金烏と玉兎
指に絡む髪はさらさらとして長い。
眠るその顔のあどけなさが気に入っていると、言ったことはあっただろうか。
眠る娘の顔を見ながら、出会った時のことを、尚隆は思い出す。
ある日、王宮に帰ると、一人の娘が三つ指ついて待っていた。
何のまねだ、と問えばお褥(しとね)にと答える。
どうやって入った、と問えば
朱衡様と帷湍様に入れていただきました、と答える。
妃か。
そんなものはいらない。
この宿は、ただ寝に帰るだけでいい。
俺はいつかここを滅ぼすものだから。
そこに大切なものなど置いてしまえば、帰りたくなるではないか。
帰れ、と言った俺に、娘は俺を見つめて微笑んだ。
帰りません、と。
帰れません、ではなく・・・帰りません、と。
主上をお慕いしております、と。
そのときの会話を、今でも時々思い出す。
なにひとつ、与えてやれないぞ
なにもほしくありません
お前に、子どももやれない
そんなもの、望んでおりません
后妃どころか、妾妃にすら迎えてやれない
わたしは、ただ、ここであなたをお待ちし続けることだけが望みです
・・・・・・滅多にこないぞ
まあ。後宮どころか内朝にすらいらっしゃらない方が何をおっしゃいます
ころころと笑う娘に、俺は、知らず、笑っていた。
この娘は、前向きだ。
悲観しない。
ああ。だから。
あいつらは俺にあてがったのか。
この娘を、選んだのか。
それでもいいなら・・・・・・
はい。ここにおります・・・主上
眠るその顔のあどけなさが気に入っていると、言ったことはあっただろうか。
眠る娘の顔を見ながら、出会った時のことを、尚隆は思い出す。
ある日、王宮に帰ると、一人の娘が三つ指ついて待っていた。
何のまねだ、と問えばお褥(しとね)にと答える。
どうやって入った、と問えば
朱衡様と帷湍様に入れていただきました、と答える。
妃か。
そんなものはいらない。
この宿は、ただ寝に帰るだけでいい。
俺はいつかここを滅ぼすものだから。
そこに大切なものなど置いてしまえば、帰りたくなるではないか。
帰れ、と言った俺に、娘は俺を見つめて微笑んだ。
帰りません、と。
帰れません、ではなく・・・帰りません、と。
主上をお慕いしております、と。
そのときの会話を、今でも時々思い出す。
なにひとつ、与えてやれないぞ
なにもほしくありません
お前に、子どももやれない
そんなもの、望んでおりません
后妃どころか、妾妃にすら迎えてやれない
わたしは、ただ、ここであなたをお待ちし続けることだけが望みです
・・・・・・滅多にこないぞ
まあ。後宮どころか内朝にすらいらっしゃらない方が何をおっしゃいます
ころころと笑う娘に、俺は、知らず、笑っていた。
この娘は、前向きだ。
悲観しない。
ああ。だから。
あいつらは俺にあてがったのか。
この娘を、選んだのか。
それでもいいなら・・・・・・
はい。ここにおります・・・主上
