第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
炭治郎が渾身の力で振り下ろした刀は少しずつ、でも着実に妓夫太郎の頸を斬り落としていく。
「お兄ちゃん!!ちょっと嘘でしょ!!そんな奴に頸斬られないでよ!!」
その状況を屋根の上から傍観していた堕姫は、焦ったように立ち上がると、兄を加勢するべく帯を伸ばす。
今まで何人もの柱を殺してきた兄が、たった一人の……それもボロボロで満身創痍な鬼狩り相手に、一体何をやっているのか。
信じられないといった表情でその光景を見下ろしていた堕姫だが、次の瞬間彼女の
「なっ、…」
突然の出来事に反応が遅れた堕姫が顔を上げれば、そこに居たのは先程まで瓦礫の下で悶えていたはずの善逸の姿。
〝こいつ…あの瓦礫から抜けやがった〟
帯を斬りつけるようにして高く飛び上がった善逸に、堕姫は苛立ちを露わにする。
「どけぇ、不細工!!」
怒鳴り声を上げながら、今度こそ確実に善逸を仕留める為に、堕姫は帯を高速で動かしていく。
「雷の呼吸 壱の型」
「あんたの技の速度は分かってんのよ!!何度も見てるからね!!」
「………霹靂一閃、神速っ!」
だが、完全に油断しきっていた堕姫は、善逸の攻撃に遅れをとる。
ボロボロな体の筈なのに、先程よりも速く……
一瞬にも満たない速度で堕姫との間合いを詰め、彼女の頸へと刀を振り抜いた善逸に、流石の堕姫も冷や汗をかく。
しかし、彼女が気づいた時には既に自身の頸が斬られかけていて、帯をしならせるにして必死で頸を繋ぎとめる。
そんな堕姫の様子に気づいた善逸も負けじと食らいついていくが、あと少し……もう少しという所で中々頸を斬り落とせない。
そうこうしている間に、炭治郎に斬られかけていた筈の妓夫太郎が太腿からクナイを抜き取り、攻撃を弾き返す。
勿論、せっかく生まれた千載一遇の機会を逃すまいと炭治郎も必死に食らいついていくが、毒を分解し始めた妓夫太郎の攻撃が容赦なく彼を襲う。
「このガキィィィ!!」
次第に鬼の攻撃は鋭さを増し、妓夫太郎の体が全回復した頃には炭治郎の頭を鎌が捉える。
〝……しまった〟
炭治郎が迫り来る刃に気づいたところで、速度が早すぎて弾き返すことも出来はしない。
ただ振り下ろされる切っ先を、呆然と見つめていた瞬間、
ー……ガキン
刃物がぶつかり合う音が響くと同時に、目の前に倒れていたはずの宇隨の姿が現われる。
それには炭治郎だけでなく、柱は死んだと豪語していた妓夫太郎も驚きを隠せずにいたが、間髪入れずに火薬の爆発音が轟いた事でハッと我に返る。
恐らく心臓を筋肉で無理やり止めて毒の巡りを一時的に止めていたのだろうが……
人間離れした芸当と、この最悪のタイミングでの登場に、当然妓夫太郎は苛立ちを露わにする。
「宇髄さん!!」
「譜面が完成した!!勝ちにいくぞー!!」
その言葉を皮切りに宇隨は片腕だけで大剣をぶんぶん振り回しながら、妓夫太郎の攻撃を弾いていく。
「壱、」
「なっ!」
「三、七、五、為、巾!!読めてんだよ!てめぇの汚ねぇ唄はよお!!」
「ふざけんなよなぁぁぁあ!!!」
鬼の追撃は鋭さを増している為弾ききれない細かい斬撃が彼の体に傷を負わすが、それでも怯まず宇隨は突き進む。
「宇隨さん!」
「止まるな!跳べー!!」
炭治郎もそれに負けじと食らいつき、鬼の攻撃を抑え込む宇隨を飛び越すように鬼の頸を狙う。
しかし、それより早く妓夫太郎の右腕が炭治郎の顎へと鎌を振り上げる。
「……炎の呼吸 壱ノ型 不知火っ!」
その瞬間、ごおぉぉっと吹き抜けた一陣の風。
炭治郎に迫る切っ先を弾き飛ばした煉獄の姿に、妓夫太郎は目を見開く。
あの時ー……
くの一からの攻撃に苛立った妓夫太郎は、煉獄の横腹深くにクナイを突き刺した。
痛みから動きが鈍ったところへ、間髪入れずに毒の鎌まで左肩に突き立てたというのに……
青白い顔で刀を振り抜いた煉獄は、勢いを押し殺すことも出来ぬまま地に膝をつくと、ごぽりと込み上げてきた血を口から吐き出した。
「がはっ、は、……竈門少年っ!」
しかし、すぐさま振り返った煉獄は炭治郎へと声をかける。
その呼び掛けに応えるように、炭治郎は大きく息を吸うと妓夫太郎の頸目掛けて刃を振るう。
「おりゃあああーっ!!」
全神経を鬼の頸だけに集中させ振り抜いた刀は、妓夫太郎の頸を斬りつけていく。
〝マズイ、斬られるぞっ!
いや大丈夫だ……俺の頸が斬られても妹の頸が繋がってりゃあ……〟
そう思い立った妓夫太郎は、妹の額に開いた瞳を通して、先に善逸を仕留めようと算段する。
******
「あんたがあたしの頸を斬るより早く、あたしがあんたを細切れにするわよ!!」
そう高らかに言い放つと、堕姫は善逸目掛けて帯を格子状に張り巡らせる。
頸を斬り落とすのに手一杯の善逸は、後方から迫る帯に対応するほどの余裕はない。
その状況に堕姫が勝利を確信した瞬間ー……
「水の呼吸っ、肆ノ型 ……打ち潮・乱っ!」
またしても、予想外の助太刀が入る。
善逸の背後に降りたった鈴が、迫り来る攻撃全てを斬り捨てる。
それに堕姫が驚いている隙に、今度は伊之助が彼女の目の前に現われる。
「俺の体の柔らかさを見くびんじゃねえっ、…内蔵の位置をズラすなんて……お茶の子さいさいだぜっ!」
伊之助も鈴も、二人とも妓夫太郎に体を貫かれた筈……その証拠に傷口からはボタボタと血を流し、苦しそうに呼吸している。
立ち上がることだけでやっとな筈なのに、それでも彼らは立ち上がり、再び鬼の頸を狙う。
「険しい山で育った俺にはっ…、毒も効かねえ!うりゃあ!!」
口から血を流しながら大きく刀を振りかぶった伊之助は、善逸が捉えている頸を反対側から斬りつける。
「っ、お兄ちゃん!!…何とかしてお兄ちゃん!!」
「「うぉぉおおおお!!」」
堕姫が堪らず兄に助けを求めたが、次の瞬間、彼女の頸は宙を舞う。
それを見届けた鈴は、慌てて後方へと振り返り全速力で駆けだした。
〝体に毒が回るっ、私はもう動けなくなる……その前に頸を斬り落とさなければっ、〟
痛む体に喝を入れ炭治郎達の元へと向かっていた彼女は、前方に頸がない状態で倒れている鬼の姿を確認し、ほっと小さく息を吐く。
「…おい!煉獄、竈門!!…っ…立て!!」
しかし、突然叫び始めた宇隨の様子に鈴も慌てて速度をあげる。
「逃げろー!!」