第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鈴が堕姫へ大技を繰り出したのとほぼ同時、後方で激しい爆発音と建物が崩れ落ちる音が鳴り響いた。
恐らく彼方でも激しい戦闘が繰り広げられているのだろうが、目の前の鬼の頸だけに意識を集中させた彼女は、渾身の力を込めて刀を振り抜いた。
「ぐっ、…もう少し……なのにっ、」
「アンタが私の頸を斬れるわけないでしょ?」
しかし、相手も上弦。
渾身の力で振り抜いたはずの攻撃も、頸を斬る寸前、折り重なるようにして強度を増した帯の束によって弾かれる。
「あー、もう本当にしつこいわね!そろそろ死になさいよ!!」
「くっ、……」
鬼の苛立ちを物語るように、次第に鈴へと集まり始めた帯の束にジリジリと後ろへ押し戻される。
それに気づいた伊之助達が鈴の元へと駆け出したと同時、その背後に炭治郎が先程の女性を抱えて降り立った。
「危ねぇぇぇぞ!!だァァァアッ!!」
「伊之助!!善逸!!」
すかさず伊之助から声が掛かり、炭治郎も既の所でその場から飛び退いた。
「炭治郎君!其方の女性も大丈夫ね?」
「鈴さん!!」
そこへ後退して来た鈴も加わり、四人は攻撃を受け流しながら会話を交わす。
「作戦変更を余儀なくされてるぜ!!
「鎌の男よりもまだ此方の方が弱い、まずこっちの頸を斬ろう!炭治郎、まだ動けるか?」
伊之助と善逸の提案に炭治郎は一瞬不安そうに瞳を揺らした。
炭治郎の話では毒に蝕まれている宇髄に加えて、煉獄も深傷を負っているのだとか。
やはり先程鈴が見た光景は幻覚ではなかったようだ。
あの時鬼が手にしたクナイは彼の体へと振り下ろされたのだろうか…
それとも、鎌の攻撃が彼に傷を負わせたのか…
炭治郎の言葉に一瞬動揺を見せた鈴だが、自分の事を信じて送り出してくれた煉獄の姿を思い出し覚悟を決める。
「煉獄さんも音柱様も、二人ならきっと大丈夫!それどころか、こちらの鬼の頸を斬り落とさない事には、二人の足を引っ張ってしまうわ!!」
「そう、ですね……まずはあの鬼の頸を斬りましょう」
「ええ。私が時間を稼ぐから、三人は頸をお願い!」
「え、鈴さん!?」
炭治郎が頷いたのを確認すると、鈴は帯の束へと迷う事なく駆け出した。
一本でも多く帯を斬り落とすように広範囲へと攻撃を放ち、仲間が進んで行く道を作る。
「俺らも行くぞ!!」
それに感化されたように伊之助が声を上げ鬼に向かって走り出せば、善逸と炭治郎も後を追い走り出す。
一瞬でも気を抜けば何処からか飛んでくる血の刃に、連なって強度を増した帯に体を貫かれる事だろう。
だがそんな状況でも、四人は怯む事なく鬼に立ち向かい続け……
「獣の呼吸 乱杭 咬み!」
遂に伊之助が堕姫の頸を斬り落とす。
歓喜に湧く三人に鬼はギャーギャーと喚き散らかすが、後はもう一体の頸を斬り落とすまで逃げればいいだけだと伊之助は胸を張る。
「ぬぉぉぉぉおお!!とりあえず俺は頸持って逃げ回るからな!!お前らはオッサンとギョロギョロ目ん玉を加勢しろ!!」
「分かった!!気をつけろ伊之助」
「おうよ!!」
そうして、堕姫の頭を小脇に抱え伊之助が走り出した時、彼らから少し離れた所で援護をしていた鈴だけが異変に気づく。
「危ない伊之助君!」
伊之助の背後に迫り来る妓夫太郎の存在に逸早く気づいた鈴が、慌ててその間に体を割り込ませるが……
「「ぐっ、……」」
「伊之助!!鈴さん!!」
彼女が振り抜いた刀を片手で簡単に止めた妓夫太郎は、鈴諸共、伊之助の体に鎌を深く突き刺した。
その刃は鈴の腹を貫通し、伊之助の心臓付近に切先が顔を出しており、二人の足元にはボタボタと血が滴り落ちる。
それを無表情で眺めながら妓夫太郎が鎌を引き抜くと、二人はその場に力なく倒れ込んだ。
〝何故アイツが此処に……宇髄さんと煉獄さんはっ、〟
突然の出来事に驚き炭治郎の足が止まる。
それから慌てて辺りを見回して、倒れ込む宇髄の姿を確認し、完全に動きが停止する。
「炭治郎っ、危ない!!」
その瞬間、背後から善逸に体を押されて……
振り向き様に炭治郎の目に映ったのは、自分を庇い攻撃の渦に巻き込まれて行く善逸の姿だった。