第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
わんわんと泣き喚く鬼の影がぐにゃりと不自然に歪んだ瞬間、その場にいた三人はすぐさま刀へと手を伸ばした。
「…うぅううん」
その中でも特に早さに長けている宇髄が、先程同様、目にも止まらぬ早さで日輪刀を振り抜くがー……
「「「っ……!?」」」
「泣いてたってしょうがねぇからなぁぁ、頸くらい自分でくっつけろよなぁ……おめぇは本当に頭が足りねぇなぁ」
背中から現れたその鬼は、難なくその攻撃を避けると、刀を構える三人には目もくれず、泣き喚く鬼をあやし始めた。
「煉獄さん、あの鬼……」
「ああ、あれが本体…いや、もともと二つに分裂する鬼なのかもしれん。鈴、俺の後ろに隠れていろ」
鈴を自身の背に隠すように煉獄は一歩前へと踏み出すと、眉間にぐっと力を入れた。
新たに出現した鬼ー……
身にまとう気配の禍々しさは相当なものだ。
それに加えて、宇髄の攻撃を難なく交わしたあの身のこなし……
恐らく、新たに出現した鬼はかなり厄介な力を持っている事だろう。
静かに考えを巡らせる煉獄と同じように、攻撃を仕掛けた宇髄もまた、突然現れた鬼の反応速度に驚いたように振り返る。
「顔はやけどか?これなぁ……大事にしろ、顔はなぁ。折角可愛い顔に生まれたんだからなぁ」
だが、そのまま此方に背を向け続ける鬼を前に、宇髄はハッと我に帰る。
今此方に背を向けている内に、今度こそ頸を斬り落とす。そう思い至った彼は、再び刀を構え駆け出した。
それに気づいた煉獄も、彼を援護するように続いて攻撃を繰り出したが……
「へぇ、やるなぁあ、攻撃止めたなぁあ……殺す気で斬ったけどなあ……」
目の前で起きた衝撃に、鈴は驚き目を開く。
キン、と刃物がぶつかり合う音が響いた瞬間、目の前まで押し戻された煉獄の背中。
それから近くで頭から血を流している宇髄の姿に、鈴の思考は停止する。
〝まさか……柱二人からの攻撃を防いだの……?〟
その事実に衝撃を受けながら、鈴は煉獄の背中ごしに鬼を窺い見ると、思わず小さく身震いをした。
「……いいなぁ、お前ら……いいなぁ」
兄と呼ばれたその鬼は口元を歪めながら、妬み嫉みを口にする。
「お前いいなぁあ、その顔いいなぁあ。……肌もいいなぁ、シミも痣も傷もねぇんだなあ…… 肉付きもいいなぁあ、俺は太れねぇんだよなぁ?……上背もあるなぁあ、縦寸が六尺は優に超えてるなぁあ……女にも嘸かし持て囃されるんだろうなぁあ?」
宇髄を見つめてツラツラと言葉を続けた鬼は、今度は煉獄へと視線を移すとスッとその瞳を細めて問いかける。
「いいなぁ、お前も……女を守って、格好つけて……きっと苦労もせずにのうのうと生きて来たんだろうなぁあ……だから、片目が見えくなった位で喚き散らかすんだよなぁあ?」
「……何の話だ」
誰と重ねているのか、煉獄にそう言い放った鬼は彼からの問いかけに答えることなく表情を歪めた。
「妬ましいなああ、妬ましいなああ……死んでくれねぇかなぁあ、そりゃあもう苦しい死に方でなぁあ……生きたまま生皮剥がれたり腹を掻っ捌かれたり、それからなぁ……」
「お兄ちゃん!コイツだけじゃないのよ、まだいるの。アタシを灼いた奴らも殺してよ、絶対!!」
そこへすかさず口を挟んだ妹の鬼。
頸も繋がり、焼け焦げたような皮膚も綺麗に治った彼女は、声を荒げて訴える。
「アタシ一生懸命やってるのに!凄く頑張ってたのよ一人で!……それなのにねぇ、皆で邪魔してアタシをいじめたの。よってたかっていじめたのよぉ」
「そうだなあ、そうだなあ、そりゃあ許せねぇなぁ。俺の可愛い妹が足りねえ頭で一生懸命やってるのをいじめるような奴は皆殺しだ」
それに大きく頷いた兄は、大きく鎌を振りかぶるとー……
「取り立てるぜ、俺はなぁ。やられた分は必ず取り立てる……死ぬときグルグル巡らせろ、俺の名は妓夫太郎だからなああ!」
鈴達へと鋭い斬撃を繰り出した。