1年生(親世代) 完結 (99話)
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7
真新しいストライプのシャツにカーディガンをひっかけて、ブルージーンズという格好で、あたしは大きなカートを押していた。
その胸元には、銀色に鈍く光るロケットと銀色の鍵が一緒にチェーンに揺れている。
大人の親指の爪ぐらいのサイズの、ハートのロケット。
アンティークシルバーのハートの蓋は、半分にやわらかい曲線を描く勾玉みたいな形のピンクの石がはまり、残りの部分に細かい模様が掘 り込まれている。裏にはなにかの紋章が掘り込んであった。
ふたを杖で叩けば蓋が開き、自由に荷物が出し入れできる。
容量は大体学校のトランク3つ分らしい。
今、中にはあたしが持ってきた本とかばん、小物、服なんかが入ってる。
手放してはいけないものだ。
これだけは。
「ここね~…」
思い切ってカートを押して壁に向かって走る。
「・・・・・・どうして魔法ってこう怖いものがたくさんあるのかしら…」
ぶ~つ~か~る~っと。
なんとか通り抜けた。
けど、あれ場所を間違えたら痛いなんてものじゃないわよね…。
そんなことを考えながらあげた視界に、赤が飛び込んできた。
「ホグワーツ特急……」
本当に綺麗な赤い列車だった。
そして…魔法使いたち。
映画で見た、そのままの光景。
ちょっと笑って、あたしはカートを押しながら列車に乗り込んだ。
「んと…開いてる場所……」
開いてるボックスがなかなかない。一人でいたい気分だったのだけど…誰かに一緒に入れてもらうしかないかしら。
「あ」
そこに、赤い髪の女の子がいた。
あの時杖を買っていた女の子。
間違いない。ぼんやり外を見ている後姿は、あの子のものだった。
「あの…」
「・・・?」
振り返った顔に、違和感を感じた。
「・・・・・・ここ、一緒してもいいかしら・・・?空いてるところがなくて」
「・・・・・・・・・どうぞ」
声が少し、枯れていた。
「どうしたの?なにか…」
「ごめんなさい。放っておいて」
取り付く島もない。こんな感じの子じゃなかったと思ったんだけど…。
ん?…あら?ひょっとして…
「あの、泣いてる、の…?」
「あなた、あたしにかかわってると穢れた血の仲間っていわれるわよ」
きっと向けてきた視線よりも、あたしは言われた言葉とその泣いていたとわかる赤くなった目元にぎょっとした。
「だ、誰が言ったの!?そんなこと!穢れた血ですって!?」
なんてことを言うのよ!どうせスリザリンだろうけど!!
「あのね、そんなこと言うひとなんてろくでもないわ!最悪の人ね、その人!」
「…一緒にいた子は、そういわれて出て行ったわ。あなたも出て行ったほうがいいんじゃない?」
「…・・・それで、泣いてたの?」
「…ここにきたのは間違いだったのかもしれないわ…妹が言ったとおりなのかも…」
「そんなことないわ!そんな馬鹿なこと言う人相手にしなくていいのよ」
「・・・・・・でも」
女の子が言いかけた言葉にかぶさったがらっと扉の開く音にふりかえったあたしの目に入ったのは、緑色のネクタイを締めた3人のホグワー ツ生だった。
たぶん、5年生以上。金髪の女の子と、黒髪の女の子。それから、銀髪の男の子だった。
「あらぁ。まだいたの?おお、いやだ。なにか臭ってきそうだわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
開口一番それですか。
「ここに居座れるという神経がわからないね。おとなしく帰ればいいものを」
「そうそう。穢れた血ごときにホグワーツの敷居は高くてよ」
口々に悪口雑言を並べ立てる上級生に女の子の顔が泣きそうにゆがんだ。
「ほらほら。帰りなさいよ。帰してあげてもいいのよ?」
「なぁに。窓から飛び降りればすぐだよ。命が助かったらせいぜい下働きになるぐらいは認めてあげよう」
上級生に囲まれるようにして立っている少年に、あたしは気づいた。
嫌そうに、ここにいるのがいたたまれないというように整った顔をゆがめて。
けれど、何もいえない。そんな顔で。
ぎりり、と握り締められた拳は白くなっていた。
「…シリウス…」
シリウス・ブラックだった。
そうか。こんな思いをしていたのか。
スリザリンの血統に生まれながらグリフィンドールに選ばれた少年。
それゆえに、家を飛び出した、ブラック家の長男。
名前を呼ばれたことに気がついたのか、はっとしたように顔をあげたシリウスが、気まずそうに視線をずらした。
まだ、子供なのだ。
なにもいえなくて…自分のこんな思いが間違っているのではないかと、それでもこんな行為を嫌悪する。
力ない自分にいらだつ。それしかできない、子供なのだ。
はっと気がついたら、女の子が泣き出していた。
しまったよ・・・シリウスに気をとられて忘れてたじゃないか・・・。
「ほらほら、何泣いてんのよ」
「誇りもなにもないのじゃなくて?」
ついにたまりかねたようにシリウスが口を開きかけた瞬間、あたしは先に口を開いていた。
気の短さなら負けません!!
「うるさいですわよ、先輩方」
「・・・なんですって?」
そこにいるのを初めて気がついたようにこっちを見た彼らにあたしは立ち上がって女の子との間に立ちはだかった。
掠めた視界の端に、シリウスが呆然としているのが映る。
「血統を自慢することしか出来ない薄汚い根性の能無しに貶められるいわれは誰にもないと思いますけれど?」
「な、なんですって!?あなた…っ」
「純粋な血統で価値があるのは犬猫だけよ」
「・・・・・・・・・・っっっ」
「あなた、先輩に向かって…!」
「あら。血統の次は年齢で勝負?ずいぶんと自慢できるものが少ないようですこと」
「あなたに関係ないでしょ!?それとも…」
ああ、と思い当たったように金髪の女性がいやらしい顔になった。
「あなたも穢れた血なのかしら…ならそうよね。かばい会うことしか出来ないんじゃなくて?」
「穢れた血なら穢れた血らしくおとなしく控えていればいいのよ」
・・・・・・なんだかばかばかしくなってきた…。
あんたたち、小学生じゃないんだから……。
…ん?あたしより年下かあ……
思わず深々とため息をついていた。
「なによ」
あ~あ…何を言われるのかびくびくしてるのまるわかりよ……。
「あたしが穢れた血だろうが誰が穢れた血だろうが関係ないじゃない。大体、純血種っての売りにしてなにか楽しいの?たまたま人間と結婚 できなかっただけでしょうが。ヨーロッパでは魔法使いは悪魔の使いとして迫害されてたものね。ただ単にマグルと共存することができなか ったコミュニケーション能力欠如した一族に生まれたってことじゃない。血筋をうけついで見事にコミュニケーション能力はないみたいだけ ど、それって自慢になるわけ?あたしは恥ずかしいことだと思うけど?」
馬鹿みたいに口をあけて顔を真っ赤にしてあえぐみたいに口をパクパクさせてる。
その横でシリウスははとが豆鉄砲くらったような顔で。
視界の端に入った女の子は今にも目がぽろっと落ちそうなぐらい目を丸くしていた。
「スリザリンの先輩方。これに懲りてあたしとあたしの友達に喧嘩売らないでくださいね?口では勝てないのわかったでしょ?まぁ、もっと も。狡猾が売りのスリザリンはきっと小さな子どもがお母さんに泣きながら言いつけるみたいに先生にあることないこと吹き込んで言いつけ っ子するんでしょうけど。所詮は自分の力で相手を撃退できないと回りに宣伝してるようなものですからみっともないことはやめてください ね?もしやったら、たかが一年生にここまで言われたのに自分を見直すこともできない誇りも矜持もない下等生物って言いふらしますよ?」
・・・・・・いい、すぎた、かな・・・・・・?
うわ~・・・で、できればぁ・・・杖、持たないでほしいなあ・・・
ここで魔法使っちゃうと・・・ほら~。罰せられるしぃ・・・。
「ナルシッサ!」
シリウスの声に、あたしは初めてその金髪のスリザリンが誰か知った。
ナルシッサ・ブラック。シリウスの従姉。…そして、将来のルシウス・マルフォイの奥方・・・・・・
「やぁ。ここはスリザリン日和ですか?」
「新入生相手にむきになるとは。純血の風上にも置けないね」
割って入った声にいらだたしげに振り返った金髪の女性と黒髪の女性がぎょっとしたように声をあげた。
「ポッター!!」
「マッキノン!」
おや。有名なんだ。
今日も髪をくしゃくしゃにした快活な笑顔の少年は2人の男の子を従えてドアに寄りかかるようにして立ちふさがっていた。
「杖なんかもってどうしたんです?特急は魔法は禁止と聞いていたのですが、そうではないのでしょうか?」
にっこり笑顔が怖いかもです。ジェームズさん。
「・・・なんでもないわよ」
「そうですか。それなら良かった」
「この子たちが上級生に失礼な口を聞くのでね。監督生として指導を・・・」
「・・・・・・・・・・・・監督生?」
だったのか。こいつら。
うっわ~・・・いつの時代もスリザリンってやつは・・・・・・。
「そうよ。今頃わびても遅いわ」
勝ち誇った様子に、あたしは確かめてみることにした。
「減点します?」
「もちろんよ」
「じゃあ、あたしスリザリンに入りますね」
ぷっと噴出したのはジェームズとその友達らしい少年。
「なんですって?」
「だって、あたしまだ寮決まってませんし。新入生ですから。減点したらどの寮から点数ひかれるんでしょう?」
ジェームズを真似して笑顔で言ってみる。
「・・・・・・・・・・っな、なら!罰則を…!」
「ナルシッサ!やめろ!」
「…シ、シリウス…」
「みっともない。仮にもブラック家の者が取り乱すとは」
冷徹な口調で割って入ったのは、一番小さなシリウスで。
「引き上げるぞ」
「で、でも…」
「ナルシッサ。ベラトリクス。聞こえなかったか?」
「・・・・・・・・・・・・」
二人の女性が顔を見合わせて、苦々しげに唇を噛んでからコンパートメントを出て行くシリウスに従った。
…なるほど。年より本家の長男ってわけ……。
最後に残ったのは、銀髪の男の子が一人。
たぶん、彼は、あたしの予想が正しければ。
「君の名前は?」
ぞっとするぐらい、感情のない冷たい声だった。
「サクラ・キリュウ」
「覚えておこう」
「光栄だわ。ルシウス・マルフォイ先輩?」
「こちらこそ」
ビンゴ。見事なアルカイックスマイルで出て行った彼を見送り、あたしはすわりこんで肺の空気を吐き出した。
うう…ちょっぴり緊張した……
ぽん、と肩に手が置かれる。
顔を上げたら、ジェームズが微笑んでいた。
「なかなか言うな」
「言い過ぎちゃったわ…。助けてくれてありがとう」
「いえいえ。のんびりしてたらなにやら隣からとても楽しげな会話が聞こえてきたのでね。まったく…これだから純血のスリザリンは…」
あ、と思い出したあたしは後ろを振り返った。
赤い髪の女の子。
泣いていたとわかる赤い目であたしをまっすぐに見つめていた。
「あ、ありがとう・・・・・・」
「あたしは・・・自分で腹立てただけよ・・・あなたも一緒ににらまれちゃったわね。ごめんなさい」
「ううん・・・・・・ほんとうに・・・ごめんなさい。わたし、あなたにあんな口きいたのに・・・」
「いいんだってば。あの人たちが言ったこと、気にしないで。魔法使いがみんなあんなふうに思ってるわけじゃないのよ」
「・・・・・・・・・うん」
きっと、コンパートメントに入ってすぐにあいつらが来て何かを言ったんだろう。
そして、皆にそう思われてるんだと思った。
そりゃ、思い込むわよね。
「何を言ったんだい?あいつら」
あたしと女の子の間に顔をつっこんできたのはジェームズじゃなくて、一緒にいた茶色の髪の男の子だった。
この子も新入生みたい。
「穢れた血って・・・・・・」
聴いた瞬間に、ジェームズたちがShit!と吐き出した。
「なんてことを言うんだ。あいつら!」
「まったくだ!そんなこと気にしちゃだめだよ?」
こくん、とうなずく女の子にようやくあたしは笑えた。
「それにしても、またあいつらが来るとうっとうしいな…そうだ!よければ、僕たちのコンパートメントに来ないかい?隣だし、6人なら一緒 に過ごせる。お菓子でも一緒に食べようよ!」
「・・・うん」
「サクラ、君もだ」
「ありがと。うれしいわ」
ジェームズと男の子たちがささっとあたしたちの荷物をおろす。
「さ、どうぞ。お姫様たち」
少しは楽しい時間がすごせそうだった。
真新しいストライプのシャツにカーディガンをひっかけて、ブルージーンズという格好で、あたしは大きなカートを押していた。
その胸元には、銀色に鈍く光るロケットと銀色の鍵が一緒にチェーンに揺れている。
大人の親指の爪ぐらいのサイズの、ハートのロケット。
アンティークシルバーのハートの蓋は、半分にやわらかい曲線を描く勾玉みたいな形のピンクの石がはまり、残りの部分に細かい模様が掘 り込まれている。裏にはなにかの紋章が掘り込んであった。
ふたを杖で叩けば蓋が開き、自由に荷物が出し入れできる。
容量は大体学校のトランク3つ分らしい。
今、中にはあたしが持ってきた本とかばん、小物、服なんかが入ってる。
手放してはいけないものだ。
これだけは。
「ここね~…」
思い切ってカートを押して壁に向かって走る。
「・・・・・・どうして魔法ってこう怖いものがたくさんあるのかしら…」
ぶ~つ~か~る~っと。
なんとか通り抜けた。
けど、あれ場所を間違えたら痛いなんてものじゃないわよね…。
そんなことを考えながらあげた視界に、赤が飛び込んできた。
「ホグワーツ特急……」
本当に綺麗な赤い列車だった。
そして…魔法使いたち。
映画で見た、そのままの光景。
ちょっと笑って、あたしはカートを押しながら列車に乗り込んだ。
「んと…開いてる場所……」
開いてるボックスがなかなかない。一人でいたい気分だったのだけど…誰かに一緒に入れてもらうしかないかしら。
「あ」
そこに、赤い髪の女の子がいた。
あの時杖を買っていた女の子。
間違いない。ぼんやり外を見ている後姿は、あの子のものだった。
「あの…」
「・・・?」
振り返った顔に、違和感を感じた。
「・・・・・・ここ、一緒してもいいかしら・・・?空いてるところがなくて」
「・・・・・・・・・どうぞ」
声が少し、枯れていた。
「どうしたの?なにか…」
「ごめんなさい。放っておいて」
取り付く島もない。こんな感じの子じゃなかったと思ったんだけど…。
ん?…あら?ひょっとして…
「あの、泣いてる、の…?」
「あなた、あたしにかかわってると穢れた血の仲間っていわれるわよ」
きっと向けてきた視線よりも、あたしは言われた言葉とその泣いていたとわかる赤くなった目元にぎょっとした。
「だ、誰が言ったの!?そんなこと!穢れた血ですって!?」
なんてことを言うのよ!どうせスリザリンだろうけど!!
「あのね、そんなこと言うひとなんてろくでもないわ!最悪の人ね、その人!」
「…一緒にいた子は、そういわれて出て行ったわ。あなたも出て行ったほうがいいんじゃない?」
「…・・・それで、泣いてたの?」
「…ここにきたのは間違いだったのかもしれないわ…妹が言ったとおりなのかも…」
「そんなことないわ!そんな馬鹿なこと言う人相手にしなくていいのよ」
「・・・・・・でも」
女の子が言いかけた言葉にかぶさったがらっと扉の開く音にふりかえったあたしの目に入ったのは、緑色のネクタイを締めた3人のホグワー ツ生だった。
たぶん、5年生以上。金髪の女の子と、黒髪の女の子。それから、銀髪の男の子だった。
「あらぁ。まだいたの?おお、いやだ。なにか臭ってきそうだわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
開口一番それですか。
「ここに居座れるという神経がわからないね。おとなしく帰ればいいものを」
「そうそう。穢れた血ごときにホグワーツの敷居は高くてよ」
口々に悪口雑言を並べ立てる上級生に女の子の顔が泣きそうにゆがんだ。
「ほらほら。帰りなさいよ。帰してあげてもいいのよ?」
「なぁに。窓から飛び降りればすぐだよ。命が助かったらせいぜい下働きになるぐらいは認めてあげよう」
上級生に囲まれるようにして立っている少年に、あたしは気づいた。
嫌そうに、ここにいるのがいたたまれないというように整った顔をゆがめて。
けれど、何もいえない。そんな顔で。
ぎりり、と握り締められた拳は白くなっていた。
「…シリウス…」
シリウス・ブラックだった。
そうか。こんな思いをしていたのか。
スリザリンの血統に生まれながらグリフィンドールに選ばれた少年。
それゆえに、家を飛び出した、ブラック家の長男。
名前を呼ばれたことに気がついたのか、はっとしたように顔をあげたシリウスが、気まずそうに視線をずらした。
まだ、子供なのだ。
なにもいえなくて…自分のこんな思いが間違っているのではないかと、それでもこんな行為を嫌悪する。
力ない自分にいらだつ。それしかできない、子供なのだ。
はっと気がついたら、女の子が泣き出していた。
しまったよ・・・シリウスに気をとられて忘れてたじゃないか・・・。
「ほらほら、何泣いてんのよ」
「誇りもなにもないのじゃなくて?」
ついにたまりかねたようにシリウスが口を開きかけた瞬間、あたしは先に口を開いていた。
気の短さなら負けません!!
「うるさいですわよ、先輩方」
「・・・なんですって?」
そこにいるのを初めて気がついたようにこっちを見た彼らにあたしは立ち上がって女の子との間に立ちはだかった。
掠めた視界の端に、シリウスが呆然としているのが映る。
「血統を自慢することしか出来ない薄汚い根性の能無しに貶められるいわれは誰にもないと思いますけれど?」
「な、なんですって!?あなた…っ」
「純粋な血統で価値があるのは犬猫だけよ」
「・・・・・・・・・・っっっ」
「あなた、先輩に向かって…!」
「あら。血統の次は年齢で勝負?ずいぶんと自慢できるものが少ないようですこと」
「あなたに関係ないでしょ!?それとも…」
ああ、と思い当たったように金髪の女性がいやらしい顔になった。
「あなたも穢れた血なのかしら…ならそうよね。かばい会うことしか出来ないんじゃなくて?」
「穢れた血なら穢れた血らしくおとなしく控えていればいいのよ」
・・・・・・なんだかばかばかしくなってきた…。
あんたたち、小学生じゃないんだから……。
…ん?あたしより年下かあ……
思わず深々とため息をついていた。
「なによ」
あ~あ…何を言われるのかびくびくしてるのまるわかりよ……。
「あたしが穢れた血だろうが誰が穢れた血だろうが関係ないじゃない。大体、純血種っての売りにしてなにか楽しいの?たまたま人間と結婚 できなかっただけでしょうが。ヨーロッパでは魔法使いは悪魔の使いとして迫害されてたものね。ただ単にマグルと共存することができなか ったコミュニケーション能力欠如した一族に生まれたってことじゃない。血筋をうけついで見事にコミュニケーション能力はないみたいだけ ど、それって自慢になるわけ?あたしは恥ずかしいことだと思うけど?」
馬鹿みたいに口をあけて顔を真っ赤にしてあえぐみたいに口をパクパクさせてる。
その横でシリウスははとが豆鉄砲くらったような顔で。
視界の端に入った女の子は今にも目がぽろっと落ちそうなぐらい目を丸くしていた。
「スリザリンの先輩方。これに懲りてあたしとあたしの友達に喧嘩売らないでくださいね?口では勝てないのわかったでしょ?まぁ、もっと も。狡猾が売りのスリザリンはきっと小さな子どもがお母さんに泣きながら言いつけるみたいに先生にあることないこと吹き込んで言いつけ っ子するんでしょうけど。所詮は自分の力で相手を撃退できないと回りに宣伝してるようなものですからみっともないことはやめてください ね?もしやったら、たかが一年生にここまで言われたのに自分を見直すこともできない誇りも矜持もない下等生物って言いふらしますよ?」
・・・・・・いい、すぎた、かな・・・・・・?
うわ~・・・で、できればぁ・・・杖、持たないでほしいなあ・・・
ここで魔法使っちゃうと・・・ほら~。罰せられるしぃ・・・。
「ナルシッサ!」
シリウスの声に、あたしは初めてその金髪のスリザリンが誰か知った。
ナルシッサ・ブラック。シリウスの従姉。…そして、将来のルシウス・マルフォイの奥方・・・・・・
「やぁ。ここはスリザリン日和ですか?」
「新入生相手にむきになるとは。純血の風上にも置けないね」
割って入った声にいらだたしげに振り返った金髪の女性と黒髪の女性がぎょっとしたように声をあげた。
「ポッター!!」
「マッキノン!」
おや。有名なんだ。
今日も髪をくしゃくしゃにした快活な笑顔の少年は2人の男の子を従えてドアに寄りかかるようにして立ちふさがっていた。
「杖なんかもってどうしたんです?特急は魔法は禁止と聞いていたのですが、そうではないのでしょうか?」
にっこり笑顔が怖いかもです。ジェームズさん。
「・・・なんでもないわよ」
「そうですか。それなら良かった」
「この子たちが上級生に失礼な口を聞くのでね。監督生として指導を・・・」
「・・・・・・・・・・・・監督生?」
だったのか。こいつら。
うっわ~・・・いつの時代もスリザリンってやつは・・・・・・。
「そうよ。今頃わびても遅いわ」
勝ち誇った様子に、あたしは確かめてみることにした。
「減点します?」
「もちろんよ」
「じゃあ、あたしスリザリンに入りますね」
ぷっと噴出したのはジェームズとその友達らしい少年。
「なんですって?」
「だって、あたしまだ寮決まってませんし。新入生ですから。減点したらどの寮から点数ひかれるんでしょう?」
ジェームズを真似して笑顔で言ってみる。
「・・・・・・・・・・っな、なら!罰則を…!」
「ナルシッサ!やめろ!」
「…シ、シリウス…」
「みっともない。仮にもブラック家の者が取り乱すとは」
冷徹な口調で割って入ったのは、一番小さなシリウスで。
「引き上げるぞ」
「で、でも…」
「ナルシッサ。ベラトリクス。聞こえなかったか?」
「・・・・・・・・・・・・」
二人の女性が顔を見合わせて、苦々しげに唇を噛んでからコンパートメントを出て行くシリウスに従った。
…なるほど。年より本家の長男ってわけ……。
最後に残ったのは、銀髪の男の子が一人。
たぶん、彼は、あたしの予想が正しければ。
「君の名前は?」
ぞっとするぐらい、感情のない冷たい声だった。
「サクラ・キリュウ」
「覚えておこう」
「光栄だわ。ルシウス・マルフォイ先輩?」
「こちらこそ」
ビンゴ。見事なアルカイックスマイルで出て行った彼を見送り、あたしはすわりこんで肺の空気を吐き出した。
うう…ちょっぴり緊張した……
ぽん、と肩に手が置かれる。
顔を上げたら、ジェームズが微笑んでいた。
「なかなか言うな」
「言い過ぎちゃったわ…。助けてくれてありがとう」
「いえいえ。のんびりしてたらなにやら隣からとても楽しげな会話が聞こえてきたのでね。まったく…これだから純血のスリザリンは…」
あ、と思い出したあたしは後ろを振り返った。
赤い髪の女の子。
泣いていたとわかる赤い目であたしをまっすぐに見つめていた。
「あ、ありがとう・・・・・・」
「あたしは・・・自分で腹立てただけよ・・・あなたも一緒ににらまれちゃったわね。ごめんなさい」
「ううん・・・・・・ほんとうに・・・ごめんなさい。わたし、あなたにあんな口きいたのに・・・」
「いいんだってば。あの人たちが言ったこと、気にしないで。魔法使いがみんなあんなふうに思ってるわけじゃないのよ」
「・・・・・・・・・うん」
きっと、コンパートメントに入ってすぐにあいつらが来て何かを言ったんだろう。
そして、皆にそう思われてるんだと思った。
そりゃ、思い込むわよね。
「何を言ったんだい?あいつら」
あたしと女の子の間に顔をつっこんできたのはジェームズじゃなくて、一緒にいた茶色の髪の男の子だった。
この子も新入生みたい。
「穢れた血って・・・・・・」
聴いた瞬間に、ジェームズたちがShit!と吐き出した。
「なんてことを言うんだ。あいつら!」
「まったくだ!そんなこと気にしちゃだめだよ?」
こくん、とうなずく女の子にようやくあたしは笑えた。
「それにしても、またあいつらが来るとうっとうしいな…そうだ!よければ、僕たちのコンパートメントに来ないかい?隣だし、6人なら一緒 に過ごせる。お菓子でも一緒に食べようよ!」
「・・・うん」
「サクラ、君もだ」
「ありがと。うれしいわ」
ジェームズと男の子たちがささっとあたしたちの荷物をおろす。
「さ、どうぞ。お姫様たち」
少しは楽しい時間がすごせそうだった。