第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
買い物を終え、無事に目的地へと到着した鈴は、煉獄へとくるりと振り返り、笑みを浮かべた。
「煉獄さん、此処です!荷物ありがとうございました」
「む?いや、それは構わないが……此処は確か、冨岡の……」
屋敷、
そう続く筈だった煉獄の言葉を聞く前に、鈴はガラリと扉を開けて屋敷の中へと足を踏み入れた。
「義勇、……帰っている?」
慣れた様に履き物を脱ぎ、屋敷の中へと声をかけた鈴に対し、煉獄は思わず動きを止めた。
〝……義勇、だと?……冨岡の事をその様な親しみを込めて呼ぶ者がいるなんて……いや、それよりも、なぜ彼女は当たり前のように屋敷へと上がり込んでいるのか……まるで我が家のようにっ、〟
そこまで考えて、ハッと顔を青褪めた煉獄に対し、鈴はキョトンと首を傾げた。
「煉獄さん、どうかされましたか?」
「……よもや、…冨岡と?いや、……まさか、、だが……むう……」
「……煉獄さん?えーっと、よく分からないですが、とりあえず上がって下さい」
そう言って困ったように呟いた鈴は、煉獄が漸く玄関へと足を踏み入れた事を確認して、くるりと屋敷の奥へと向きを変えた。
そして、まるで勝手が分かっているかのように、スタスタと廊下を進んでいく。
そんな鈴の後ろを、煉獄は険しい表情を浮かべて着いていく。
暫く広い屋敷の廊下を進めば、開かれた襖の隙間から光が差している場所が目に入る。その隙間から覗く、これまた広い庭からは、微かに風を斬るような音が聞こえ、恐らく屋主はそこであろう事を告げていた。
その襖からひょこっと顔を覗かせた鈴は、呆れたように口を開いた。
「義勇……、もう、またこんなところにいた」
そんな鈴に視線を移した冨岡は、然程驚く事もなく、無表情のままで口を開いた。
「鈴?……怪我は、もういいのか?」
「うん。傷が完全に塞がるまで、任務は休まないといけないけど」
「……そうか」
「ご飯は?ちゃんと食べたの?」
「……………」
「義勇?」
「……いや、」
「もう。そんな事だろうと思って、買い出しをして来て正解だった。ご飯の準備をするから、義勇は汗を流して来たら?」
その言葉に、冨岡は素直にこくりと頷いた。それを見て鈴も満足そうに笑みを浮かべる。
しかし、そのやり取りを傍観していた煉獄は、たまらずに二人へと声をかけた。
「待ってくれ!!少し……!いや、大分気になるところがあったのだが、聞いてもいいだろうか!!」
その問いかけに、煉獄へと視線を移した二人は、不思議そうに首を傾げた。
家主の冨岡に至っては、漸く煉獄の存在に気づいたようで、……煉獄が何故此処にいる?と、今頃になって鈴へと尋ねている。
「ああ、それは私が煉獄さんに昼飯をご馳走すると言ったからなの」
「………そうか」
「怪我を負った私を、煉獄さんが蝶屋敷に連れて行ってくれたの。今日も送ってくださるって言うから、是非お礼にと思って」
「……………すまないな、煉獄」
「む?いや、……それは大した事ではないのだが」
あの冨岡とスムーズに……とは言えないが、他の者たちよりも、明らかに口数が多くなった冨岡に話しかけられ、煉獄も慌てて返事を返す。
しかし、呆気に取られて一瞬忘れかけた問いかけを思い出した煉獄は、再び彼らへ問いかけた。
「不躾な質問をするようだが……、君達はどのような間柄なのだろうか?」
間柄?と可愛らしく首を傾けた鈴に対し、相変わらず冨岡は無表情で煉獄を見つめた。
そして、そんな二人を前に、最悪の想像を思い浮かべた煉獄は、ごくりと生唾を飲み込んだ。
しかし、鈴の口から出たのは、いい意味で彼の予想を裏切るものであった。
「どんなって、……義勇は私の兄弟子ですけど?」
「兄、……弟子?……しかし、それにしても、名前で呼び合うなど仲が良すぎやしないか?」
「え、そうですか?幼少期から、共に育ての元で修行してきましたので……普通、なのでは?」
「幼き頃から?……成る程!!うむ、了解した!!」
先程まではあんなに険しい表情を浮かべていた煉獄だが、鈴の言葉を聞いた途端、腕組みをしたまま、うんうんと何かを納得したように頷いた。
そして、パッと顔を上げたかと思えば、首を傾げる鈴を見つめ、キラキラとした笑顔で口を開いた。
「鈴!!では、是非俺の事も、杏寿郎と名前で呼んでくれ!!」
「へ?あー……はい、…考えておきますね、あははは」
笑顔で詰め寄る煉獄と、それを苦笑いで受け流す鈴を眺め、冨岡は不思議そうに首を傾げた。