1年生(親世代) 完結 (99話)
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36
「ねえ、サク。ハンドクリーム貸して~」
「あ、わたしリップクリーム!」
「はいは~い」
マギーとアリスの手にご要望のものを渡して、あたしは大きく伸びをした。
「ホントにサクのこれ、手がきれいになるのよねえ」
「そうそう。リップクリームも!」
時折借りに来ていたんだけど、二人とあまり口きかなくなってからお互いに貸し借りしにくくて、ずっとつかってなかったのよね。二人とも。
「ふっふっふ」
突然リリーがベッドで肩を震わせている。
「なによ、リリー」
「じゃーん!!」
「・・・なにそれ」
銀色の小さな丸いケース。それは。
「サクにもらったリップクリームよ」
「え~!!!!」
あ、そっか。あげたわね。
携帯できるように小さな缶のケースに入れていたリップクリームをみてリリーがほしがったからあげたんだったわ。
「いいなぁ!!」
「うらやましいでしょ」
・・・リリー・・・・今日はやけにはじけてるわね・・・
「サク!私にもちょうだい!」
「わたしにも~!!」
「えと・・・いいけど、ケースがないのよ・・・」
なくしたときの予備のケースと使ってるやつの2個しかなかったから。
リリーが使ってるのは予備のケース。
「どうしよう・・・」
「あ!先輩に頼んでホグズミードで買ってきてもらう!?」
「いいわね!」
・・・その手があるかぁ・・・でも、このケースって・・・中々売ってないのよね。
この二つも材料買うところで一緒に買ったし・・・
ほんとはこれぐらいのサイズの陶器のケースがほしかったんだけど…。
「それにしても、このリップクリームとハンドクリームって特別よね」
「ああ。だって、作ってるもの」
ちょっとこういうのでアレルギー起こしやすかったから。
ハンドクリームとリップクリームはここに来る前から自分で作ってる。
使える期間が短いのがたまに傷だけどね~。
「え~!すごい」
「そう?誰でもつくれるわよ。こんど一緒につくりましょ」
「うん!」
きゃいきゃいと騒いでいる3人がほほえましい。
同年代の女の子っていいわよね。やっぱり。
あ~・・・あたしも会いたい!
わいわい騒げて、一緒に遊んで・・・まだまだ続くと思ってた生活。
大事な、友達に。
「・・・あれ?」
ふと見上げた窓の向こうに、小さな影が映ったような気がした。
「・・・ごめん、リリー。あたしちょっと出てくる。寮からはでないから」
「え?サク!?」
ベッドの上に放り出していたショールを肩に、あたしは寮の階段を駆け上った。
あれは、シリウスだ。
「よっす。寒くない?」
「・・・なんだよ、お前かよ」
「お前で悪かったわね」
隣に腰を下ろして、ショールを身体に巻きつける。
「ア~寒い」
「んな格好で出てくるからだ!馬鹿!」
赤いチェックのパジャマの上から、赤のタータンチェックのショールを羽織っただけ・・・じゃ、寒いわよね。
「ほら」
肩にふわり、とかけられた暖かさに、思わず顔がほっと緩んだのがわかった。
でも。
「いいわよ。シリウスが寒いじゃない」
シリウスの着ていたガウン。
ま~・・・分厚い良い生地だこと。
手触りも素敵。
「いいって。女に寒い思いさせんのは俺の主義じゃない」
「・・・ありがとう」
う~・・・こういう気遣いが。
なんともいえないわぁ・・・
「でもシリウスが風邪ひくのはいやなの」
ひょい、と大判のショールを半分シリウスにかける。ガウンは、あたしがいただき。
あ~あったかーい。
「・・・ま、いっか」
そうそう。
「ねえ、今日使ってたでしょ?呪文」
プロテゴだっけ。
本ではみたことあったんだけど・・・
「ああ・・・忘れろよ」
気まずそうに頬をかいたシリウスが年齢に似合わない、影のある表情を浮かべて。
「…ねえ、シリウス。悪いこと、言った?」
「・・・いや。家で教えられた呪文だからな…。…一年生が使う呪文じゃない」
…確かに。
「あれ、なんの魔法だったの?」
「…盾の魔法だ。見えない盾を作って魔法を防ぐ呪文…」
「へぇ…」
どうやってたっけ。杖を・・・
「こう・・・」
「盾の呪文か?違うって。こう・・・」
艶やかな杖が優雅に宙を動く。
「それ、シリウスの杖?」
「ああ。・・・以外になにがあるんだよ」
そりゃそうだ。他の杖持ってたら怖いよね。
「見せて」
「いいぜ。お前のも見せろよ」
「はい」
お互いの杖を交換して、あたしはまじまじとそれを見つめた。
杖にも、個性があるとあたしは思う。
シリウスの杖は、しなやかで強靭なかんじがした。
そして…すごく、形がきれい。
ゆがみなんてまったくなくて、細かいところまできちんと整っている。その単純なラインが美しいと思えるぐらい。
「ねえ、これって何の木?」
「教えねえ」
「ケチ」
「お前のは?」
「榊」
「なんだ?それ・・・」
「こっちの名前ってなんていうのかしら…椿の一種なの」
「…へぇ」
どうもよくわかってないようなあいまいな返事をしてシリウスがなぞっていた杖をくるりと回していた。
「…いい杖だな。俺にはちょっと…」
「細すぎて物足りないんでしょ」
「…ん、まぁな」
お互いに杖を返して、あたしは自分の杖をまじまじと見つめた。
「ずいぶん違うわよね」
「そりゃそうだ」
一本一本違うんだから、とつぶやくシリウスの杖が宙になにかを描くような動きをする。
「…なに?」
「あったかくなる魔法」
「・・・・・・・・・・寒いんでしょ」
「寒くねえよ」
・・・・・・・寒いんだな。
「強がりだなぁ、男の子!」
「うるせえ」
ひょい、とガウンをお互いの肩にかけなおしてくっついたあたしに、シリウスがわたわたと動く。
痛い。手、当たる。
「いいじゃない。別に」
「良くないっ」
「あたしは気にしないから」
11歳の子どもに欲情したらおしまいだと思うのよ。成人女性として。
「ねえ、プロテゴってどうやるの?」
「・・・こんな感じ・・・」
「こう?」
「違うって。こう・・・」
ぴったりくっつきながらの小さな自習は妙に楽しかった。
シリウスの動きを真似ながら杖を動かして。
夜の空気の中で、それは、とても大切な時間のような気がした。
「セブルスが使ってたやつは?」
考えこむように眉間にしわを寄せている。
・・・そんな顔すらもきれいってどういうことだろう。この男。
「…旋回だったような気がする」
「エヴァーテ・スタティムって言ってたわよ」
「旋回だな。旋回の呪文。相手を投げ飛ばすんだ」
「へぇ・・・」
「決闘で使われやすい呪いのひとつだな」
「さすが」
「自慢にならねえよ。こんなのばっかりだぜ、俺の知識」
ちょっといやそうな顔をして、シリウスが杖をしまいこんだ。
ああ・・・もうおしまいか。
「・・・ところで、ここでなにしてたの?」
「・・・普通、それを先に聞くよなぁ?」
「・・・悪かったわね。普通じゃなくて」
ふん。大きなお世話だ。
「・・・それも、秘密だ」
「・・・・・・・・・そ。じゃあ聞かない」
「・・・あっさりしてんなぁ」
あたしにだって聞かれなくないことはたくさんある。
だから、聞かれたくないなら聞かない。
でも、聞かれたいのに秘密っていうときは根掘り葉掘り聞き出すけど。
「あ~あ・・・おもてえなぁ」
「なにが?」
「・・・・・・・・・・・・・ブラックが」
返す言葉が、なかった。
「そっか」
「ん~・・・覚悟してても・・・重たいなぁ」
「・・・・・・あたしは」
「え?」
「背負うことは、できないけど。・・・シリウスの話を聞くことはできるから」
「・・・・・・ああ」
それしか、できないけど。
今は、まだ。
「さて。おやすみなさい。シリウスも早く寝るのよ?」
「・・・はいはい。おやすみ・・・って!ガウンおいてけよ!!」
「あら。バレた?」
「ばれた、じゃねえ!」
ガウンを返してショールを羽織って、寮に戻るときに…振り返った。
そこにある背中が、とても・・・小さいのに、力強くみえた・・・。
「ねえ、サク。ハンドクリーム貸して~」
「あ、わたしリップクリーム!」
「はいは~い」
マギーとアリスの手にご要望のものを渡して、あたしは大きく伸びをした。
「ホントにサクのこれ、手がきれいになるのよねえ」
「そうそう。リップクリームも!」
時折借りに来ていたんだけど、二人とあまり口きかなくなってからお互いに貸し借りしにくくて、ずっとつかってなかったのよね。二人とも。
「ふっふっふ」
突然リリーがベッドで肩を震わせている。
「なによ、リリー」
「じゃーん!!」
「・・・なにそれ」
銀色の小さな丸いケース。それは。
「サクにもらったリップクリームよ」
「え~!!!!」
あ、そっか。あげたわね。
携帯できるように小さな缶のケースに入れていたリップクリームをみてリリーがほしがったからあげたんだったわ。
「いいなぁ!!」
「うらやましいでしょ」
・・・リリー・・・・今日はやけにはじけてるわね・・・
「サク!私にもちょうだい!」
「わたしにも~!!」
「えと・・・いいけど、ケースがないのよ・・・」
なくしたときの予備のケースと使ってるやつの2個しかなかったから。
リリーが使ってるのは予備のケース。
「どうしよう・・・」
「あ!先輩に頼んでホグズミードで買ってきてもらう!?」
「いいわね!」
・・・その手があるかぁ・・・でも、このケースって・・・中々売ってないのよね。
この二つも材料買うところで一緒に買ったし・・・
ほんとはこれぐらいのサイズの陶器のケースがほしかったんだけど…。
「それにしても、このリップクリームとハンドクリームって特別よね」
「ああ。だって、作ってるもの」
ちょっとこういうのでアレルギー起こしやすかったから。
ハンドクリームとリップクリームはここに来る前から自分で作ってる。
使える期間が短いのがたまに傷だけどね~。
「え~!すごい」
「そう?誰でもつくれるわよ。こんど一緒につくりましょ」
「うん!」
きゃいきゃいと騒いでいる3人がほほえましい。
同年代の女の子っていいわよね。やっぱり。
あ~・・・あたしも会いたい!
わいわい騒げて、一緒に遊んで・・・まだまだ続くと思ってた生活。
大事な、友達に。
「・・・あれ?」
ふと見上げた窓の向こうに、小さな影が映ったような気がした。
「・・・ごめん、リリー。あたしちょっと出てくる。寮からはでないから」
「え?サク!?」
ベッドの上に放り出していたショールを肩に、あたしは寮の階段を駆け上った。
あれは、シリウスだ。
「よっす。寒くない?」
「・・・なんだよ、お前かよ」
「お前で悪かったわね」
隣に腰を下ろして、ショールを身体に巻きつける。
「ア~寒い」
「んな格好で出てくるからだ!馬鹿!」
赤いチェックのパジャマの上から、赤のタータンチェックのショールを羽織っただけ・・・じゃ、寒いわよね。
「ほら」
肩にふわり、とかけられた暖かさに、思わず顔がほっと緩んだのがわかった。
でも。
「いいわよ。シリウスが寒いじゃない」
シリウスの着ていたガウン。
ま~・・・分厚い良い生地だこと。
手触りも素敵。
「いいって。女に寒い思いさせんのは俺の主義じゃない」
「・・・ありがとう」
う~・・・こういう気遣いが。
なんともいえないわぁ・・・
「でもシリウスが風邪ひくのはいやなの」
ひょい、と大判のショールを半分シリウスにかける。ガウンは、あたしがいただき。
あ~あったかーい。
「・・・ま、いっか」
そうそう。
「ねえ、今日使ってたでしょ?呪文」
プロテゴだっけ。
本ではみたことあったんだけど・・・
「ああ・・・忘れろよ」
気まずそうに頬をかいたシリウスが年齢に似合わない、影のある表情を浮かべて。
「…ねえ、シリウス。悪いこと、言った?」
「・・・いや。家で教えられた呪文だからな…。…一年生が使う呪文じゃない」
…確かに。
「あれ、なんの魔法だったの?」
「…盾の魔法だ。見えない盾を作って魔法を防ぐ呪文…」
「へぇ…」
どうやってたっけ。杖を・・・
「こう・・・」
「盾の呪文か?違うって。こう・・・」
艶やかな杖が優雅に宙を動く。
「それ、シリウスの杖?」
「ああ。・・・以外になにがあるんだよ」
そりゃそうだ。他の杖持ってたら怖いよね。
「見せて」
「いいぜ。お前のも見せろよ」
「はい」
お互いの杖を交換して、あたしはまじまじとそれを見つめた。
杖にも、個性があるとあたしは思う。
シリウスの杖は、しなやかで強靭なかんじがした。
そして…すごく、形がきれい。
ゆがみなんてまったくなくて、細かいところまできちんと整っている。その単純なラインが美しいと思えるぐらい。
「ねえ、これって何の木?」
「教えねえ」
「ケチ」
「お前のは?」
「榊」
「なんだ?それ・・・」
「こっちの名前ってなんていうのかしら…椿の一種なの」
「…へぇ」
どうもよくわかってないようなあいまいな返事をしてシリウスがなぞっていた杖をくるりと回していた。
「…いい杖だな。俺にはちょっと…」
「細すぎて物足りないんでしょ」
「…ん、まぁな」
お互いに杖を返して、あたしは自分の杖をまじまじと見つめた。
「ずいぶん違うわよね」
「そりゃそうだ」
一本一本違うんだから、とつぶやくシリウスの杖が宙になにかを描くような動きをする。
「…なに?」
「あったかくなる魔法」
「・・・・・・・・・・寒いんでしょ」
「寒くねえよ」
・・・・・・・寒いんだな。
「強がりだなぁ、男の子!」
「うるせえ」
ひょい、とガウンをお互いの肩にかけなおしてくっついたあたしに、シリウスがわたわたと動く。
痛い。手、当たる。
「いいじゃない。別に」
「良くないっ」
「あたしは気にしないから」
11歳の子どもに欲情したらおしまいだと思うのよ。成人女性として。
「ねえ、プロテゴってどうやるの?」
「・・・こんな感じ・・・」
「こう?」
「違うって。こう・・・」
ぴったりくっつきながらの小さな自習は妙に楽しかった。
シリウスの動きを真似ながら杖を動かして。
夜の空気の中で、それは、とても大切な時間のような気がした。
「セブルスが使ってたやつは?」
考えこむように眉間にしわを寄せている。
・・・そんな顔すらもきれいってどういうことだろう。この男。
「…旋回だったような気がする」
「エヴァーテ・スタティムって言ってたわよ」
「旋回だな。旋回の呪文。相手を投げ飛ばすんだ」
「へぇ・・・」
「決闘で使われやすい呪いのひとつだな」
「さすが」
「自慢にならねえよ。こんなのばっかりだぜ、俺の知識」
ちょっといやそうな顔をして、シリウスが杖をしまいこんだ。
ああ・・・もうおしまいか。
「・・・ところで、ここでなにしてたの?」
「・・・普通、それを先に聞くよなぁ?」
「・・・悪かったわね。普通じゃなくて」
ふん。大きなお世話だ。
「・・・それも、秘密だ」
「・・・・・・・・・そ。じゃあ聞かない」
「・・・あっさりしてんなぁ」
あたしにだって聞かれなくないことはたくさんある。
だから、聞かれたくないなら聞かない。
でも、聞かれたいのに秘密っていうときは根掘り葉掘り聞き出すけど。
「あ~あ・・・おもてえなぁ」
「なにが?」
「・・・・・・・・・・・・・ブラックが」
返す言葉が、なかった。
「そっか」
「ん~・・・覚悟してても・・・重たいなぁ」
「・・・・・・あたしは」
「え?」
「背負うことは、できないけど。・・・シリウスの話を聞くことはできるから」
「・・・・・・ああ」
それしか、できないけど。
今は、まだ。
「さて。おやすみなさい。シリウスも早く寝るのよ?」
「・・・はいはい。おやすみ・・・って!ガウンおいてけよ!!」
「あら。バレた?」
「ばれた、じゃねえ!」
ガウンを返してショールを羽織って、寮に戻るときに…振り返った。
そこにある背中が、とても・・・小さいのに、力強くみえた・・・。