死だけの秘密の話
それからしばらく経った新月の夜。
出番がない月は、いつもの無の空間ですやすやと眠っていた。大きな体を丸め、まるで死んでいるかのようにぴくりとも動かない。
「………」
そんな月を、死は無表情で見下ろしていた。
今も変わらず、何をしても月のはまったく反応しない。
もう何ヶ月 交われていないのだろう。今まで所構わず、主に死が交わりたいときに交わっていたので、今のこの状況は死にとって酷くつまらなかった。
この数ヶ月間、月と何もしなかったわけではない。
キスをしたり、前戯を教え込んだり、月のを口で可愛がったり、月に中を舐めさせたり。
しかし、それだけでは心も体も満たされないのだ。
最初は寛大に受け入れていたが、こうも変わらない日々が続くと、人間で言うところのいわゆるストレスが溜まっていく。
死は眠っている月を見て、いつかの日に寝ている月と交わろうとしたことを思い出す。
確かあのときは、眠っていても刺激を与えると、月のは反応していた。…あのときは、だが。
今目の前で眠っている月に刺激を与えたところで、反応するとは思えなかった。試そうとも思わない。
「…はあ」
死は気持ちが冷めていくのを感じた。自分で思っている以上に、この問題は深刻なようだ。
このまま話相手にもならない月と一緒にいるのはつまらない。
そう思った死は、月を置いてひとり外へと出て行った。
もうすぐで冬がやって来そうな季節の夜。
そんな夜に似つかわしくない、いつもの黒いローブ1枚に裸足という格好で、死はひとり人気のない教会の長椅子に座っていた。
白くて長い足を晒し、いつものように組んでいる。暗闇の中、憂いを帯びた表情でうつむいているその姿は、溜め息が出るほどの美しさだ。
人が簡単に触れてはいけないと思わせるような近寄り難ささえある。
「………」
長いまつ毛を伏せ、死は考える。
もしこのままずっと、月のが使い物にならなければどうしようか。
教会で麗人がひとり、悩ましい顔で男のアレについて悶々と考えているだなんて、誰が想像するだろうか。
高嶺の花のような存在の死だが、その頭の中はピンク一色である。大好きな色事でいっぱいだった。
月は特に死の好みの顔と体をしている。
今はその体と交われないとはいえ、手放すのは惜しい。
しかし、己の体も我慢の限界が近い。どうすればいい。
…そんなことを考えていると、コツコツという足音が聞こえた。
静寂に包まれた教会内には、その音だけが響き渡る。
誰だろう。こんな時間に。気になった死がそちらを振り返ると
「…わ。こんばんは」
そこにはひとりの男がいた。
誰もいないと思っていたのか、死がいたことに驚いている様子だった。
「…ここで何してるんですか?」
…夜の教会に佇む、黒衣装を着た正体不明の人物。
そんな 人ならざるもの に思えてもおかしくない死に、彼は恐れることなく問いかけた。
「……」
死は彼を見つめる。主に、顔や体を値踏みするようにじっくりと。
なかなかいい顔をしている彼。死の好みの部類だ。
体も月ほどではないが、男らしさのあるがっしりとした体型だった。
それらを確認した死は笑みを浮かべ、ようやく彼の問いかけに答える。
「少しだけ、考え事をね」
「あ、男性だったんですね」
「おや。女だと思っていたのか?期待を裏切ってしまって悪いね」
晒した足を組み替えながらくすくすと笑う死の言葉を聞いた彼は、少し慌てたようにブンブンと首を振る。
「いえそんな。どちらだろうとは思っていましたが、男性でも女性でも綺麗な人だなって」
あせあせっと彼は笑う。
下心もなく、ナンパというわけでもなさそうだった。
仮に死が女性の姿だったとしても、同じ反応をしていたのかもしれない。素直に死の容姿を褒めているようだ。
…そんな純粋そうな彼に少し興味を持った死。
「…君は何をしに?」
「教会内の見学です。朝と昼間は人が多いから、じっくり見れなくて」
「ほう」
「…あっ、すみません。考え事してる時に邪魔しちゃって。すぐ出て行きます」
そう言って、死のいる場所から離れようとした彼を
「……待て」
死は引き止めた。
「えっ?」
引き止められるとは思っていなかった彼は、歩き去ろうとした体勢のまま、きょとんとした顔で死を見た。
…今あの空間へ帰っても、月はまだ眠っている。しかし起きたところで、月のはきっと使えない。
今の月とのぬるい触れ合いだけでは、満足なんてできない。それはこの数ヶ月間で嫌というほど思い知った。
それなら、今 目の前にいる彼のはどうだろう。
彼も男だ。気持ちが昂ぶれば、それは大きく成長するはずだ。
死は彼を、男を興奮させられる自信があった。
好みに近い男とふたりきり。
この好機を逃すのは、もったいない。
「…こっちへおいで」
死は妖艶に微笑む。
…少しだけ、魔が差したのだ。
誰もを魅了するような笑みを向けられた彼は、まるで術にでもかかったかのように、頭がぼーっとして何も考えられなくなる。
死に誘われるまま、ゆっくりと近付いていく彼。やがて目の前まで来ると、心酔しているかのような目で死を見下ろした。
死は彼を見上げ、目と目が合うとさらに笑みを深めた。
右手を伸ばし、ズボン越しに彼のものへとそっと触れる。形や大きさを確かめるように、ぎゅっと軽く握り込んだ。…大きさは申し分ない。
敏感な部分を触られ続けている彼は、その体をビクビクと震えさせている。
そんな彼を見て、死は笑いながらたずねた。
「なあ。こういうことは初めてか?」
先ほどよりも強くそれを握る。
「わっ……は、はい…」
彼はまだ未経験のようだ。そのうぶな反応に、彼と月を重ね合わせる。
今の気持ちはこれまで何度も経験している。
月に初めてを教え込むときと同じ気持ちだった。
この真っ白な存在を、喰ってやりたいと。
「ふふ。かわいい子だね。…座りな」
彼の手を引っ張って、死はふわりと立ち上がる。
反対に座らせられた彼が頭にはてなを浮かべている隙に、死は彼の足の間へとその体を滑り込ませた。
ぺたりと地面に座り込んだ死は、彼を見上げて笑みを浮かべた。色を含んだその笑みに、彼の心臓はドキドキと激しくなっていく。
もっと興奮させようと、死は初心な彼に見せつけるようにズボンへと手をかけ、チャックを開けて中から彼のを取り出した。彼は「あ…」と声を出し、真っ赤な顔で目をうろうろと泳がせる。いけないことをしているという自覚はあるようだが、しかし死を本気で止めようとはしていなかった。
今にも反応しそうな彼のを直に握り込み、月のとは違うその感触や熱さを楽しむ死。
男のモノを見つめる表情は淫靡なものだった。
「お前のこれを使った私との遊び。…知りたいか?」
死は問いかけているようだが、最初から選択肢はひとつしか与えていない。
「は…っい…」
思惑通り、荒く息をしながら彼はコクリと頷いた。
その言葉を聞いた死は妖艶に微笑み、片手を動かし、彼のを上下に扱く。…するとそれは、喜んでいるかのように反応しはじめた。
だんだんと勃ち上がっていく、男の欲望とも言えるそれ。
久方ぶりに見たその光景、そしてこれから感じるであろう快楽への期待に、死の気持ちも高まっていく。
我慢できずに彼のを手で支えると、先にちゅっと口付けそのままぱくりと咥え込んだ。
「っ…!」
彼はひときわ大きくビクッと体を震わせた。死のあたたかい口内に包まれたそれも、一瞬で大きく成長した。
咥えた状態だとそのことがよく分かった。死はもっと成長させようと、月とは違う味がするそれを可愛がる。
じゅぼじゅぼと音を立てながら、死は激しく何度も頭を動かした。
「あぁっ…まっ 待ってくださっ…!」
彼は口淫をしてもらうのは初めてだというのに容赦がない。
それほど死は男を欲していた。
「んっ…ん…っ」
「はぁっ…はぁっ……あ…ッ」
「ん…」
…やがて彼のが完全に勃ち上がると、死は口からそれをぬぽっと取り出した。
死の唾液や彼の汁で濡れてそびえ立っているそれを見て、死は恍惚とした表情で「はぁ…」と息をこぼした。
…そんな死を、彼は息を整えながら見ていた。目の前の光景にゾクゾクと背中が震える。
今まで見たこともないほど綺麗な人が、完勃ちした男のモノをうっとりと眺めているその光景に。
「これで終わりではないよ。分かっているだろう…?」
すっと起ち上がった死は、衣装の前を開いて肌を晒した。暗闇の中、その白い肌が妖しくぼんやりと光る。
胸の膨らみはなく、そして股間には自分と同じモノ。その体を見て「やはりこの人は男性なんだ」と再確認した彼だが、もう今更そんなことはどうでもよかった。彼はすでに、美しい死の虜になっていた。
未経験の彼だが、性の知識がないわけではない。だからこれから死と何をするのかも、理解していた。
無知な月とは違って。
「あ…の…、えっと…」
「そう緊張しなくていい。…私に任せろ」
死は優しく微笑むと、彼の膝の上へと乗り上げた。彼の目の前には、ちらりと覗く胸の飾り。彼の興奮も高まる。
そのことに気付いていないふりをしながら、死は勃起した彼のを手で支えて、自分の口へと押し当てた。
当てただけでもその熱が伝わり、自然と口角が上がる。ずっと欲しくて欲しくて仕方がなかったものだ。
死は息を吐きながら、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「んッ…」
「あっ…!」
死と彼の声が重なる。
ずぷずぷずぷ…と彼を奥まで飲み込んでいく死は、その求めていた刺激に腰がびくびくと震えた。
そしてしっかりと味わうかのように、ぎゅうう…っと中にいる彼を締めつける。
「うっ すご…ッ!」
思わず彼の口からそんな言葉が飛び出た。
搾り取るような締めつけに、彼のが死の中で喜んでまた大きくなった。
死のそれもだんだんと勃ち上がってくる。
死はさらなる快楽を求め、彼の両肩にそれぞれの両手を置くと、腰を揺らして律動をはじめた。
ぐちゅっぐちゅっといういやらしい水音が、律動に合わせて鳴り響く。
「はぁっ…はぁっ」
「はぁっ は…っ気持ちいいっ…」
月とは違って、行為中に素直な気持ちを口に出す彼。それを聞いて、死は笑いながら腰を動かし続ける。
月との交わりとは当然違う、彼との交わり。
月がいるのに、月を裏切るような行為なのに、
まっとうな彼の初めてを自分の勝手で奪ったのに、
それにもかかわらず、死は心から楽しんでいるのだ。
「はぁっ…ははッ……なあっ」
肩に置いていた手を、彼の頬へと移動させる。両の手のひらで包み込むと、そのまま顔を近付け深く口付けた。
「んんっ ん…ッ」
「ん…っん」
キスをしながらも、腰を動かし続ける死。
長い長い口付けのあとに口を離すと、死と彼との間に つー… と糸が引いた。死の口の端からも、どちらのか分からない液体がたらりと垂れ落ちていた。
その酷く可愛らしくていやらしい姿、そしてとろんと蕩けた目で見つめられ、彼は限界を迎えそうになる。
このまま中に出してもいいのか。…少しだけ、彼の目がギラリと光る。
そんな彼を見て察した死は、ぎゅっと彼に抱きついた。そして、耳元で囁く。
「…中に欲しい」
「…ッ」
ゾク…ッと腹の中が熱くなった。
死からのおねだりを聞いた彼は、死を強く抱きしめる。
「はっ……出るっ…」
「んっ」
そして奥深くまで自身のを突き刺したまま、死の中へビュルビュルッと大量の精を吐き出した。死も彼に合わせるかのように、同時に精を吐き出す。それは彼の服に飛び散ったが、ふたりは気にすることもなかった。
腹の中に熱いものを注がれ、死は心も体もようやく満たされるような気がした。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ……はは」
死は密着していた体を離し、彼の頬を再び両手で包み込んだ。
深い青色の瞳が、彼をじっと見つめている。
彼も同じように死を見つめ返した。その目には熱がこもっている。
「どうだった?」
「…すごく…よかったです。貴方とこういうことができて、すごく嬉しい」
死の問いかけに、心からの思いを口に出す彼。
交わる前と比べると、心なしか少しだけ男の顔になったように見えた。
「それはよかった」
死は腰を上げて、中から彼のを抜き取ろうとする。…すると彼は、死の腰に両手を添えた。
ゆっくりと優しく撫で上げるが、その手付きにはどこか欲を感じた。
「…また会いたい。また、貴方を抱きたい」
「……ふふ」
死は顔を近付け、彼と触れるだけのキスをする。これが死からの返事だ。
死も彼との交わりは悪くなかった。長い間 月と交われなかったというのもあるが、なかなかに楽しめたのだ。
それに、まだまだ伸びしろのある彼を最後まで味わいたいという思いもあった。
月のが使えない間は、代わりに彼と交わろうか。月の次に好みである彼と。
死は残酷にもそう思う。
この逢瀬は、死と彼だけの秘密だ。
出番がない月は、いつもの無の空間ですやすやと眠っていた。大きな体を丸め、まるで死んでいるかのようにぴくりとも動かない。
「………」
そんな月を、死は無表情で見下ろしていた。
今も変わらず、何をしても月のはまったく反応しない。
もう何ヶ月 交われていないのだろう。今まで所構わず、主に死が交わりたいときに交わっていたので、今のこの状況は死にとって酷くつまらなかった。
この数ヶ月間、月と何もしなかったわけではない。
キスをしたり、前戯を教え込んだり、月のを口で可愛がったり、月に中を舐めさせたり。
しかし、それだけでは心も体も満たされないのだ。
最初は寛大に受け入れていたが、こうも変わらない日々が続くと、人間で言うところのいわゆるストレスが溜まっていく。
死は眠っている月を見て、いつかの日に寝ている月と交わろうとしたことを思い出す。
確かあのときは、眠っていても刺激を与えると、月のは反応していた。…あのときは、だが。
今目の前で眠っている月に刺激を与えたところで、反応するとは思えなかった。試そうとも思わない。
「…はあ」
死は気持ちが冷めていくのを感じた。自分で思っている以上に、この問題は深刻なようだ。
このまま話相手にもならない月と一緒にいるのはつまらない。
そう思った死は、月を置いてひとり外へと出て行った。
もうすぐで冬がやって来そうな季節の夜。
そんな夜に似つかわしくない、いつもの黒いローブ1枚に裸足という格好で、死はひとり人気のない教会の長椅子に座っていた。
白くて長い足を晒し、いつものように組んでいる。暗闇の中、憂いを帯びた表情でうつむいているその姿は、溜め息が出るほどの美しさだ。
人が簡単に触れてはいけないと思わせるような近寄り難ささえある。
「………」
長いまつ毛を伏せ、死は考える。
もしこのままずっと、月のが使い物にならなければどうしようか。
教会で麗人がひとり、悩ましい顔で男のアレについて悶々と考えているだなんて、誰が想像するだろうか。
高嶺の花のような存在の死だが、その頭の中はピンク一色である。大好きな色事でいっぱいだった。
月は特に死の好みの顔と体をしている。
今はその体と交われないとはいえ、手放すのは惜しい。
しかし、己の体も我慢の限界が近い。どうすればいい。
…そんなことを考えていると、コツコツという足音が聞こえた。
静寂に包まれた教会内には、その音だけが響き渡る。
誰だろう。こんな時間に。気になった死がそちらを振り返ると
「…わ。こんばんは」
そこにはひとりの男がいた。
誰もいないと思っていたのか、死がいたことに驚いている様子だった。
「…ここで何してるんですか?」
…夜の教会に佇む、黒衣装を着た正体不明の人物。
そんな 人ならざるもの に思えてもおかしくない死に、彼は恐れることなく問いかけた。
「……」
死は彼を見つめる。主に、顔や体を値踏みするようにじっくりと。
なかなかいい顔をしている彼。死の好みの部類だ。
体も月ほどではないが、男らしさのあるがっしりとした体型だった。
それらを確認した死は笑みを浮かべ、ようやく彼の問いかけに答える。
「少しだけ、考え事をね」
「あ、男性だったんですね」
「おや。女だと思っていたのか?期待を裏切ってしまって悪いね」
晒した足を組み替えながらくすくすと笑う死の言葉を聞いた彼は、少し慌てたようにブンブンと首を振る。
「いえそんな。どちらだろうとは思っていましたが、男性でも女性でも綺麗な人だなって」
あせあせっと彼は笑う。
下心もなく、ナンパというわけでもなさそうだった。
仮に死が女性の姿だったとしても、同じ反応をしていたのかもしれない。素直に死の容姿を褒めているようだ。
…そんな純粋そうな彼に少し興味を持った死。
「…君は何をしに?」
「教会内の見学です。朝と昼間は人が多いから、じっくり見れなくて」
「ほう」
「…あっ、すみません。考え事してる時に邪魔しちゃって。すぐ出て行きます」
そう言って、死のいる場所から離れようとした彼を
「……待て」
死は引き止めた。
「えっ?」
引き止められるとは思っていなかった彼は、歩き去ろうとした体勢のまま、きょとんとした顔で死を見た。
…今あの空間へ帰っても、月はまだ眠っている。しかし起きたところで、月のはきっと使えない。
今の月とのぬるい触れ合いだけでは、満足なんてできない。それはこの数ヶ月間で嫌というほど思い知った。
それなら、今 目の前にいる彼のはどうだろう。
彼も男だ。気持ちが昂ぶれば、それは大きく成長するはずだ。
死は彼を、男を興奮させられる自信があった。
好みに近い男とふたりきり。
この好機を逃すのは、もったいない。
「…こっちへおいで」
死は妖艶に微笑む。
…少しだけ、魔が差したのだ。
誰もを魅了するような笑みを向けられた彼は、まるで術にでもかかったかのように、頭がぼーっとして何も考えられなくなる。
死に誘われるまま、ゆっくりと近付いていく彼。やがて目の前まで来ると、心酔しているかのような目で死を見下ろした。
死は彼を見上げ、目と目が合うとさらに笑みを深めた。
右手を伸ばし、ズボン越しに彼のものへとそっと触れる。形や大きさを確かめるように、ぎゅっと軽く握り込んだ。…大きさは申し分ない。
敏感な部分を触られ続けている彼は、その体をビクビクと震えさせている。
そんな彼を見て、死は笑いながらたずねた。
「なあ。こういうことは初めてか?」
先ほどよりも強くそれを握る。
「わっ……は、はい…」
彼はまだ未経験のようだ。そのうぶな反応に、彼と月を重ね合わせる。
今の気持ちはこれまで何度も経験している。
月に初めてを教え込むときと同じ気持ちだった。
この真っ白な存在を、喰ってやりたいと。
「ふふ。かわいい子だね。…座りな」
彼の手を引っ張って、死はふわりと立ち上がる。
反対に座らせられた彼が頭にはてなを浮かべている隙に、死は彼の足の間へとその体を滑り込ませた。
ぺたりと地面に座り込んだ死は、彼を見上げて笑みを浮かべた。色を含んだその笑みに、彼の心臓はドキドキと激しくなっていく。
もっと興奮させようと、死は初心な彼に見せつけるようにズボンへと手をかけ、チャックを開けて中から彼のを取り出した。彼は「あ…」と声を出し、真っ赤な顔で目をうろうろと泳がせる。いけないことをしているという自覚はあるようだが、しかし死を本気で止めようとはしていなかった。
今にも反応しそうな彼のを直に握り込み、月のとは違うその感触や熱さを楽しむ死。
男のモノを見つめる表情は淫靡なものだった。
「お前のこれを使った私との遊び。…知りたいか?」
死は問いかけているようだが、最初から選択肢はひとつしか与えていない。
「は…っい…」
思惑通り、荒く息をしながら彼はコクリと頷いた。
その言葉を聞いた死は妖艶に微笑み、片手を動かし、彼のを上下に扱く。…するとそれは、喜んでいるかのように反応しはじめた。
だんだんと勃ち上がっていく、男の欲望とも言えるそれ。
久方ぶりに見たその光景、そしてこれから感じるであろう快楽への期待に、死の気持ちも高まっていく。
我慢できずに彼のを手で支えると、先にちゅっと口付けそのままぱくりと咥え込んだ。
「っ…!」
彼はひときわ大きくビクッと体を震わせた。死のあたたかい口内に包まれたそれも、一瞬で大きく成長した。
咥えた状態だとそのことがよく分かった。死はもっと成長させようと、月とは違う味がするそれを可愛がる。
じゅぼじゅぼと音を立てながら、死は激しく何度も頭を動かした。
「あぁっ…まっ 待ってくださっ…!」
彼は口淫をしてもらうのは初めてだというのに容赦がない。
それほど死は男を欲していた。
「んっ…ん…っ」
「はぁっ…はぁっ……あ…ッ」
「ん…」
…やがて彼のが完全に勃ち上がると、死は口からそれをぬぽっと取り出した。
死の唾液や彼の汁で濡れてそびえ立っているそれを見て、死は恍惚とした表情で「はぁ…」と息をこぼした。
…そんな死を、彼は息を整えながら見ていた。目の前の光景にゾクゾクと背中が震える。
今まで見たこともないほど綺麗な人が、完勃ちした男のモノをうっとりと眺めているその光景に。
「これで終わりではないよ。分かっているだろう…?」
すっと起ち上がった死は、衣装の前を開いて肌を晒した。暗闇の中、その白い肌が妖しくぼんやりと光る。
胸の膨らみはなく、そして股間には自分と同じモノ。その体を見て「やはりこの人は男性なんだ」と再確認した彼だが、もう今更そんなことはどうでもよかった。彼はすでに、美しい死の虜になっていた。
未経験の彼だが、性の知識がないわけではない。だからこれから死と何をするのかも、理解していた。
無知な月とは違って。
「あ…の…、えっと…」
「そう緊張しなくていい。…私に任せろ」
死は優しく微笑むと、彼の膝の上へと乗り上げた。彼の目の前には、ちらりと覗く胸の飾り。彼の興奮も高まる。
そのことに気付いていないふりをしながら、死は勃起した彼のを手で支えて、自分の口へと押し当てた。
当てただけでもその熱が伝わり、自然と口角が上がる。ずっと欲しくて欲しくて仕方がなかったものだ。
死は息を吐きながら、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「んッ…」
「あっ…!」
死と彼の声が重なる。
ずぷずぷずぷ…と彼を奥まで飲み込んでいく死は、その求めていた刺激に腰がびくびくと震えた。
そしてしっかりと味わうかのように、ぎゅうう…っと中にいる彼を締めつける。
「うっ すご…ッ!」
思わず彼の口からそんな言葉が飛び出た。
搾り取るような締めつけに、彼のが死の中で喜んでまた大きくなった。
死のそれもだんだんと勃ち上がってくる。
死はさらなる快楽を求め、彼の両肩にそれぞれの両手を置くと、腰を揺らして律動をはじめた。
ぐちゅっぐちゅっといういやらしい水音が、律動に合わせて鳴り響く。
「はぁっ…はぁっ」
「はぁっ は…っ気持ちいいっ…」
月とは違って、行為中に素直な気持ちを口に出す彼。それを聞いて、死は笑いながら腰を動かし続ける。
月との交わりとは当然違う、彼との交わり。
月がいるのに、月を裏切るような行為なのに、
まっとうな彼の初めてを自分の勝手で奪ったのに、
それにもかかわらず、死は心から楽しんでいるのだ。
「はぁっ…ははッ……なあっ」
肩に置いていた手を、彼の頬へと移動させる。両の手のひらで包み込むと、そのまま顔を近付け深く口付けた。
「んんっ ん…ッ」
「ん…っん」
キスをしながらも、腰を動かし続ける死。
長い長い口付けのあとに口を離すと、死と彼との間に つー… と糸が引いた。死の口の端からも、どちらのか分からない液体がたらりと垂れ落ちていた。
その酷く可愛らしくていやらしい姿、そしてとろんと蕩けた目で見つめられ、彼は限界を迎えそうになる。
このまま中に出してもいいのか。…少しだけ、彼の目がギラリと光る。
そんな彼を見て察した死は、ぎゅっと彼に抱きついた。そして、耳元で囁く。
「…中に欲しい」
「…ッ」
ゾク…ッと腹の中が熱くなった。
死からのおねだりを聞いた彼は、死を強く抱きしめる。
「はっ……出るっ…」
「んっ」
そして奥深くまで自身のを突き刺したまま、死の中へビュルビュルッと大量の精を吐き出した。死も彼に合わせるかのように、同時に精を吐き出す。それは彼の服に飛び散ったが、ふたりは気にすることもなかった。
腹の中に熱いものを注がれ、死は心も体もようやく満たされるような気がした。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ……はは」
死は密着していた体を離し、彼の頬を再び両手で包み込んだ。
深い青色の瞳が、彼をじっと見つめている。
彼も同じように死を見つめ返した。その目には熱がこもっている。
「どうだった?」
「…すごく…よかったです。貴方とこういうことができて、すごく嬉しい」
死の問いかけに、心からの思いを口に出す彼。
交わる前と比べると、心なしか少しだけ男の顔になったように見えた。
「それはよかった」
死は腰を上げて、中から彼のを抜き取ろうとする。…すると彼は、死の腰に両手を添えた。
ゆっくりと優しく撫で上げるが、その手付きにはどこか欲を感じた。
「…また会いたい。また、貴方を抱きたい」
「……ふふ」
死は顔を近付け、彼と触れるだけのキスをする。これが死からの返事だ。
死も彼との交わりは悪くなかった。長い間 月と交われなかったというのもあるが、なかなかに楽しめたのだ。
それに、まだまだ伸びしろのある彼を最後まで味わいたいという思いもあった。
月のが使えない間は、代わりに彼と交わろうか。月の次に好みである彼と。
死は残酷にもそう思う。
この逢瀬は、死と彼だけの秘密だ。