだった。外とは比べものにならないくらいに熱い死の中が、離すものかと貪欲に絡みついてきたのだ。気を抜けば、花婿はそれだけで達してしまいそうだった。
なんとかぐっと持ちこたえ、花婿は両手で尻を掴んで動かないよう固定した。

「はぁ…よし……動くぞ…」

その言葉に死がこくこく…と頷いているのを確認すると、花婿はゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
ずる…と中から抜いて、また中へと ずぷ…と入れる。それを繰り返していた。
花婿のそれの先から滲み出た液体と、死の中の液体が混ざり合い、ぐちゅ、ぐちゅ、と動くたびに水音も立ち始めた。その音にも花婿の興奮は高まり、また濡れて滑りやすくなったことで、花婿は腰の動きをどんどん速くしていった。

「はっ…はっ…… は…ッ」

律動で長い髪が垂れ落ちてくると、邪魔なそれをぐしゃっ…と乱雑に掻き上げる。熱のこもった部屋で動き続けているため、汗も周りに飛び散っていた。
しかしそれも気にならないほどに、花婿は夢中になって死を攻め立て続ける。
己の動きをどうやっても止めることができなかったのだ。

「んッ… ッ…」

死はガクガクと揺さぶられながらも、与えられる快楽には声を出さずに耐えていた。律儀にも最初の約束を守っているようだ。

「はぁッ…はぁッ…」

花婿はそんな死を後ろから眺めていた。

…今 花婿の目の前に広がっている光景。
長い髪を下ろした後ろ姿。声もあまり聞こえず、衣装を身に纏っていて後ろから突いているため性器も見えない。花婿以外の誰かがこの立場になったとしても、その立場の上で自分は女を抱いていると信じて疑わないだろう。
花婿もあたたかな家庭を築くため、いつかはこのような光景を見たり、このような行為をすることになるのだろうと、ぼんやり考えてみたこともあった。男として、女を抱くこと。それは人間として自然なことだ。
……でも。

「はぁ…ッ……死…」

今自分が抱いているのは、女でもなく、花嫁でもなく、死だ。
この存在への気持ちはまだよく分からないが…しかし、自分は今こうして死を求めているのだから、ひとまず初対面時のような最低ラインにはいないのだろう。

花婿は後ろから死の顔へと腕を伸ばし、指先で探りながら死の口内へとそっと指を差し入れた。
指で舌を触られた死は、「…?」となりながら「は…は…」と息を吐いている。

「…声…我慢しなくていい」

後ろから聞こえたその言葉に、死は少しだけ目を見開いた。

「……ふ」

そしてすぐに小さく笑った。

花婿は口内から指を引き抜くと、再び尻を掴んでがっちりと固定した。そしてひときわ強く腰を打ちつけた。

「あぁッ…」

びくんっと大きく体を震わせて、死は甘い嬌声を上げた。
その声は、花婿にこれ以上ないほどの興奮を与えたのだ。

「あッ ぁんッ」

ぐぼッぐぼッと激しく奥を突かれ、死はぎゅっと目を閉じて感じ入った声を上げ続けていた。花婿も同じく、雄の色を滲ませた険しい表情で、熱い吐息をこぼしている。
死の尻を掴んでいる花婿の手元は、汗でぬるぬると滑り始めていた。すると花婿は死の衣装の中へと手を潜ませて行き、今度は腰をがっちりと掴んだ。死の細い腰は花婿の大きな手で掴みやすく、激しい動きに体が逃げていかないよう力を込めて死を捕らえていた。死にもその強さが肌から伝わっているようで、喘ぎながらもその口元は弧を描いていた。
まるで恋人同士のセックスのようだった。ふたりはお互いを求め合っていたのだ。

「はぁッ…はぁッ…」

花婿は滴り落ちてくる汗を拭いながら、一心不乱に腰を振り続けた。
そうしていると、やがて下半身の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じた。花婿は死の腰を強く掴み、繋がっている部分の肌をぴったりと死に密着させる。

「出すぞ…ッ」

「んっ」

花婿は低く唸ると、死の奥に大量の精を吐き出した。

「あ、あっ…」

「くッ…」

勢いに押し戻されないように、花婿は死に腰をぐっと押し付けた。
…やがてすべて出し切ると、ふたりは少しの間 荒い呼吸を繰り返していた。

「はぁ…はぁ……は…」

花婿がぬぽ…と中から抜き取ると、その穴からは白濁とした液体がドロドロと流れ出てきた。

「…はぁ……」

花婿はドッと押し寄せてきた倦怠感に襲われながらその様子を見ていたことで、…ついに死とやったのか、と
ぼーっとしてきた頭で思うのだった。
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