第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
神様は残酷だ……
「此処から出ちゃ駄目だよ……物音も立ててはいけないよ」
「……お、おばあちゃん。やだ、行かないでっ」
「綾乃っ、……お前は、私の自慢の孫だ……おばあちゃんは、いつでも綾乃の幸せを願っているからねぇ?」
「やだっ、駄目ッ……おばあちゃんっ、」
どんなに助けを求めても、
神様は手を差し伸べてはくれないのだー……
「すまない……俺が遅れた為に、君の家族を守れなかった」
「……どうでもいいです。もう……、私には生きていく意味なんて、何もないっ……」
「そんな事は決してない!!生きる意味なら、これから探せばいい筈だ!!赤の他人が、口出しするのは違うかもしれんが……君に生きてほしいと願ったお婆様の思いから、目を背けないでやってほしい!!」
「っ、………うぅ」
命を繋ぎ、希望をくれた彼さえも
「……煉獄さんから、綾乃さん宛に最後の言葉を預かりました」
最も簡単に、私から奪っていったのだー……
彼の側にいれるだけでよかったのに、
そんな小さな願いすら神様は叶えてくれなかった。
「お前が上弦の参……」
「綾乃さん、一人で戦っては駄目だ!!…お願いだから、下がってくれ!!」
「……杏寿郎さんを奪っておいて、お前だけは許さない」
「綾乃さんっ!!!」
あの人の仇すら討たせてくれない神様なんて、
私は大っ嫌いだったんだ。
だけどーー……
「『人を守る為に迷わない、君の優しいその剣術が好きだった……あの日の約束を果たせそうにない。一人にさせてすまない』 煉獄さんからの言葉は以上です。……すみません………俺っ、何も出来なくて」
彼が残してくれた言葉を忘れ、
復讐心に囚われた自分の弱さが、
世界で何より、一番嫌いー……。
「俺との未来は…… 綾乃にとっての生きる意味になり得るだろうか」
そう言って優しく笑いかけてくれたあの人は、もう何処にもいないのだ。
******
時は令和ー……
人間同士の争いごとは尽きないが、鬼なんていう化け物に怯えることもなくなった現代で、
「だからね?おばあちゃん……私、もう決めたんだって!」
山本 綾乃は、何度目か分からないため息を落としていた。
平和な世でも、悩みというものは尽きないもので、この少女の場合はそれが少し特殊ではあった。
「でもねぇ……綾乃まで、こっちに来る事はないんだよ?今からでも遅くはないんじゃないかい?お婆ちゃんから学校に「……おばあちゃん。それはもう何度も言ったでしょ?私が来たくて、着いて来るんだから!」
「だけどねぇ……心配なんだよ」
そう一言呟いて眉を下げた祖母の姿に、綾乃は負けじと言葉を続けた。
「もう、大丈夫だって!!私、今年でもう18になるのよ?家事だって出来るし、一人暮らしなんて別に大した事じゃない。」
「でも、お友達もいない場所で……寂しい思いをさせてしまうだろう?」
「ふふ、それなら全然平気よっ!友達なんてすぐに出来るし、私にはおばあちゃんもいるじゃない……そんな事より、私はおばあちゃんの体の方が心配なの」
「綾乃、……いつも迷惑ばかりかけて、すまないねぇ……優しい孫を持って、私は幸せ者だよ」
涙ぐみながら、漸く折れてくれた祖母の様子に、綾乃は大袈裟なんだから……と呟いて、嬉しそうに頷いた。
今年、高校生活最後の一年を迎えようとしている綾乃は、この春、祖母の入院に伴って、新しい町への引っ越しを決めた。
祖母の病状はとても深刻なものだそうで、大きな病院での治療と、それに伴い、長期に渡る入院を余儀なくされている。
幼い頃に両親を亡くし、祖母に育てられた綾乃にとって、祖母は何にも代え難い大切な家族。
少しでも病院へ顔を出せるようにと、通い慣れた地を離れ、病院のある町へと引っ越す事に決めたのだ。
幸い、高校生活も残り一年……
どうせ卒業したら、すぐに就職するつもりだったしと、迷う事なく近くの高校への編入も決めた。
「おばあちゃんの入院の手続きが済んだら、引っ越しの手伝いは智昭おじちゃんがしてくれるって!明日には、新しい高校の編入試験を受けてくるから」
「そうかい……何から何まで、すまないねぇ。それで、その……新しい学校はなんて名前だったかねぇ?」
「ふふ、もう……きめつ学園よ?」
そう言って祖母を安心させる様に、呑気に笑いかける綾乃だったがー……
彼女はこの時、まだ知らない。
この選択を、すぐに後悔する事となろうとは………