4年生(親世代) 完結 (35話)
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親愛なる友へ
小さなノックの音にしもべ妖精が行くのが見えた。
こんな夜更けに誰だろうか。
「ご主人様」
キーキーとした声でしもべが訪問者を告げる。
「ウィリアム・ポッターさまがお越しでいらっしゃいます」
「・・・ウィリアムが?」
珍しい。
こんな夜更けに。
「一人か?」
「はい。お一人でいらっしゃいました」
一人?
それはますます珍しい。
「通せ」
あの男が一人で訪ねてくるなど、考えてみれば一度もなかったのではないだろうか。
何事だ、と思いながらもどこか心が浮き立つのを、不快には思わなかった。
そんなこと、口が裂けても言ってはやらないが。
「どうした。お前一人でくるとは珍しいな」
「たまには一緒に飲まないか?」
「断る理由はないな」
素直に答えるなどと思っていないだろう男はにやり、と笑って手に持っていたビンを見せてよこした。
「これでもそういうか?」
「・・・しもべ。グラスを二つ。それからつまみを見繕え」
「はい、ご主人様」
「・・・まだ名前付けてないのかよ」
「しもべに名前など不要だ。無駄に与えることなどない」
「・・・・・・・・・・・お前のその主義だけは理解できないよ」
「ふん。他にも理解できないことなどたくさんあるだろうに」
「相手のことが全てわかるなら付き合ったって面白くないだろう」
「それには賛同しよう」
わからない部分があるから、自分と違う部分があるから、人と付き合うのは楽しい。
全てを分かり合えるなどと思えるような稚気とは無縁になったが、それでも、かつて分かり合えることを望んだ
相手だからこそ、この年になっても付き合いが続くのかもしれない。
いつであっても、昔のように笑い合えるのかもしれない。
間にある時の長さも、立場も、全てなかったことのように。
「お前に、頼みがあるんでな」
「頼み?」
さらに珍しい。
この男は誰かに何かを頼むことはしない。
特に、重要な事柄は、だ。
「遺言を預かってほしい」
「断る」
即答した。
遺言だと?
何を考えている。
「まあ、いいから聞けよ」
そう笑って、ウィリアムは口を開いた。
「怒って、泣いて、そして、笑ってほしい」
「誰かを愛することを恐れず、許すことを恐れず、生きてほしい」
「人間であることを心から楽しんでほしい」
「それが、私の望み」
「願わくば、君たちが心からこの世界と、人を愛してくれますように」
「知ってくれ」
「世界は美しくて優しいのだと」
「また人を愛してくれ。愛される喜びを、感じてほしい」
「どうか、幸せに。しあわせになってほしい」
「過去にとらわれず、過去を厭わず、未来を受け入れて、幸せになってほしい。これを、私、ウィリアム・ポッター
の遺言とする」
全ての文言を無言で聞いた後で、正直に言えば、あきれ返った。
「こんな遺言を残すなどお前ぐらいだ」
「そうか?別にいいじゃないか」
「お前の自由だがな」
「ああ、それからもう一つ」
「なんだ」
毒食わば皿まで。
そんな心境だった。
どうせ、伝えるのなど、ずっと後のことになるのだろうから。
「あの娘に伝えてほしいんだ」
「あの娘?ああ、サクラ・キリュウか」
「ああ」
「なにを?」
「この遺言を、私の大切な人に伝えてほしいと」
「・・・なら私に預けるな」
「お前にだから預けたいんだよ」
「だがミス・キリュウへの伝言はなんだ」
「それは、あの娘にしかわからないだろうよ」
「・・・ユリウスへの伝言か?」
「・・・さあな」
なぞめいた言葉を最後に、ウィリアムは絶対にそれについて触れなかった。
頼みは終わったのだといわんばかりに、笑いながら、ワインをあけて。
いつものように、だがいつもと違う陽気な顔で笑ってすごしていった。
彼が死ぬ、1ヶ月前の出来事だった。
小さなノックの音にしもべ妖精が行くのが見えた。
こんな夜更けに誰だろうか。
「ご主人様」
キーキーとした声でしもべが訪問者を告げる。
「ウィリアム・ポッターさまがお越しでいらっしゃいます」
「・・・ウィリアムが?」
珍しい。
こんな夜更けに。
「一人か?」
「はい。お一人でいらっしゃいました」
一人?
それはますます珍しい。
「通せ」
あの男が一人で訪ねてくるなど、考えてみれば一度もなかったのではないだろうか。
何事だ、と思いながらもどこか心が浮き立つのを、不快には思わなかった。
そんなこと、口が裂けても言ってはやらないが。
「どうした。お前一人でくるとは珍しいな」
「たまには一緒に飲まないか?」
「断る理由はないな」
素直に答えるなどと思っていないだろう男はにやり、と笑って手に持っていたビンを見せてよこした。
「これでもそういうか?」
「・・・しもべ。グラスを二つ。それからつまみを見繕え」
「はい、ご主人様」
「・・・まだ名前付けてないのかよ」
「しもべに名前など不要だ。無駄に与えることなどない」
「・・・・・・・・・・・お前のその主義だけは理解できないよ」
「ふん。他にも理解できないことなどたくさんあるだろうに」
「相手のことが全てわかるなら付き合ったって面白くないだろう」
「それには賛同しよう」
わからない部分があるから、自分と違う部分があるから、人と付き合うのは楽しい。
全てを分かり合えるなどと思えるような稚気とは無縁になったが、それでも、かつて分かり合えることを望んだ
相手だからこそ、この年になっても付き合いが続くのかもしれない。
いつであっても、昔のように笑い合えるのかもしれない。
間にある時の長さも、立場も、全てなかったことのように。
「お前に、頼みがあるんでな」
「頼み?」
さらに珍しい。
この男は誰かに何かを頼むことはしない。
特に、重要な事柄は、だ。
「遺言を預かってほしい」
「断る」
即答した。
遺言だと?
何を考えている。
「まあ、いいから聞けよ」
そう笑って、ウィリアムは口を開いた。
「怒って、泣いて、そして、笑ってほしい」
「誰かを愛することを恐れず、許すことを恐れず、生きてほしい」
「人間であることを心から楽しんでほしい」
「それが、私の望み」
「願わくば、君たちが心からこの世界と、人を愛してくれますように」
「知ってくれ」
「世界は美しくて優しいのだと」
「また人を愛してくれ。愛される喜びを、感じてほしい」
「どうか、幸せに。しあわせになってほしい」
「過去にとらわれず、過去を厭わず、未来を受け入れて、幸せになってほしい。これを、私、ウィリアム・ポッター
の遺言とする」
全ての文言を無言で聞いた後で、正直に言えば、あきれ返った。
「こんな遺言を残すなどお前ぐらいだ」
「そうか?別にいいじゃないか」
「お前の自由だがな」
「ああ、それからもう一つ」
「なんだ」
毒食わば皿まで。
そんな心境だった。
どうせ、伝えるのなど、ずっと後のことになるのだろうから。
「あの娘に伝えてほしいんだ」
「あの娘?ああ、サクラ・キリュウか」
「ああ」
「なにを?」
「この遺言を、私の大切な人に伝えてほしいと」
「・・・なら私に預けるな」
「お前にだから預けたいんだよ」
「だがミス・キリュウへの伝言はなんだ」
「それは、あの娘にしかわからないだろうよ」
「・・・ユリウスへの伝言か?」
「・・・さあな」
なぞめいた言葉を最後に、ウィリアムは絶対にそれについて触れなかった。
頼みは終わったのだといわんばかりに、笑いながら、ワインをあけて。
いつものように、だがいつもと違う陽気な顔で笑ってすごしていった。
彼が死ぬ、1ヶ月前の出来事だった。