第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鈴が怪我を負って二日ー……。
「……柱って、意外とお暇なんですか?」
「むう?……暇かと問われれば、全くもって暇ではないな!!鬼による被害は一向に減る気配もないし、鍛錬に費やす時間も限られている!!」
「……でしたら、私になんか構わなくても」
「いや、それとこれとは話が別だ!!……例え忙しくても、時間がなければ作るまで!!鈴の側にいてやりたいし、鈴と過ごす時間は、俺にとって唯一無二のひと時だからな!!」
「は、はぁ……」
相変わらず任務の合間を縫って、煉獄は鈴の元へと訪れていた。
初めこそ煉獄の勢いに押され気味だった鈴も、段々とそれにも慣れてきて、今だって苦笑いは浮かべつつも、のらりくらりと話を受け流している。
それに加えて、あれ以来、妻だの結婚だのと言った話をしなくなった煉獄に、少し胸を撫で下ろしていた。
「炎柱様、ご心配して頂かなくても、私も明日で退院です。暫くは自宅療養との事ですが、恐らく4〜5日で任務にも復帰できるかと思いますので、ご安心ください」
「そうか!!順調に回復しているようで安心した!!」
腕を組みながら嬉しそうに頷いた煉獄は、当たり前のように「明日は自宅まで送ろう!!」と口を開いた。
「いえ、明日は寄りたい所がありますので……」
「ならば、尚更共に行こう!!その足なのだから余り無茶はしないでくれ!!」
「いえ、もう普通に歩けますが………」
そこまで口にして暫し考え込んだ鈴は、どうしたものかと頭を抱えた。
今までのやり取りから、彼を説得するのは至難の業……というか、一度も成功してはいないし、何かと理由をつけて、付いてくることは間違いないだろう。
〝明日は、自分の事はいつも後回しにする義勇が、しっかりご飯を食べているか確認しに行きたかったのに……〟
そこまで考えた鈴だったが、兄弟子と彼がそもそも顔見知りである事を思い出し、ポツリと独り言を呟いた。
「もしも炎柱様も一緒に行かれるのであれば、喜ぶかも知れないなぁ……」
それにキョトンと首を傾げながら、「喜ぶ……?」と彼女の言葉を繰り返した煉獄だったが、次の瞬間には、ハッと思い出したように口を開いた。
「鈴!!炎柱様なんて他人行儀な呼び方はよしてくれ!!」
「え?ああ、そうでしたね」
「うむ、是非名前で頼む!!」
「…あー、えっと……煉獄さん?」
「むう、君もなかなか強情だな……その呼び方の方が断然ましだが……むう、しかし……」
どうやら〝杏寿郎さん〟とでも、呼んでもらえると思っていたのだろう。
むむ、と眉間に皺を寄せた煉獄に、鈴は思わず呆れた視線を送る。
しかし、時折おかしな会話は入るものの、この二日間で彼の人柄にも触れた鈴は、すぐに気を取り直して頭を下げた。
「……では煉獄さん、明日はよろしくお願いします」
「うむ、了解した!!」
先程まで難しい顔をしていた筈が、煉獄は笑顔でそれに頷いた。彼の切り替えの速さには、毎度のことながら驚かされてばかりである。
「では胡蝶にも、そのように伝えてくるとしよう!!」
そう言って、意気揚々と病室を出て行った彼の姿を見送って、鈴は小さくため息を吐くのだった。
******
翌日、約束通り蝶屋敷へとやって来た煉獄は、
「鈴、寄りたい場所とは…‥八百屋だったのか?」
先陣を切って歩き出した鈴の後ろで、はて、と不思議そうに首を傾けていた。
「いえ、今日の昼飯の調達をと思いまして……宜しければ、煉獄さんもご一緒に如何ですか?」
「よもや、鈴が手料理をご馳走してくれるのか!!」
「……大したものは作りませんが、……えっと、宜しければ……」
「うむ!!是非お願いするとしよう!!」
その提案に嬉しそうに頷いた煉獄は、当然のように鈴が買った野菜を店主から受け取り、それを片手に歩き出す。
あまりにそつなくこなすものだから、それには鈴も一瞬惚けて動きを止めてしまう。
「む?どうした?」
しかし、すぐに我に返り、慌てて彼の元へと駆け寄り口を開いた。
「いえ‥‥すみません、荷物まで持って頂いて」
「ハハハッ、これくらいお安い御用だ!!」
そんな鈴に笑いかける煉獄は、やはり蜜璃の言葉通りとても頼り甲斐のある先輩のようで、鈴も自然と笑みをこぼした。
「鈴は料理が得意なのか?」
「得意という程ではないですが……修行時代、先生の所ではよく料理を作っていました」
「先生?」
「育ての事です。身寄りのない私を、隊士に育ててくれた恩人です」
「成る程!では、その先生とやらに、いつか会ってみたいものだな!!」
「ふふっ、きっと吃驚しますよ?先生はいつも天狗のお面をつけてるんです」
その後の道中も、煉獄は鈴の歩幅に合わせながら、楽しそうに彼女の話に耳を傾けていた。
他人の話を聞かない人だと思っていたが、鈴の話に優しい笑みを浮かべる彼は、やはり面倒見のいい青年なのだろう。
途中で魚屋に寄り、食材を調達しても、やはり当たり前のようにそれを受け取る煉獄に、
〝煉獄さんって、とてもモテるだろうな……なんで、よりによって私なんだろう〟
鈴はぼんやりと思うのだった。