第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
朝陽が登り、キラキラと日差しさが降り注ぐ。
そんな穏やかな景色の中で、誰かの啜り泣く声が聞こえる。
その声に反射的に顔を上げようとして、煉獄は自分の下に広がる光景に息を呑む。
「っ、……」
そこには、膝をつくように座り込む自分を中心に血の海が広がっていた。
痛みこそ感じないが、どうやら腹部からの出血で、血溜まりができているようだ。
その突然の状況に、何が起きたのか理解できぬ頭で、声の主へと視線を移す。
しかし、逆光なのか、はたまた出血が原因か、顔はぼやけてよく見えない。
……何故?何が起きた?
必死で考えを巡らせていた時、ぽつりと口からこぼれ落ちた言葉。
『あの日の約束を果たせそうにない。一人にさせてすまない』
自分の口から出たその言葉に驚き、目を見開いた瞬間ー……、
「………夢、か」
自室で目を覚ました杏寿郎は、寝起き特有の掠れた声で口を開いた。
しかし、まるで現実で体験したかのような鮮明な景色が、未だに脳裏に焼き付いて離れない。
「…‥何だったんだ」
思わず独り言を呟いて、枕元に置いてある携帯に手を伸ばす。徐に時間を確認すれば、まだ起きるには随分早い時間だった。
しかし、妙な夢を見たせいだろう。寝汗をかいた体に服が張り付き、不快を感じて布団から起き上がる。
そして、そのままゆっくりと風呂場を目指し歩き始めた煉獄は、長い廊下でふと歩みを止めて考え込む。
「……約束?」
夢の中で呟いた、何の意味があるかも分からぬあの言葉が脳裏にちらついたのだ。
しかし、今となっては何の事かも思い出せない。
そもそも、あれは夢の中の出来事で、いい年をした大人が何時迄も夢に囚われ続けていては、生徒たちにも笑われてしまうと煉獄はため息を落とすと、再び風呂場へと歩みを進めるのだった。
******
結局、あれから時間が経ってもあの縁起の悪い夢が頭から離れない煉獄は、険しい表情で生徒たちのプリントを睨めつけていた。
「……く?、……ごく!、おいコラ煉獄!!」
そんな同僚の変化に逸早く気づいた不死川が心配して声をかけるが、煉獄はそれにも気づかず、完全に動きを止めたままである。
「おい、テメェェ聞いてんのかァ?」
「……む?ああ、不死川か!!どうかしたのか?」
「ア?どうかしてんのはそっちだろうがァ……お前は何分その姿勢で止まってんだァ」
漸く返事を返した煉獄に、不死川が呆れたように突っ込みを入れれば、その声に気づいた宇髄も何だ何だと近づいてくる。
「なんだ煉獄〜、考え事か?それとも、お前どっか調子でも悪ィの?」
「いや、大した事ではないんだが……」
「あのなァ……お前、完全にフリーズしてたぞ。気になってこっちも仕事が手につかねェ」
そんな同僚たちの言葉に、むう……と何やら考え込む素振りを見せた煉獄は、観念したようにため息を吐く。
この年になって夢見が悪かったなどと口にするのも気が引けたが、そもそも仕事が手につかない程にまで考え込んでしまっていたのだ。
誰かに話して、盛大に笑い飛ばしてもらった方がスッキリするかもしれないと、煉獄は意を決して口を開く。
「実は、なんとも縁起の悪い夢を見たんだ」
「「……夢?」」
それにポカンとした表情で首を傾げた二人に、煉獄は思わず苦笑いを浮かべながら、今朝の夢の話を言って聞かせる。
「まるで現実のような夢だったんだが……」
「「………」
しかし、笑われると思っていた二人の反応は煉獄の想像とは違っていた。
眉間に皺を寄せていた不死川は更に険しい表情を浮かべているし、初めこそ揶揄うような視線を送ってきた宇髄も、口を閉ざして何やら考え込んでいる。
「……まぁ、夢は夢だからな!あまり深く考えすぎるのも良くない!すまないな、二人共!ハハハッ!」
その雰囲気に耐えられず、煉獄が笑い声を上げていれば、宇髄も漸くその口を開く。
「……そうだな。まぁ、自分が死ぬ夢は吉兆って言うしな」
「む?そうなのか?」
それにピクリと反応を見せた煉獄に、宇髄はニカッと笑みを浮かべる。
「らしいぜ?俺は昔、花火と一緒に爆発する夢を見た事があるが……今でも派手に生きてるしな!」
夢くらい気にするな!と笑い飛ばす宇髄に、煉獄もつられて大きな笑い声を上げる。
そんな二人を黙って眺めていた不死川は、人知れず小さくため息を漏らすのだった。