1年生(親世代) 完結 (99話)
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「――――よって、狼人間と接触したときには…」
よどみなく続いていく講義を書き取りながら、あたしは、横目でリーマスの様子を伺った。
顔色が悪い。
あの天文学の授業から…ずいぶんと時間が過ぎていた。
一昨日は満月で。
リーマスは、いつもより酷い顔色でグリフィンドールに戻ってきた。
背中を丸め、ひっそりと片隅に腰を下ろして。
食い入るように教科書を凝視するリーマスにジェームズたちも心配そうに何度も視線を送っている。
「だが、忘れてはならないのは、彼らは満月の時以外は我々の親しい友人であるという点だ。ウィアウルフは得がたい隣人だということを忘れないように」
そう締めくくって、イーシャ教授が羊皮紙に向かう生徒の間を歩き出す。
「何か質問はあるだろうか?」
いつもながらわかりやすい授業だ。
だけれど。
「教授」
「どうぞ」
「隣人として生活していた狼人間が突如凶暴化した場合、対処する術はあるのでしょうか」
「・・・・・・それは、優秀な魔法使いであれば」
「常に隣人に襲われるかもしれないという恐怖に怯え、自分自身や親しい人が噛まれるという危険を冒すよりも狼人間を身近に置かないようにすることこそが正しい行動だと思うのですが」
イーシャ先生は苦笑するふうだった。
そう思うのが、今の魔法界なのだろうか。
そうして…リーマスは遠ざけられてきたのだろうか。
「危険なのは満月の夜だけだよ。ミス・クラッグ。危険なのは、満月の夜だけだ。その日をお互いに注意深く避ければ、人狼は恐れるべき生き物ではない」
しっかりと言い聞かせるように。
そういったイーシャ先生に、その女生徒は納得していないながらも、話はわかった、という顔で手を下ろした。
かりかりと羊皮紙にペンを走らせる音が響く中で、イーシャ先生はまっすぐに、そこに向かっていた。
「ミスター・ルーピン」
「・・・はい」
「大丈夫かい?」
そっと肩に置かれた手に、びくりとリーマスの身体が大きく震える。
「・・・・・・・・・・・・・・はい」
か細い、本当に耳を済ませてないと聞こえないような声。
「…もし、休んだほうがいいのなら…」
「大丈夫です!」
突然上がった悲鳴のような声に教室中が振り向いた。
「そうか。それならいいんだ」
いつもどおりの落ち着いた笑みを浮かべて教壇に戻ったイーシャ教授が授業の終わりと課題の発表をする。
ほっと教室の雰囲気が緩むと同時に立ち上がったリーマスが教室を飛び出るのが見えた。
…ほっとけないわよね。やっぱり。
「サク?」
「ごめん、ちょっと先にいくわ」
リリーたちに手をふって、急いでリーマスを追いかける。
その後姿は教室を出てすぐに捕らえられた。
右足を、引きずるようにして身体を丸めるように歩いている姿は、いつものリーマスと、ぜんぜん違う。
「リーマス、大丈夫?顔色悪いけど」
たぶん、さっきのイーシャ先生の問いもその顔色からだと皆が納得しているだろう。
朝から酷い顔色をしていたが、今はそれ以上だった。
「大丈夫」
「具合悪いなら、医務室に…」
落ち着かせよう、とその背中に手を触れた瞬間だった。
「さわるな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ」
すさまじい、音がした。
お腹に衝撃があった、と感じたのはその後で。
身体が壁に叩きつけられ、一瞬、息が出来なくなった。
目の前が白く染まる。
「あ・・・・・・・・サク・・・っ」
「い・・・・・っ」
痛い、という言葉をかろうじて飲み込むまでが、限界だった。
壁に張り付いた身体が床にずるずると崩れ落ちる。
「ご、ごめ・・・っ」
あ~…ますます顔色悪くしちゃったよ・・・
余計なショック与えてしまった…
「なんの音・・・サクラ!?」
「お前…っなにやって・・・!」
シリウスの腕が、あたしの腕をつかんで引き起こそうとした瞬間、激痛が走った。
どこが痛いのかわからない。
それぐらい、一瞬で痛みが走り抜けて。
思わず、うめいていた。
「・・・・・・・・ぁ・・」
リーマスが、一歩、後退った。
「リーマス?・・・まさか、お前か?」
「シリウス、ちが・・・っ」
伸ばそうとした腕が、痛みに落ちる。
「お前…何やってんだよ!サクラは友達じゃねえのか!?」
厳しい調子に、リーマスがうつむいたのが視界に入った。
だめ。やめて。
お願い。
「リーマス!」
前髪の間から覗く、怯えた顔。
いいから。
気にしなくて、いいから。
「リーマス!なんとかいえ・・・!」
「シリウス!それ以上言うな」
ぐい、とシリウスの肩をつかんでひっぱったジェームズの目が、ひた、とリーマスを見つめる。
「リーマス。どうしてこんなことに?説明してくれないか」
リーマスは。
ごめん、と小さく呟いて。
逃げるように、走っていった。
「リーマス!」
「シリウス!ジェームズ!」
大きな声を上げるというのは、身体に力が入る。
頭の芯まで走り抜けた痛みに、奥歯をかみ締めて。
「いいのよ、あたしも悪かったの」
不用意に声かけちゃったから
「でも、サクラ…」
「いいの」
きっぱりと言い切ったあたしに、何かを感じてくれたのだろうか。
「…そうか」
顔を見合わせたシリウスとジェームズがあたしに近寄った。
「大事になったわけじゃないわ。後であたしがリーマスと話すから。だから、今はいいの」
「…大事じゃないって…」
大事に、しないで。
「でも、怪我をしなかったのが不思議なぐらいの音だったよ?」
・・・・・・・・・・・・・・
「えーと…」
言いよどんだあたしに、ジェームズの顔に、みるみる緊張が走った。
「…してるの?」
リーマスを見送っていたシリウスが険しい顔で振り向く。
青い顔をしているピーターとリリーたち。
「…医務室、つれてってくれる?」
「な・・・・・・・っ」
困ったな~…大事にしたくなかったんだけど…
失敗失敗…
根性で何とかなると思ったんだけど…
「ちょっと、立てないみたい…」
「――――よって、狼人間と接触したときには…」
よどみなく続いていく講義を書き取りながら、あたしは、横目でリーマスの様子を伺った。
顔色が悪い。
あの天文学の授業から…ずいぶんと時間が過ぎていた。
一昨日は満月で。
リーマスは、いつもより酷い顔色でグリフィンドールに戻ってきた。
背中を丸め、ひっそりと片隅に腰を下ろして。
食い入るように教科書を凝視するリーマスにジェームズたちも心配そうに何度も視線を送っている。
「だが、忘れてはならないのは、彼らは満月の時以外は我々の親しい友人であるという点だ。ウィアウルフは得がたい隣人だということを忘れないように」
そう締めくくって、イーシャ教授が羊皮紙に向かう生徒の間を歩き出す。
「何か質問はあるだろうか?」
いつもながらわかりやすい授業だ。
だけれど。
「教授」
「どうぞ」
「隣人として生活していた狼人間が突如凶暴化した場合、対処する術はあるのでしょうか」
「・・・・・・それは、優秀な魔法使いであれば」
「常に隣人に襲われるかもしれないという恐怖に怯え、自分自身や親しい人が噛まれるという危険を冒すよりも狼人間を身近に置かないようにすることこそが正しい行動だと思うのですが」
イーシャ先生は苦笑するふうだった。
そう思うのが、今の魔法界なのだろうか。
そうして…リーマスは遠ざけられてきたのだろうか。
「危険なのは満月の夜だけだよ。ミス・クラッグ。危険なのは、満月の夜だけだ。その日をお互いに注意深く避ければ、人狼は恐れるべき生き物ではない」
しっかりと言い聞かせるように。
そういったイーシャ先生に、その女生徒は納得していないながらも、話はわかった、という顔で手を下ろした。
かりかりと羊皮紙にペンを走らせる音が響く中で、イーシャ先生はまっすぐに、そこに向かっていた。
「ミスター・ルーピン」
「・・・はい」
「大丈夫かい?」
そっと肩に置かれた手に、びくりとリーマスの身体が大きく震える。
「・・・・・・・・・・・・・・はい」
か細い、本当に耳を済ませてないと聞こえないような声。
「…もし、休んだほうがいいのなら…」
「大丈夫です!」
突然上がった悲鳴のような声に教室中が振り向いた。
「そうか。それならいいんだ」
いつもどおりの落ち着いた笑みを浮かべて教壇に戻ったイーシャ教授が授業の終わりと課題の発表をする。
ほっと教室の雰囲気が緩むと同時に立ち上がったリーマスが教室を飛び出るのが見えた。
…ほっとけないわよね。やっぱり。
「サク?」
「ごめん、ちょっと先にいくわ」
リリーたちに手をふって、急いでリーマスを追いかける。
その後姿は教室を出てすぐに捕らえられた。
右足を、引きずるようにして身体を丸めるように歩いている姿は、いつものリーマスと、ぜんぜん違う。
「リーマス、大丈夫?顔色悪いけど」
たぶん、さっきのイーシャ先生の問いもその顔色からだと皆が納得しているだろう。
朝から酷い顔色をしていたが、今はそれ以上だった。
「大丈夫」
「具合悪いなら、医務室に…」
落ち着かせよう、とその背中に手を触れた瞬間だった。
「さわるな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ」
すさまじい、音がした。
お腹に衝撃があった、と感じたのはその後で。
身体が壁に叩きつけられ、一瞬、息が出来なくなった。
目の前が白く染まる。
「あ・・・・・・・・サク・・・っ」
「い・・・・・っ」
痛い、という言葉をかろうじて飲み込むまでが、限界だった。
壁に張り付いた身体が床にずるずると崩れ落ちる。
「ご、ごめ・・・っ」
あ~…ますます顔色悪くしちゃったよ・・・
余計なショック与えてしまった…
「なんの音・・・サクラ!?」
「お前…っなにやって・・・!」
シリウスの腕が、あたしの腕をつかんで引き起こそうとした瞬間、激痛が走った。
どこが痛いのかわからない。
それぐらい、一瞬で痛みが走り抜けて。
思わず、うめいていた。
「・・・・・・・・ぁ・・」
リーマスが、一歩、後退った。
「リーマス?・・・まさか、お前か?」
「シリウス、ちが・・・っ」
伸ばそうとした腕が、痛みに落ちる。
「お前…何やってんだよ!サクラは友達じゃねえのか!?」
厳しい調子に、リーマスがうつむいたのが視界に入った。
だめ。やめて。
お願い。
「リーマス!」
前髪の間から覗く、怯えた顔。
いいから。
気にしなくて、いいから。
「リーマス!なんとかいえ・・・!」
「シリウス!それ以上言うな」
ぐい、とシリウスの肩をつかんでひっぱったジェームズの目が、ひた、とリーマスを見つめる。
「リーマス。どうしてこんなことに?説明してくれないか」
リーマスは。
ごめん、と小さく呟いて。
逃げるように、走っていった。
「リーマス!」
「シリウス!ジェームズ!」
大きな声を上げるというのは、身体に力が入る。
頭の芯まで走り抜けた痛みに、奥歯をかみ締めて。
「いいのよ、あたしも悪かったの」
不用意に声かけちゃったから
「でも、サクラ…」
「いいの」
きっぱりと言い切ったあたしに、何かを感じてくれたのだろうか。
「…そうか」
顔を見合わせたシリウスとジェームズがあたしに近寄った。
「大事になったわけじゃないわ。後であたしがリーマスと話すから。だから、今はいいの」
「…大事じゃないって…」
大事に、しないで。
「でも、怪我をしなかったのが不思議なぐらいの音だったよ?」
・・・・・・・・・・・・・・
「えーと…」
言いよどんだあたしに、ジェームズの顔に、みるみる緊張が走った。
「…してるの?」
リーマスを見送っていたシリウスが険しい顔で振り向く。
青い顔をしているピーターとリリーたち。
「…医務室、つれてってくれる?」
「な・・・・・・・っ」
困ったな~…大事にしたくなかったんだけど…
失敗失敗…
根性で何とかなると思ったんだけど…
「ちょっと、立てないみたい…」