親世代 番外ss
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大好きな人がいるのよ。
彼女がそういったのは、嘘でもなんでもないだろう。
だって、本当に、本当に幸せそうにそう言ったのだから。
彼女のそんな顔は、見たことがなかった。
かれこれ3年は一緒にいるが、あんな顔を見たのは初めてだった。
結婚してる、とは聞いていた。
子どももいると聞いた。
まあそんなこともあるのだろうと思っていた。
だけれど、その話をしたとき、そんな幸せそうな顔はしなかった。
どちらかというと、つらそうで、悲しそうで。
きっと、置いてくることになったからだろうと思っていた。
大切な人を置いてくるのは、それはそれはつらいから。
それはリィにもわかる。
だけど、そんな幸せな顔をするということは、きっとつらいだけじゃなかったのだろう。
幸せがあったのだろう。
そう思えた。
だから、思い切って聞いてみた。
「どんな人?」
「優しくて、強くて、だけど・・・愛情を知らなくて、寂しがり屋で・・・きれいな、人よ」
「きれいな人?」
「そう。リィ、みたい」
僕?と目を見張ったリィに彼女は頷く。
「ただ、きれいなだけじゃないの。生きているから、きれいなの。顔もきれい。姿もきれい。立ち居振る舞いもとてもきれいなんだけど、それだけじゃないの」
光り輝くような人だったのだと、サクは笑う。
その人を愛したことを、誇るような顔で。
「どうして、あたしを好きになってくれたのか、わかんないのよね」
子どもまで作っておいてなんだけど、と言ってすこし照れくさそうに笑った。
だけど、わかるような気がした。
なんで、その人がサクを選んだのか。
「そんな風に、愛してもらえるなら、誰だって好きになるよ」
リィがルゥに大切にされたように。
誰だって。
「あら。だって、先に告白したのは彼のほうなのよ」
それで初めて意識したのよね、という言葉に、そのまだ見ぬ男をほめてやりたくなった。
よくぞこの女性の価値を見抜いた!
実に見る目がある。
いつもめげなくて、前向きで。
人の話をしっかり聞いてくれて、優しくて。
一緒に泣いてくれたり、叱ってくれたり。
身分におごることなく、いつも自然体。
ありがとうとごめんなさいを忘れない。
この3年で知ったことは数知れずある。
ひとりでぐるぐる悩みやすいとか。
理想家なところがあるとか。
後先考えず行動を始めるとか。
欠点もたくさんあるけれど、それすらまあしょうがないかと思わせる彼女に好意を持っている人はたくさんいた。
男女問わず、だ。
もちろん、リィもそのひとりで。
「・・・なあ、サク。そいつ、お前を幸せに出来たのか?」
「出来たわよ。あんなに人を愛せると、思ってなかった。愛するという感情があんなに強いと思わなかった。だから、幸せよ。もちろん」
今でも。
そう言いきって、その手にはめた指輪をいとおしそうに眺めた。
その顔が、とてもかわいくて。かわいくて。
人間の女の子もかわいいんだなと思った。
「残念だなあ」
「え?」
「サクにそういう人がいなかったらウォルのお嫁さんになってもらうのに」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
意味不明、と呟いてサクが額を押さえた。
「だって、あいついい男だと思わない?なのに番の相手がいないなんてかわいそうだよ」
「い、いや・・・ちょっとまって、つがいって・・・・・・あの、いい男なのも、旦那にしたらさぞ甲斐性とかありそうで最高の相手だとは思うけど」
「だろう?」
「結婚は、愛情だけでも出来ないけど、条件だけでも出来ないのよ?」
「知ってるよ」
だって、昔好きだった子がいた。
一緒に暮らしていこうと、子を作ることは叶わないけれど、ずっと一緒にいようと思った子がいた。
「ウォルがあたしを・・・っていうか、ウォルにとってそういう対象になりそうな人って、今のところ身近にいないと思うんだけど」
「・・・・・・・・・・・・・そう、かな?」
案外いけるんじゃないかと思ったのだ。
「サクみたいな子なら大丈夫じゃないかと思ったんだけどな」
「ムリだってば。だって、ウォルが好きになるとしたら・・・それは、心が澄み切って強い人じゃないと。どこまでも純粋なのに、権力にもなににも変わらない人じゃないとダメなのよ」
「じゃあサクでもいいじゃないか」
「あたしは、そんなに純粋じゃないわ。あたしにはあの人がいるし、あの人じゃないとダメだとわかってるからこんなに平静でいられるのよ」
「そうかな?サクは変わらない人だと思うけど」
「贅沢に、慣れてしまう人ではダメなのよ・・・多分ね」
「ふぅん・・・・・・そんなものかな」
魔女というだけあって、先を見通したようなあいまいだけれどなにかを知ったようなことを言うのは常であったし、かつての『ともだち』のおかげでそんな言葉にもなれていたけれど、リィにとってはよくわからない感覚だった。
だが、彼女がそういうのならそうなのかもしれない。
「そうよ。大丈夫。ウォルにはウォルにふさわしい人がちゃんと用意されていて、めぐり合うようにできているのだから」
「それだよ。用意された人を逃したらどうするんだ。あの熊は鈍いっていうのに」
リィは真剣にそういったのに、サクはいつになく笑い声を上げて涙を流してまで笑い転げたのだった。