第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鈴が善逸達に追いた時、彼らは既に堕姫と睨み合っていた。
「善逸く「俺は君に言いたいことがある。耳を引っ張って怪我をさせた子に謝れ」
いつも弱腰な少年ではあるが、人一倍優しい子だ。
きっと曲げられない信念があるのだろう。
鈴の呼びかけを遮ってまで話し出した言葉は、優しい思い遣りに溢れていた。
しかし、相手は鬼ー……
ましてや人を沢山殺めて来た上弦である。
彼の優しい言葉に頷くはずもなく、分かりやすく顔を顰めた堕姫は悪びれる様子もなく言い放つ。
「つまらない説教を垂れるんじゃないわよ!お前みたいな不細工がアタシと対等に口を利けると思ってるの?この街じゃ女は商品なのよ、物と同じ。売ったり買ったり壊されたり持ち主が好きにしていいのよ。不細工は飯を食う資格ないわ、何もできない奴は人間扱いしない」
「自分がされて嫌だったことは人にしちゃいけない」
「違うなあ、それは……」
それどころか癪に触る事があったのだろう。
声色を変えた堕姫の額に妓夫太郎の瞳が出現し、先程よりも禍々しい殺気を放ち始める。
「人にされて嫌だったこと苦しかったことを人にやって返して取り立てる……自分が不幸だった分は幸せな奴から取り立てねぇと取り返せねえ、それが俺たちの生き方だからなあ……言いがかりをつけてくる奴は皆殺してきたんだよなあ。お前らも同じように喉笛掻き切ってやるからなああ!」
その言葉を皮切りに、鬼の攻撃は先程より激しさを増す。
これが本当の姿だと話す堕姫は、巧みに帯を操って幾重にも重なった攻撃が鈴達に襲いかかる。
「死ね死ね、不細工共!」
それだけに飽き足らず、血鎌の攻撃まで加わり始めるものだから三人は防戦一方の形に立たされる。
後方から聞こえる激しい爆発音からも、妓夫太郎との戦いが激化している事は容易に想像がつくが……
「伊之助君、危ない!!」
「ぬわっ!」
鈴が伊之助の背後に体を擦り込ませ、迫り来る血鎌を弾き飛ばす。
その瞬間鈴の背後を狙う様に伸びて来た帯を伊之助が力一杯叩き斬るが、直ぐ様再び飛んできた血鎌を散り散りになって避ける。
「くそ、攻撃の切れ目がねぇ」
「伊之助君突っ込みすぎないで。あの攻撃、一人では防ぎきれないわ」
「ああ、特に血の刃はやべぇ……掠っただけでも死ぬってのを肌でビンビン感じるぜ……」
一瞬でも余所見をすれば、体を貫かれるのはこちらの方だ。
〝数だけなら此方が優勢のはず。……せめて妹の頸だけでも斬れれば、戦力は減るかもしれない〟
それでも、何か勝機になりうるものはないかと鈴は迫り来る攻撃を避けながら、必死で考えを巡らせる。
「此処で仕留めるぞ!!」
……そんな中、聞こえた煉獄の大きな叫び声。
何事かと鈴が慌てて振り返れば、足から崩れかかった妓夫太郎に三人が一斉に斬りかかっていた。
そのすぐ近くの建物の上には、大きな武器の様なものを構えた女性が立っていて。
彼女が宇髄の言っていたくノ一の嫁なのだと推察する。
「だあああクソ、向こうは頚斬りそうだぜ!!チクショオ、合わせて斬らなきゃ倒せねえのによ……三人で撹乱しながら逃げ回ってるから何とか攻撃を避けれてるが、避けてるだけじゃあ意味がねえ!!やっぱり距離を詰めて頚を狙わねえと」
「伊之助、落ちつけ。全く同時に斬る必要ないんだ、二人の鬼の頚が繋がってない状態にすればいい。向こうが頚を斬った後でも諦めず攻撃に行こう」
その様子に気づいた伊之助と善逸が必死で戦略を立てている間に、彼方では後もう少しで頸を落とせるという所で妓夫太郎の体が再生する。
それは離れた場所で様子を伺う鈴の目にも明らかで、すぐ太ももに突き刺さるクナイを抜き取った妓夫太郎が、煉獄の横腹に向かって大きくその手を振りかぶり……
「待っ、…駄目「鈴さん!!」
煉獄の横腹にクナイが振り下ろされるのを呆然と眺めていた鈴の体を、善逸が担いで走り出す。
その瞬間、幾重にも重なる帯が屋根を突き破りながら音を立て、鈴はハッと我に帰る。
「おい!余所見すんな!!」
「ごめん。ありがとう善逸君、伊之助君…」
先程の光景が頭から離れる事はない。
あのクナイはどうなった、
煉獄さんは怪我を負っていないか。
あれから刻一刻と時は流れているが、毒を負っている音柱様は無事なのか。
炭治郎君も酷い怪我を負っていたはず…
何故兄の方に彼を置いて来た、私が残るべきだったのではないか。
思う所は数々あるが、今は目の前の敵に集中しなければ……
背後から聞こえる爆音に唇を噛み締めながら、鈴は大きく振りかぶる。
「水の呼吸 拾ノ型 生生流転」