1年生(親世代) 完結 (99話)
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早く早く早く。
気持ちが焦って、足が動かない。
早く。
救いを求めて必死で手を伸ばして。
息なんて、とっくに上がって、からからに乾いた喉に空気が、痛い。
足を止めたら、何かに追いつかれそうな、焦燥感。
怖い。怖くて、怖くて。
とまらないの…足が・・・
最後の階段を踏みしめた足が、たたらを踏んだ。
急に平坦になった道に、一瞬止まった足。
背筋に、なにかが滑り落ちたような気がした。
「・・・・・・・・・・・・っ」
落ち着け。落ち着け。大丈夫。なにも追ってきたり、しない。
一度止まった足が、凍りついたように床から動かなかった。
「―――――・・・ジェ・・ズ・・・」
聞こえた声に、上げた視線の向こうに。
その廊下の、向こうに。
黒い、髪が。
「うわっ」
見つけた瞬間に、走り出していた。
そして。
「サクラ・・・・・・!?」
突然飛びつかれてバランスを崩して座り込んだシリウスが、あたしをしがみつかせたまま、あたしの名前を呼ぶ。
「どうした?シリウス・・・サク!?」
ジェームズの声に、かたかたと、震えた歯が細かく音を立てた。
凍り付いていた身体が、動き始めた。
シリウスにしがみついた指が、肩が、止められないぐらい、大きく震える。
「ど、どうしたんだよ・・・」
「おい、なにがあった?」
肩に、暖かい手が置かれる。
その暖かさにほっとして。
とめたみたいに凍り付いていた息が、肺から全て吐き出された。
身体のあちこちが、自分のものではないかのように、コントロールが聞かない。
「サクラ!」
「サク、何か危険な目にあったなら・・・」
きしむ首をなんとか動かして、否定する。
危険な目に、あったわけではない。
あの場にいたルシウスひとりなら、おそらくなんとか逃れることが出来た。
このホグワーツでダンブルドアに声が届かないことなどありえないのだから。
けれど、もし。
本当に、あの場にリドルがいたら。
その恐怖が、あたしの身体を拘束させていた。
背中に、暖かいものが触れる。
「落ち着け。ほら。・・・な?守ってやるから」
シリウスの手が、あたしの背中をゆっくりと撫でていた。
ぎゅっと、頭を腕の中に封じ込められて。
目から、ぽろっと、涙がこぼれた。
「・・・ふぇ・・・っ」
「おいっ泣くなって!」
「わあっ」
二人が慌てふためいてるのがわかるのに。
体中の震えが止まらないのだ。
シリウスにしがみついた手が、そのローブの背中を握り締めた指が、こわばって力を抜くことすらできなかった。
「ジェームズ」
「わかった」
肩から手が離れて、急に、温度が下がったような気がした。
「俺がいるから。大丈夫」
ごめんね、といいたいのに。
なんでもないのだ、といいたいのに、喉が張り付いて、声がでないのだ。
「サクラ、聞こえるか?」
首を、縦に振る。
「俺のいうことはわかるか?」
もう一度、うなずく。
「よし。じゃあ、ちょっとだけ身体起こすぞ?」
正面からしがみつく形になっていたあたしにのしかかられていたシリウスがゆっくりと身体を起こして、あたしは、乗り上げていた膝の上に座る形になった。
「ご、め・・・・・・」
「無理にしゃべるな」
ぽん、と頭に手が置かれて、あたしの顔を、肩口に押し付ける。
「シリウス・・・」
「いいから。じっとしてろよ」
子どもを抱きしめるみたいに、ぎゅっと抱きしめられて。
少しずつ、腕の力が、身体の力が抜けていく。
背中をぽん、ぽん、と一定の速さでたたかれながら少しだけ、揺らされて。
まるで、昔…両親にあやされたときのように。
涙が、止まらなかった。
どれぐらい経ったのか、シリウスが、あたしの顔を覗き込む。
「落ち着いたか?」
「・・・うん・・・・・・」
やだ。鼻水と涙でぐじゃぐじゃ・・・
ハンカチでぎゅっと顔を押さえて、すすりあげる。
「・・・やだ・・・シリウスのローブ・・・」
あたしが顔つけてたところに、しみが出来てる。
「いいって。後で洗えばいいんだから」
「・・・自分で?」
シリウスが自分でしてるとこなんて、想像もできないよ。
「はいはい。好きなだけ笑ってろ」
つん、と前髪を引っ張られて。
きれいな、きれいな、笑顔だった。
「・・・シリウスって、笑うときれいだね」
「・・・・・・あのな。なんでそうなる・・・」
ぐうっと眉間にしわが出来ていく過程を見せられて、あたしは、笑う。
笑う毎に、心が軽くなっていく気がした。
「サクラ!」
「・・・ダンブルドア?」
え?ダンブルドア?
「何があった?」
「・・・なんでも」
「ないわけではないだろう・・・身体が・・・冷え切っている・・・」
指先をつかまれて、険しい目になったダンブルドアに、手を取られて立ち上がらされた。
・・・って、膝たってない・・・・・・
と、支えてくれてんの・・・やっぱシリウスか。
「・・・校長。送っていきます」
「いや。ミスター・ブラックは寮に戻りなさい。ミスター・ポッター。知らせてくれたことにお礼を言おう。マクゴナガル先生。二人についていってくだされ」
「わかりました。おいでなさい」
2人が振り返りながら去ったのを見届け、ダンブルドアが取り出した杖をひとふりした。
たった一瞬で、あたしは校長室にいた。
・・・便利だ。こんな便利な術あったのか。
というか他の人を一緒に運べる移動方法があるならなんでポートキーなんかあるんだ。
・・・あー。だめだ。まだ考え方がネガティブな方向に行ってる・・・。
「それで、何が起こった?」
「なんでもないわ」
なんでもない。あたしが、怖がっただけ。
居もしないものを、怖がっただけ。
「服従の術をかけられたな?」
「・・・はい?」
ふ、服従の術!?
ダンブルドアの、しわくちゃになった暖かい手があたしの頬や額に触れて、手をとって。
「こんなに体温が下がって…身体に影響を与える闇の術…」
・・・マルフォイよ。そんなものかけてたの・・・・・・
「あたしが、不注意だっただけだわ」
「だが、怖かっただろう?」
「・・・そうね。なぜあんなに怖かったのか、よくわからないぐらい怖かった」
考えてみれば、不思議だ。
出会ったこともない、脅威を目の当たりにしたわけでもない、ヴォルデモート卿の名前に、なぜあんなにもおびえたのか。
「今日はマダム・ポンフリーのところで休みなさい。フォークスをつけよう」
止まり木に休んでいた不死鳥が一声、鳴いた。
「・・・寮に戻りたい」
そのほうが安心できる。
「…フォークスは連れて行くな?」
「はい」
ぽん、とあたまをなでるように手をおかれる。
どうして、頭に感じる手の暖かさや重みは、こんなにも心地よいものなのかしら。
本当に、不思議。
これだけで、本当にほっとできる。
「さあ、きちんと術を解こう」
早く早く早く。
気持ちが焦って、足が動かない。
早く。
救いを求めて必死で手を伸ばして。
息なんて、とっくに上がって、からからに乾いた喉に空気が、痛い。
足を止めたら、何かに追いつかれそうな、焦燥感。
怖い。怖くて、怖くて。
とまらないの…足が・・・
最後の階段を踏みしめた足が、たたらを踏んだ。
急に平坦になった道に、一瞬止まった足。
背筋に、なにかが滑り落ちたような気がした。
「・・・・・・・・・・・・っ」
落ち着け。落ち着け。大丈夫。なにも追ってきたり、しない。
一度止まった足が、凍りついたように床から動かなかった。
「―――――・・・ジェ・・ズ・・・」
聞こえた声に、上げた視線の向こうに。
その廊下の、向こうに。
黒い、髪が。
「うわっ」
見つけた瞬間に、走り出していた。
そして。
「サクラ・・・・・・!?」
突然飛びつかれてバランスを崩して座り込んだシリウスが、あたしをしがみつかせたまま、あたしの名前を呼ぶ。
「どうした?シリウス・・・サク!?」
ジェームズの声に、かたかたと、震えた歯が細かく音を立てた。
凍り付いていた身体が、動き始めた。
シリウスにしがみついた指が、肩が、止められないぐらい、大きく震える。
「ど、どうしたんだよ・・・」
「おい、なにがあった?」
肩に、暖かい手が置かれる。
その暖かさにほっとして。
とめたみたいに凍り付いていた息が、肺から全て吐き出された。
身体のあちこちが、自分のものではないかのように、コントロールが聞かない。
「サクラ!」
「サク、何か危険な目にあったなら・・・」
きしむ首をなんとか動かして、否定する。
危険な目に、あったわけではない。
あの場にいたルシウスひとりなら、おそらくなんとか逃れることが出来た。
このホグワーツでダンブルドアに声が届かないことなどありえないのだから。
けれど、もし。
本当に、あの場にリドルがいたら。
その恐怖が、あたしの身体を拘束させていた。
背中に、暖かいものが触れる。
「落ち着け。ほら。・・・な?守ってやるから」
シリウスの手が、あたしの背中をゆっくりと撫でていた。
ぎゅっと、頭を腕の中に封じ込められて。
目から、ぽろっと、涙がこぼれた。
「・・・ふぇ・・・っ」
「おいっ泣くなって!」
「わあっ」
二人が慌てふためいてるのがわかるのに。
体中の震えが止まらないのだ。
シリウスにしがみついた手が、そのローブの背中を握り締めた指が、こわばって力を抜くことすらできなかった。
「ジェームズ」
「わかった」
肩から手が離れて、急に、温度が下がったような気がした。
「俺がいるから。大丈夫」
ごめんね、といいたいのに。
なんでもないのだ、といいたいのに、喉が張り付いて、声がでないのだ。
「サクラ、聞こえるか?」
首を、縦に振る。
「俺のいうことはわかるか?」
もう一度、うなずく。
「よし。じゃあ、ちょっとだけ身体起こすぞ?」
正面からしがみつく形になっていたあたしにのしかかられていたシリウスがゆっくりと身体を起こして、あたしは、乗り上げていた膝の上に座る形になった。
「ご、め・・・・・・」
「無理にしゃべるな」
ぽん、と頭に手が置かれて、あたしの顔を、肩口に押し付ける。
「シリウス・・・」
「いいから。じっとしてろよ」
子どもを抱きしめるみたいに、ぎゅっと抱きしめられて。
少しずつ、腕の力が、身体の力が抜けていく。
背中をぽん、ぽん、と一定の速さでたたかれながら少しだけ、揺らされて。
まるで、昔…両親にあやされたときのように。
涙が、止まらなかった。
どれぐらい経ったのか、シリウスが、あたしの顔を覗き込む。
「落ち着いたか?」
「・・・うん・・・・・・」
やだ。鼻水と涙でぐじゃぐじゃ・・・
ハンカチでぎゅっと顔を押さえて、すすりあげる。
「・・・やだ・・・シリウスのローブ・・・」
あたしが顔つけてたところに、しみが出来てる。
「いいって。後で洗えばいいんだから」
「・・・自分で?」
シリウスが自分でしてるとこなんて、想像もできないよ。
「はいはい。好きなだけ笑ってろ」
つん、と前髪を引っ張られて。
きれいな、きれいな、笑顔だった。
「・・・シリウスって、笑うときれいだね」
「・・・・・・あのな。なんでそうなる・・・」
ぐうっと眉間にしわが出来ていく過程を見せられて、あたしは、笑う。
笑う毎に、心が軽くなっていく気がした。
「サクラ!」
「・・・ダンブルドア?」
え?ダンブルドア?
「何があった?」
「・・・なんでも」
「ないわけではないだろう・・・身体が・・・冷え切っている・・・」
指先をつかまれて、険しい目になったダンブルドアに、手を取られて立ち上がらされた。
・・・って、膝たってない・・・・・・
と、支えてくれてんの・・・やっぱシリウスか。
「・・・校長。送っていきます」
「いや。ミスター・ブラックは寮に戻りなさい。ミスター・ポッター。知らせてくれたことにお礼を言おう。マクゴナガル先生。二人についていってくだされ」
「わかりました。おいでなさい」
2人が振り返りながら去ったのを見届け、ダンブルドアが取り出した杖をひとふりした。
たった一瞬で、あたしは校長室にいた。
・・・便利だ。こんな便利な術あったのか。
というか他の人を一緒に運べる移動方法があるならなんでポートキーなんかあるんだ。
・・・あー。だめだ。まだ考え方がネガティブな方向に行ってる・・・。
「それで、何が起こった?」
「なんでもないわ」
なんでもない。あたしが、怖がっただけ。
居もしないものを、怖がっただけ。
「服従の術をかけられたな?」
「・・・はい?」
ふ、服従の術!?
ダンブルドアの、しわくちゃになった暖かい手があたしの頬や額に触れて、手をとって。
「こんなに体温が下がって…身体に影響を与える闇の術…」
・・・マルフォイよ。そんなものかけてたの・・・・・・
「あたしが、不注意だっただけだわ」
「だが、怖かっただろう?」
「・・・そうね。なぜあんなに怖かったのか、よくわからないぐらい怖かった」
考えてみれば、不思議だ。
出会ったこともない、脅威を目の当たりにしたわけでもない、ヴォルデモート卿の名前に、なぜあんなにもおびえたのか。
「今日はマダム・ポンフリーのところで休みなさい。フォークスをつけよう」
止まり木に休んでいた不死鳥が一声、鳴いた。
「・・・寮に戻りたい」
そのほうが安心できる。
「…フォークスは連れて行くな?」
「はい」
ぽん、とあたまをなでるように手をおかれる。
どうして、頭に感じる手の暖かさや重みは、こんなにも心地よいものなのかしら。
本当に、不思議。
これだけで、本当にほっとできる。
「さあ、きちんと術を解こう」