5年生(親世代) 製作中
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29
「サク」
うわ、びっくりした!
「ジェームズ」
お願いだから足音消して近寄るのやめてちょうだい!
気配なんて読めないから!
ていうか、絶対気配すら消して歩いてるでしょ!!
なんだってあたしに近寄るのに抜き足差し足しなきゃいけないのよ!?
「いやちょっとおもしろそうだから」
「てい」
脳天にチョップ。
面白そうとか言うな。
「で?」
「ここではなんだし・・・ホグズミードでお茶でもいかがです?お嬢さん」
・・・ごめん、ジェームズ。
ウィンクはシリウスのほうが似合ってるなあ。
3本の箒の椅子に落ち着いて、運ばれてきたバタービールに口をつける。
おいしいけど、あたしは紅茶のほうがすきなんだよねえ・・・。
たまにならいいんだけど、こないだも飲んだばっかりだしぃ。
「で?」
へらへらと笑っていたジェームズの顔が、急に引き締まった。
内緒の話をするように、声を低めて、ジェームズは口を開いた。
「シリウスを、見捨てないでくれ」
予想通りの言葉に、それでも反射的に奥歯をかみ締めた。
「見捨ててないわ」
「サク・・・!」
「切り捨てたのは、あっちじゃない」
「1年目の夏休み」
「え?」
「遊ぶ約束を、していたんだ」
うん。それは知っている。
約束をしていた。
ああしよう、こうしようって。
「だけど、シリウスはこなかった」
・・・こなかった?
「どうしてだって責めた僕に、シリウスはそんな約束したかって言ったんだ」
考えるより先にぞっとした。
忘れたとか、そういうこと?
そうでは、ない。
「怒鳴ろうとしたけど、どうしても出来なかった。だって、そういったシリウスの顔が、とても青ざめていたから」
「それって・・・」
「自分たちの大切な付き合いよりグリフィンドールとの約束を優先するなんて、恥知らず、と…そういうことらしい」
あたしの鈍い頭は、ようやく、それが誰のせいなのか、はっきりと悟った。
「それ、シリウスの・・・」
「そう。両親だ」
確信を持って返された言葉に、あの人たちが浮かぶ。
シリウスの、両親。
黒いドレスローブをその身にまとい、魔法界に君臨するように微笑んでいたあの二人。
そして、髪を切ることになった、原因。
呪いをかけたときの顔が蘇って、身体が震えた。
「僕たちが思っているより、あの家は、とんでもないことをやってるってことさ」
そう、とんでもない。
いくら息子であっても、それは自分の物じゃないのだから。
「…忘却、呪文…?」
全てを忘れさせる呪文。
その言葉を、魔法を、あたしたちはすでに知っている。
だけど、それを容易に人に向けてはいけないことも、知っている。
「自分の子供に忘却呪文をかけて友人との約束を忘れさせる…そこまでやるか!?」
苛立ちを隠さずに、ジェームズが机にこぶしをたたきつけた。
あたしは、ただ驚くしかなかった。
本当に、そこまでやるとは…そんなことを考えるとすら、思ってもいなかった。
自分の息子に、そこまでするなんて。
そんな、家だなんて。
「だ、だけど…だけど、2年のときは…」
来たじゃない。1日間違えて。
あたしの家に泊めたわ。
「でも、熱出してただろう?」
「うん」
ひどい風邪で、何しにきたって怒った。
しっかり覚えてる。
「あれ、風邪じゃないよ。サク」
「え?」
「シリウスが誰にも言うなといったけれど…だけど、あれは、シリウスの親がシリウスに薬を盛ったんだ。遊びになんて、いけないように」
「忘れさせなかったの…?」
そのほうが、ずっとずっと簡単で、安易な手段なのに。
「シリウスが、前の年のことがあるからって、メモをした紙を荷物に入れていた。それも探し出された。だけど、シリウスだってそんなこと予測してる。だから、前日の朝と当日の朝にふくろうがつくように手配していたんだ」
友だちとの約束を守るために。
「だから…?だから、行こうとしたシリウスに・・・シリウスに毒を飲ませたの!?」
あんな高熱を出すって、そういうことでしょう!?
「1日おとなしくしているようにってね。忘却呪文でさらに毒薬だよ。…それでも、ようやく抜け出してきたんだ。まだ前の日の、薬も飲ませて油断している時間に」
想像すらしていなかった。
そこまでやるなんて。
自分達の息子に、そこまでしているなんて。
「戻って、ただですむわけないだろう?」
そんな。
そんなことって。
「休み明けのシリウスに会うのが怖かったよ。とても怖かった。だけど、あいつは、いつものように列車に来ただろう」
「うん・・・」
「アルファード・ブラックが保護してくれていたそうだよ」
「え?」
「きいたんだ。あの家でシリウスをかばうのは・・・庇えるのは、あの人しかいないんじゃないかって思ったから」
そうでなければ、どうなっていただろう。
アルファードさんがいなければ、シリウスはどうなっていたんだろう。
「だから、今年も去年も約束をしなかったんだ。来たいときに来いよって。来れるときに顔を出せって。僕も…家庭の事情で去年は会えなかったし、今年も来なかった。だけど、それでもよかった」
「うん・・・・・・」
だって、そんな目に合うぐらいなら。
それなら、会わないほうがいい。
シリウスがそんなひどいことをされるなら、休み明けに出会えるほうが、いい。
・・・本当に?
「ねえ・・・シリウス、会えないってことが、なにもされてないってことじゃないんじゃ・・・」
「・・・・・・・・・・そのとおりだ」
知らないだけで、推し量ることもできないだけで、あの人はどれだけのものを背負っているんだろう。
そう思ったら、背筋が震えた。
「サク、シリウスの周りには、思っている以上に敵が多い。だからこそ、シリウスはこのホグワーツで味方を確保しようとしているんだ。君だって気付いているだろう。シリウスの影響力に」
「・・・ええ」
あたしの気持ちなんて、ささいなことに思えてきた。
「シリウスがしたこと、言ったことは許されることじゃないと思う。だけど、それを承知でお願いする。どうか、シリウスの味方でい続けてほしい。味方であってほしい。これからも」
さっきまでのあたしなら、ためらいなく断っただろう。
だけど、断ってよいものか、迷った。
「・・・考えさせて」
シリウスは、あたしをいらないと思っているだろう。
また、言われるかもしれない。
必要とされないのに、いる邪魔者と思われるかもしれない。
周囲にも、シリウス自身にも。
それなのに、あえて側にいるほど、いられるほど、あたしは強く在れるだろうか。
そこまで人間出来ている覚えはなかった。
「サク」
うわ、びっくりした!
「ジェームズ」
お願いだから足音消して近寄るのやめてちょうだい!
気配なんて読めないから!
ていうか、絶対気配すら消して歩いてるでしょ!!
なんだってあたしに近寄るのに抜き足差し足しなきゃいけないのよ!?
「いやちょっとおもしろそうだから」
「てい」
脳天にチョップ。
面白そうとか言うな。
「で?」
「ここではなんだし・・・ホグズミードでお茶でもいかがです?お嬢さん」
・・・ごめん、ジェームズ。
ウィンクはシリウスのほうが似合ってるなあ。
3本の箒の椅子に落ち着いて、運ばれてきたバタービールに口をつける。
おいしいけど、あたしは紅茶のほうがすきなんだよねえ・・・。
たまにならいいんだけど、こないだも飲んだばっかりだしぃ。
「で?」
へらへらと笑っていたジェームズの顔が、急に引き締まった。
内緒の話をするように、声を低めて、ジェームズは口を開いた。
「シリウスを、見捨てないでくれ」
予想通りの言葉に、それでも反射的に奥歯をかみ締めた。
「見捨ててないわ」
「サク・・・!」
「切り捨てたのは、あっちじゃない」
「1年目の夏休み」
「え?」
「遊ぶ約束を、していたんだ」
うん。それは知っている。
約束をしていた。
ああしよう、こうしようって。
「だけど、シリウスはこなかった」
・・・こなかった?
「どうしてだって責めた僕に、シリウスはそんな約束したかって言ったんだ」
考えるより先にぞっとした。
忘れたとか、そういうこと?
そうでは、ない。
「怒鳴ろうとしたけど、どうしても出来なかった。だって、そういったシリウスの顔が、とても青ざめていたから」
「それって・・・」
「自分たちの大切な付き合いよりグリフィンドールとの約束を優先するなんて、恥知らず、と…そういうことらしい」
あたしの鈍い頭は、ようやく、それが誰のせいなのか、はっきりと悟った。
「それ、シリウスの・・・」
「そう。両親だ」
確信を持って返された言葉に、あの人たちが浮かぶ。
シリウスの、両親。
黒いドレスローブをその身にまとい、魔法界に君臨するように微笑んでいたあの二人。
そして、髪を切ることになった、原因。
呪いをかけたときの顔が蘇って、身体が震えた。
「僕たちが思っているより、あの家は、とんでもないことをやってるってことさ」
そう、とんでもない。
いくら息子であっても、それは自分の物じゃないのだから。
「…忘却、呪文…?」
全てを忘れさせる呪文。
その言葉を、魔法を、あたしたちはすでに知っている。
だけど、それを容易に人に向けてはいけないことも、知っている。
「自分の子供に忘却呪文をかけて友人との約束を忘れさせる…そこまでやるか!?」
苛立ちを隠さずに、ジェームズが机にこぶしをたたきつけた。
あたしは、ただ驚くしかなかった。
本当に、そこまでやるとは…そんなことを考えるとすら、思ってもいなかった。
自分の息子に、そこまでするなんて。
そんな、家だなんて。
「だ、だけど…だけど、2年のときは…」
来たじゃない。1日間違えて。
あたしの家に泊めたわ。
「でも、熱出してただろう?」
「うん」
ひどい風邪で、何しにきたって怒った。
しっかり覚えてる。
「あれ、風邪じゃないよ。サク」
「え?」
「シリウスが誰にも言うなといったけれど…だけど、あれは、シリウスの親がシリウスに薬を盛ったんだ。遊びになんて、いけないように」
「忘れさせなかったの…?」
そのほうが、ずっとずっと簡単で、安易な手段なのに。
「シリウスが、前の年のことがあるからって、メモをした紙を荷物に入れていた。それも探し出された。だけど、シリウスだってそんなこと予測してる。だから、前日の朝と当日の朝にふくろうがつくように手配していたんだ」
友だちとの約束を守るために。
「だから…?だから、行こうとしたシリウスに・・・シリウスに毒を飲ませたの!?」
あんな高熱を出すって、そういうことでしょう!?
「1日おとなしくしているようにってね。忘却呪文でさらに毒薬だよ。…それでも、ようやく抜け出してきたんだ。まだ前の日の、薬も飲ませて油断している時間に」
想像すらしていなかった。
そこまでやるなんて。
自分達の息子に、そこまでしているなんて。
「戻って、ただですむわけないだろう?」
そんな。
そんなことって。
「休み明けのシリウスに会うのが怖かったよ。とても怖かった。だけど、あいつは、いつものように列車に来ただろう」
「うん・・・」
「アルファード・ブラックが保護してくれていたそうだよ」
「え?」
「きいたんだ。あの家でシリウスをかばうのは・・・庇えるのは、あの人しかいないんじゃないかって思ったから」
そうでなければ、どうなっていただろう。
アルファードさんがいなければ、シリウスはどうなっていたんだろう。
「だから、今年も去年も約束をしなかったんだ。来たいときに来いよって。来れるときに顔を出せって。僕も…家庭の事情で去年は会えなかったし、今年も来なかった。だけど、それでもよかった」
「うん・・・・・・」
だって、そんな目に合うぐらいなら。
それなら、会わないほうがいい。
シリウスがそんなひどいことをされるなら、休み明けに出会えるほうが、いい。
・・・本当に?
「ねえ・・・シリウス、会えないってことが、なにもされてないってことじゃないんじゃ・・・」
「・・・・・・・・・・そのとおりだ」
知らないだけで、推し量ることもできないだけで、あの人はどれだけのものを背負っているんだろう。
そう思ったら、背筋が震えた。
「サク、シリウスの周りには、思っている以上に敵が多い。だからこそ、シリウスはこのホグワーツで味方を確保しようとしているんだ。君だって気付いているだろう。シリウスの影響力に」
「・・・ええ」
あたしの気持ちなんて、ささいなことに思えてきた。
「シリウスがしたこと、言ったことは許されることじゃないと思う。だけど、それを承知でお願いする。どうか、シリウスの味方でい続けてほしい。味方であってほしい。これからも」
さっきまでのあたしなら、ためらいなく断っただろう。
だけど、断ってよいものか、迷った。
「・・・考えさせて」
シリウスは、あたしをいらないと思っているだろう。
また、言われるかもしれない。
必要とされないのに、いる邪魔者と思われるかもしれない。
周囲にも、シリウス自身にも。
それなのに、あえて側にいるほど、いられるほど、あたしは強く在れるだろうか。
そこまで人間出来ている覚えはなかった。