第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「煉獄さんっ、大丈夫ですか?何処か痛むんですか?」
宇髄が鬼と対峙する背後で、一人蹲る煉獄に鈴はすぐさま駆け寄った。
額に大粒の汗を掻き片膝をつくようにして俯いている彼だが、ぱっと見て取れる外傷は見当たらない。
しかし、肩を上下に動かして呼吸をする姿は、とても苦しそうである。
「……大した事はないっ、」
チラリと此方に視線を寄越し言葉を続けた煉獄に、鈴は心配で泣きそうになった。
やはり後遺症の影響は大きいのだ。
元々、共に回復訓練をしていた時から気づいてはいたが、肺が上手く機能しないままでは呼吸を使いこなす事など到底不可能。
それどころか、このまま無理に肺を動かし続ければ、どんな副作用が起こるのか見当もつかない。
今すぐにでも彼を戦いから離脱させてやりたいが、上弦を相手にしている今、後輩達を置いて鈴がこの場を離れる訳にはいかないだろう。
「煉獄さん、立てますか?ひとまず外へ……」
だが鈴の心情とは裏腹に、煉獄は鈴の言葉を片手で制すとゆっくりと腹部を抑えて立ち上がる。
「すまない、俺なら大丈夫だ」
「でも……」
「さっきは宇髄に蹴り飛ばされて体制を崩していただけだから……それより、俺を庇って毒を喰らった宇髄の方が心配だ」
そう言って宇髄の背中を見上げた煉獄に、鈴もピクリと反応する。
「……毒?」
しっかり両足で立ち、鬼に向かって「勝つぜ、俺たち鬼殺隊は」などと言い放つ彼だが、よく見ればその指先は僅かに痙攣を起こしている。
毒の効力は計り知れないが、その状態で戦い続けることがどれ程危険なことか、鈴も身を持って体験している。
「勝てないわよ、頼みの綱の柱が毒にやられてちゃあね」
「余裕で勝つわ、ボケ雑魚がァ!!毒回ってるくらいの足枷あってトントンなんだよ」
鬼だってそれを嘲笑うかのように不敵に口元を歪めるが、それでも彼は強気に啖呵を切り続ける。
「テメェらの倒し方はすでに俺が看破した!同時に頚を斬ることだ、二人同時にな!そうだろ?そうじゃなけりゃそれぞれに能力を分散させて弱い妹を取り込まねぇ理由がねぇ!!」
そう言って声を張り上げた宇髄に、鈴は静かに辺りを見渡した。
この戦いは長引かせる訳にはいかないが、二人同時に頸を斬るとなると勢力は分散せざるを得ない。
妓夫太郎と名乗ったあの鬼……
柱に毒を負わせる辺り厄介な鬼は兄の方だが、妹は炭治郎達だけに任せて大丈夫だろうか。
必死で考えを巡らせる鈴を他所に、鬼の兄妹は宇髄の言葉を肯定するように言葉を続けた。
「その簡単なことができねぇで鬼狩りたちは死んでったからなあ、柱もなあ……俺が十五で妹が七喰ってるからなあ」
「そうよ、夜が明けるまで生きてた奴はいないわ。長い夜はいつもアタシたちを味方するから。どいつもこいつも死になさいよ!」
そう言って声を荒げた堕姫が、此方に向かって駆け出した瞬間ー……
「善逸っ!」
炭治郎の静止の声も聞かず、善逸が一人で堕姫を追いかけ飛び出した。
「
それを追うように伊之助も駆け出せば、突然動き出した戦況に鈴は一瞬戸惑いを見せる。
すると、それを読み取ったかのように鈴の肩にぽふんと煉獄が手を置いた。
「鈴、黄色い少年たちを頼む」
「え、でも……」
このまま此処を離れていいものか。
音柱様だって、煉獄さんだって、万全の状態ではないのに……
不安そうに瞳を揺らした鈴に、煉獄は満面の笑みで笑いかける。
「俺たちなら大丈夫だ!!それにあの鬼も手練れだ、鈴にだからこそ任せられるんだ!!」
「……煉獄さん」
「だから、頼んだぞ!!」
そう言って念押しした煉獄を、鈴はじっと見つめ返す。
それから観念したように頷くと、くるりと背を向け駆け出した。
だが、数歩進んだところでその足はピタリと歩みを止めた。
「煉獄さん、伝言を無視したこと帰ったらお説教ですからね!」
振り向き様に悪戯な笑みを浮かべた鈴は、そう一言口にすると今度こそ迷う事なく建物の外へと姿を消した。
それに一瞬キョトンとした表情を浮かべた煉獄は、ふっと口元を吊り上げると鬼を見つめて呟いた。
「ははっ、それは怖いな」
それぞれの戦いは始まったばかりである。