1年生(親世代) 完結 (99話)
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―――――…僕が、化け物だったら…どうする…?
そんなこと、言われても。
よくわからない。
なんて、答えるわけにも行かなくて、どうもしないわよ、とあいまいに答えて逃げ帰ってきてしまった…。
参ったー…
「あれえ?サク?」
「…じぇーむず」
「こんな時間に図書室とは。どうかしたの?悪いものでも食べた?」
「失礼な」
「あはははは。だって、珍しいじゃないか」
「そう?」
「とても」
…心外だわ。これでも読書は大好きなのよ。
「…あら?」
「どうかした?」
「その本、どうしたの?」
「…ああ、ちょっと調べ物だよ」
「…狼人間と、その生態について?」
あたしが読み上げたタイトルに、ジェームズが笑う。
「この前調べたことだと、満足できなかったんだ」
「へえ…そう」
にっこりと笑い返して。
深くは、聞かない。
聞かなくてもわかる。
リーマスの、ために。
「ああ、あたし寮に戻らなくちゃ」
「ええ?本当に何しにきたんだい?」
「なんとなく、足が向いちゃったのよ」
ああ、そういうことってあるよね、と笑って。
じゃあ、とふったあたしの手を…ジェームズががっちりと捕らえていた。
「実は、君に内緒の話があるんだ」
「話?」
「そう」
にっこり笑うその顔からは、何を考えているか伺い知れない・・・わけじゃない。
真剣そうに、だけど、動揺もかすかにみせて。
…それが、ポーズだと…不幸なことに、あたしはわかっていた。
ある意味、ベラトリクスやルシウスよりも厄介な相手。
…そう。ダンブルドアと同じぐらいに。
「…ここじゃ、だめなのかしら?」
「うん。誰もいないところで話したいな」
「……そういう場所、知ってるのかしら」
「もちろん。サクと話すためにがんばって見つけたよ」
「そう」
本当に、それしか答えようがなかった。
痛いくらいにがっちりつかまれた腕を放す気配はないし。
「…いいわ。お付き合いしましょ」
何事もないかのように笑ったあたしの腕は、きりきりと痛みを訴えていた。
「ここで、いいかな?」
「ここは?」
「必要の部屋。僕はそう呼んでる」
ジェームズがそう言うと同時に、部屋に明かりが灯り、赤いソファが現れる。
「…必要の部屋?」
「さあ、どうぞ?」
ソファに座れば、紅茶を勧められて。
…おかしい。確か、本当に必要としている人がたどり着けるはずの部屋だったはず…。
それに、二度とたどり着けない人が多いとか…。
「それで、あたしに話って?」
「リーマスのことでね」
「うん?」
…なんて唐突な。
というか、直球勝負な。
「知ってるよね?」
「なにを?」
「腹の探り合いをする気はないんだ。僕はあいにくとスリザリンじゃないんで」
「そうね。あなたはグリフィンドールだわ」
スリザリンのそれとは、少し違う。
言うなれば…そう。信念。
グリフィンドールとスリザリンの違いなんて、おそらくあっさりとしたもの。
それは、勇気と己の信じる正義をもって行動するか…何物にも揺るがされない力をもって目的を達するか。
それぐらいなものだろう。
己の信念に反さない限りあらゆる手段を尽くして結果を求めるのは…おそらく同じ。
それが、スリザリンの場合は美学で。グリフィンドールの場合、正義とか勇気というものなのかもしれない。
ああ、後一つ違いがある。
困難にぶつかったとき、グリフィンドールは勇気を持って乗り越える。スリザリンはさらなる力を身につけてから乗り越える。
それぐらいか。
その観点で言うのなら、ジェームズは間違いなくグリフィンドールだろう。
「それで。知ってるね?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・これは、ごまかしても意味ないわね・・・。
確信してるみたいだし。
「知ってるわ」
「いつから?」
「会ったときから」
「それで?」
「別に」
あたしにとって、それは最初から知っていた厳然たる事実で。
それでどうこうする気もなければ、何か変化があるわけじゃない。
「なにも?」
「思わないし、する気もないの」
「…誰かに言ったりは」
「して何か利益があるの?」
「…そういう言い方は好きじゃない。まるでスリザリンじゃないか」
「…そうね。失言だったわ」
利益。
損得で割り切ることではないから。
損得というものに感情も入るというなら別だけれど。
好きだから助ける、付き合う、ということに損得はない。
「僕は、なんとかするつもりだよ」
「そう。いいんじゃない?」
そうでなくちゃ、困るのよ。
あたしの知ってる未来は、あなたたちがリーマスをなんとかしてくれるんだから。
「少なくとも、あなたが一番前向きで現実的ね」
「そう?…驚きすぎて、麻痺してるだけかもしれないよ?」
「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。とりあえず前を見据えて歩き出してるならいいんじゃないの?」
「…躓いて転んで引き返せなくなってたら助けてくれるのかい?」
「・・・・・・・・・・・それがいいたかったの」
暗号のような、そんな言葉遊びの中で、ひた、と首筋にナイフを突きつけられたような気分だった。
「・・・・・・・・・・いいわ。あなたが、そのことで助けを求める日が来たのなら…その理由が正当だとあたしが思えたなら…できる限りの協力をするわ」
本当は、もとよりそのつもりで。
あの時、ピーターに言った言葉は…あたしの決意でもあったから。
『その人のためにできることを探す』というのは、そういうことだ。
助けを求めてその手を伸ばしたのなら、しっかりと受け止める。
あなたが。あなたたちが求めるなら、たとえどんなことであっても、すぐに手を差し伸べられる準備をしておく。
心も、身体も、知識も。
あたしの全力をもってあなたたちの力となれるように。
あらゆる可能性を考えて。
今、あたしがあなたたちに何ができるのか、なにをすることが可能なのかを考えておくということ。
できないことをできると答えるのは嫌だし、単なる迷惑。
だから、できることとできないことはきっぱりと区別しなければならない。
傷を不用意に広げないために。
けれど、可能であることは100%の確立で成し遂げられるように。
そのために、あたしはずっと見続けてきた。
あなたたちがどうするのか。
どういう結論を出すのかを。
どんな感情と意思をもって決意するのかを。
だから。
「そのための努力も、力も、何一つ惜しむものはないわ」
まっすぐ見つめたヘイゼルの瞳には探るような色がくっきりと浮かんでいた。
それが…時を追って消えていき…安堵に変わるのを、あたしはただ黙って、ずっと見つめていた。
「ありがとう」
本当に、ほっとした顔で。
年相応の顔だった。
「あっさり答えられて、実はびっくりした」
「無駄な駆け引きはしない主義なの」
疲れるだけじゃないの。
まして、ジェームズ相手だもの。
「そう。…これから、よろしく」
「ええ。それじゃ」
あっさりと手を振って分かれて。
あたしは、自分の手に目を落とした。
赤く、くっきりと残ったその手の形を、なぞる。
ぴりっと、痛みが走った。
「馬鹿ね…こんなになるまで握ったら…あなたの手だって、痛いじゃない」
素手で人を傷つけるというのは、意外と傷つけたほうも痛みを持つものだ。
これほど力を込めていたのでは、ジェームズだって痛かっただろう。
それほど、あたしを捕まえておきたかったのか。
それは、味方と確認するためか…友達の危機に、不安を抱いていたのか。
協力者が欲しかったのか。
…その全てかもしれない。
ほんとに、得体の知れない子ども。
…ジェームズだけは、苦手よ。
―――――…僕が、化け物だったら…どうする…?
そんなこと、言われても。
よくわからない。
なんて、答えるわけにも行かなくて、どうもしないわよ、とあいまいに答えて逃げ帰ってきてしまった…。
参ったー…
「あれえ?サク?」
「…じぇーむず」
「こんな時間に図書室とは。どうかしたの?悪いものでも食べた?」
「失礼な」
「あはははは。だって、珍しいじゃないか」
「そう?」
「とても」
…心外だわ。これでも読書は大好きなのよ。
「…あら?」
「どうかした?」
「その本、どうしたの?」
「…ああ、ちょっと調べ物だよ」
「…狼人間と、その生態について?」
あたしが読み上げたタイトルに、ジェームズが笑う。
「この前調べたことだと、満足できなかったんだ」
「へえ…そう」
にっこりと笑い返して。
深くは、聞かない。
聞かなくてもわかる。
リーマスの、ために。
「ああ、あたし寮に戻らなくちゃ」
「ええ?本当に何しにきたんだい?」
「なんとなく、足が向いちゃったのよ」
ああ、そういうことってあるよね、と笑って。
じゃあ、とふったあたしの手を…ジェームズががっちりと捕らえていた。
「実は、君に内緒の話があるんだ」
「話?」
「そう」
にっこり笑うその顔からは、何を考えているか伺い知れない・・・わけじゃない。
真剣そうに、だけど、動揺もかすかにみせて。
…それが、ポーズだと…不幸なことに、あたしはわかっていた。
ある意味、ベラトリクスやルシウスよりも厄介な相手。
…そう。ダンブルドアと同じぐらいに。
「…ここじゃ、だめなのかしら?」
「うん。誰もいないところで話したいな」
「……そういう場所、知ってるのかしら」
「もちろん。サクと話すためにがんばって見つけたよ」
「そう」
本当に、それしか答えようがなかった。
痛いくらいにがっちりつかまれた腕を放す気配はないし。
「…いいわ。お付き合いしましょ」
何事もないかのように笑ったあたしの腕は、きりきりと痛みを訴えていた。
「ここで、いいかな?」
「ここは?」
「必要の部屋。僕はそう呼んでる」
ジェームズがそう言うと同時に、部屋に明かりが灯り、赤いソファが現れる。
「…必要の部屋?」
「さあ、どうぞ?」
ソファに座れば、紅茶を勧められて。
…おかしい。確か、本当に必要としている人がたどり着けるはずの部屋だったはず…。
それに、二度とたどり着けない人が多いとか…。
「それで、あたしに話って?」
「リーマスのことでね」
「うん?」
…なんて唐突な。
というか、直球勝負な。
「知ってるよね?」
「なにを?」
「腹の探り合いをする気はないんだ。僕はあいにくとスリザリンじゃないんで」
「そうね。あなたはグリフィンドールだわ」
スリザリンのそれとは、少し違う。
言うなれば…そう。信念。
グリフィンドールとスリザリンの違いなんて、おそらくあっさりとしたもの。
それは、勇気と己の信じる正義をもって行動するか…何物にも揺るがされない力をもって目的を達するか。
それぐらいなものだろう。
己の信念に反さない限りあらゆる手段を尽くして結果を求めるのは…おそらく同じ。
それが、スリザリンの場合は美学で。グリフィンドールの場合、正義とか勇気というものなのかもしれない。
ああ、後一つ違いがある。
困難にぶつかったとき、グリフィンドールは勇気を持って乗り越える。スリザリンはさらなる力を身につけてから乗り越える。
それぐらいか。
その観点で言うのなら、ジェームズは間違いなくグリフィンドールだろう。
「それで。知ってるね?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・これは、ごまかしても意味ないわね・・・。
確信してるみたいだし。
「知ってるわ」
「いつから?」
「会ったときから」
「それで?」
「別に」
あたしにとって、それは最初から知っていた厳然たる事実で。
それでどうこうする気もなければ、何か変化があるわけじゃない。
「なにも?」
「思わないし、する気もないの」
「…誰かに言ったりは」
「して何か利益があるの?」
「…そういう言い方は好きじゃない。まるでスリザリンじゃないか」
「…そうね。失言だったわ」
利益。
損得で割り切ることではないから。
損得というものに感情も入るというなら別だけれど。
好きだから助ける、付き合う、ということに損得はない。
「僕は、なんとかするつもりだよ」
「そう。いいんじゃない?」
そうでなくちゃ、困るのよ。
あたしの知ってる未来は、あなたたちがリーマスをなんとかしてくれるんだから。
「少なくとも、あなたが一番前向きで現実的ね」
「そう?…驚きすぎて、麻痺してるだけかもしれないよ?」
「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。とりあえず前を見据えて歩き出してるならいいんじゃないの?」
「…躓いて転んで引き返せなくなってたら助けてくれるのかい?」
「・・・・・・・・・・・それがいいたかったの」
暗号のような、そんな言葉遊びの中で、ひた、と首筋にナイフを突きつけられたような気分だった。
「・・・・・・・・・・いいわ。あなたが、そのことで助けを求める日が来たのなら…その理由が正当だとあたしが思えたなら…できる限りの協力をするわ」
本当は、もとよりそのつもりで。
あの時、ピーターに言った言葉は…あたしの決意でもあったから。
『その人のためにできることを探す』というのは、そういうことだ。
助けを求めてその手を伸ばしたのなら、しっかりと受け止める。
あなたが。あなたたちが求めるなら、たとえどんなことであっても、すぐに手を差し伸べられる準備をしておく。
心も、身体も、知識も。
あたしの全力をもってあなたたちの力となれるように。
あらゆる可能性を考えて。
今、あたしがあなたたちに何ができるのか、なにをすることが可能なのかを考えておくということ。
できないことをできると答えるのは嫌だし、単なる迷惑。
だから、できることとできないことはきっぱりと区別しなければならない。
傷を不用意に広げないために。
けれど、可能であることは100%の確立で成し遂げられるように。
そのために、あたしはずっと見続けてきた。
あなたたちがどうするのか。
どういう結論を出すのかを。
どんな感情と意思をもって決意するのかを。
だから。
「そのための努力も、力も、何一つ惜しむものはないわ」
まっすぐ見つめたヘイゼルの瞳には探るような色がくっきりと浮かんでいた。
それが…時を追って消えていき…安堵に変わるのを、あたしはただ黙って、ずっと見つめていた。
「ありがとう」
本当に、ほっとした顔で。
年相応の顔だった。
「あっさり答えられて、実はびっくりした」
「無駄な駆け引きはしない主義なの」
疲れるだけじゃないの。
まして、ジェームズ相手だもの。
「そう。…これから、よろしく」
「ええ。それじゃ」
あっさりと手を振って分かれて。
あたしは、自分の手に目を落とした。
赤く、くっきりと残ったその手の形を、なぞる。
ぴりっと、痛みが走った。
「馬鹿ね…こんなになるまで握ったら…あなたの手だって、痛いじゃない」
素手で人を傷つけるというのは、意外と傷つけたほうも痛みを持つものだ。
これほど力を込めていたのでは、ジェームズだって痛かっただろう。
それほど、あたしを捕まえておきたかったのか。
それは、味方と確認するためか…友達の危機に、不安を抱いていたのか。
協力者が欲しかったのか。
…その全てかもしれない。
ほんとに、得体の知れない子ども。
…ジェームズだけは、苦手よ。