Kyrie ―哀れみたまえ―
8
こいつの“お世話係”になって10日…
最初にわかったことは、とにかくこいつが忙しい、ということだった。
朝は俺より早く起きて庭で武術の稽古。
それから朝食を食べて今日の家庭教師の講義の予習。
そして士官学校へ。
帰ってきたら何をする間もなく家庭教師が待ち構えていて夕食までは勉強。
夕食を食べた後は授業の復習。
その後武術の型をさらって身体を動かし、宿題をやって明日の予習。
一日のスケジュールをこなしたらようやく就寝。
いやぁ~一部のすきもない。
あのおっさんも少しは友達と遊べ、とか言ってたけど、この日常のどこにそんな暇があるんだろう…
もっとも、俺には都合が良かった。
ソウルイーターが動き出すこともないし。
正直、あの出会いから考えて、かなり警戒していたのだから。
とりあえずすることもないからだま~って側で眺めたり、気が向いたら外に出かけてふらふらしたり、庭で居眠りしていた。
だって、本当にすることがない。
家はがっちりグレミオさんに管理されてて手伝うことないし。
テオさまが手配してくれた家も昼間のうちにしっかり手が入って自分ですることがなにもない。
おかげですっかり暇をもてあましていた。
そんな俺に、ユエが気がついたのは月がめぐって俺がきたときには蕾だった桜がすっかり散ったころだった。
「………ねぇ、どうしてそんなところで寝てるの?」
・・・・・・俺が午後のあったかい日差しにぽかぽかとぬくまってここちよい眠りをむさぼってるところに声をかけんじゃねえ!といいたいのをじっと我慢してむくっとおきあがった。
「きもちいからに決まってんだろ」
「……気持ち、良い?」
「も~さいこ~」
草や花の良いにおいはするし、日差しがあったかいし、手入れされた草むらはやわらかくて寝心地がいいし、風はさわやかだし、これで昼寝しないでなにをするっていうんだ!
「風邪、ひくよ?」
心配でもしてるのか。
ちらっと格好をみれば士官学校からの帰りらしく制服を着ている。
これから家庭教師とのお勉強か。
その前に俺が庭に見えて寄った、それだけのことらしい。
「ひかねえよ」
いかにも心配そうな顔に短く答えてまた寝転んだ。
「・・・・・・隣に、いてもいい?」
「・・・・・・いいぜ」
あれから、こいつは俺に触れてくることをしない。
近くにいるときも、触れないように常に距離をとっている。
その距離に安堵して・・・すこし、寂しかった。
今も、俺の隣に、一人分の距離をあけて、座り込んだ。
ごろん、と横になって空を見上げたユエが、俺のほうをむいて笑う。
どきっとした。
それをごまかすみたいに、元のように転がって、空を見上げる。
「・・・空がきれいだね」
楽しそうな明るい声。
きっと、あの笑顔なんだろう。
とても楽しそうな、あの。
明るくて、優しい。
そして・・・子どものように無邪気に、笑う。
それが、まぶしくて・・・少し、うらやましい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
なんか変だ。
と、思ったら。
「・・・・・・寝てる?」
それはまあ健やかに。
あんまり時間もたってないはずなのに、見事にくーくーとお休みになっていた。
「おいおい・・・」
そんなにも疲れているのだろうか。
こんな短時間で眠ってしまえるほど。
友人であってほしい。
そうテオさまは言っていた。
たしかに、友人など作る暇もないだろう。
そして・・・友人と遊ぶ暇も。
俺と付き合うっていうことは、こいつにとって、元から少ない自分の時間をさらに削って…ひょっとしたら、予定を増やしているだけなんじゃないだろうか。
「・・・そこまでして付き合ってもらわなくて結構だ」
俺は、こいつと仲良くなりたくない。
いや・・・こいつと、じゃない。
誰とも、仲良くなんてなりたくない。
好意を抱かれるのも、持つのもごめんだ。
もう、誰かが死ぬのは・・・嫌なんだ・・・。
嫌なんだ・・・・・・
そして、その夜。
うっかりそのまま寝てしまった俺とユエは、予定をすっぽかしたことと身体が冷え切るまで庭で寝こけていたことでグレミオさんにこっぴどく怒られた・・・・・・・・・
こいつの“お世話係”になって10日…
最初にわかったことは、とにかくこいつが忙しい、ということだった。
朝は俺より早く起きて庭で武術の稽古。
それから朝食を食べて今日の家庭教師の講義の予習。
そして士官学校へ。
帰ってきたら何をする間もなく家庭教師が待ち構えていて夕食までは勉強。
夕食を食べた後は授業の復習。
その後武術の型をさらって身体を動かし、宿題をやって明日の予習。
一日のスケジュールをこなしたらようやく就寝。
いやぁ~一部のすきもない。
あのおっさんも少しは友達と遊べ、とか言ってたけど、この日常のどこにそんな暇があるんだろう…
もっとも、俺には都合が良かった。
ソウルイーターが動き出すこともないし。
正直、あの出会いから考えて、かなり警戒していたのだから。
とりあえずすることもないからだま~って側で眺めたり、気が向いたら外に出かけてふらふらしたり、庭で居眠りしていた。
だって、本当にすることがない。
家はがっちりグレミオさんに管理されてて手伝うことないし。
テオさまが手配してくれた家も昼間のうちにしっかり手が入って自分ですることがなにもない。
おかげですっかり暇をもてあましていた。
そんな俺に、ユエが気がついたのは月がめぐって俺がきたときには蕾だった桜がすっかり散ったころだった。
「………ねぇ、どうしてそんなところで寝てるの?」
・・・・・・俺が午後のあったかい日差しにぽかぽかとぬくまってここちよい眠りをむさぼってるところに声をかけんじゃねえ!といいたいのをじっと我慢してむくっとおきあがった。
「きもちいからに決まってんだろ」
「……気持ち、良い?」
「も~さいこ~」
草や花の良いにおいはするし、日差しがあったかいし、手入れされた草むらはやわらかくて寝心地がいいし、風はさわやかだし、これで昼寝しないでなにをするっていうんだ!
「風邪、ひくよ?」
心配でもしてるのか。
ちらっと格好をみれば士官学校からの帰りらしく制服を着ている。
これから家庭教師とのお勉強か。
その前に俺が庭に見えて寄った、それだけのことらしい。
「ひかねえよ」
いかにも心配そうな顔に短く答えてまた寝転んだ。
「・・・・・・隣に、いてもいい?」
「・・・・・・いいぜ」
あれから、こいつは俺に触れてくることをしない。
近くにいるときも、触れないように常に距離をとっている。
その距離に安堵して・・・すこし、寂しかった。
今も、俺の隣に、一人分の距離をあけて、座り込んだ。
ごろん、と横になって空を見上げたユエが、俺のほうをむいて笑う。
どきっとした。
それをごまかすみたいに、元のように転がって、空を見上げる。
「・・・空がきれいだね」
楽しそうな明るい声。
きっと、あの笑顔なんだろう。
とても楽しそうな、あの。
明るくて、優しい。
そして・・・子どものように無邪気に、笑う。
それが、まぶしくて・・・少し、うらやましい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
なんか変だ。
と、思ったら。
「・・・・・・寝てる?」
それはまあ健やかに。
あんまり時間もたってないはずなのに、見事にくーくーとお休みになっていた。
「おいおい・・・」
そんなにも疲れているのだろうか。
こんな短時間で眠ってしまえるほど。
友人であってほしい。
そうテオさまは言っていた。
たしかに、友人など作る暇もないだろう。
そして・・・友人と遊ぶ暇も。
俺と付き合うっていうことは、こいつにとって、元から少ない自分の時間をさらに削って…ひょっとしたら、予定を増やしているだけなんじゃないだろうか。
「・・・そこまでして付き合ってもらわなくて結構だ」
俺は、こいつと仲良くなりたくない。
いや・・・こいつと、じゃない。
誰とも、仲良くなんてなりたくない。
好意を抱かれるのも、持つのもごめんだ。
もう、誰かが死ぬのは・・・嫌なんだ・・・。
嫌なんだ・・・・・・
そして、その夜。
うっかりそのまま寝てしまった俺とユエは、予定をすっぽかしたことと身体が冷え切るまで庭で寝こけていたことでグレミオさんにこっぴどく怒られた・・・・・・・・・