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初めてのハローウィンパーティー。
ハローウィンにミサをしたことはあっても、ハローウィンを祝ったのなんて初めてかもしれない。
それに、いろんなことがあった。
トロールも初めて見たし、魔法が役に立つところも初めてみた。
ごちそうも美味しくて、楽しいパーティーと、思いがけない事件にわくわくして過ごせた。
とろとろと思い出しながら眠りにつこうとしたリゲルをだれかがゆすり起こそうとする。
(ほっといてくれよ。眠いんだから)
「ミスター・ブラック」
聞きなれたキーキー声。
スクィーク、と呼びかけて、はっと意識がもどった。
「ミスター・ブラック、起きてください」
「・・・・・・なんだよ」
かなり不機嫌でぶっきらぼうだっただろうに、よくわからないことに、相手のしもべ妖精は身をよじって悶えていた。
(・・・ナニをしているんだろう。頬を染めて喜んでいるように見えるんだけど・・・)
「・・・・・・・・・・・眠い」
意識を引き戻されたとはいえ、完全に眠ろうとしてたってのに、眠いものは眠い。
でも、たたき起こされるのには慣れていたし、眠くても目覚める方法も嫌というほどしっていた。
ぎゅっとふとももをつねって、声をかみ殺す。
孤児院ではいつもこうしてた。
これでもだめなときは小指を机かベッドの角にぶつけるといい。完全に目が覚める。
「ぶぶぶ、ブラックさま!!どうしてご自分にお仕置きしていらっしゃるのですか!!」
やたら動揺するしもべ妖精になんでもない、と手を振ってから、ベッドに起き上がった。
これで冷たい水を飲めば完全に目が覚める。
今日は小指をぶつけなくてもよさそうだ。
「冷たい水をいっぱいもらえるかな?」
「はい、こちらをどうぞ」
一瞬で現れる水は本当に凍るぐらい冷たかったけれど、頭の芯まで冷えた感じだった。
「それで、なんの用かな?」
「はい、ご主人様が、ミスター・ブラックをご招待しなさいとわたくしめにおっしゃいました」
「ご主人様?招待?」
「お時間がありません。わたくしめの手をとってください。すぐにお連れします」
さしだされた指をつかんだ瞬間、世界が反転した。
うえっと胃の中を吐き出して身体を表裏反対にされるような一瞬の後、いたのは真っ暗なところだった。
「おやおや、ずいぶんとかかったね」
「申し訳ございません、ご主人様」
「お仕置きの前に彼に温かい紅茶とミルクをたっぷり用意してくれるかな」
「はい!」
「後はクッキーとケーキと・・・」
「おい、アルファード、そのくらいにしておけ。ぼっちゃん、目を白黒させてるぞ」
ぽうっと灯った明かりにぼんやりと浮かび上がったのは、ゴーストだった。
ゴーストたち、と言ったほうがいい。3人もいるんだから。
青白い顔、透けて見える身体、ホグワーツでよく見るゴーストたちとそっくり同じだった。
「それは失礼、どうぞ座ってくれたまえ」
椅子を差し出すその人の顔に見覚えがある。
「父さん・・・?」
整った顔は、あの写真に写っていたのとそっくり同じ。
でも・・・。
「年を、とってる・・・」
「そうだね。それにシリウスはまだ死んでいない。私は君のお父さんではないよ」
にこにことわらった、アルファードと呼ばれるゴーストはそのひやりとする手で頭をなでた。
うう、首筋がぞわぞわする。
「私はアルファード。アルファード・ブラック。この城に住む、ブラック家のはるか昔の祖先だよ、子孫くん」
そんなに昔の人なのか。
服装はそれほど昔のものとは思えない。
その人の隣にいるのは、快活な笑顔がきっとステキだったんだろうな、と思える明るい顔のゴースト。
ゴーストなのに明るいってなんだか変だけど。
もう一人の人は穏やかな顔で笑いながら空中に腰掛けている。
「僕たちの秘密のお茶会にようこそ」
「秘密の・・・お茶会?」
お茶もなにもない。ゴーストは飲み物も食べ物も受け付けないはずだし・・・。
「そう。お茶を飲んだ気分になる会。略してお茶会だよ」
「・・・・・・・・・・・・その・・・素敵ですね」
「ありがとう」
ちょっと変わった人だと思った。
「私はイーシャ。ユリウス・イーシャだよ。ユーリと呼んで?」
「ユーリ?」
「そう。あっちの彼はウィリアム・ポッター」
「ウィリアム?」
「あ、なんだよ、勝手に紹介してくれちゃって」
「君たちがいつまでも楽しそうにじゃれあってるからね」
僕だって退屈するんだよと笑いながら、ユーリさんがくしゃくしゃと頭をなでてくれた。
やっぱり首筋がぞっとする、とリゲルは首をすくめた。
「ようこそ、ホグワーツへ。学校はどうだい?」
「ホグワーツは楽しいか?」
「ええ、楽しいです」
それは嘘でも偽りでもなく。
本当に毎日が楽しかった。
両親を思って胸が痛くなることがないではないけれど、それでも、毎日はただ楽しく過ぎていった。
良い友人たちと、ちょっと気に食わなくても生意気すぎていっそかわいい又従兄弟と、変わった先生たちに囲まれて、本当に楽しい。
ハリーをいじめるたびににらむとばつの悪そうな顔で視線をそらすスネイプ教授も、たまに夜にお茶を飲もうと呼んでにこやかに話を聞いてくれるダンブルドアも大好きだった。
「勉強でわからないことはない?」
「ええ。今のところは。ただ・・・」
「ただ?」
ユーリの顔がくもる。
「魔法界の常識が良くわからないので、そういう意味では少し苦労はしています」
明らかにほっとした様子のユーリの手がまた頭をなでる。
(・・・だんだんなれてきた・・・)
あまりなれたくはないけれど。
「それはマグルの家から来た子はみんなそうでしょう。大丈夫。すぐに慣れますよ」
「そうしようと思います」
足りない知識は学べばいいのだから。
「お前、ちょっと痩せすぎ、筋肉なさすぎ!食べてるのか?」
指差されているのはまだまだ細い腕だ。
だが、それは仕方ない。
「ちょっと前まで食事もできませんでしたから」
最近、ようやく筋肉がついてきた。
栄養が足りてくるとあっという間に身長の伸びも速くなり、身体も大きくなってきた。
リーマスなんかは大喜びしてさらに食べさせようとしていたが、小さくなっている胃に急にそんなに物が入るわけがない。
「ブラック家は代々バランスよく身長も伸びるし、筋肉もつく。年頃までにはほどよくなるだろう」
素通りするはずの腕をつかもうとしているウィリアムの頭をぶん殴ってヘッドロックをかけているアルファードさんが顔だけはにこやかに言う。
「この独活の大木のようににょきにょき伸びることはないし、顔立ちも・・・ブラック家そのものだな。さすがもっとも濃い血といったところか」
ということは、この父親にそっくりな顔は遺伝なのか。これからますますそっくりになるのか。
(少し、うれしいかな・・・)
鏡を見れば、父親を感じられるのは、それなりにうれしい。
「ん?お前、目は茶色なのか」
「はい。母と同じ色と聞きました」
「・・・たしかに、サクラと同じ色だ。黒に限りなく近い茶色・・・だが、封印の気配を感じる」
「封印?」
「ああ・・・ふるい術だ。・・・古い術はサクラが得意だった。君を守るために何かを施したのかもしれないな」
アルファードさんの口ぶりは母をとてもよく知っているかのようなもので。
「母を?」
「もちろんだ。わたしたちはずっとここにいるからね」
「君を招待したのはね、ホグワーツの感想を聞きたかったんだ。新入生である君に」
ああそれでか、と納得した。
なぜ深夜にこんなところに呼ばれたのかと思ったら。
「わたしたちはね、もっとここで語り合いたかった、という望みをもつゴーストだ。ただ、3人だけだと時々ちょっと飽きてあの世に行ってしまいそうになるのでね、たまにお客様をお招きしているんだよ」
「そう。ハローウィンの晩に、一人だけ」
「なぜ俺を?」
「それはもう、在学中にありとあらゆるいたずらの限りを尽くして我々はもちろん、ホグワーツ中を巻き込み続けた二人の息子だからだよ」
その言葉に、またも頭痛がするような気がした。
両親という言葉に必ずついてくる。
「・・・あの、いろんな人から言われるのですが・・・その・・・・・・俺の両親は、いったい・・・」
「誰よりも素直で、純粋で、生きることをめいっぱい楽しんでいた人たちだよ」
それは、誰からも言われなかった言葉。
その姿が、今の自分と重なった。
「だから、悩みも山ほどあったし、苦しんだし、泣いた。そして笑って、一瞬一瞬を本当に大切にしていた。だからあの二人はホグワーツで輝いていたんだよ・・・あの二人だけではないけれどね」
そういって微笑んだ人の姿が、ふいにゆがんだ。
「おや、もう時間みたいだよ」
「残念だな。俺ほとんど話してないのに」
「・・・リゲル。私たちはいつでも、お前たちを見守っている・・・私たちの大切な、甥たちの、息子たちを。だから・・・甥たちのように・・・シリウスと、ジェームズのように、せいいっぱい、楽しんで生きてほしい―――」
明るい日差しの中で、ハリーに揺り起こされていた。
「リゲルが寝坊なんて、珍しいね」
そういって笑ったハリーに、何か言おうと思ったのに、忘れてしまった。
「・・・リゲル?」
「いや・・・・・・今日も、楽しい一日になりそうだと・・・そう思って」
「そうだね」
パーティーの後、ぐっすり眠って身体も軽い。
トロールと対決したのが嘘のようだ。
「楽しい一日に・・・しようか」
そう言ったのは、なぜだったかはわからないけれど。
楽しい日々は自分で作るのだと、不思議と今日はそう思えた。