5年生(親世代) 製作中
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38
かなり冷たくなった風に、温度保持の魔法を呟く。
ひとりになれば、ぐるぐる回るのはたたきつけられる言葉。
「好き勝手なこと言ってくれるよねぇ・・・」
本当に、好きに言ってくれる。
もう限界なの。
なのに、どうしてわかってくれない。
それがどうしようもなく理不尽で、不当なことのように感じていた。
どいつもこいつも、次から次へとああしろこうしろ。
シリウスと仲直りしろっていわれても、あっちがそんなつもりないでしょうに。
なのに、あたしにばっかりなぜ努力を求めるわけ?
シリウスを説得すればいいじゃないの。
あたしは確かにシリウスよりはるかに年上で、もうすぐ30になるかもしれないけれど。
無意識にぎゅっと握っていた手に気付いて、無理やりに開く。
手のひらに、爪の跡がくっきりと刻まれていた。
ため息を一つ。
ひざの上に広げた本を、読むでもなくながめて。
あきらめて、パタン、と閉じた。
目の前に広がるのは、きれいなきれいな、ホグワーツの姿。
きらめく湖と、古城のくすんで風格を増した壁と。
それを眺めていても、心は晴れない。
あたしは、どうしたいんだろう。
今、なにをしたいのだろう。
疲れてしまった。
帰りたい。
でもそれは、ジェームズの言うとおり、怖いからなのかもしれない。
あの人たちと本来一緒にいる人間ではないということからくるおびえがそう思わせるのかもしれな い。
嫌われたくない。どうでもいいと思われたくない。
みんなと一緒にいたい。
友達になれたと思っていた。
今までこんなに楽しく過ごせる友達はいなかった、とそう思えるぐらい、楽しかった。
それは上位から見下ろした友情だったのかもしれない。
シリウスが言うとおり、相手のことをわかったような気になっていたから成立したように見えた、大 人と子どもの友情だったのかもしれない。
それでも、紛れもなく、あたしは楽しかったし、嬉しかったし、精一杯、できることをしたつもりだったのだ。
だけど、それを受け入れてもらえなかった。
そのことが、思っていた以上にショックだった。
ジェームズに「怖がっているように見える」といわれたことも、
そして、ルシウスに何も伝えることができていなかったということも。
受け入れてもらえていると、そう思っていたのに。
きっと、少しは何かを感じてくれると。
なのに。
なにも変わらなかった。
無力だ。
そう、打ちのめされた。
あたしは、彼らを助けたい。
守りたい。
そして・・・ヴォルデモートを倒したい。
あたしの視点が偏ってることなんて重々承知だ。
だけど、それでも、あたしは助けたいのだ。
かつて本で触れた彼らのことを。
ただただ、助けたいのだ。
でも、できるのだろうか。
今回みたいに、結局は何もできないということを思い知らされて終わりなのかもしれない。
そう思うと、ぞっとした。
「何かお悩みですかな?」
ふっと聞こえた声に、慌てて起き上がった。
「そんなところでひとりで悩んでいるのも憂いがあっていいが、あなたは笑顔がよく似合う。私とお茶でもいかがですか?リトル・レディ」
信じられない美声での、生まれてこの方聞いたこともない口説き文句に硬直すれば、それ以上の 衝撃を与えるちょびっと見慣れた美貌があった。
「タイミング、よすぎです。アルファードさん」
きっと、泣き笑いのような顔になっていたに違いない。
どうしてこのタイミングでくるかなあ。
うーん。相変わらずいい男。
だけど。
「アルファードさん・・・?」
「久しぶりだね」
「どどどど、どーしたんですか!?その顔の傷!!」
麗しいお顔には斜めにくっきり傷跡がはしっていた。
じ、人類の宝に傷があああああ!!!!
「傷物ではデートのお相手に不足かな?」
「いえっそんなことはこれっぽっちもありませんっそんなもの些細なことでむしろそれも魅力のうち?みたいな」
どっかの女子高生みたいな口調になっているのは・・・ま、元女子高生と思ってあきらめてくだされ。
「ではお手をどうぞ、お嬢さま」
差し出された肘に腕をくぐらせて、そんじょそこらのお子様たちにはマネできない優雅なしぐさでエ スコートされてしまったのだ。
うーん、デリシャす・・・いや、違うちがうゴージャス・・・・・・なんか違う。
とりあえず、セレブな気分でいい感じ。
おお、すごい。
顔見るだけで気分が向上したよ。
ましてこんな方と腕なんかくませていただいちゃっていいんですかっ!?
・・・あ、だめだ。エネルギー切れた。
足取りが一瞬ふらつく。
「・・・疲れているのか」
「ええ・・・ちょっと、まぁ・・・」
「姉上の呪いだね」
あら、早耳で。
「それもありますけど、ちょっとわずらわしいことも多くて。放っておいてほしいなあと思う瞬間もあるんですよね」
そういうと、アルファードさんは珍しいことに声を上げて笑った。
「それはグリフィンドールにいるかぎり不可能だよ。なぜ私がこのようなところにいるのか考えてご覧」
う、それは、はい、あのおふたりのせいでした・・・。
「・・・それでは優雅にお茶、といきたいところだがここでのんびりするほうが今の君にはよさそうだ」
うん。下手にどこぞにはいきたくないっす。
だってどうせまた視線が針のむしろだもん。
「ところで、どうして私がここに来たのかは気にならないのかな?」
「ドウシテキタンデスカ」
みごとなオウム返し。
杖の一振りで出てきたピクニックセットを前に、どこからともなく現れたしもべ妖精がうやうやしく紅茶を入れてくれた。
うむ。ぽかぽかする。
そういえば、もうすぐ雪がふる季節になってきったのだった。
雪がふればクリスマスがきて、休暇になる。
今は、少しホグワーツを離れたかった。
「シリウスが手紙をよこしたんだ。珍しいことに」
「え?珍しいんですか?」
「とても珍しいね。特に最近は。ブラック家の跡継ぎとしてかなり行動を制限され始めているからね。私のような反逆児の元に来るのは少々厳しいのではないかな?何しろ私と姉上は仲が悪いから」
「はぁ・・・」
「ああ、キグナスと姉上は仲が良いのだけれどね。キグナスは私の弟でベラトリックスたちの父だ。 我等が父上は本家に遠慮して何もおっしゃらないが、私のことはかなり苦々しく思っているに違いな
いよ」
「あ、そっか。シリウスのお父さんが本家なんでしたっけ」
「そうだね。オリオン様が現在の当主で、先代は父の従兄にあたるアークトゥルス様だ。オリオン様 の父君でね。曽祖父のフィニアス・ナイジェラスおじい様・・・ホグワーツの校長だった方だが、この方の子どもが分家して今の家系になっているんだ」
うわー、さすがブラック家。同じブラック家内でも当主は「様」なんだねえ・・・。
そしてフィニアス・ナイジェラス。
いやはや、もっと昔の人なのかと思ってましたー。
この人の曽祖父。結構近いんでないかい?
「…あの、ブラック家の内情は結構面白いんですが、その・・・おしゃべりしにいらしたんですか?」
「それでは駄目かな?」
いえ、まったく。
だけど、それだけのために果たしてあなたが本当にこんなホグワーツくんだりまでいらっしゃることがびっくりです。
だって、今のあなたは・・・・。
スパイと思われてやられちゃいますよ?
「本当はシリウスとレギュラスからの手紙を読んで来たのだ」
うぐ。
あのふたりからの、手紙?
「私の甥を、苛めてくれるな」
「いじめられてんのはあたしの方じゃないでしょうか・・・」
やっぱりその話題でしょう。
この人までそう“あたしに”要求するんだねえ・・・。
「いくらあの子でもね、まだ子どもなのだから」
「・・・知ってますけど」
憮然として答えると、アルファードさんは苦笑顔。
伸びてきた指に、頬をつねられた。
「・・・私の甥はよほど頼りがいがあるらしい。君にそんな顔をさせることができるとは」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どんな顔だろう。
考えるより先に、とっさに顔を覆っていた。
そんなに変な顔してたのかなあ。
「サク。あの子は、ただでさえ、大きなものを背負っているのだよ」
「知ってます」
ジェームズから聞いた話は、衝撃だった。
だけど同時に、そこまでして閉じ込めておきたいぐらい、あの家にとってシリウスは必要なのだ。
おそらくは、当主に最もふさわしい能力を持つものとして。
レギュラスだってそうは劣らないだろうに。
それをしのぐなにかが、シリウスにはあるのかもしれない。
「君までが、あの子に期待をしてしまったら、あの子は窒息してしまうよ」
胸が、急に痛くなった。
期待を、していた?
あたしがシリウスに重荷を押し付けてた・・・?
「そうだろう?シリウスなら判ってくれる。わかってくれなきゃいけない。辛い思いをしているのはシリ ウスの側にいるから。シリウスの母にされたことだってシリウスが原因。だけど、シリウスが悪いわ けではないと思っているから、気にしないでほしい。シリウスとは友だちなのだから、信用してくれる ・・・期待だろう?」
言葉もないあたしに、アルファードさんは笑顔で告げる。
「君が言ったのではないのかな?友だちだからといって、なんでも判ってくれるなんてありえない。だから語る努力をしなければならないのだ、と」
確かに、あたしはそう言った。
そうしなきゃ、と思っている。
一瞬、己を振り返ってしまった。
「君はそれをシリウスにしているかい?」
「だって・・・」
「聞いてくれなかった、は無しだよ。聞いてくれなかったのではなく、聞く耳を持たせなかったのは君 なのかもしれない」
そうかも、しれない。
あたしは、シリウスに甘えていた。
シリウスと、あまりに気安すぎたのかもしれない。
シリウスなら、あたしを信じてくれる、とそう勝手に思っていた。
あたしがこんなに大切に思っているのだから、だからシリウスにはきっと伝わる。伝わってなきゃならないと思っていた。
「シリウスも君に甘えている。君もシリウスに甘えている。お互い様だ」
頭ではわかった。判ってしまった。
判ってしまって、反省する自分も、いる。
だけど、心のどこかで、納得したくないと悲鳴をあげる自分も、いる。
あそこまで言われて、まだ、まだ彼の側に行こうと思うのか。
彼の顔をみて、あのときの表情を、投げつけられた言葉を忘れることが出来る・・・?
「シリウスも君に甘えている。・・・あの子にとって、初めての、味方なんだよ。君と、ジェームズくんは」
「そんなこと・・・」
「ある。わたしは、あの子の味方ではないよ。私は私の思惑でしか動かない。自分の身や評判と彼 をひきかえてまで守ろうとは思わない。自分のしたいことをするために、自分を優先する。あの子は それを知っている。だが、君たちは違う。シリウスのためなら、命をなげうってでも守ろうとするだろう。自分の身の安全や、自分の心など、投げ捨ててでも、シリウスを救う手を差し伸べるだろう」
それは、そうだ。そう思っていた。
そのためなら、なにを引き換えにでもしただろう。
「それほどの愛を、あの子は知らない。あの子の人生は、誰かの思い通りの姿にならなければ価値はないとされてきた。だから、そのままで、己の思うようにふるまうことがどこまで許容されるのか、 知らない。ずっと恐れるように君たちと付き合ってきたはずだ。そして…」
「行き過ぎた」
「そう。どこまで踏み外していいのか、その境界を知らないあの子は、その線を踏み越えてしまった。・・・今頃、後悔している。だから、君に私は頼むのだよ」
「アルファードさん・・・」
「あの子を、もう少し、見守ってやってくれ。あの子の居場所を残しておいてやってくれ。君の側に、 置いてやってほしい。その心の大きさを、君の優しさと強さをわからない子ではないと思うから。だから、そうしてやってほしい。―――かつて、ウィリアムとイーシャが、私にそうしてくれたように」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それを言われてしまったら、何も反論できない。
あの2人は、確かにあたしの理想の姿の一つだったから。
あんなふうになりたい。
強い意志と、広い視野。
そして、守りたいものを守り抜く、力。
どれが欠けてもダメだ。
一つでいいから手に入れたいんじゃない。
あたしは、その3つが、ほしい。
みんなを、守り抜くために。
そして、あたしの世界に帰るために。
「君もシリウスも背負いすぎだ。お互いに荷物を押し付けあってもどうしようもない。荷物を分かち合 いたいのなら、手を取り携えなければ。そのためには、もっと自分のことを判らなければ駄目だ。己を知らずして、他者に知ってほしいと願うのはルール違反だよ」
ゆったりと整った顔で笑うアルファードさんに、ぎゅっと胸がしめつけられたような気がした。
これって恋!?
・・・んなわきゃないけど。
ああ、耳が痛いわ。
「自分と向き合ってみることから始めなければ」
きいてあげるから。
そう物語っている優しい瞳。
そういうこの人こそが、今、思いものを背負っているから。
何も言わないけれど、彼が何をしているのかなんて予測がつく。
死喰い人に潜入しているのか。
それとも倒すために騎士団に協力しているのか。
二つに一つだ。
この人にこれ以上背負わせてはいけない。
だから、あたしはこの人には話さない。
ううん。
この人には、じゃなくて。
誰にも、話せない。
あたしは、ここにいてはいけない人間だと、今は、誰にも言われたくなかった。
だから、誰にも荷物をわかちあってほしいとは、思わない。
そう言うことすら、できないあたしがいた。
「それからね、あの子にとって、我が姉ながら困ったことに母親は重荷なんだ。あの子にとっては頭 痛の種でしかないし、これからもそうだろう。まして・・・君にあんな解けない呪いをかけたとしれば、 気にしなければならなくなるんだよ。君をそんな目に合わせたのは自分で、自分と出会わなければ 一生そんな目にあわせなかったのに・・・と」
「だけどそれは・・・!」
「そこから先は自分で直接伝えるといい。けれど、気にしないなんてことは不可能だ。事実、君がシ リウスとこうまで深く関わらなければ、君がその呪いをかけられることはなかったのだからね」
じゃあ、なんていえば分かってくれるんだろう。
眉間にしわが寄るのがわかった。
「その件は思いっきり気にさせておいて、まずは君たちの関係だな。許してあげる気持ちはあるのかな?」
「許すって・・・シリウスですよ?あたしをいらないって言ったのは・・・。喧嘩してるつもりなんて、ないです。許すも許さないも、ないです。シリウスにいらないって言われたから、受け入れるだけ・・・」
「受け入れないでくれ」
「え・・・」
なんで?どうして?本人の望みなのに。
「シリウスが本気で言ったと、そう思っているのか?」
「ええ」
きっぱり答えると、アルファードさんはうめいて額を押さえた。
「・・・私は前言を撤回するべきかな・・・我が甥はまったく君に信用されてないな・・・・・・・・・」
「え?」
「いいから!とりあえず仲直りをするように!」
きっぱりとあたしに指を突きつけてそう言いきって(ちょっとウィル先生たちに似てたかも・・・)アルファードさんは帰っていった。
うーん。心配だ。
あの顔の傷・・・どっからどうみても、爪でえぐられた痕なんだけど・・・・・・・・・。
あの人、なにやらされてるんだろう・・・・・・・。
かなり冷たくなった風に、温度保持の魔法を呟く。
ひとりになれば、ぐるぐる回るのはたたきつけられる言葉。
「好き勝手なこと言ってくれるよねぇ・・・」
本当に、好きに言ってくれる。
もう限界なの。
なのに、どうしてわかってくれない。
それがどうしようもなく理不尽で、不当なことのように感じていた。
どいつもこいつも、次から次へとああしろこうしろ。
シリウスと仲直りしろっていわれても、あっちがそんなつもりないでしょうに。
なのに、あたしにばっかりなぜ努力を求めるわけ?
シリウスを説得すればいいじゃないの。
あたしは確かにシリウスよりはるかに年上で、もうすぐ30になるかもしれないけれど。
無意識にぎゅっと握っていた手に気付いて、無理やりに開く。
手のひらに、爪の跡がくっきりと刻まれていた。
ため息を一つ。
ひざの上に広げた本を、読むでもなくながめて。
あきらめて、パタン、と閉じた。
目の前に広がるのは、きれいなきれいな、ホグワーツの姿。
きらめく湖と、古城のくすんで風格を増した壁と。
それを眺めていても、心は晴れない。
あたしは、どうしたいんだろう。
今、なにをしたいのだろう。
疲れてしまった。
帰りたい。
でもそれは、ジェームズの言うとおり、怖いからなのかもしれない。
あの人たちと本来一緒にいる人間ではないということからくるおびえがそう思わせるのかもしれな い。
嫌われたくない。どうでもいいと思われたくない。
みんなと一緒にいたい。
友達になれたと思っていた。
今までこんなに楽しく過ごせる友達はいなかった、とそう思えるぐらい、楽しかった。
それは上位から見下ろした友情だったのかもしれない。
シリウスが言うとおり、相手のことをわかったような気になっていたから成立したように見えた、大 人と子どもの友情だったのかもしれない。
それでも、紛れもなく、あたしは楽しかったし、嬉しかったし、精一杯、できることをしたつもりだったのだ。
だけど、それを受け入れてもらえなかった。
そのことが、思っていた以上にショックだった。
ジェームズに「怖がっているように見える」といわれたことも、
そして、ルシウスに何も伝えることができていなかったということも。
受け入れてもらえていると、そう思っていたのに。
きっと、少しは何かを感じてくれると。
なのに。
なにも変わらなかった。
無力だ。
そう、打ちのめされた。
あたしは、彼らを助けたい。
守りたい。
そして・・・ヴォルデモートを倒したい。
あたしの視点が偏ってることなんて重々承知だ。
だけど、それでも、あたしは助けたいのだ。
かつて本で触れた彼らのことを。
ただただ、助けたいのだ。
でも、できるのだろうか。
今回みたいに、結局は何もできないということを思い知らされて終わりなのかもしれない。
そう思うと、ぞっとした。
「何かお悩みですかな?」
ふっと聞こえた声に、慌てて起き上がった。
「そんなところでひとりで悩んでいるのも憂いがあっていいが、あなたは笑顔がよく似合う。私とお茶でもいかがですか?リトル・レディ」
信じられない美声での、生まれてこの方聞いたこともない口説き文句に硬直すれば、それ以上の 衝撃を与えるちょびっと見慣れた美貌があった。
「タイミング、よすぎです。アルファードさん」
きっと、泣き笑いのような顔になっていたに違いない。
どうしてこのタイミングでくるかなあ。
うーん。相変わらずいい男。
だけど。
「アルファードさん・・・?」
「久しぶりだね」
「どどどど、どーしたんですか!?その顔の傷!!」
麗しいお顔には斜めにくっきり傷跡がはしっていた。
じ、人類の宝に傷があああああ!!!!
「傷物ではデートのお相手に不足かな?」
「いえっそんなことはこれっぽっちもありませんっそんなもの些細なことでむしろそれも魅力のうち?みたいな」
どっかの女子高生みたいな口調になっているのは・・・ま、元女子高生と思ってあきらめてくだされ。
「ではお手をどうぞ、お嬢さま」
差し出された肘に腕をくぐらせて、そんじょそこらのお子様たちにはマネできない優雅なしぐさでエ スコートされてしまったのだ。
うーん、デリシャす・・・いや、違うちがうゴージャス・・・・・・なんか違う。
とりあえず、セレブな気分でいい感じ。
おお、すごい。
顔見るだけで気分が向上したよ。
ましてこんな方と腕なんかくませていただいちゃっていいんですかっ!?
・・・あ、だめだ。エネルギー切れた。
足取りが一瞬ふらつく。
「・・・疲れているのか」
「ええ・・・ちょっと、まぁ・・・」
「姉上の呪いだね」
あら、早耳で。
「それもありますけど、ちょっとわずらわしいことも多くて。放っておいてほしいなあと思う瞬間もあるんですよね」
そういうと、アルファードさんは珍しいことに声を上げて笑った。
「それはグリフィンドールにいるかぎり不可能だよ。なぜ私がこのようなところにいるのか考えてご覧」
う、それは、はい、あのおふたりのせいでした・・・。
「・・・それでは優雅にお茶、といきたいところだがここでのんびりするほうが今の君にはよさそうだ」
うん。下手にどこぞにはいきたくないっす。
だってどうせまた視線が針のむしろだもん。
「ところで、どうして私がここに来たのかは気にならないのかな?」
「ドウシテキタンデスカ」
みごとなオウム返し。
杖の一振りで出てきたピクニックセットを前に、どこからともなく現れたしもべ妖精がうやうやしく紅茶を入れてくれた。
うむ。ぽかぽかする。
そういえば、もうすぐ雪がふる季節になってきったのだった。
雪がふればクリスマスがきて、休暇になる。
今は、少しホグワーツを離れたかった。
「シリウスが手紙をよこしたんだ。珍しいことに」
「え?珍しいんですか?」
「とても珍しいね。特に最近は。ブラック家の跡継ぎとしてかなり行動を制限され始めているからね。私のような反逆児の元に来るのは少々厳しいのではないかな?何しろ私と姉上は仲が悪いから」
「はぁ・・・」
「ああ、キグナスと姉上は仲が良いのだけれどね。キグナスは私の弟でベラトリックスたちの父だ。 我等が父上は本家に遠慮して何もおっしゃらないが、私のことはかなり苦々しく思っているに違いな
いよ」
「あ、そっか。シリウスのお父さんが本家なんでしたっけ」
「そうだね。オリオン様が現在の当主で、先代は父の従兄にあたるアークトゥルス様だ。オリオン様 の父君でね。曽祖父のフィニアス・ナイジェラスおじい様・・・ホグワーツの校長だった方だが、この方の子どもが分家して今の家系になっているんだ」
うわー、さすがブラック家。同じブラック家内でも当主は「様」なんだねえ・・・。
そしてフィニアス・ナイジェラス。
いやはや、もっと昔の人なのかと思ってましたー。
この人の曽祖父。結構近いんでないかい?
「…あの、ブラック家の内情は結構面白いんですが、その・・・おしゃべりしにいらしたんですか?」
「それでは駄目かな?」
いえ、まったく。
だけど、それだけのために果たしてあなたが本当にこんなホグワーツくんだりまでいらっしゃることがびっくりです。
だって、今のあなたは・・・・。
スパイと思われてやられちゃいますよ?
「本当はシリウスとレギュラスからの手紙を読んで来たのだ」
うぐ。
あのふたりからの、手紙?
「私の甥を、苛めてくれるな」
「いじめられてんのはあたしの方じゃないでしょうか・・・」
やっぱりその話題でしょう。
この人までそう“あたしに”要求するんだねえ・・・。
「いくらあの子でもね、まだ子どもなのだから」
「・・・知ってますけど」
憮然として答えると、アルファードさんは苦笑顔。
伸びてきた指に、頬をつねられた。
「・・・私の甥はよほど頼りがいがあるらしい。君にそんな顔をさせることができるとは」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どんな顔だろう。
考えるより先に、とっさに顔を覆っていた。
そんなに変な顔してたのかなあ。
「サク。あの子は、ただでさえ、大きなものを背負っているのだよ」
「知ってます」
ジェームズから聞いた話は、衝撃だった。
だけど同時に、そこまでして閉じ込めておきたいぐらい、あの家にとってシリウスは必要なのだ。
おそらくは、当主に最もふさわしい能力を持つものとして。
レギュラスだってそうは劣らないだろうに。
それをしのぐなにかが、シリウスにはあるのかもしれない。
「君までが、あの子に期待をしてしまったら、あの子は窒息してしまうよ」
胸が、急に痛くなった。
期待を、していた?
あたしがシリウスに重荷を押し付けてた・・・?
「そうだろう?シリウスなら判ってくれる。わかってくれなきゃいけない。辛い思いをしているのはシリ ウスの側にいるから。シリウスの母にされたことだってシリウスが原因。だけど、シリウスが悪いわ けではないと思っているから、気にしないでほしい。シリウスとは友だちなのだから、信用してくれる ・・・期待だろう?」
言葉もないあたしに、アルファードさんは笑顔で告げる。
「君が言ったのではないのかな?友だちだからといって、なんでも判ってくれるなんてありえない。だから語る努力をしなければならないのだ、と」
確かに、あたしはそう言った。
そうしなきゃ、と思っている。
一瞬、己を振り返ってしまった。
「君はそれをシリウスにしているかい?」
「だって・・・」
「聞いてくれなかった、は無しだよ。聞いてくれなかったのではなく、聞く耳を持たせなかったのは君 なのかもしれない」
そうかも、しれない。
あたしは、シリウスに甘えていた。
シリウスと、あまりに気安すぎたのかもしれない。
シリウスなら、あたしを信じてくれる、とそう勝手に思っていた。
あたしがこんなに大切に思っているのだから、だからシリウスにはきっと伝わる。伝わってなきゃならないと思っていた。
「シリウスも君に甘えている。君もシリウスに甘えている。お互い様だ」
頭ではわかった。判ってしまった。
判ってしまって、反省する自分も、いる。
だけど、心のどこかで、納得したくないと悲鳴をあげる自分も、いる。
あそこまで言われて、まだ、まだ彼の側に行こうと思うのか。
彼の顔をみて、あのときの表情を、投げつけられた言葉を忘れることが出来る・・・?
「シリウスも君に甘えている。・・・あの子にとって、初めての、味方なんだよ。君と、ジェームズくんは」
「そんなこと・・・」
「ある。わたしは、あの子の味方ではないよ。私は私の思惑でしか動かない。自分の身や評判と彼 をひきかえてまで守ろうとは思わない。自分のしたいことをするために、自分を優先する。あの子は それを知っている。だが、君たちは違う。シリウスのためなら、命をなげうってでも守ろうとするだろう。自分の身の安全や、自分の心など、投げ捨ててでも、シリウスを救う手を差し伸べるだろう」
それは、そうだ。そう思っていた。
そのためなら、なにを引き換えにでもしただろう。
「それほどの愛を、あの子は知らない。あの子の人生は、誰かの思い通りの姿にならなければ価値はないとされてきた。だから、そのままで、己の思うようにふるまうことがどこまで許容されるのか、 知らない。ずっと恐れるように君たちと付き合ってきたはずだ。そして…」
「行き過ぎた」
「そう。どこまで踏み外していいのか、その境界を知らないあの子は、その線を踏み越えてしまった。・・・今頃、後悔している。だから、君に私は頼むのだよ」
「アルファードさん・・・」
「あの子を、もう少し、見守ってやってくれ。あの子の居場所を残しておいてやってくれ。君の側に、 置いてやってほしい。その心の大きさを、君の優しさと強さをわからない子ではないと思うから。だから、そうしてやってほしい。―――かつて、ウィリアムとイーシャが、私にそうしてくれたように」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それを言われてしまったら、何も反論できない。
あの2人は、確かにあたしの理想の姿の一つだったから。
あんなふうになりたい。
強い意志と、広い視野。
そして、守りたいものを守り抜く、力。
どれが欠けてもダメだ。
一つでいいから手に入れたいんじゃない。
あたしは、その3つが、ほしい。
みんなを、守り抜くために。
そして、あたしの世界に帰るために。
「君もシリウスも背負いすぎだ。お互いに荷物を押し付けあってもどうしようもない。荷物を分かち合 いたいのなら、手を取り携えなければ。そのためには、もっと自分のことを判らなければ駄目だ。己を知らずして、他者に知ってほしいと願うのはルール違反だよ」
ゆったりと整った顔で笑うアルファードさんに、ぎゅっと胸がしめつけられたような気がした。
これって恋!?
・・・んなわきゃないけど。
ああ、耳が痛いわ。
「自分と向き合ってみることから始めなければ」
きいてあげるから。
そう物語っている優しい瞳。
そういうこの人こそが、今、思いものを背負っているから。
何も言わないけれど、彼が何をしているのかなんて予測がつく。
死喰い人に潜入しているのか。
それとも倒すために騎士団に協力しているのか。
二つに一つだ。
この人にこれ以上背負わせてはいけない。
だから、あたしはこの人には話さない。
ううん。
この人には、じゃなくて。
誰にも、話せない。
あたしは、ここにいてはいけない人間だと、今は、誰にも言われたくなかった。
だから、誰にも荷物をわかちあってほしいとは、思わない。
そう言うことすら、できないあたしがいた。
「それからね、あの子にとって、我が姉ながら困ったことに母親は重荷なんだ。あの子にとっては頭 痛の種でしかないし、これからもそうだろう。まして・・・君にあんな解けない呪いをかけたとしれば、 気にしなければならなくなるんだよ。君をそんな目に合わせたのは自分で、自分と出会わなければ 一生そんな目にあわせなかったのに・・・と」
「だけどそれは・・・!」
「そこから先は自分で直接伝えるといい。けれど、気にしないなんてことは不可能だ。事実、君がシ リウスとこうまで深く関わらなければ、君がその呪いをかけられることはなかったのだからね」
じゃあ、なんていえば分かってくれるんだろう。
眉間にしわが寄るのがわかった。
「その件は思いっきり気にさせておいて、まずは君たちの関係だな。許してあげる気持ちはあるのかな?」
「許すって・・・シリウスですよ?あたしをいらないって言ったのは・・・。喧嘩してるつもりなんて、ないです。許すも許さないも、ないです。シリウスにいらないって言われたから、受け入れるだけ・・・」
「受け入れないでくれ」
「え・・・」
なんで?どうして?本人の望みなのに。
「シリウスが本気で言ったと、そう思っているのか?」
「ええ」
きっぱり答えると、アルファードさんはうめいて額を押さえた。
「・・・私は前言を撤回するべきかな・・・我が甥はまったく君に信用されてないな・・・・・・・・・」
「え?」
「いいから!とりあえず仲直りをするように!」
きっぱりとあたしに指を突きつけてそう言いきって(ちょっとウィル先生たちに似てたかも・・・)アルファードさんは帰っていった。
うーん。心配だ。
あの顔の傷・・・どっからどうみても、爪でえぐられた痕なんだけど・・・・・・・・・。
あの人、なにやらされてるんだろう・・・・・・・。