4年生(親世代) 完結 (35話)
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16
「ねえ、アルファードさん」
「なにかな?」
「さっき、あの遺言、イーシャ先生じゃないかって言ったでしょう?」
「ああ」
「あたしは、イーシャ先生じゃないと思う」
「・・・そうか」
「だって、連れて行くって言ったのよ。置いて行ったりしないからって」
ウィリアムの言った言葉。
つれていく、と言ったのだ。
ユリウスは、遺していったりしない、連れて行くのだと。
そして、それを聞きながら、イーシャ先生は笑っていた。
そういわれるのが当然とでもいうように。
たとえ置いていこうとしても、置いていかれたりしてやらないと、ふざけるように。
それどころか、置いていこうなんてもらしでもしたら、目の前でウィリアムをかばって死んでやるとまで言った。
怖いぐらいの、その決断に、あたしは何もいえなかった。
この二人が、そこまで思えるのは、なぜなんだろうと。なぜ、そんな風に思えるんだろうと、怖くなった。
その絆に立ち入ることなど、誰も出来ないと。
あたしは、意外だった。
アルファードさんより、イーシャ先生のほうが強く思えたから。
強くて、負けないと思ったから。
たとえ遺されても、一人で生きていけるとしたら、それはイーシャ先生ではないかと思っていたから。
連れて行くという言葉が意外だった。
アルファードさんのほうがくじけそうなのに。
でも、きっと理由があったのだろう。
ウィリアムには、そう決断させるだけの理由が。
そして・・・不安だったのだろう。
この人を残して逝くのが。
心配はぴたりと当たっている。
だって、この人は、いつまでたっても、あの二人を想っている。
絶対に前を向いていないのだから。
「あのね、アルファードさん」
「なんだ?」
「あの遺言、ウィルは一番聞かせたい人がいたのだと思うの」
「一番?」
「そう。絶対に聞いてほしくて、それをわかってほしい人」
愛することをやめないでほしい。
希望をもつことをやめないでほしい。
たとえ自分たちが死んでも。
笑って、泣いて、怒って、忘れて。
そして、愛してほしいと。
それがうらみであってもいいから、心を失わないでほしいと。
であったことを、出会うことを、厭わないでほしいと。
そんな願いがこめられていた言葉。
彼がこころからそう願う人なんて、一人しかいない。
他に、いるわけがない。
「ウィルはきっと、アルファードさんに聞いてほしかったんです。一番、わかってほしかったんですよ」
「・・・私、に?」
「そう。だから、あなたに託したのではないかな。一言一句、全てを覚えて誰かに伝えてくれる人だからというだけじゃなくて・・・あなたに、一番伝えたいから。あなたに一番覚えていてほしかったから」
ジェームズでも、あたしでも、ダンブルドアでもない。
彼の兄夫婦でもない。
他でもない、親愛なる友に。
幸せになってほしかったのだ。
笑っていてほしかったのだ。
過去を、死んでしまった自分たちを振り返るのではなく。
出会わなければこんな悲しみを知らなくてすんだと嘆くのではなく。
出会えてよかったけれど、それを思い出にして、未来に向かってほしかったのだ。
きっと、たぶん。
「あなたが、一番心配だったのだと思います。一人残されるあなたが」
「・・・なぜ」
「あなたは、大切なものがあるでしょう。気にかかるものがあるでしょう」
シリウスや、アンドロメダや。
ブラック家の行く末や。
そんな、数多くのことを、抱えているから。
「だから、連れて行けなかったのかしら・・・」
大切なものがたくさんあるから。
自分と一緒に行くよりも、大切なものに心を残してしまいそうだから。
そんなことを、思った。
外れているかもしれない。
もっと単純だったり、複雑だったりするのかもしれない。
だけど、あたしは、そう思った。
「・・・・・・あたしは、まだ未熟で、社会に出て働くこともない、暢気な学生で。怖いぐらい、間違えることも、やってしまってはいけないことをやってしまうこともたくさんあるけれど、そんなあたしに、ウィルが伝言を託したというのなら、それはきっと、未熟なあたしなら、わかることなんだと思う」
あの二人は、あたしのことを、よく見ていた。
あの人たちは、あたしの未熟な部分を、苦笑しながら見つめていたのかもしれないけど。
それでも、あたしを信じてこの人に、それを伝えることを託してくれたのなら。
あたしがわかることを、あたしがそう直感したことを、すればいいのだ。
「ウィルが、本当に人を愛することをやめず、心を殺さずに生きてほしいと願うなんて、そんな思いを抱くしたい人なんて、あたしは、あなた以外に思いつかない」
アルファードさんがあの二人を大切に思っていたというのなら、あの二人だって、アルファードさんのことを、心から大切に思っていたのだ。
「あたしだったら、幸せになってほしいもの。自分が心から大切だと思った人なら、自分を失って悲しみと苦しみの中に閉じこもられるぐらいなら、自分のことを忘れてでも、幸せになってほしいもの」
「・・・忘れて、幸福になどなれるものか。私は・・・あの二人に出会って、人間として生きることを知ったのだから・・・」
ぽつり、とつぶやかれた言葉が、震えていた。
その、秀麗な面に、涙が伝っていた。
見てはいけないものを、見たような気がした。
「人を愛することも、喜ぶことも、悲しむことも、全て、あの二人が教えてくれたのだから・・・」
ああ、と納得した。
アンドロメダも、そう言った。
テッドがいなければ、わたくしは人を愛するということを、生涯しらなかった。
知って、苦しみも知った。家も捨てた。
それでも、それを知らないより、何倍も幸福で、後悔はないと。
「とても、素敵な人たちだったね」
「・・・・・・・・・・・・・ああ」
「すごく優しくて、どこまでも懐が深くて。たくさんのものを、愛していた」
「・・・・・・そうだな」
「あえて、良かった。あの人たちと出会えて、良かった」
本当なら、会うことなどなかったはずの人たち。
だけど、不思議な運命で、あたしは彼らと出会うことが出来た。
どれだけ悲しくても、どれだけ苦しくても、出会ったことを後悔しない。
「出会うとは、悪くないものだな」
「え?」
「ポッター・・・ウィルと、ウィリアムと出会えてよかった」
「アルファードさん・・・」
「ユリウスと出会えてよかった」
静かに、その頬に伝うしずくをぬぐうこともせず、アルファードさんは、泣いていた。
「君と、出会えてよかった」
「え?」
「シリウスと出会えて、よかった」
あの二人ではなくて。
あたしや、シリウスと。
「ウィルとユーリから、多くのものをもらった。私の人生は、幸福に包まれた。そして・・・あの二人は、私に、残してくれた」
「なにを?」
なんとなく、わかるような気もしたけれど、聞きたかった。
彼の、口から。
その答えを。
「私が与えられたように、誰かに、何かを与えることが出来る喜びを」
男の人が泣くのが、こんなに綺麗だなんて、あたしは知らなかった。
「君に、シリウスに、それを与えることが出来ることを、心から誇りに思うよ」
そういって微笑んだアルファードさんが、とても、綺麗だった。
ああ、本当に、綺麗な人なのだと、あたしは思ったのだった。
「ねえ、アルファードさん」
「なにかな?」
「さっき、あの遺言、イーシャ先生じゃないかって言ったでしょう?」
「ああ」
「あたしは、イーシャ先生じゃないと思う」
「・・・そうか」
「だって、連れて行くって言ったのよ。置いて行ったりしないからって」
ウィリアムの言った言葉。
つれていく、と言ったのだ。
ユリウスは、遺していったりしない、連れて行くのだと。
そして、それを聞きながら、イーシャ先生は笑っていた。
そういわれるのが当然とでもいうように。
たとえ置いていこうとしても、置いていかれたりしてやらないと、ふざけるように。
それどころか、置いていこうなんてもらしでもしたら、目の前でウィリアムをかばって死んでやるとまで言った。
怖いぐらいの、その決断に、あたしは何もいえなかった。
この二人が、そこまで思えるのは、なぜなんだろうと。なぜ、そんな風に思えるんだろうと、怖くなった。
その絆に立ち入ることなど、誰も出来ないと。
あたしは、意外だった。
アルファードさんより、イーシャ先生のほうが強く思えたから。
強くて、負けないと思ったから。
たとえ遺されても、一人で生きていけるとしたら、それはイーシャ先生ではないかと思っていたから。
連れて行くという言葉が意外だった。
アルファードさんのほうがくじけそうなのに。
でも、きっと理由があったのだろう。
ウィリアムには、そう決断させるだけの理由が。
そして・・・不安だったのだろう。
この人を残して逝くのが。
心配はぴたりと当たっている。
だって、この人は、いつまでたっても、あの二人を想っている。
絶対に前を向いていないのだから。
「あのね、アルファードさん」
「なんだ?」
「あの遺言、ウィルは一番聞かせたい人がいたのだと思うの」
「一番?」
「そう。絶対に聞いてほしくて、それをわかってほしい人」
愛することをやめないでほしい。
希望をもつことをやめないでほしい。
たとえ自分たちが死んでも。
笑って、泣いて、怒って、忘れて。
そして、愛してほしいと。
それがうらみであってもいいから、心を失わないでほしいと。
であったことを、出会うことを、厭わないでほしいと。
そんな願いがこめられていた言葉。
彼がこころからそう願う人なんて、一人しかいない。
他に、いるわけがない。
「ウィルはきっと、アルファードさんに聞いてほしかったんです。一番、わかってほしかったんですよ」
「・・・私、に?」
「そう。だから、あなたに託したのではないかな。一言一句、全てを覚えて誰かに伝えてくれる人だからというだけじゃなくて・・・あなたに、一番伝えたいから。あなたに一番覚えていてほしかったから」
ジェームズでも、あたしでも、ダンブルドアでもない。
彼の兄夫婦でもない。
他でもない、親愛なる友に。
幸せになってほしかったのだ。
笑っていてほしかったのだ。
過去を、死んでしまった自分たちを振り返るのではなく。
出会わなければこんな悲しみを知らなくてすんだと嘆くのではなく。
出会えてよかったけれど、それを思い出にして、未来に向かってほしかったのだ。
きっと、たぶん。
「あなたが、一番心配だったのだと思います。一人残されるあなたが」
「・・・なぜ」
「あなたは、大切なものがあるでしょう。気にかかるものがあるでしょう」
シリウスや、アンドロメダや。
ブラック家の行く末や。
そんな、数多くのことを、抱えているから。
「だから、連れて行けなかったのかしら・・・」
大切なものがたくさんあるから。
自分と一緒に行くよりも、大切なものに心を残してしまいそうだから。
そんなことを、思った。
外れているかもしれない。
もっと単純だったり、複雑だったりするのかもしれない。
だけど、あたしは、そう思った。
「・・・・・・あたしは、まだ未熟で、社会に出て働くこともない、暢気な学生で。怖いぐらい、間違えることも、やってしまってはいけないことをやってしまうこともたくさんあるけれど、そんなあたしに、ウィルが伝言を託したというのなら、それはきっと、未熟なあたしなら、わかることなんだと思う」
あの二人は、あたしのことを、よく見ていた。
あの人たちは、あたしの未熟な部分を、苦笑しながら見つめていたのかもしれないけど。
それでも、あたしを信じてこの人に、それを伝えることを託してくれたのなら。
あたしがわかることを、あたしがそう直感したことを、すればいいのだ。
「ウィルが、本当に人を愛することをやめず、心を殺さずに生きてほしいと願うなんて、そんな思いを抱くしたい人なんて、あたしは、あなた以外に思いつかない」
アルファードさんがあの二人を大切に思っていたというのなら、あの二人だって、アルファードさんのことを、心から大切に思っていたのだ。
「あたしだったら、幸せになってほしいもの。自分が心から大切だと思った人なら、自分を失って悲しみと苦しみの中に閉じこもられるぐらいなら、自分のことを忘れてでも、幸せになってほしいもの」
「・・・忘れて、幸福になどなれるものか。私は・・・あの二人に出会って、人間として生きることを知ったのだから・・・」
ぽつり、とつぶやかれた言葉が、震えていた。
その、秀麗な面に、涙が伝っていた。
見てはいけないものを、見たような気がした。
「人を愛することも、喜ぶことも、悲しむことも、全て、あの二人が教えてくれたのだから・・・」
ああ、と納得した。
アンドロメダも、そう言った。
テッドがいなければ、わたくしは人を愛するということを、生涯しらなかった。
知って、苦しみも知った。家も捨てた。
それでも、それを知らないより、何倍も幸福で、後悔はないと。
「とても、素敵な人たちだったね」
「・・・・・・・・・・・・・ああ」
「すごく優しくて、どこまでも懐が深くて。たくさんのものを、愛していた」
「・・・・・・そうだな」
「あえて、良かった。あの人たちと出会えて、良かった」
本当なら、会うことなどなかったはずの人たち。
だけど、不思議な運命で、あたしは彼らと出会うことが出来た。
どれだけ悲しくても、どれだけ苦しくても、出会ったことを後悔しない。
「出会うとは、悪くないものだな」
「え?」
「ポッター・・・ウィルと、ウィリアムと出会えてよかった」
「アルファードさん・・・」
「ユリウスと出会えてよかった」
静かに、その頬に伝うしずくをぬぐうこともせず、アルファードさんは、泣いていた。
「君と、出会えてよかった」
「え?」
「シリウスと出会えて、よかった」
あの二人ではなくて。
あたしや、シリウスと。
「ウィルとユーリから、多くのものをもらった。私の人生は、幸福に包まれた。そして・・・あの二人は、私に、残してくれた」
「なにを?」
なんとなく、わかるような気もしたけれど、聞きたかった。
彼の、口から。
その答えを。
「私が与えられたように、誰かに、何かを与えることが出来る喜びを」
男の人が泣くのが、こんなに綺麗だなんて、あたしは知らなかった。
「君に、シリウスに、それを与えることが出来ることを、心から誇りに思うよ」
そういって微笑んだアルファードさんが、とても、綺麗だった。
ああ、本当に、綺麗な人なのだと、あたしは思ったのだった。