1年生(親世代) 完結 (99話)
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38
う~ん・・・遅い。
ちっちっちっちと音を正確に刻み続ける大きな柱時計は、もうすぐ消灯の時間を示す。
待っていられるのも、あと少ししかない。
「困ったわね・・・」
せめて、待っていてあげたいのに。
一人で帰ってくるなんて、そんなこと、させたくない。
お帰りなさい、と迎えてあげたいから。
今のあたしには、アニメーガスとしてあなたと一緒にいる力がないから。
「何が困ったんだい?」
「・・・ウィーズリー先輩?」
「もうすぐ消灯だよ?」
暖かい笑顔を持った赤毛の先輩は、そういって、あたしの隣に座った。
「・・・リーマスが」
「ああ・・・帰ってこないね」
心配そうに入り口を見つめるアーサー・ウィーズリー。
その横顔を、あたしは黙って見つめた。
視線には気づいているだろうに、振り返らない。
「・・・なにか聞きたいことでも?」
ふいにこちらを見ることなくかけられた言葉に、あたしは驚きながら・・・はい、とこたえていた。
「・・・ええ。あります」
あたしは、まだまだ未熟な人間で。
こういうときにどうしていいのかわからない。
「・・・もし、ウィーズリー先輩が、友達の重大な秘密を知ってしまったら・・・どうします?」
「・・・・・・・・・・・・なにかを知ってしまったの?」
「そうです。その人が、隠したいと、知られたくないと思っている秘密を・・・あたしは知ってしまって」
きっと、知られることを恐れて。
もし、まだ・・・あの屋敷で一人で空を眺めているのだとしたら。
駆け寄って、抱きしめて。
狼人間であっても、いいのだ、と言いたい。
なにがあっても、手を振り払うことなどないから、と。
けれど、それを彼は本当に望んでいるのだろうか?
「どんな風に・・・接していいのかわからないんです」
「ふむ・・・僕なら・・・隠すな」
「え?」
「それを知っているということを隠す。そして・・・もし、おかしいな、と相手が感づいているようでも、隠す」
隠す?
・・・知っているんじゃないか、とおびえているかもしれないのに?
「隠しぬく。そして・・・もし。その人が、知っているのではないの、と確かめにきたら・・・知っていたよ、と告げるよ」
アーサー・ウィーズリーのやさしい目が、あたしを見る。
「きっと、それを知っていることをいえずに苦しんでいた僕を、相手は許してくれると思うから」
「苦しんでいた、ぼく・・?」
「そうだよ。人一人の秘密を抱えるということは、そんなにやさしいことじゃない。もし、相手の人生を変えてしまうほどのものなら、なおさらだろう?」
「・・・・・・そう、ですね」
「それを抱えて苦しむのだとしたら、それが・・・秘密を知ってしまった代償だと思う。だから、誰にも告げずに、だまって心の中にしまい続けるよ」
ああ、そうか。
そういうあり方もあるのだ。
秘密を知って、何かをするのではなく。
ただ、黙っている、という選択肢が。
それに必要なのは。
「・・・勇気と、強さか・・・」
黙りぬくだけの強さ。ただ一人で抱え込み、そして・・・相手にそれを認める勇気。
「われらが寮の特質だよ。・・・君の中にも、あふれている」
・・・・・・それはどうだろう。
あたしは、この寮にふさわしかったのか、知らない。
組み分け帽子の様子からして、ダンブルドアに何か言われてなければ、速攻で「スリザリン!」とでも叫んだのかもしれない。
「ありがとうございます」
「いえいえ。お役に立てて何よりですよ。君の言動は僕たちにまで鳴り響いてる」
「は?」
「曰く、教授たちをも打ち負かす論述。どんなときでも堂々として動じない風格。やるときにはやる思い切りの良さ。そして・・・われらが問題児たちをあっという間に手懐けた手腕」
「・・・・・・・・・・・・それは、いったい・・・」
いや。確かに喧嘩はしましたよ。魔法薬学教授と。
堂々としてって・・・あたしは動揺してたこと山のようにありますけど。
やるときにはやる・・・ん、まあこれはあってるかもしんない。
でも、問題児を手懐けるって・・・
「シリウス・ブラック。ジェームズ・ポッター。あの二人は、何かやらかすと思うよ」
「それはあたしも確信してます」
ていうかやったから。確実に。
そりゃあもういじめからいやがらせからいたずらから・・・
「まったく・・・僕たちが7年でよかったよ。これから先、寮杯から遠ざかる我が寮を見なくて済むからね」
「あら。寮杯、取るかもしれないじゃありませんか」
「だって、あの二人と来たら・・・」
「・・・なにやったんですか」
「部屋の中に尻尾爆発スクリュートをいれたんだよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
い、いつの間に・・・・・・
「おかげで寮は30点減点・・・昨日の夜は昨日の夜で20点減点・・・今日は今日で・・・」
・・・・・・あら?ひょっとしなくても・・・あの二人だけでかるーく50点はマイナスになってるの?
まだ学校始まって一ヶ月よ・・・?
「セブルス・スネイプと喧嘩するし」
「は?」
「リーマス・ルーピンが混血だから恥ずかしくてスリザリンの前に顔を出せなくなったんだろうなんて言われていて、その上穢れた血がホグワーツで学ぶなどおこがましい、足元をはいつくばっていればいいなんて言ったんだ」
「・・・セブルスが?」
セブちゃんがぁ!?
そんな根性ある人だったの!?
「そう。周りにいた連中もだったけれど・・・それでポッターとブラックがね・・・」
がたん、と小さな音がしたように聞こえた。
「ん?」
視線を向けた先に。
「・・・・・・・・・・・・・・・!リーマス!!」
「あ・・・・・っ」
しまった、というように口を押さえるアーサー・ウィーズリーにかまわず、あたしは走り出そうとしたリーマスの手をつかんだ。
細い。
折れてしまいそうなぐらい。
それに・・・・・・
「リーマス・・・どうしたの・・・?この怪我・・・」
あちこちについた傷は、ふさがりかけていたけれど。
まだ痛々しくぱっくりと口を開けた傷口がいくつかあって。
でも、その手が、あたしの腕を痛いぐらいの力でつかんだ。
「・・・今の話・・・」
恐怖すらにじんだ目は、何を思ったのだろう。
「・・・・・・君を侮辱された友人たちが怒った。それだけだ。ちょっとセブルス・スネイプを殴って大乱闘になったせいでスリザリンの監督生とマクゴナガルに盛大に減点されただけさ」
マクゴナガル?
「やったことはほめる!とおっしゃっていたが」
ほめるんかい!!
「・・・減点に、なったんですか・・・?僕のせいで・・・」
そんなことにだけは、なってほしくなかったのに、と小さくつぶやかれた言葉。
それが、胸に刺さったような気がした。
「リーマス・・・」
「僕は・・・これ以上、なににも迷惑をかけたくない・・・っ」
・・・んと。
「無理だと思うよ・・・」
「え・・・」
「シリウスも、ジェームズも、あなたのために怒ったのではないと思うから」
うん。それはないと思う。
友人のことで怒るっていうことは。
「あなたを馬鹿にされたと思って、あの人たちが不愉快だったから怒ったんじゃないかな?」
怒ったのは、自分のため。
その人を思う、自分の気持ちを傷つけられた痛みと。
それを聞いたら、リーマスが傷つくから・・・傷つけたくないという思いと。
「あなたを大切に思っているから、怒ったのよ・・・」
「だけど・・・」
いいつのろうとするリーマスに、あたしは心を決めた。
あんまり、説教くさいことは言いたくなかったし、彼の心を開くのはジェームズたちの役目だと思っていたけれど。
あたしの性分として、自分で自分を傷つけようとする人を見てみぬふりができないの。
ほんの、ほんの少しだけ。
あなたに、これを伝えたい。
「リーマス。あなたは、あなたに向けられる思いも・・・迷惑なの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
黙りこむリーマスの手をとって、あたしはその目を覗き込んだ。
きれいな、とび色の目。
瞳孔が・・・獣の瞳孔だった。
「ねえ、リーマス。誰かを大切に思うのは、自由だわ。シリウスとジェームズは、あなたを好きになった。だから、あなたのことを悪く言われて、怒ったの。それを・・・あなたが否定してしまったら・・・二人の、あなたを好き、という想いはどこにいってしまうのかしら」
「好きという・・・想い・・・?」
「そうよ。好きだから怒ったのに、それを迷惑といわれてしまったら・・・まるで好きであることを迷惑って言われたみたいに聞こえてしまうわ」
「・・・そんな・・・・・・ぼくは・・・」
リーマスの手を、軽く握り締めて、あたしはリーマスに笑いかけた。
「ね?迷惑、だなんていわないで。リーマスも、二人が好きでしょう?」
「・・・うん」
まるで、意識しない言葉が零れ落ちてしまったみたいに、自分の口を押さえたリーマスが、泣きそうな顔で、微笑った。
本当に、きれいな・・・今にも消えてしまいそうな、儚くて、切ない微笑みだった。
「よかった」
「うん・・・」
形がないと思ったものをつかんでしまった様な、戸惑った顔をしているリーマスが、かわいくて。
「・・・僕の出る幕はなさそうだな」
あら。ごめんなさい。出番取っちゃったかしら。
「ウィーズリー先輩・・・」
「さあ、消灯だ!部屋に戻った戻った」
おおっと。しまった。そんな時間かぁ・・・。
リーマスがあせった様子で部屋に消え、あたしも階段を駆け上ったところで、ふと、名前を呼ばれた。
「ミス・キリュウ」
「はい?」
こちらをみていたアーサー・ウィーズリーの目が、今までにないほど、鋭かった。
「・・・君は、なんだ?」
「なにって・・・」
「君を見ていると、不自然だ。11歳という外見と、中身がちぐはぐで・・・違和感を感じる」
「・・・・・・・・・・・・・気のせいですよ」
しまった・・・かな・・・・・・
まだ、20歳とは明かしたくない。
「・・・君がそういうなら、今は信じよう。だが、ひとつだけ聞かせてくれ」
「はい?」
「君は、ルーピンや、ブラックやポッターが好きか?」
そんなこと、考える必要もない。
「大好きです。もちろん・・・アーサー先輩も」
「・・・そうか。なら、いいんだ」
ふわりとその目が和らぐのをみて、ほっとした。
これからは気をつけなくちゃ。
こどもっぽいつもりだったんだけど。
「ああ、そうだ。さっきは、相談に乗ってくれてありがとうございました」
黙ってることは出来なかったけど。
秘密は、出来る限り抱えていよう。
いつか、リーマスに笑って話せる日まで。
「・・・おやすみ。よい夢を」
「おやすみなさい」
そして、今度こそ、部屋に戻って、あたしはベッドにダイビングした。
う~ん・・・遅い。
ちっちっちっちと音を正確に刻み続ける大きな柱時計は、もうすぐ消灯の時間を示す。
待っていられるのも、あと少ししかない。
「困ったわね・・・」
せめて、待っていてあげたいのに。
一人で帰ってくるなんて、そんなこと、させたくない。
お帰りなさい、と迎えてあげたいから。
今のあたしには、アニメーガスとしてあなたと一緒にいる力がないから。
「何が困ったんだい?」
「・・・ウィーズリー先輩?」
「もうすぐ消灯だよ?」
暖かい笑顔を持った赤毛の先輩は、そういって、あたしの隣に座った。
「・・・リーマスが」
「ああ・・・帰ってこないね」
心配そうに入り口を見つめるアーサー・ウィーズリー。
その横顔を、あたしは黙って見つめた。
視線には気づいているだろうに、振り返らない。
「・・・なにか聞きたいことでも?」
ふいにこちらを見ることなくかけられた言葉に、あたしは驚きながら・・・はい、とこたえていた。
「・・・ええ。あります」
あたしは、まだまだ未熟な人間で。
こういうときにどうしていいのかわからない。
「・・・もし、ウィーズリー先輩が、友達の重大な秘密を知ってしまったら・・・どうします?」
「・・・・・・・・・・・・なにかを知ってしまったの?」
「そうです。その人が、隠したいと、知られたくないと思っている秘密を・・・あたしは知ってしまって」
きっと、知られることを恐れて。
もし、まだ・・・あの屋敷で一人で空を眺めているのだとしたら。
駆け寄って、抱きしめて。
狼人間であっても、いいのだ、と言いたい。
なにがあっても、手を振り払うことなどないから、と。
けれど、それを彼は本当に望んでいるのだろうか?
「どんな風に・・・接していいのかわからないんです」
「ふむ・・・僕なら・・・隠すな」
「え?」
「それを知っているということを隠す。そして・・・もし、おかしいな、と相手が感づいているようでも、隠す」
隠す?
・・・知っているんじゃないか、とおびえているかもしれないのに?
「隠しぬく。そして・・・もし。その人が、知っているのではないの、と確かめにきたら・・・知っていたよ、と告げるよ」
アーサー・ウィーズリーのやさしい目が、あたしを見る。
「きっと、それを知っていることをいえずに苦しんでいた僕を、相手は許してくれると思うから」
「苦しんでいた、ぼく・・?」
「そうだよ。人一人の秘密を抱えるということは、そんなにやさしいことじゃない。もし、相手の人生を変えてしまうほどのものなら、なおさらだろう?」
「・・・・・・そう、ですね」
「それを抱えて苦しむのだとしたら、それが・・・秘密を知ってしまった代償だと思う。だから、誰にも告げずに、だまって心の中にしまい続けるよ」
ああ、そうか。
そういうあり方もあるのだ。
秘密を知って、何かをするのではなく。
ただ、黙っている、という選択肢が。
それに必要なのは。
「・・・勇気と、強さか・・・」
黙りぬくだけの強さ。ただ一人で抱え込み、そして・・・相手にそれを認める勇気。
「われらが寮の特質だよ。・・・君の中にも、あふれている」
・・・・・・それはどうだろう。
あたしは、この寮にふさわしかったのか、知らない。
組み分け帽子の様子からして、ダンブルドアに何か言われてなければ、速攻で「スリザリン!」とでも叫んだのかもしれない。
「ありがとうございます」
「いえいえ。お役に立てて何よりですよ。君の言動は僕たちにまで鳴り響いてる」
「は?」
「曰く、教授たちをも打ち負かす論述。どんなときでも堂々として動じない風格。やるときにはやる思い切りの良さ。そして・・・われらが問題児たちをあっという間に手懐けた手腕」
「・・・・・・・・・・・・それは、いったい・・・」
いや。確かに喧嘩はしましたよ。魔法薬学教授と。
堂々としてって・・・あたしは動揺してたこと山のようにありますけど。
やるときにはやる・・・ん、まあこれはあってるかもしんない。
でも、問題児を手懐けるって・・・
「シリウス・ブラック。ジェームズ・ポッター。あの二人は、何かやらかすと思うよ」
「それはあたしも確信してます」
ていうかやったから。確実に。
そりゃあもういじめからいやがらせからいたずらから・・・
「まったく・・・僕たちが7年でよかったよ。これから先、寮杯から遠ざかる我が寮を見なくて済むからね」
「あら。寮杯、取るかもしれないじゃありませんか」
「だって、あの二人と来たら・・・」
「・・・なにやったんですか」
「部屋の中に尻尾爆発スクリュートをいれたんだよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
い、いつの間に・・・・・・
「おかげで寮は30点減点・・・昨日の夜は昨日の夜で20点減点・・・今日は今日で・・・」
・・・・・・あら?ひょっとしなくても・・・あの二人だけでかるーく50点はマイナスになってるの?
まだ学校始まって一ヶ月よ・・・?
「セブルス・スネイプと喧嘩するし」
「は?」
「リーマス・ルーピンが混血だから恥ずかしくてスリザリンの前に顔を出せなくなったんだろうなんて言われていて、その上穢れた血がホグワーツで学ぶなどおこがましい、足元をはいつくばっていればいいなんて言ったんだ」
「・・・セブルスが?」
セブちゃんがぁ!?
そんな根性ある人だったの!?
「そう。周りにいた連中もだったけれど・・・それでポッターとブラックがね・・・」
がたん、と小さな音がしたように聞こえた。
「ん?」
視線を向けた先に。
「・・・・・・・・・・・・・・・!リーマス!!」
「あ・・・・・っ」
しまった、というように口を押さえるアーサー・ウィーズリーにかまわず、あたしは走り出そうとしたリーマスの手をつかんだ。
細い。
折れてしまいそうなぐらい。
それに・・・・・・
「リーマス・・・どうしたの・・・?この怪我・・・」
あちこちについた傷は、ふさがりかけていたけれど。
まだ痛々しくぱっくりと口を開けた傷口がいくつかあって。
でも、その手が、あたしの腕を痛いぐらいの力でつかんだ。
「・・・今の話・・・」
恐怖すらにじんだ目は、何を思ったのだろう。
「・・・・・・君を侮辱された友人たちが怒った。それだけだ。ちょっとセブルス・スネイプを殴って大乱闘になったせいでスリザリンの監督生とマクゴナガルに盛大に減点されただけさ」
マクゴナガル?
「やったことはほめる!とおっしゃっていたが」
ほめるんかい!!
「・・・減点に、なったんですか・・・?僕のせいで・・・」
そんなことにだけは、なってほしくなかったのに、と小さくつぶやかれた言葉。
それが、胸に刺さったような気がした。
「リーマス・・・」
「僕は・・・これ以上、なににも迷惑をかけたくない・・・っ」
・・・んと。
「無理だと思うよ・・・」
「え・・・」
「シリウスも、ジェームズも、あなたのために怒ったのではないと思うから」
うん。それはないと思う。
友人のことで怒るっていうことは。
「あなたを馬鹿にされたと思って、あの人たちが不愉快だったから怒ったんじゃないかな?」
怒ったのは、自分のため。
その人を思う、自分の気持ちを傷つけられた痛みと。
それを聞いたら、リーマスが傷つくから・・・傷つけたくないという思いと。
「あなたを大切に思っているから、怒ったのよ・・・」
「だけど・・・」
いいつのろうとするリーマスに、あたしは心を決めた。
あんまり、説教くさいことは言いたくなかったし、彼の心を開くのはジェームズたちの役目だと思っていたけれど。
あたしの性分として、自分で自分を傷つけようとする人を見てみぬふりができないの。
ほんの、ほんの少しだけ。
あなたに、これを伝えたい。
「リーマス。あなたは、あなたに向けられる思いも・・・迷惑なの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
黙りこむリーマスの手をとって、あたしはその目を覗き込んだ。
きれいな、とび色の目。
瞳孔が・・・獣の瞳孔だった。
「ねえ、リーマス。誰かを大切に思うのは、自由だわ。シリウスとジェームズは、あなたを好きになった。だから、あなたのことを悪く言われて、怒ったの。それを・・・あなたが否定してしまったら・・・二人の、あなたを好き、という想いはどこにいってしまうのかしら」
「好きという・・・想い・・・?」
「そうよ。好きだから怒ったのに、それを迷惑といわれてしまったら・・・まるで好きであることを迷惑って言われたみたいに聞こえてしまうわ」
「・・・そんな・・・・・・ぼくは・・・」
リーマスの手を、軽く握り締めて、あたしはリーマスに笑いかけた。
「ね?迷惑、だなんていわないで。リーマスも、二人が好きでしょう?」
「・・・うん」
まるで、意識しない言葉が零れ落ちてしまったみたいに、自分の口を押さえたリーマスが、泣きそうな顔で、微笑った。
本当に、きれいな・・・今にも消えてしまいそうな、儚くて、切ない微笑みだった。
「よかった」
「うん・・・」
形がないと思ったものをつかんでしまった様な、戸惑った顔をしているリーマスが、かわいくて。
「・・・僕の出る幕はなさそうだな」
あら。ごめんなさい。出番取っちゃったかしら。
「ウィーズリー先輩・・・」
「さあ、消灯だ!部屋に戻った戻った」
おおっと。しまった。そんな時間かぁ・・・。
リーマスがあせった様子で部屋に消え、あたしも階段を駆け上ったところで、ふと、名前を呼ばれた。
「ミス・キリュウ」
「はい?」
こちらをみていたアーサー・ウィーズリーの目が、今までにないほど、鋭かった。
「・・・君は、なんだ?」
「なにって・・・」
「君を見ていると、不自然だ。11歳という外見と、中身がちぐはぐで・・・違和感を感じる」
「・・・・・・・・・・・・・気のせいですよ」
しまった・・・かな・・・・・・
まだ、20歳とは明かしたくない。
「・・・君がそういうなら、今は信じよう。だが、ひとつだけ聞かせてくれ」
「はい?」
「君は、ルーピンや、ブラックやポッターが好きか?」
そんなこと、考える必要もない。
「大好きです。もちろん・・・アーサー先輩も」
「・・・そうか。なら、いいんだ」
ふわりとその目が和らぐのをみて、ほっとした。
これからは気をつけなくちゃ。
こどもっぽいつもりだったんだけど。
「ああ、そうだ。さっきは、相談に乗ってくれてありがとうございました」
黙ってることは出来なかったけど。
秘密は、出来る限り抱えていよう。
いつか、リーマスに笑って話せる日まで。
「・・・おやすみ。よい夢を」
「おやすみなさい」
そして、今度こそ、部屋に戻って、あたしはベッドにダイビングした。