5年生(親世代) 製作中
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30
「サクラ!」
「レギュ・・・」
名前も呼ばないうちからがっつり捕まえられた。
「だから言わないことではない!あれほど気をつけるように言ったではありませんか!」
は、は、はい。
言われました、はい。
「ジラ・マッケンジーに退学を迫られたそうですね?しかもその後にはめられそうになったとか」
「はい。されました。ごめんなさい」
「謝罪されても困ります。・・・まったく。一番簡単であったはずの事柄にはめられるとは・・・油断ゆえということにしておきたいのですが?」
「そうしておいてください・・・」
ひたすら謝ります。
・・・くそう。昔はあたしに抱えられておしりぺんぺんされるかわいい子だったのに、いつの間にこんなにでかく且つ可愛くなく育ったのか。
あたしはこんな子に育てた覚えはありませんっ
「いいですか。警戒心が足りないのはほめられたことではないのですよ?一人にならない、人気のないところにいかない、常に誰かの目を身近においておく。基本中の基本では有りませんか。今後はくれぐれも気をつけて・・・」
「はい!はい、わかりました!ほんっとーにあたしが悪かった!!」
くどくどうるさいいぃぃぃぃぃ。
この小姑め。
男の細かいのはもてないぞー!
「この後の危険は今回の比ではないでしょう。・・・あなたが心配なのですよ」
・・・・・・・・・・・・・こ、の・・・兄弟そろってタラシめ・・・。
そんな手を握って間近で覗き込まれてあなたが心配なのですとか超絶美形にやられて平気な女がいるもんかい。
ちくしょう。シリウスみたいに日常生活破綻してたり、女にだらしなかったり、馬鹿犬だったりするところを見てれば思い出して冷静になることもできるっつーに。
・・・いや、でもこいつも昔はあたしにおしりぺんぺんされるわ、底意地の悪いいじめやってお説教されるわ、あたしに杖で悪戯しかけてシリウスにおしおきされるわ・・・あれ?意外といろんなことやってるぞ。
「心配してくれてありがとう。これからもよろしくね」
がっちり手を握りかえして約束を取り付ける。
・・・考えてみりゃ?あれだけ面倒みてんだからみさせて当然よね!?
「ええ。義姉上」
だからその呼び方やめいっつの。
「しかし、母上がそのような呪いを・・・僕からも解いていただけないかお願いしてみましょう」
「ありがとう」
うん。素直に。
なんか問題が、とか親子関係が、とかそんなもん悪いけど気遣っている場合じゃない。
考えなきゃならないこと、渦巻いている思い、切迫してきている状況が重なり合って、もうあたしの能力には負えないからねー!!
「母上も、あなたと兄上の様子を見れば考えを改めると思うのですが・・・決して悪意あってのことではないと思うのです。ですから・・・」
・・・いや、悪意あってのことだと思うよ。
だけどまあ・・・この子には優しい母親なんだろう。
なんか間違った優しさ向けてそうな気もするけど。
そのレギュラスにお母さんの悪口を言ったり、その認識を改めなさいとか説教するのは違うと思う。
だからね。
「判ってるから、大丈夫だよ」
ぎゅっと抱きしめて、ぽんぽんと背中をたたく。
「サクラっ!」
ぎょっとしているレギュラスを放して、高くて届かない頭の代わりに背中を叩いて。
・・・しかし、ホントでかいよね、この兄弟・・・。
「・・・あなたは・・・このようなことなさらないでください。人が見たら・・・」
「うん?はいはい」
「・・・・・・・・・」
ため息をつくなんてちょとやなかんじ。
と、ガタン、と音がした。
「そこにいるのは誰だ?」
その声に顔を上げると、いたのはあのセブちゃんと一緒にいたヒトだった。
うげ。近寄りたくなかったのに。
二度と会いたくないとか思った端から遭遇するか。
この人はなんとなく嫌な感じがする。
感じ、で避けちゃ悪いかなあとも思うんだけどねえ。
このホグワーツ、人気のないとことか人目につかないところには事欠かない。
だからあの仕掛け人どもがはびこるんだけどさ。
「ブラック?」
「これは、シェレーフィ先輩。なんでしょう?」
え、このひとシェレーフィっていう名前だったのか。
あ、そっか。同じスリザリンでした。知っててとうぜんだよね。
ってか言いにくい。覚えにくい。シェ、シェレーフィ?どこの国の人…?
「そんなところで女性を問い詰めるものではないよ。それも彼女のはきみの兄上の・・・あまり外聞は良くないのでは?」
「兄上の妻となる方であれば僕にとっては義姉。誰よりも親しく話させていただいて当然と思いますが。下衆のかんぐりなど僕には何の関係もない」
目をみひらいた少年がなぜか知らないがあせった調子で顔色を変えている。
「妻!?それはすでに決まったことなのか?」
「あなたになんの関係が?」
「ミス・キリュウ!本当にブラックと結婚されるのか!」
いやいやいやいや。ないから。
「・・・あたしゃまだ16だって」
この台詞がこれほど白々しーく聞こえるとは。
あたしのどこが16なんだろうね?
むしろシリウスがまだ16だって。
「レギュラスも勝手に突っ走らない。あたしはシリウスと結婚するなんて一言も言ってないし、シリウスもそんなこと思ってないわよ」
「・・・僕はそうなると思っていますけれど?」
「ありがとう」
言っても無駄なのは判っているのでにっこりわらって返しておく。
「そ、そうか・・・」
・・・なんでそんなにほっとしているのだろうね、この人。
・・・まさかこれまたブラック夫人の息がかかってるとかじゃないよねえ?
もしそうならほんとに勘弁してください。
今あたしは、極力ブラック家にかかわりたいと思わない。
隣にいるレギュラスだってあのお母様と似すぎていて恐いぐらいなんだから。
まして、シリウスなんて。
「では、今はまだ違うのか」
なにが?と首を傾げたあたしの横で、レギュラスが顔をしかめた。
「サクラ・キリュウ」
「はい?」
返事をして一歩前に出ようとしたあたしをレギュラスが引き寄せる。
「ちょっと、レギュラス・・・」
「ブラック、はずしてくれないか?」
「お断りします」
なんか黒いものが見えるよ。黒いものが。
レギュラスが黒くなってる・・・!?
あんなに可愛かったのに・・・。
前言撤回。やな方に成長したなぁ・・・。
いや、あの陰険母から考えるとましなのか。うーん・・・。
「義姉におかしな虫が近寄らないように守るのも僕の役目ですから」
「だが、彼女は否定した」
「それがなにか?」
むっとしたように眉をしかめた彼の・・・名前を実は知らなかったりする。
セブちゃんと一緒にいたときも特に名前は呼ばれてなかったしなあ。
「君に彼女を拘束する権利はないと思うのだが。ましてシリウス・ブラックの婚約者ではないと言う彼女を男たちから守るなどということは君の傲慢でしかないのでは?」
「何故あなたにそこまでいわれなければならないのか理解が出来ませんね。それから気安く兄の名を呼ばないでいただけますか?ハーフブラッドのあなたなどが近づくことも許されない人なのですから」
・・・へ。この人スリザリンだよね?
ハーフブラッドだったの?
そういえばセブちゃんもだっけ・・・。
スリザリンでも純血じゃないひとはいるんだねえ。
生きにくいだろうなあ。
あたしにゃ関係ないけど。
「ミス・キリュウ。あなたもそう思っているのか?」
「ううん」
「サクラ!」
非難じみた声が横であがったけれど、そんなものにかまっても仕方ない。
「あたしは純血主義ではないし、ハーフブラッドでもなんでも関係ないし、シリウスの婚約者でもない。だからと言って、レギュラスに離れろっていう気もないのよ。なんか弟みたいでかわいいし」
「ありがとうございます」
向けられたのはレギュラスの文句のつけようのない笑顔と、彼の信じられないという顔。
「そうですか・・・」
そりゃそうでしょう。
あたし、この人のことさっぱり知らないんだけど、どこのどなたさま。
っていうか同学年なはずなんだけど見たことないって変じゃない?
編入生なのかなあ。
でも魔法学校はどこも寄宿舎制だから編入ってどんな意味があるのかね。
引越し関係ないだろうし。
スリザリンなのは、わかる。
わかるんだけど、1年とか2年のときの合同授業にいたー?
天文学とか合同だったけど覚えてない・・・。
全員と知り合いなわけじゃないし、人の顔おぼえるのも得意じゃないけど、4年も一緒だったらいくらなんでも顔見知りになるわよ。
実際ほとんどの子たちがそうだし。
いや、好き嫌いはあるけど。
「なるほど・・・付き合った時間の差でしょうか。僕は3年で編入してきましたし」
あ、やっぱり編入生なんだ。
「この身にはたしかにマグルの汚らわしい血が流れている。だが、私の両親は魔法使いであり、魔女だ」
「ええ。あなたの母上がハーフでしたね」
・・・それって純血って言っていいんじゃないのー?
っていうか、生まれる場所は誰も選べないよ。
なのに出自で差別くらうってきつくない?
「だからこそ、ブラック家の血が保たれていることにはとても重要な意味があると思う。その血統を途絶えさせてはならないんだ。彼らの血には一片のくもりもゆるされない」
・・・アレか。もしかして、日本で皇族が何代だか忘れたけどずっと男子の血で一系が続いてきてる からそれをとだえさせちゃいかんとか、言ってるのと同じか。
いや、考え方は人それぞれだけどさ・・・。
守ろうとする人間もいればどうでもいいって言ってる人間もいて、どこまで信憑性があるのか疑う人間もいるってことだよ、うん。
「あなたの出自はあやしい」
・・・・・・・・・・げ。
いや、あやしいよ。あやしいっていうか嘘だよ。
そもそもマグル生まれのマグル育ちで元々魔法使いですらありゃしない。
っていうかこの世界の人間ですらないからねえ・・・。
「本当にキリュウ家の末裔なのか?」
「それ以上の侮辱は我等に対する侮辱と受け取るがいかがか」
心臓まで凍りそうな冷たい声が彼の弁舌を見事に途切れさせた。
「彼女の後見は親戚筋のダンブルドアであり、その血筋は魔法省の戸籍が保障している」
「だが彼女の持つ力はキリュウ家としては異色のものであると噂されている」
「それがどうした。予言者はもとより血筋のみで生まれるわけではない。彼女の力は、キリュウ家が存続していれば喜びを持って受け入れられただろう」
「今となってはそれもわからない。問題なのは、わからないものを根拠に君たちの、ブラック家やマルフォイ家といった尊い血を彼女が手にいれようとしているのなら・・・」
「ミスタ・シェレーフィ!」
いつになく熱くなっているレギュラスからすっと視線をそらしたシェレーフィは、あたしをにらみつけるようにして厳しい口調で言った。
「もし、あなたが本当にキリュウ家の末裔だというのなら、その再興を考えないはずがない。だとすれば、ブラック家直系やルシウス・マルフォイを狙うのはありえない」
あー、ありえないね。かなり。
だって自分のおうちがあってそれを継ぐことが決まってる男どもに粉かけたってなんの意味もなければ利益もないもんね。
むしろ妙な噂が縁談の邪魔になるっていうか。
ただし、それは夫がほしければ、の話。
再興したいならもう一つ道がある。
むかぁしむかしのフランス王家みたいなもんで。
妻になるんじゃなくて愛妾として子どもを生んで、それを跡継ぎにするってことも可能だったりするのよね。
そうすれば血は保障されてるし、つながりがあるからそちらの家とも縁があるから援助を受けられるし、再興してしまえば夫がいなくても血の出所がはっきりしているから邪魔にもならない。純粋にキリュウ家の跡取りの子どもも出来る。ブラック家にしてもマルフォイ家にしてもその子が、当主の子であれば、絶対に無視できない。
・・・あくまでしたいなら、ね。
一時期、これ、ルシウスやセブちゃんにもそれ狙ってんの?みたいなこと聞かれたもん。
「もし、すでに婚約者としてあなたが認められているのなら、その血筋をブラック家が正しいと認め、家に迎え入れるということだ。だが・・・先日の騒ぎ」
ざっと、レギュラスがあたしをかばうように前に出た。
そのぐらい、冷たい視線。
いや、冷たいだけじゃない。憎しみすら感じられる視線。
「ブラック夫人があなたを認めていないのではないかと思った。ルシウス・マルフォイとも別れたと聞いた。それならば・・・それならば、あなたは」
「立ち去れ。貴様のような男と話す価値もない。彼女はサクラ・キリュウであり、ダンブルドアの庇護を受けるものであり、キリュウ家の純血だ。そして、貴様のような腐った性根のものとは決して相容れない女性だ。近寄ることすら汚らわしい。これ以上腐った口をきくのなら、僕が力ずくで排除する」
目の前に立ちふさがるレギュラスの背中から、肌がぴりぴりと痛いほどの魔力を感じる。
レギュラスは本気で、彼を攻撃しようとしている。
それも、その辺の呪いじゃない。
「・・・今は退こう。だが、僕の言ったことを・・・」
「くどい!」
構えられた杖に言葉を切ったシェ、シェレーフィが口をつぐみ、レギュラスに礼をして、去っていった。
うええええ、なんなのさこの修羅場。
「あの男にはくれぐれも気をつけてください。近寄らないように。あんな男を気安く身に寄せないでください、義姉上」
「えーと・・・・・・うん?・・・はい。たぶん」
「・・・・・・・まったく、あなたは・・・・・・」
・・・なんか変なこと言ったかね?
「先日のジラ・マッケンジーの件ですこしは懲りていただきたいものですね。くれぐれも注意すること。人のいないところに行かない、誰かと一緒に行動する。少なくとも3人以上ですよ?それから・・・」
はい、はい。重々判りました。
こくこくと頷いて大丈夫だからと引きつった笑いを浮かべたあたしに、まだ疑うような視線をむけていたけど、やがてあきらめたようだった。
もうこれ以上混乱も考えるのもご勘弁。
頭煮えそうだってばよー!!
とりあえず今の一件は忘れることにする。うん。
「ああ、忘れるところでした」
なに。まだなにかっ!?
「え?」
「はい、どうぞ」
予想に反して差し出されたのは、シンプルな深紅の小さな袋にリボンが結ばれた包み。
手のひらにころんと収まるくらいのサイズのそれは、ふわりといいにおいがした。
「どうしたの?これ」
ガサガサいう手触りからしてもポプリの入ったサシェだった。
「眠りが浅いのでしょう?くまができています」
「あー・・・うん、まあ・・・」
最近寝る時間も少なかったし、頭が冴えててうとうとすると目が覚めるようなそんな睡眠状況だった。
ほんっと大量に襲ってくるレポートがうらめしい。
「すこしは気が安くなるでしょう」
「・・・ありがと」
素直にその気遣いが嬉しかった。
「サクラ!」
「レギュ・・・」
名前も呼ばないうちからがっつり捕まえられた。
「だから言わないことではない!あれほど気をつけるように言ったではありませんか!」
は、は、はい。
言われました、はい。
「ジラ・マッケンジーに退学を迫られたそうですね?しかもその後にはめられそうになったとか」
「はい。されました。ごめんなさい」
「謝罪されても困ります。・・・まったく。一番簡単であったはずの事柄にはめられるとは・・・油断ゆえということにしておきたいのですが?」
「そうしておいてください・・・」
ひたすら謝ります。
・・・くそう。昔はあたしに抱えられておしりぺんぺんされるかわいい子だったのに、いつの間にこんなにでかく且つ可愛くなく育ったのか。
あたしはこんな子に育てた覚えはありませんっ
「いいですか。警戒心が足りないのはほめられたことではないのですよ?一人にならない、人気のないところにいかない、常に誰かの目を身近においておく。基本中の基本では有りませんか。今後はくれぐれも気をつけて・・・」
「はい!はい、わかりました!ほんっとーにあたしが悪かった!!」
くどくどうるさいいぃぃぃぃぃ。
この小姑め。
男の細かいのはもてないぞー!
「この後の危険は今回の比ではないでしょう。・・・あなたが心配なのですよ」
・・・・・・・・・・・・・こ、の・・・兄弟そろってタラシめ・・・。
そんな手を握って間近で覗き込まれてあなたが心配なのですとか超絶美形にやられて平気な女がいるもんかい。
ちくしょう。シリウスみたいに日常生活破綻してたり、女にだらしなかったり、馬鹿犬だったりするところを見てれば思い出して冷静になることもできるっつーに。
・・・いや、でもこいつも昔はあたしにおしりぺんぺんされるわ、底意地の悪いいじめやってお説教されるわ、あたしに杖で悪戯しかけてシリウスにおしおきされるわ・・・あれ?意外といろんなことやってるぞ。
「心配してくれてありがとう。これからもよろしくね」
がっちり手を握りかえして約束を取り付ける。
・・・考えてみりゃ?あれだけ面倒みてんだからみさせて当然よね!?
「ええ。義姉上」
だからその呼び方やめいっつの。
「しかし、母上がそのような呪いを・・・僕からも解いていただけないかお願いしてみましょう」
「ありがとう」
うん。素直に。
なんか問題が、とか親子関係が、とかそんなもん悪いけど気遣っている場合じゃない。
考えなきゃならないこと、渦巻いている思い、切迫してきている状況が重なり合って、もうあたしの能力には負えないからねー!!
「母上も、あなたと兄上の様子を見れば考えを改めると思うのですが・・・決して悪意あってのことではないと思うのです。ですから・・・」
・・・いや、悪意あってのことだと思うよ。
だけどまあ・・・この子には優しい母親なんだろう。
なんか間違った優しさ向けてそうな気もするけど。
そのレギュラスにお母さんの悪口を言ったり、その認識を改めなさいとか説教するのは違うと思う。
だからね。
「判ってるから、大丈夫だよ」
ぎゅっと抱きしめて、ぽんぽんと背中をたたく。
「サクラっ!」
ぎょっとしているレギュラスを放して、高くて届かない頭の代わりに背中を叩いて。
・・・しかし、ホントでかいよね、この兄弟・・・。
「・・・あなたは・・・このようなことなさらないでください。人が見たら・・・」
「うん?はいはい」
「・・・・・・・・・」
ため息をつくなんてちょとやなかんじ。
と、ガタン、と音がした。
「そこにいるのは誰だ?」
その声に顔を上げると、いたのはあのセブちゃんと一緒にいたヒトだった。
うげ。近寄りたくなかったのに。
二度と会いたくないとか思った端から遭遇するか。
この人はなんとなく嫌な感じがする。
感じ、で避けちゃ悪いかなあとも思うんだけどねえ。
このホグワーツ、人気のないとことか人目につかないところには事欠かない。
だからあの仕掛け人どもがはびこるんだけどさ。
「ブラック?」
「これは、シェレーフィ先輩。なんでしょう?」
え、このひとシェレーフィっていう名前だったのか。
あ、そっか。同じスリザリンでした。知っててとうぜんだよね。
ってか言いにくい。覚えにくい。シェ、シェレーフィ?どこの国の人…?
「そんなところで女性を問い詰めるものではないよ。それも彼女のはきみの兄上の・・・あまり外聞は良くないのでは?」
「兄上の妻となる方であれば僕にとっては義姉。誰よりも親しく話させていただいて当然と思いますが。下衆のかんぐりなど僕には何の関係もない」
目をみひらいた少年がなぜか知らないがあせった調子で顔色を変えている。
「妻!?それはすでに決まったことなのか?」
「あなたになんの関係が?」
「ミス・キリュウ!本当にブラックと結婚されるのか!」
いやいやいやいや。ないから。
「・・・あたしゃまだ16だって」
この台詞がこれほど白々しーく聞こえるとは。
あたしのどこが16なんだろうね?
むしろシリウスがまだ16だって。
「レギュラスも勝手に突っ走らない。あたしはシリウスと結婚するなんて一言も言ってないし、シリウスもそんなこと思ってないわよ」
「・・・僕はそうなると思っていますけれど?」
「ありがとう」
言っても無駄なのは判っているのでにっこりわらって返しておく。
「そ、そうか・・・」
・・・なんでそんなにほっとしているのだろうね、この人。
・・・まさかこれまたブラック夫人の息がかかってるとかじゃないよねえ?
もしそうならほんとに勘弁してください。
今あたしは、極力ブラック家にかかわりたいと思わない。
隣にいるレギュラスだってあのお母様と似すぎていて恐いぐらいなんだから。
まして、シリウスなんて。
「では、今はまだ違うのか」
なにが?と首を傾げたあたしの横で、レギュラスが顔をしかめた。
「サクラ・キリュウ」
「はい?」
返事をして一歩前に出ようとしたあたしをレギュラスが引き寄せる。
「ちょっと、レギュラス・・・」
「ブラック、はずしてくれないか?」
「お断りします」
なんか黒いものが見えるよ。黒いものが。
レギュラスが黒くなってる・・・!?
あんなに可愛かったのに・・・。
前言撤回。やな方に成長したなぁ・・・。
いや、あの陰険母から考えるとましなのか。うーん・・・。
「義姉におかしな虫が近寄らないように守るのも僕の役目ですから」
「だが、彼女は否定した」
「それがなにか?」
むっとしたように眉をしかめた彼の・・・名前を実は知らなかったりする。
セブちゃんと一緒にいたときも特に名前は呼ばれてなかったしなあ。
「君に彼女を拘束する権利はないと思うのだが。ましてシリウス・ブラックの婚約者ではないと言う彼女を男たちから守るなどということは君の傲慢でしかないのでは?」
「何故あなたにそこまでいわれなければならないのか理解が出来ませんね。それから気安く兄の名を呼ばないでいただけますか?ハーフブラッドのあなたなどが近づくことも許されない人なのですから」
・・・へ。この人スリザリンだよね?
ハーフブラッドだったの?
そういえばセブちゃんもだっけ・・・。
スリザリンでも純血じゃないひとはいるんだねえ。
生きにくいだろうなあ。
あたしにゃ関係ないけど。
「ミス・キリュウ。あなたもそう思っているのか?」
「ううん」
「サクラ!」
非難じみた声が横であがったけれど、そんなものにかまっても仕方ない。
「あたしは純血主義ではないし、ハーフブラッドでもなんでも関係ないし、シリウスの婚約者でもない。だからと言って、レギュラスに離れろっていう気もないのよ。なんか弟みたいでかわいいし」
「ありがとうございます」
向けられたのはレギュラスの文句のつけようのない笑顔と、彼の信じられないという顔。
「そうですか・・・」
そりゃそうでしょう。
あたし、この人のことさっぱり知らないんだけど、どこのどなたさま。
っていうか同学年なはずなんだけど見たことないって変じゃない?
編入生なのかなあ。
でも魔法学校はどこも寄宿舎制だから編入ってどんな意味があるのかね。
引越し関係ないだろうし。
スリザリンなのは、わかる。
わかるんだけど、1年とか2年のときの合同授業にいたー?
天文学とか合同だったけど覚えてない・・・。
全員と知り合いなわけじゃないし、人の顔おぼえるのも得意じゃないけど、4年も一緒だったらいくらなんでも顔見知りになるわよ。
実際ほとんどの子たちがそうだし。
いや、好き嫌いはあるけど。
「なるほど・・・付き合った時間の差でしょうか。僕は3年で編入してきましたし」
あ、やっぱり編入生なんだ。
「この身にはたしかにマグルの汚らわしい血が流れている。だが、私の両親は魔法使いであり、魔女だ」
「ええ。あなたの母上がハーフでしたね」
・・・それって純血って言っていいんじゃないのー?
っていうか、生まれる場所は誰も選べないよ。
なのに出自で差別くらうってきつくない?
「だからこそ、ブラック家の血が保たれていることにはとても重要な意味があると思う。その血統を途絶えさせてはならないんだ。彼らの血には一片のくもりもゆるされない」
・・・アレか。もしかして、日本で皇族が何代だか忘れたけどずっと男子の血で一系が続いてきてる からそれをとだえさせちゃいかんとか、言ってるのと同じか。
いや、考え方は人それぞれだけどさ・・・。
守ろうとする人間もいればどうでもいいって言ってる人間もいて、どこまで信憑性があるのか疑う人間もいるってことだよ、うん。
「あなたの出自はあやしい」
・・・・・・・・・・げ。
いや、あやしいよ。あやしいっていうか嘘だよ。
そもそもマグル生まれのマグル育ちで元々魔法使いですらありゃしない。
っていうかこの世界の人間ですらないからねえ・・・。
「本当にキリュウ家の末裔なのか?」
「それ以上の侮辱は我等に対する侮辱と受け取るがいかがか」
心臓まで凍りそうな冷たい声が彼の弁舌を見事に途切れさせた。
「彼女の後見は親戚筋のダンブルドアであり、その血筋は魔法省の戸籍が保障している」
「だが彼女の持つ力はキリュウ家としては異色のものであると噂されている」
「それがどうした。予言者はもとより血筋のみで生まれるわけではない。彼女の力は、キリュウ家が存続していれば喜びを持って受け入れられただろう」
「今となってはそれもわからない。問題なのは、わからないものを根拠に君たちの、ブラック家やマルフォイ家といった尊い血を彼女が手にいれようとしているのなら・・・」
「ミスタ・シェレーフィ!」
いつになく熱くなっているレギュラスからすっと視線をそらしたシェレーフィは、あたしをにらみつけるようにして厳しい口調で言った。
「もし、あなたが本当にキリュウ家の末裔だというのなら、その再興を考えないはずがない。だとすれば、ブラック家直系やルシウス・マルフォイを狙うのはありえない」
あー、ありえないね。かなり。
だって自分のおうちがあってそれを継ぐことが決まってる男どもに粉かけたってなんの意味もなければ利益もないもんね。
むしろ妙な噂が縁談の邪魔になるっていうか。
ただし、それは夫がほしければ、の話。
再興したいならもう一つ道がある。
むかぁしむかしのフランス王家みたいなもんで。
妻になるんじゃなくて愛妾として子どもを生んで、それを跡継ぎにするってことも可能だったりするのよね。
そうすれば血は保障されてるし、つながりがあるからそちらの家とも縁があるから援助を受けられるし、再興してしまえば夫がいなくても血の出所がはっきりしているから邪魔にもならない。純粋にキリュウ家の跡取りの子どもも出来る。ブラック家にしてもマルフォイ家にしてもその子が、当主の子であれば、絶対に無視できない。
・・・あくまでしたいなら、ね。
一時期、これ、ルシウスやセブちゃんにもそれ狙ってんの?みたいなこと聞かれたもん。
「もし、すでに婚約者としてあなたが認められているのなら、その血筋をブラック家が正しいと認め、家に迎え入れるということだ。だが・・・先日の騒ぎ」
ざっと、レギュラスがあたしをかばうように前に出た。
そのぐらい、冷たい視線。
いや、冷たいだけじゃない。憎しみすら感じられる視線。
「ブラック夫人があなたを認めていないのではないかと思った。ルシウス・マルフォイとも別れたと聞いた。それならば・・・それならば、あなたは」
「立ち去れ。貴様のような男と話す価値もない。彼女はサクラ・キリュウであり、ダンブルドアの庇護を受けるものであり、キリュウ家の純血だ。そして、貴様のような腐った性根のものとは決して相容れない女性だ。近寄ることすら汚らわしい。これ以上腐った口をきくのなら、僕が力ずくで排除する」
目の前に立ちふさがるレギュラスの背中から、肌がぴりぴりと痛いほどの魔力を感じる。
レギュラスは本気で、彼を攻撃しようとしている。
それも、その辺の呪いじゃない。
「・・・今は退こう。だが、僕の言ったことを・・・」
「くどい!」
構えられた杖に言葉を切ったシェ、シェレーフィが口をつぐみ、レギュラスに礼をして、去っていった。
うええええ、なんなのさこの修羅場。
「あの男にはくれぐれも気をつけてください。近寄らないように。あんな男を気安く身に寄せないでください、義姉上」
「えーと・・・・・・うん?・・・はい。たぶん」
「・・・・・・・まったく、あなたは・・・・・・」
・・・なんか変なこと言ったかね?
「先日のジラ・マッケンジーの件ですこしは懲りていただきたいものですね。くれぐれも注意すること。人のいないところに行かない、誰かと一緒に行動する。少なくとも3人以上ですよ?それから・・・」
はい、はい。重々判りました。
こくこくと頷いて大丈夫だからと引きつった笑いを浮かべたあたしに、まだ疑うような視線をむけていたけど、やがてあきらめたようだった。
もうこれ以上混乱も考えるのもご勘弁。
頭煮えそうだってばよー!!
とりあえず今の一件は忘れることにする。うん。
「ああ、忘れるところでした」
なに。まだなにかっ!?
「え?」
「はい、どうぞ」
予想に反して差し出されたのは、シンプルな深紅の小さな袋にリボンが結ばれた包み。
手のひらにころんと収まるくらいのサイズのそれは、ふわりといいにおいがした。
「どうしたの?これ」
ガサガサいう手触りからしてもポプリの入ったサシェだった。
「眠りが浅いのでしょう?くまができています」
「あー・・・うん、まあ・・・」
最近寝る時間も少なかったし、頭が冴えててうとうとすると目が覚めるようなそんな睡眠状況だった。
ほんっと大量に襲ってくるレポートがうらめしい。
「すこしは気が安くなるでしょう」
「・・・ありがと」
素直にその気遣いが嬉しかった。