4年生(親世代) 完結 (35話)
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14
クリスマス休暇を数日後に控えて、暗かった学校の雰囲気も、少しは浮かれた空気をはらむようになってきた。
このグリフィンドールでも例外ではないんだけど、どこか沈んだ雰囲気があるのは、ジェームズがいるからかもしれない。
普段は人の3倍も明るい彼の沈んだ姿は、少なからずグリフィンドールに影響を及ぼしていた。
「シリウス、ちょっといい?」
「・・・どうした?」
とたん、ぎろり、とシリウスと腕を組んでいた女の子ににらまれた。
コワっ!
「話があるの。短い時間でいいから」
「彼は私と一緒にいるのよ。遠慮してくださらない?それとも、彼はあなたのものだとでも言うつもり?」
トゲットゲの声が、シリウスの隣から放たれる。
上から見下ろされる分、どうにも迫力が・・・。
あるってほどでもないんだけど、美人が怒ると怖いわね。
「あら、シリウスの恋人はあなたでしょう?あたしはただの友人だわ。でも、彼の親友のことでどうしても話したいことがあるのよ。用事が終わったらすぐにでもお返しするわ。だから、ね?」
ジェームズの名前にたじろいで、それでもふふん、と笑われた。
・・・ちょっとムカ。
「返してもらう必要なんてなくてよ。彼はわたしと一緒に過ごすって約束したの。そうよね、シリウス」
・・・いや、お嬢さん。シリウスのその顔は、ちょっとじゃなくムカついてる顔かと推察いたしますが。
つつかないほうがいいよぉ?
だって、シリウスの恋人って、あなた一人じゃないでしょうに。
「うざいよ、お前」
うわ。言った。
「で、ジェームズがどうしたって?」
「ええと・・・」
ね、ねえ・・・その態度はちょびっとひどくない?
「ねえ、ちょっとシリウス!?」
「・・・まだいたのか」
・・・・うっわー。感情のない声。
泣きながらいっちゃったけど・・・いいのぉ?
「それで?」
・・・いいのか。後でどうなっても知らないよ・・・?
「さっき、ね。自習室で自習してたのよ。そのときにあたしとリリーと、マギー、アリスで結構騒いでたの」
「・・・・・・・・ふぅん」
「そうしたら、突然立ち上がったジェームズが『うるさいッ』って」
「うるさかったんじゃないのか?」
「あら。そういうけれどね、シリウス。ジェームズだって本来はそういう明るいタイプでしょう?」
「・・・・・・・・・あいつの今の状況考えてやれよ」
それでも。
だって、あの二人が亡くなってから・・・
「・・・・・・3ヶ月も経ってるのよ・・・?」
「まだ、3ヶ月だ」
「もう、いい頃よ。あの二人が、ジェームズのそんな状態を嬉しいなんて思うとでも・・・」
「そんなことわかってるさ。ジェームズだって」
ぐっと顔をしかめて、シリウスが教科書を抱えなおした。
「話はそれだけか?」
「ねえ、ちょっと!シリウス!」
「ジェームズのことならジェームズに言えよ。聞いてもらえるならな」
「シリウス!」
「あんまりおせっかいが過ぎるとうっとうしがられるぜ」
ああ、もう!
「リリーと衝突してるから言ってるのよ!」
去ろうとしていたシリウスがぴたりと足を止めた。
「・・・・・・・・・・・・なに?」
「ジェームズのセリフに、リリーが食って掛かってたの。そうしたら・・・あのジェームズが、リリーに向かって・・・」
「エヴァンスに?」
「・・・『うるさい、マグル生まれなんかにわかってたまるか』って・・・」
シリウスが、目を見開いた。
「なんだと・・・?」
「あのジェームズがリリーにそういったのよ?」
「それを早く言え!」
「おい、ジェームズ!」
「なんだよ」
不機嫌そのものの顔で、イライラするようにジェームズはそこにいた。
「エヴァンスにマグル生まれ、と言ったそうだな」
「リリー、泣いてたわよ」
少し、罰の悪そうな顔を一瞬して、それでもジェームズは傲岸にあごをそらせた。
「君たちに関係ない」
「ちょっと、ジェームズ!?」
なに、その言い草、といいかけたあたしの口をシリウスの手がふさいだ。
ふさいだはいいけど、口だけじゃなくて鼻から何から、目以外覆われてんですけどっ!?
息できないって!!
手、でかっ!!
「ジェームズ、今やってることおかしいのはわかってるだろう?それは、お前の正義に照らし合わせて、正しいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・説教なんか聞きたくない」
「俺だって言いたくない」
「なら黙っていればいいだろう」
「そうはいかないだろう。お前のやっていることはおかしい」
淡々としたシリウスの口調。
責めるでもなく、詰るでもなく。
ただ、現実を見つめろといわんばかりの。
そのシリウスを、ジェームズは感情のない目でじっとみつめて。
「うるさいうるさいうるさいっ!!」
突然、ジェームズが暴発した。
「なんだって君たちは笑えるんだ?叔父さんが・・・ウィリアムが死んだのに・・・殺されたのに!」
「ジェームズ、それは・・・」
「人間だからよ」
ようやく手を振り切ったぜ!!
「なに?」
「人間だから、泣いて、笑って、怒って、生きていくの」
「僕は笑えない!ウィルが死んだのに、笑えるはずがない!」
「ウィルは笑ってたわ」
シリウスの手を振り払っていった言葉に、ジェームズが、凍りついたように動きを止めた。
「あの人が、失わなかったと思ってるの?大切なものを失わなかったと?失う恐怖と向き合わなかったと?」
「いや・・・」
「それでも、ウィルは笑ってた。どうして?」
「僕は、ウィリアムみたいに強くなんてなれない!僕は子どもだ!」
「子どもも大人も、強いも強くないもない。人間だから笑うのよ」
子どもだから、強いから、そんなの言い訳。
期間こそ違えど、誰もが乗り越えて、また新しく笑い会えるひととであって生きていく。
「あなたは、自分がウィリアムより弱いから、笑うことなんて出来ない。だから、周りを不愉快にしていいって言うの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「悲しみは、誰もが持っているわ。ねえ、ジェームズ。あたしが、ウィリアムとイーシャ先生を殺されて、悲しくないと思っているの?つらくないと思っているの?あたしはウィリアムと3年しか一緒にいなかったからあなたより悲しみが少ないの?親戚じゃないから、悲しくないの?」
「それ、は・・・」
「あたし、どれだけ侮辱されているのよ。確かに、よみがえる思い出は少ない。彼を思い出してつらくなる思い出も少ない。だけど、彼を失った悲しみがどれだけ違うというの」
「君には僕の気持ちがわからないんだ」
出た。言うと思ったわよ。こういうときのお決まりのセリフ!
でも、あなたが望むセリフなんて、言ってやらない。
「わからないって言ってほしいの?わかるわって言ってほしいの?」
もう、ジェームズの態度にはうんざりだった。
周囲が気を使っていることにも、周囲を傷つけていることにも気づかないで、いや、気づいているのに、自分は悲しいんだからって、正当化して。
周りを傷つけることを仕方ないって片付ける態度がいやだった。
仕方ないという言葉は、こういうときに使うべき言葉じゃない。
しょうがない。仕方ない。そういって逃げようとしているだけだ。
「じゃあ、あなたよりあなたの両親のほうがつらいのよね?あなたより長く付き合ってるんだもの。あなたより、ウィリアムの子どものほうが悲しみが強いのよね?あなたより親密だもの。・・・ウィリアムと、イーシャ先生の親友の方が、つらくて、悲しくて、あなたよりうじうじしていなきゃいけないのよね?あなたの論理でいけば」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「自分のほうがつらい、悲しいって言うのは同じように悲しみを抱えている人への侮辱よ。悲しみを分かち合って、慰めあうことすら拒むなんて、傲慢よ。自分だけがつらいって顔をするのは止めて。周りを傷つけるのは止めて。あなたのしていることは、仕方ないことじゃない。あなたのわがままよ」
「・・・僕は・・・・・・・・・」
「自分でわかってるんじゃない?自分がやっていることがおかしいって。自分から逃げることはできないのよ」
ヘコむジェームズを見捨てて、あたしはきびすを返した。
少し、やりすぎたかしら。
だけど、誰かが言わなきゃいけないことだったと、あたしは思う。
これ以上、ジェームズに、誰かを傷つけさせるなんていやだった。
リリーが傷つくのも、シリウスが傷つくのも、いやだった。
唇をかんで立ち止まって、ぎゅっと目を閉じる。
ふとした弾みに、よみがえるのは、胸の痛みだ。
感情を吐き出したから、よみがえってしまった。
悲しいのだと、言ってしまったから、悲しみがあふれそうだった。
「ミス・キリュウ」
つかまれた腕にびっくりして振り返る。
「アルファードさん!?」
そこにいたのは、あの葬儀以来、姿を見かけることも、連絡も取れなかった人だった。
「相変わらずのようだな」
驚くほど、痩せて、生気を失った顔になっていた。
その影が、さらに美貌に凄みを与えてはいたけれど。
それでも、あの人たちと一緒に笑っていた彼ではなかった。
「手厳しいことを言う」
ありゃ。見てたのか・・・。
ちょっぴり、ばつの悪い思いがした。
「・・・みっともないところを、お見せしました」
「いやいや」
口元を隠すように笑いを隠して。
アルファードさんは優しい目をしていった。
「君もまだ子どもなのだな、と実感できたよ」
「・・・・・・・・・・・ええ?」
うわぁ、心外。
あんなに子どもじゃないわよ。
というか、考えてみたら・・・あたし、2!?
・・・う、ちょ、ちょっといやだったかも・・・。
「本当に大人なら、ああいう子どもにあんな言葉はぶつけないしさらに落ち込ませて追い込むような心無いセリフは言わない。わかっているのだろう?あの子は、自分の悲しみをもてあましていただけだと。それをどう処理していいのかわからなくて、混乱していただけだと。そして、それをいずれ自分の力で乗り越えるだろうことも」
だから、ダンブルドアもマクゴナガルも彼を放って置いているだろう、と続けられて。
思い当たってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぐ」
ぐさ。
「それが、大人というものだよ。憤りを隠せなくて相手にぶつけるうちはまだ子どもだ」
な、なるほど・・・っていうか耳が痛い!
なんだか、普段が子どもに囲まれてるだけに、アルファードさんたちと一緒にいると、自分が未熟者って思い知らされる。
・・・その人たちも、もう、いないけれど。
心の奥が、ずきりと痛んだ。
よみがえる、怒りと、憎しみと、ルシウスの姿。
―――嫌わないで・・・・・・
声がよみがえりかけて。
あたしは、あわててそれを振り払った。
まだ、ダメ。
思い出すには、あたしはまだ、悲しみの中にいる。
まだ、思い出してはいけない。
少なくとも、もう少し心が整理できるまでは。
「・・・だが、そういうまっすぐさがうらやましくもあるよ」
そういって、アルファードさんがあたしに手を差し伸べた。
「君も来るといい。校長室へ」
「え?」
「遺言を、届けに来たのだよ。私は」
「ゆ、いごん・・・?」
「そう。私の親友からの、大切な人たちへの遺言を」
クリスマス休暇を数日後に控えて、暗かった学校の雰囲気も、少しは浮かれた空気をはらむようになってきた。
このグリフィンドールでも例外ではないんだけど、どこか沈んだ雰囲気があるのは、ジェームズがいるからかもしれない。
普段は人の3倍も明るい彼の沈んだ姿は、少なからずグリフィンドールに影響を及ぼしていた。
「シリウス、ちょっといい?」
「・・・どうした?」
とたん、ぎろり、とシリウスと腕を組んでいた女の子ににらまれた。
コワっ!
「話があるの。短い時間でいいから」
「彼は私と一緒にいるのよ。遠慮してくださらない?それとも、彼はあなたのものだとでも言うつもり?」
トゲットゲの声が、シリウスの隣から放たれる。
上から見下ろされる分、どうにも迫力が・・・。
あるってほどでもないんだけど、美人が怒ると怖いわね。
「あら、シリウスの恋人はあなたでしょう?あたしはただの友人だわ。でも、彼の親友のことでどうしても話したいことがあるのよ。用事が終わったらすぐにでもお返しするわ。だから、ね?」
ジェームズの名前にたじろいで、それでもふふん、と笑われた。
・・・ちょっとムカ。
「返してもらう必要なんてなくてよ。彼はわたしと一緒に過ごすって約束したの。そうよね、シリウス」
・・・いや、お嬢さん。シリウスのその顔は、ちょっとじゃなくムカついてる顔かと推察いたしますが。
つつかないほうがいいよぉ?
だって、シリウスの恋人って、あなた一人じゃないでしょうに。
「うざいよ、お前」
うわ。言った。
「で、ジェームズがどうしたって?」
「ええと・・・」
ね、ねえ・・・その態度はちょびっとひどくない?
「ねえ、ちょっとシリウス!?」
「・・・まだいたのか」
・・・・うっわー。感情のない声。
泣きながらいっちゃったけど・・・いいのぉ?
「それで?」
・・・いいのか。後でどうなっても知らないよ・・・?
「さっき、ね。自習室で自習してたのよ。そのときにあたしとリリーと、マギー、アリスで結構騒いでたの」
「・・・・・・・・ふぅん」
「そうしたら、突然立ち上がったジェームズが『うるさいッ』って」
「うるさかったんじゃないのか?」
「あら。そういうけれどね、シリウス。ジェームズだって本来はそういう明るいタイプでしょう?」
「・・・・・・・・・あいつの今の状況考えてやれよ」
それでも。
だって、あの二人が亡くなってから・・・
「・・・・・・3ヶ月も経ってるのよ・・・?」
「まだ、3ヶ月だ」
「もう、いい頃よ。あの二人が、ジェームズのそんな状態を嬉しいなんて思うとでも・・・」
「そんなことわかってるさ。ジェームズだって」
ぐっと顔をしかめて、シリウスが教科書を抱えなおした。
「話はそれだけか?」
「ねえ、ちょっと!シリウス!」
「ジェームズのことならジェームズに言えよ。聞いてもらえるならな」
「シリウス!」
「あんまりおせっかいが過ぎるとうっとうしがられるぜ」
ああ、もう!
「リリーと衝突してるから言ってるのよ!」
去ろうとしていたシリウスがぴたりと足を止めた。
「・・・・・・・・・・・・なに?」
「ジェームズのセリフに、リリーが食って掛かってたの。そうしたら・・・あのジェームズが、リリーに向かって・・・」
「エヴァンスに?」
「・・・『うるさい、マグル生まれなんかにわかってたまるか』って・・・」
シリウスが、目を見開いた。
「なんだと・・・?」
「あのジェームズがリリーにそういったのよ?」
「それを早く言え!」
「おい、ジェームズ!」
「なんだよ」
不機嫌そのものの顔で、イライラするようにジェームズはそこにいた。
「エヴァンスにマグル生まれ、と言ったそうだな」
「リリー、泣いてたわよ」
少し、罰の悪そうな顔を一瞬して、それでもジェームズは傲岸にあごをそらせた。
「君たちに関係ない」
「ちょっと、ジェームズ!?」
なに、その言い草、といいかけたあたしの口をシリウスの手がふさいだ。
ふさいだはいいけど、口だけじゃなくて鼻から何から、目以外覆われてんですけどっ!?
息できないって!!
手、でかっ!!
「ジェームズ、今やってることおかしいのはわかってるだろう?それは、お前の正義に照らし合わせて、正しいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・説教なんか聞きたくない」
「俺だって言いたくない」
「なら黙っていればいいだろう」
「そうはいかないだろう。お前のやっていることはおかしい」
淡々としたシリウスの口調。
責めるでもなく、詰るでもなく。
ただ、現実を見つめろといわんばかりの。
そのシリウスを、ジェームズは感情のない目でじっとみつめて。
「うるさいうるさいうるさいっ!!」
突然、ジェームズが暴発した。
「なんだって君たちは笑えるんだ?叔父さんが・・・ウィリアムが死んだのに・・・殺されたのに!」
「ジェームズ、それは・・・」
「人間だからよ」
ようやく手を振り切ったぜ!!
「なに?」
「人間だから、泣いて、笑って、怒って、生きていくの」
「僕は笑えない!ウィルが死んだのに、笑えるはずがない!」
「ウィルは笑ってたわ」
シリウスの手を振り払っていった言葉に、ジェームズが、凍りついたように動きを止めた。
「あの人が、失わなかったと思ってるの?大切なものを失わなかったと?失う恐怖と向き合わなかったと?」
「いや・・・」
「それでも、ウィルは笑ってた。どうして?」
「僕は、ウィリアムみたいに強くなんてなれない!僕は子どもだ!」
「子どもも大人も、強いも強くないもない。人間だから笑うのよ」
子どもだから、強いから、そんなの言い訳。
期間こそ違えど、誰もが乗り越えて、また新しく笑い会えるひととであって生きていく。
「あなたは、自分がウィリアムより弱いから、笑うことなんて出来ない。だから、周りを不愉快にしていいって言うの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「悲しみは、誰もが持っているわ。ねえ、ジェームズ。あたしが、ウィリアムとイーシャ先生を殺されて、悲しくないと思っているの?つらくないと思っているの?あたしはウィリアムと3年しか一緒にいなかったからあなたより悲しみが少ないの?親戚じゃないから、悲しくないの?」
「それ、は・・・」
「あたし、どれだけ侮辱されているのよ。確かに、よみがえる思い出は少ない。彼を思い出してつらくなる思い出も少ない。だけど、彼を失った悲しみがどれだけ違うというの」
「君には僕の気持ちがわからないんだ」
出た。言うと思ったわよ。こういうときのお決まりのセリフ!
でも、あなたが望むセリフなんて、言ってやらない。
「わからないって言ってほしいの?わかるわって言ってほしいの?」
もう、ジェームズの態度にはうんざりだった。
周囲が気を使っていることにも、周囲を傷つけていることにも気づかないで、いや、気づいているのに、自分は悲しいんだからって、正当化して。
周りを傷つけることを仕方ないって片付ける態度がいやだった。
仕方ないという言葉は、こういうときに使うべき言葉じゃない。
しょうがない。仕方ない。そういって逃げようとしているだけだ。
「じゃあ、あなたよりあなたの両親のほうがつらいのよね?あなたより長く付き合ってるんだもの。あなたより、ウィリアムの子どものほうが悲しみが強いのよね?あなたより親密だもの。・・・ウィリアムと、イーシャ先生の親友の方が、つらくて、悲しくて、あなたよりうじうじしていなきゃいけないのよね?あなたの論理でいけば」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「自分のほうがつらい、悲しいって言うのは同じように悲しみを抱えている人への侮辱よ。悲しみを分かち合って、慰めあうことすら拒むなんて、傲慢よ。自分だけがつらいって顔をするのは止めて。周りを傷つけるのは止めて。あなたのしていることは、仕方ないことじゃない。あなたのわがままよ」
「・・・僕は・・・・・・・・・」
「自分でわかってるんじゃない?自分がやっていることがおかしいって。自分から逃げることはできないのよ」
ヘコむジェームズを見捨てて、あたしはきびすを返した。
少し、やりすぎたかしら。
だけど、誰かが言わなきゃいけないことだったと、あたしは思う。
これ以上、ジェームズに、誰かを傷つけさせるなんていやだった。
リリーが傷つくのも、シリウスが傷つくのも、いやだった。
唇をかんで立ち止まって、ぎゅっと目を閉じる。
ふとした弾みに、よみがえるのは、胸の痛みだ。
感情を吐き出したから、よみがえってしまった。
悲しいのだと、言ってしまったから、悲しみがあふれそうだった。
「ミス・キリュウ」
つかまれた腕にびっくりして振り返る。
「アルファードさん!?」
そこにいたのは、あの葬儀以来、姿を見かけることも、連絡も取れなかった人だった。
「相変わらずのようだな」
驚くほど、痩せて、生気を失った顔になっていた。
その影が、さらに美貌に凄みを与えてはいたけれど。
それでも、あの人たちと一緒に笑っていた彼ではなかった。
「手厳しいことを言う」
ありゃ。見てたのか・・・。
ちょっぴり、ばつの悪い思いがした。
「・・・みっともないところを、お見せしました」
「いやいや」
口元を隠すように笑いを隠して。
アルファードさんは優しい目をしていった。
「君もまだ子どもなのだな、と実感できたよ」
「・・・・・・・・・・・ええ?」
うわぁ、心外。
あんなに子どもじゃないわよ。
というか、考えてみたら・・・あたし、2!?
・・・う、ちょ、ちょっといやだったかも・・・。
「本当に大人なら、ああいう子どもにあんな言葉はぶつけないしさらに落ち込ませて追い込むような心無いセリフは言わない。わかっているのだろう?あの子は、自分の悲しみをもてあましていただけだと。それをどう処理していいのかわからなくて、混乱していただけだと。そして、それをいずれ自分の力で乗り越えるだろうことも」
だから、ダンブルドアもマクゴナガルも彼を放って置いているだろう、と続けられて。
思い当たってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぐ」
ぐさ。
「それが、大人というものだよ。憤りを隠せなくて相手にぶつけるうちはまだ子どもだ」
な、なるほど・・・っていうか耳が痛い!
なんだか、普段が子どもに囲まれてるだけに、アルファードさんたちと一緒にいると、自分が未熟者って思い知らされる。
・・・その人たちも、もう、いないけれど。
心の奥が、ずきりと痛んだ。
よみがえる、怒りと、憎しみと、ルシウスの姿。
―――嫌わないで・・・・・・
声がよみがえりかけて。
あたしは、あわててそれを振り払った。
まだ、ダメ。
思い出すには、あたしはまだ、悲しみの中にいる。
まだ、思い出してはいけない。
少なくとも、もう少し心が整理できるまでは。
「・・・だが、そういうまっすぐさがうらやましくもあるよ」
そういって、アルファードさんがあたしに手を差し伸べた。
「君も来るといい。校長室へ」
「え?」
「遺言を、届けに来たのだよ。私は」
「ゆ、いごん・・・?」
「そう。私の親友からの、大切な人たちへの遺言を」