5年生(親世代) 製作中
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37
すこぉしだけダンブルドアと遊んで、休んで、と思ったその矢先、ダンブルドアは呼び出されていなくなった。
でもマダム・ポンフリーとのお休みデイは解消されなかったらしく、1日だけ、あたしはマダムのお説教をきく羽目になった・・・・・・。
いや、このお方には度々度々ご迷惑をおかけてしてしまっているので、実は頭が上がらない。
そして、夕刻にはぞろぞろといろんな人たちがお見舞いにきて、去っていった。
そんな、食べ物吐いたぐらいで死ぬわけじゃなし・・・ねぇ?
そんな中で長居をしていったのはやっぱりリリーたちと、ジェームズだった。
リーマスは心配そうに気遣って、近くの森からとってきたという爽やかそうな果物をくれた。
っていうか、これ禁じられた森のものじゃなかろうか。
・・・た、食べて大丈夫かなぁ?
失礼だから言わないけど。
ピーターはなにやらメッセージカードをくれた・・・。
イラネ。
といっては失礼ですか。
でもねえ?マギーの目があるところでそんなこと言うわけにもいかんし・・・。
みんなの授業のおもしろ話にけらけら笑うあたしをみてみんなほっとしたのかなんなのか。
ぞろぞろと戻っていってくれたのですが。が。
なんでかジェームズだけが居座っていた。
さすがに疲れたのでお引取りいただきたいなぁ・・・なんて。
元気は元気だけど、ダンブルドアに泣きついてちょっと気持ちが楽にはなったけど。
まだまだ誰かさんの顔をみたい気分でもないし、あなたのお話に付き合える気力もないっす。
「サクラ」
「んー?」
「君の生い立ちを聞きたいんだけど、いいかな?」
「・・・・・・は?なにをいまさら」
「いや、ちゃんと聞いたこと、なかったなあと思って」
はぁ、まあいいけど・・・。
「えーと、キリュウ家に生まれて、2歳のときに、家族が全部殺されたらしいわね。ぜんっぜん覚えてないけど。ちなみにあたしが助かったのは、その檻の中にいなかったから、らしいわ。覚えているのは引き取ってくれた養父母のところでの生活。昔は本当の親だと思ってたわ。普通のマグル・・・それも日本人だったわよ。普通に日本で普通の子どもとして育ってたけど、11歳になるときにダンブルドアがお迎えにきてくださって、母の遠縁に当たるおじさまと一緒に暮らしてホグワーツにかようことになったの。ホグワーツに来る前に3ヶ月ぐらいおじさまの家で過ごして基本的な生活を勉強したわ。だからかしらね、あたしがマグルっぽいの」
すらすらと決められたあらすじ通りの素性をしゃべって、ひょい、と肩をすくめる。
「そうなんだー、大変だったね」
ちょっとまて、それだけか。
「で、本当のところは?」
「は?」
よ、よし!間髪いれずに反応できたぞっっ
なんつー質問をするんですかいっっ
「・・・まぁ、いいけどさ。もうちょっと面白い話が出てくるのかと思ってたよ」
「いやぁねえ、ジェームズ。人生はそう劇的じゃないのよ。・・・っていっても十分あたしの人生波乱万丈な気はするけど」
「そうかもしれないね」
ふむ、と考え込んだジェームズがしきりと首をかしげている。
ちょっぴり、警戒心がわいた。
「それなら、僕にはわからないことがあるんだ。聞いたら答えてくれる?」
「なにを?なんでもどうぞ」
にっこり笑って、どうぞ、と促す。
「なにが、そんなに不安なんだい?」
「え?」
胸が、ずきんと痛んだ。
なにか、とんでもないようなことを訊かれた気がした。
手が、がくがくと震える。
なにを、訊かれたのだろう。
「ずっと、不思議に思っていた。どうして、君が、時折、そんな顔をするのか。どうして、彼らのような者たちとも物怖じせず、対等に付き合おうと出来る君が、あんな下級生達に一歩ひくのか。どうして――――」
「もう、結構よ」
それ以上続く言葉を聞きたくなくて、さえぎった。
怖い。
足元から、崩されてしまいそうで。
彼は・・・ジェームズは、何を言おうとしているのだろう。
何を、その目で・・・その頭脳で知りえたのか。
もしかしたら・・・全てを。
「何を言いたいの?」
「そんなに不安になる理由を教えてくれ」
「不安なんて・・・そうね。この闇一色の世界は・・・」
「そんなごまかしはいらないよ。僕には通じない」
そんなこと知ってるわよ。だって、ジェームズだから。
たとえ他の誰がだまされてくれたって、ジェームズはだませない。
だからこそ、アンドロメダのときも、リーマスのときも、いつだって、彼が真っ先に気づいたのだから。
彼が、ジェームズ・ポッターであるから。
「ジェームズ。あなたが何をいいたのか、あたしにはわからないわ」
「違うよね。わかりたくないんだ」
「・・・話をする気がないなら帰って」
マダムを呼んでしまえば、ジェームズは帰らなければならない。
たとえ一時しのぎであっても、否、このタイミングを逃せば、ジェームズはしばらくはこの話題を持ち出さない。
そうでなければ、こうまでタイミングを計って持ちかけるわけがない。
だから、かわしてしまえ。
こんな話を、したくない。
嫌だ。
ジェームズには、判ってしまうから。
こんな会話だけは、したくなかったのに。
「だから思ったんだ」
「やめて!」
「君は」
「ジェームズ!」
「君は、もしかしたら、怖いのかって」
ぎゅっと、目を瞑った。
そうだ。
あたしは、怖いのだ。
ずっと、ずっと、怖いのだから。
それを、暴き立てられたような気がした。
だけど、それは、まだ始まりでしかなかった。
ジェームズがふむ、と顎に手をあてて、じっと、底知れない目であたしを覗き込む。
「なにがそんなに不安なのさ。何が怖い。君がおびえているのは、闇の帝王でも、この時代でもない。いじめで自分が害されることでもない。では何だ。君が、サクラ・キリュウがおびえるのは、何に?」
何に。
そんなもの、はっきりしてる。
はっきり、してるのだ。
ずっと前から、知ってる。
自分が本当はなにを望んでいて、何を恐れているのか。
そんな自分がたまらなく嫌で、嫌いで、つらくて。
だから、変わろうと思ったのに。
またここでも、繰り返しだった。
「僕たちは、君を嫌いになったり、しないよ?」
ずしり、と心に突き刺さった。
おもくて、かたくて、動かしようのない重石のように。
わだかまっていたものをさらけ出されてしまった衝撃と、苦しさで。
「君が、求めているものはわからないけど、僕たちは、君を嫌いになったり、いらなくなったりしない。それが、友だちだろう?」
わからない。
だって、それはあたしが知っている友だちの形と、あまりに違いすぎるから。
だけど、そうありたいと願った。
その願いだけは、ずっと、ずっと、持っていた。
あこがれたのだ。
この、関係に。
羨ましくて。本当に、あこがれていた。
だけど、それが身近にあっても、自分の手には入らないのかもしれない。
今までのように。
そう思ったら、怖くなった。
信じ切れなかった。
いつ裏切られるのか、いつ、こいつはダメだと切り捨てられるのか。
あれほどあこがれて、あんな感情を持てる人たちなのだと羨んだのに。
今度はその人たちが目の前にいるのに、その感情をあたしに向けてくれるのか、思い悩んで。
なんで、いつもいつも逃げ腰なんだろう。
帰りたい。
それをまるで呪文のように唱えていたのは。
帰ることに執着しているのは、だからなのかもしれない。
まるで他人事のように思った。
「僕たちは、君に、どれだけ助けられたか判らないよ」
「え?」
「リーマスのことも、叔父さんのことも、シリウスのことも。・・・大体、シリウスと僕が友だちになったのだって君のおかげだ」
「そんなこと・・・」
「そりゃ、いつかは友だちになったと思うよ?だけど、こんなに早く、こんなに打ち解けられたかはわからないよ」
あたしは、知っている。あたしがいなくても、あなたたちは魂の双子であるほど仲が良かったから。
だけど、それを今言っても始まらない。
この世界は、あたしという要素を迎え入れてしまったから。
そのことで出来たゆがみがこんなにたくさんあるのだ、といまさらながらに思い知らされて。
「君がいてくれたから、起こったことがたくさんある。君がいるから、出逢えたもの、分かり合えたことがたくさんある。僕たちにそれを導いてくれたのは君で、それに感謝してる」
思いがけない言葉に、驚いた。
「感謝?」
「そうだよ」
一体何に?
感謝されるようなことは、してない。
むしろ、あなたたちの運命をゆがめた、そのことが、今の状況を生み出しているというのに・・・?
「君と出会えたことに、君という存在が僕たちに近いことに、君の、努力と優しさに。感謝してる。だから、怖がらないで。僕たちを信じてくれよ。僕たちが、君を信じているように。君を裏切ったりしない。僕たちはサクラ・キリュウと、ずっと友だちでいたいと思ってるんだよ。僕も、リーマスもね」
「リーマス、も?」
「狼男なのに、厭わないで、支えてくれて、僕たちと結び付けてくれたのはサクだろう」
「・・・そんな、前のこと」
「それを前のことって片付けられないぐらい、リーマスにとっても僕たちにとっても大事なことだったんだよ」
「・・・そう、なんだ」
ぼろっと涙がこぼれた。
不安に、ためらいに気付いてくれた。
欲しい言葉を、一番求めていた安心をくれる、ジェームズ。
「・・・あなたを好きになればよかった」
「僕を選んでくれるの?」
涙をぬぐいながら笑って、首をふる。
「ダメよ。あなたはリリーのだもの」
「その通り!僕はリリーに夢中なのさ」
その物言いに笑って、頬に落ちた涙をそっとぬぐった。
到底、恋愛感情にはたどり着かない。
ジェームズと一緒にいて、幸せになることはできるだろう。
あたしもジェームズも安定を知っている。
ほっとする、穏やかな日々を想像できる。
だけど、それは想像できてしまうし、そこに恋愛が介在しないこともわかってしまう。
お互いに。
それを楽だから、と選べればいいのに、ジェームズはリリーを選び、あたしはその事実を当然として受け止めている。
その時点で2人の関係はありえないのだから。
「シリウスを、好きになればいいのに」
「何言って・・・」
笑って顔を上げて、見つめたジェームズの目は、不思議な色をしていた。
真摯で、何を考えているかわからない、けれど、真剣にそれを願っているような、そんな目の色をしていた。
「あいつなら、君に応えられる」
「・・・・・・・・・・・・・ジェームズ」
「わかってるんだろう?だから・・・だから、君は、いつもシリウスの前では素の君だった」
わかっている?
わかっているわけがない。
自分のことなんて、わからない。
自分のことがわからないのに、シリウスのことなんてわかるわけがない。
「シリウスは、強い。何があっても人を愛し続けられる」
「・・・それは、あなたも」
「僕はそうあろうとするだけだよ。その心の中では・・・どこまでも人を疑っている。僕が唯一疑わなくてすむのは、シリウスだけだ」
その気持ちは、わかる。
シリウスだけは、不思議と信じられるのだ。
「不思議だよね、あのブラック一族の継嗣。ブラック家の教育を受けて、だますこともだまされない手法も全てを知り尽くして、必要があればそれを用いることを迷わないあのシリウスが、一番信用できるなんて」
それは、きっと、曲がることがないから。
彼の中に一本筋が通ったものは、永久に折れないだろうから。
「君は知ってる。シリウスが、心から大事だと思った人間には、無償の愛を注ぎ続けることを」
それは、ジェームズであったり、今はまだいないハリーであったり。
なぜ、と問いたくなるほど、未来の・・・『ハリーポッター』のシリウス・ブラックは、どこまでもジェームズを愛し続けた。
それを、どれほど羨ましく思っただろう。
こんな関係を築ける彼らを、ただ、羨ましく思った。
それは、まだ物語の中でしか彼らを知らなかったあの頃と変わらず。
今でも、あたしの中に確かにある、憧れだった。
「シリウスを、好きになりなよ・・・あいつの愛し方は、君に、向いてる」
だけど、あたしは彼に好きになってもらえるような人間?
こんなにいつも迷っていて、自分のこともわからないでいるのに。
だから、今、シリウスに嫌われてるんじゃないの?
「そして、サクの度量も、シリウスに向いてる。あいつは、どこまでもあふれる愛を受け止めて欲しいやつだ。その本気の重さに耐えられる人はほとんどいない。あいつは、愛することに飢えてる」
幸せになれるよ、と笑ったジェームズに、本気だ、と思った。
「もしかして、だからあたしとシリウスをくっつけようとしてるの?」
このところの動きは、もしかして。
本気でそう思っていたから、お互いを好きにさせようと動いてたわけ?
「君達、お似合いだと思うよ。全身で誰かを愛したいシリウスに、それを受け止められる君。誰かに愛してほしい君に、愛を注ぎ続けられるシリウス。ほら。ぴったりお似合いじゃないか」
そう無邪気ににこにこと言うジェームズに、思わず噴出した。
なんともあっけらかんと、そんなことを言う彼が、子どものようで。
まったく、その洞察力も思考も子どものものじゃないのに、こんなときの笑顔は子どもそのものだ。
「あなただって、受け止められるでしょうに」
「そうだね。だけど、そこには致命的な欠陥があるんだよ」
「なに?」
「僕は、男だ」
そう、神妙な顔で言ったジェームズに、あたしはきょとんとした。
そして、後にジェームズがあの台詞だけは参った、と恐れおののく一言を告げる。
それはもう、そんな意図なんてまったくなく。
「それがどうした」
たかが性別。
すこぉしだけダンブルドアと遊んで、休んで、と思ったその矢先、ダンブルドアは呼び出されていなくなった。
でもマダム・ポンフリーとのお休みデイは解消されなかったらしく、1日だけ、あたしはマダムのお説教をきく羽目になった・・・・・・。
いや、このお方には度々度々ご迷惑をおかけてしてしまっているので、実は頭が上がらない。
そして、夕刻にはぞろぞろといろんな人たちがお見舞いにきて、去っていった。
そんな、食べ物吐いたぐらいで死ぬわけじゃなし・・・ねぇ?
そんな中で長居をしていったのはやっぱりリリーたちと、ジェームズだった。
リーマスは心配そうに気遣って、近くの森からとってきたという爽やかそうな果物をくれた。
っていうか、これ禁じられた森のものじゃなかろうか。
・・・た、食べて大丈夫かなぁ?
失礼だから言わないけど。
ピーターはなにやらメッセージカードをくれた・・・。
イラネ。
といっては失礼ですか。
でもねえ?マギーの目があるところでそんなこと言うわけにもいかんし・・・。
みんなの授業のおもしろ話にけらけら笑うあたしをみてみんなほっとしたのかなんなのか。
ぞろぞろと戻っていってくれたのですが。が。
なんでかジェームズだけが居座っていた。
さすがに疲れたのでお引取りいただきたいなぁ・・・なんて。
元気は元気だけど、ダンブルドアに泣きついてちょっと気持ちが楽にはなったけど。
まだまだ誰かさんの顔をみたい気分でもないし、あなたのお話に付き合える気力もないっす。
「サクラ」
「んー?」
「君の生い立ちを聞きたいんだけど、いいかな?」
「・・・・・・は?なにをいまさら」
「いや、ちゃんと聞いたこと、なかったなあと思って」
はぁ、まあいいけど・・・。
「えーと、キリュウ家に生まれて、2歳のときに、家族が全部殺されたらしいわね。ぜんっぜん覚えてないけど。ちなみにあたしが助かったのは、その檻の中にいなかったから、らしいわ。覚えているのは引き取ってくれた養父母のところでの生活。昔は本当の親だと思ってたわ。普通のマグル・・・それも日本人だったわよ。普通に日本で普通の子どもとして育ってたけど、11歳になるときにダンブルドアがお迎えにきてくださって、母の遠縁に当たるおじさまと一緒に暮らしてホグワーツにかようことになったの。ホグワーツに来る前に3ヶ月ぐらいおじさまの家で過ごして基本的な生活を勉強したわ。だからかしらね、あたしがマグルっぽいの」
すらすらと決められたあらすじ通りの素性をしゃべって、ひょい、と肩をすくめる。
「そうなんだー、大変だったね」
ちょっとまて、それだけか。
「で、本当のところは?」
「は?」
よ、よし!間髪いれずに反応できたぞっっ
なんつー質問をするんですかいっっ
「・・・まぁ、いいけどさ。もうちょっと面白い話が出てくるのかと思ってたよ」
「いやぁねえ、ジェームズ。人生はそう劇的じゃないのよ。・・・っていっても十分あたしの人生波乱万丈な気はするけど」
「そうかもしれないね」
ふむ、と考え込んだジェームズがしきりと首をかしげている。
ちょっぴり、警戒心がわいた。
「それなら、僕にはわからないことがあるんだ。聞いたら答えてくれる?」
「なにを?なんでもどうぞ」
にっこり笑って、どうぞ、と促す。
「なにが、そんなに不安なんだい?」
「え?」
胸が、ずきんと痛んだ。
なにか、とんでもないようなことを訊かれた気がした。
手が、がくがくと震える。
なにを、訊かれたのだろう。
「ずっと、不思議に思っていた。どうして、君が、時折、そんな顔をするのか。どうして、彼らのような者たちとも物怖じせず、対等に付き合おうと出来る君が、あんな下級生達に一歩ひくのか。どうして――――」
「もう、結構よ」
それ以上続く言葉を聞きたくなくて、さえぎった。
怖い。
足元から、崩されてしまいそうで。
彼は・・・ジェームズは、何を言おうとしているのだろう。
何を、その目で・・・その頭脳で知りえたのか。
もしかしたら・・・全てを。
「何を言いたいの?」
「そんなに不安になる理由を教えてくれ」
「不安なんて・・・そうね。この闇一色の世界は・・・」
「そんなごまかしはいらないよ。僕には通じない」
そんなこと知ってるわよ。だって、ジェームズだから。
たとえ他の誰がだまされてくれたって、ジェームズはだませない。
だからこそ、アンドロメダのときも、リーマスのときも、いつだって、彼が真っ先に気づいたのだから。
彼が、ジェームズ・ポッターであるから。
「ジェームズ。あなたが何をいいたのか、あたしにはわからないわ」
「違うよね。わかりたくないんだ」
「・・・話をする気がないなら帰って」
マダムを呼んでしまえば、ジェームズは帰らなければならない。
たとえ一時しのぎであっても、否、このタイミングを逃せば、ジェームズはしばらくはこの話題を持ち出さない。
そうでなければ、こうまでタイミングを計って持ちかけるわけがない。
だから、かわしてしまえ。
こんな話を、したくない。
嫌だ。
ジェームズには、判ってしまうから。
こんな会話だけは、したくなかったのに。
「だから思ったんだ」
「やめて!」
「君は」
「ジェームズ!」
「君は、もしかしたら、怖いのかって」
ぎゅっと、目を瞑った。
そうだ。
あたしは、怖いのだ。
ずっと、ずっと、怖いのだから。
それを、暴き立てられたような気がした。
だけど、それは、まだ始まりでしかなかった。
ジェームズがふむ、と顎に手をあてて、じっと、底知れない目であたしを覗き込む。
「なにがそんなに不安なのさ。何が怖い。君がおびえているのは、闇の帝王でも、この時代でもない。いじめで自分が害されることでもない。では何だ。君が、サクラ・キリュウがおびえるのは、何に?」
何に。
そんなもの、はっきりしてる。
はっきり、してるのだ。
ずっと前から、知ってる。
自分が本当はなにを望んでいて、何を恐れているのか。
そんな自分がたまらなく嫌で、嫌いで、つらくて。
だから、変わろうと思ったのに。
またここでも、繰り返しだった。
「僕たちは、君を嫌いになったり、しないよ?」
ずしり、と心に突き刺さった。
おもくて、かたくて、動かしようのない重石のように。
わだかまっていたものをさらけ出されてしまった衝撃と、苦しさで。
「君が、求めているものはわからないけど、僕たちは、君を嫌いになったり、いらなくなったりしない。それが、友だちだろう?」
わからない。
だって、それはあたしが知っている友だちの形と、あまりに違いすぎるから。
だけど、そうありたいと願った。
その願いだけは、ずっと、ずっと、持っていた。
あこがれたのだ。
この、関係に。
羨ましくて。本当に、あこがれていた。
だけど、それが身近にあっても、自分の手には入らないのかもしれない。
今までのように。
そう思ったら、怖くなった。
信じ切れなかった。
いつ裏切られるのか、いつ、こいつはダメだと切り捨てられるのか。
あれほどあこがれて、あんな感情を持てる人たちなのだと羨んだのに。
今度はその人たちが目の前にいるのに、その感情をあたしに向けてくれるのか、思い悩んで。
なんで、いつもいつも逃げ腰なんだろう。
帰りたい。
それをまるで呪文のように唱えていたのは。
帰ることに執着しているのは、だからなのかもしれない。
まるで他人事のように思った。
「僕たちは、君に、どれだけ助けられたか判らないよ」
「え?」
「リーマスのことも、叔父さんのことも、シリウスのことも。・・・大体、シリウスと僕が友だちになったのだって君のおかげだ」
「そんなこと・・・」
「そりゃ、いつかは友だちになったと思うよ?だけど、こんなに早く、こんなに打ち解けられたかはわからないよ」
あたしは、知っている。あたしがいなくても、あなたたちは魂の双子であるほど仲が良かったから。
だけど、それを今言っても始まらない。
この世界は、あたしという要素を迎え入れてしまったから。
そのことで出来たゆがみがこんなにたくさんあるのだ、といまさらながらに思い知らされて。
「君がいてくれたから、起こったことがたくさんある。君がいるから、出逢えたもの、分かり合えたことがたくさんある。僕たちにそれを導いてくれたのは君で、それに感謝してる」
思いがけない言葉に、驚いた。
「感謝?」
「そうだよ」
一体何に?
感謝されるようなことは、してない。
むしろ、あなたたちの運命をゆがめた、そのことが、今の状況を生み出しているというのに・・・?
「君と出会えたことに、君という存在が僕たちに近いことに、君の、努力と優しさに。感謝してる。だから、怖がらないで。僕たちを信じてくれよ。僕たちが、君を信じているように。君を裏切ったりしない。僕たちはサクラ・キリュウと、ずっと友だちでいたいと思ってるんだよ。僕も、リーマスもね」
「リーマス、も?」
「狼男なのに、厭わないで、支えてくれて、僕たちと結び付けてくれたのはサクだろう」
「・・・そんな、前のこと」
「それを前のことって片付けられないぐらい、リーマスにとっても僕たちにとっても大事なことだったんだよ」
「・・・そう、なんだ」
ぼろっと涙がこぼれた。
不安に、ためらいに気付いてくれた。
欲しい言葉を、一番求めていた安心をくれる、ジェームズ。
「・・・あなたを好きになればよかった」
「僕を選んでくれるの?」
涙をぬぐいながら笑って、首をふる。
「ダメよ。あなたはリリーのだもの」
「その通り!僕はリリーに夢中なのさ」
その物言いに笑って、頬に落ちた涙をそっとぬぐった。
到底、恋愛感情にはたどり着かない。
ジェームズと一緒にいて、幸せになることはできるだろう。
あたしもジェームズも安定を知っている。
ほっとする、穏やかな日々を想像できる。
だけど、それは想像できてしまうし、そこに恋愛が介在しないこともわかってしまう。
お互いに。
それを楽だから、と選べればいいのに、ジェームズはリリーを選び、あたしはその事実を当然として受け止めている。
その時点で2人の関係はありえないのだから。
「シリウスを、好きになればいいのに」
「何言って・・・」
笑って顔を上げて、見つめたジェームズの目は、不思議な色をしていた。
真摯で、何を考えているかわからない、けれど、真剣にそれを願っているような、そんな目の色をしていた。
「あいつなら、君に応えられる」
「・・・・・・・・・・・・・ジェームズ」
「わかってるんだろう?だから・・・だから、君は、いつもシリウスの前では素の君だった」
わかっている?
わかっているわけがない。
自分のことなんて、わからない。
自分のことがわからないのに、シリウスのことなんてわかるわけがない。
「シリウスは、強い。何があっても人を愛し続けられる」
「・・・それは、あなたも」
「僕はそうあろうとするだけだよ。その心の中では・・・どこまでも人を疑っている。僕が唯一疑わなくてすむのは、シリウスだけだ」
その気持ちは、わかる。
シリウスだけは、不思議と信じられるのだ。
「不思議だよね、あのブラック一族の継嗣。ブラック家の教育を受けて、だますこともだまされない手法も全てを知り尽くして、必要があればそれを用いることを迷わないあのシリウスが、一番信用できるなんて」
それは、きっと、曲がることがないから。
彼の中に一本筋が通ったものは、永久に折れないだろうから。
「君は知ってる。シリウスが、心から大事だと思った人間には、無償の愛を注ぎ続けることを」
それは、ジェームズであったり、今はまだいないハリーであったり。
なぜ、と問いたくなるほど、未来の・・・『ハリーポッター』のシリウス・ブラックは、どこまでもジェームズを愛し続けた。
それを、どれほど羨ましく思っただろう。
こんな関係を築ける彼らを、ただ、羨ましく思った。
それは、まだ物語の中でしか彼らを知らなかったあの頃と変わらず。
今でも、あたしの中に確かにある、憧れだった。
「シリウスを、好きになりなよ・・・あいつの愛し方は、君に、向いてる」
だけど、あたしは彼に好きになってもらえるような人間?
こんなにいつも迷っていて、自分のこともわからないでいるのに。
だから、今、シリウスに嫌われてるんじゃないの?
「そして、サクの度量も、シリウスに向いてる。あいつは、どこまでもあふれる愛を受け止めて欲しいやつだ。その本気の重さに耐えられる人はほとんどいない。あいつは、愛することに飢えてる」
幸せになれるよ、と笑ったジェームズに、本気だ、と思った。
「もしかして、だからあたしとシリウスをくっつけようとしてるの?」
このところの動きは、もしかして。
本気でそう思っていたから、お互いを好きにさせようと動いてたわけ?
「君達、お似合いだと思うよ。全身で誰かを愛したいシリウスに、それを受け止められる君。誰かに愛してほしい君に、愛を注ぎ続けられるシリウス。ほら。ぴったりお似合いじゃないか」
そう無邪気ににこにこと言うジェームズに、思わず噴出した。
なんともあっけらかんと、そんなことを言う彼が、子どものようで。
まったく、その洞察力も思考も子どものものじゃないのに、こんなときの笑顔は子どもそのものだ。
「あなただって、受け止められるでしょうに」
「そうだね。だけど、そこには致命的な欠陥があるんだよ」
「なに?」
「僕は、男だ」
そう、神妙な顔で言ったジェームズに、あたしはきょとんとした。
そして、後にジェームズがあの台詞だけは参った、と恐れおののく一言を告げる。
それはもう、そんな意図なんてまったくなく。
「それがどうした」
たかが性別。