第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
妓夫太郎と名乗った鬼が勢いよく鎌を振りかぶると、血の刃が斬撃となり辺りをグルグルと飛び回り始めた。
その瞬間、逃げ遅れた民間人の前に宇髄が体を滑りこませ、煉獄と鈴も向かって来る刃を弾き飛ばす。
「妬ましいなぁあ……お前本当に、いい男じゃねぇかよ、なあぁ?」
そう言って対面する宇髄を指差した妓夫太郎は、腹立たしそうに口を開く。
「人間庇ってなぁあ、格好つけてなぁあ、いいなぁ……そいつらにとってお前は命の恩人だよなあ…さぞや好かれて感謝されることだろうなぁあ」
「まぁな。俺は派手で華やかな色男だし、当然だろ?女房も三人いるからな」
「お前女房が三人もいるのかよ……ふざけるなよなぁ……なぁぁぁぁ、許せねぇなぁぁ!」
平然と返事をする宇髄に、妓夫太郎は顔を歪ませると再び飛び血鎌を放っていく。
その攻撃を防ぎきれないと判断した宇髄は、咄嗟に床を破壊させ下の階へと避難する。
「逃げろ!身を隠せ!!」
背後に庇う民間人へと宇髄が声を荒げれば、すかさず鈴が出口を見つける。
「此方へ、早く!」
「……は、はい」
破壊された建物の隙間を見つけ、鈴が民間人を誘導する中、宇髄は眉間に皺を寄せながらチラリと後ろを盗み見る。
〝煉獄が未だ療養中だと胡蝶からは聞いていたが……〟
数ヶ月前、煉獄が目を覚ましたとの知らせを受けて、蝶屋敷へと見舞いに訪れた際に、しのぶから聞かされた煉獄の容態。
腹に開けられた風穴は勿論、失明した片目も、傷ついた臓器も彼に致命傷を負わせていた。
鍛え抜かれた肉体と強靭たる精神力で奇跡的に目を覚ましこそしたが、その代償はあまりにも大きなものだったようだ。
『呼吸を使えない以上、隊士として再び刀を握る事は難しいでしょう……』
悲愴な面持ちで言葉を濁したしのぶを思い出し、宇髄は考えを巡らせる。
〝鬼の攻撃に反応こそ出来てはいるが……〟
明らかに普段より動きの悪い煉獄に、宇髄は静かに口を開く。
「……いけるか?」
「ああ、勿論だ!!援護しよう!!」
しかし彼の心配を他所に、当の本人は力強い返事を返すと、スッと刀を構え直した。
「そうだな、お前はそういうド派手な奴だった」
それを確認した宇髄は小さく口元を吊り上げると、二体の鬼めがけて火薬玉を勢いよく投げつけた。
「どの道やるしかねェ!!」
「ああ!それが俺達の責務だからな!!」
派手な爆音を轟かせながら技を繰り出す宇髄に続き、煉獄も大きく息を取り込むと鬼へと向かい駆け出した。
******
一方、逃げ遅れた人を外へと逃した鈴は、偶然そこに居合わせた伊之助と店の前で合流する。
「伊之助君と……善逸君!!良かった、無事だったんだね」
その後ろには消息を絶ったと伝えられた善逸の姿もあり、鈴はほっと肩を撫で下ろす。
しかし、すぐに彼の異変に気づき、キョトンと彼を見つめ口を開く。
「善逸君、その格好……それに寝てるの?」
何故か彼は潜入当初の奇抜な姿のまま、目を瞑り鼻提灯を出している。
それはまるで眠っているかのような状態で、一瞬血鬼術にでもかかっているかと思った程だ。
「おい!もう戦闘は始まってんだ、んな事どうでもいいだろ!!それにコイツはこっちの方が動きがいいから気にすんな!!」
しかし、伊之助からかけられた声で鈴はハッと我に帰る。
先程から聞こえる爆発音は、間違いなく激しい戦闘の証で、急いで加勢しに戻らななければならない事を思い出す。
そこで遅れてやって来た炭治郎とも合流し、鈴は三人に気を引き締めるように口を開く。
「そうね、私達も行きましょう」
「っしゃー!!久々の鬼対峙、燃えてきたぜ!!」
「三人とも。音柱様達が今は相手をしてくれているけど、相手は上弦の鬼よ。くれぐれも油断しないように……」
そう口を開いた鈴は、砂埃が立ち込める一帯に向かって駆け出した。
「……こうしてる今も俺たちはジワジワと勝っているんだよなぁあ」
しかし、完全に崩壊している建物の中に足を踏み入れれば、真っ先に聞こえてきたのは何とも不安を煽る声。
次に砂埃が晴れた先で、肩で大きく息を吸う宇髄の姿が目に入る。
「……音柱様っ、」
だが、そこにいるのは彼一人。
煉獄の姿が見当たらなくて、慌てて辺りを見渡した鈴は、蹲る煉獄の姿を見つけ、思わず顔を青ざめた。