第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
向かいの店の瓦まで吹き飛ばされた衝撃は凄まじく、炭治郎が背負っていた木箱の肩紐がぷつりと千切れてしまう程だった。
見たところ、木箱に目立った傷はない。
恐らく中にいる禰󠄀豆子にも怪我はないだろうが……
このまま背負って戦い続ければ禰󠄀豆子まで危険に晒してしまうのは目に見えている。
「禰󠄀豆子ごめん、肩紐が千切れた。背負って戦えない」
その為炭治郎はゆっくりと木箱を下ろすと、禰󠄀豆子に言い聞かせるように口を開く。
「自分の命が危ない時以外、箱から出るな」
背を向け駆け出した炭治郎に続き、鈴も刀を構え直すと、木箱に手を添え微笑んだ。
「禰󠄀豆子ちゃん、炭治郎君には私が付いてるから」
そう言って一歩踏み出した鈴は、炭治郎の動きに合わせて瞬時に刀を振り抜いた。
******
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮・乱」
上弦の鬼へと炭治郎は果敢に攻撃を仕掛けていく。
その動きを薙ぎ払うように、幾重にも重なった帯の攻撃が炭治郎を狙って放たれる。
「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」
しかし、その攻撃が炭治郎に届く前に、鈴はそれらを弾き飛ばしていく。
その連携は、口合わせなしで行ったとは思えぬほど精密なもので……
鯉夏を上手く切り離された事に鬼が驚いている傍らで、炭治郎も鈴の動きに感心していた。
「……炭治郎君、鯉夏さんは?」
「気を失っているようですが……鯉夏さんが閉じ込められている箇所だけを切り離しましたから、恐らく大丈夫です」
炭治郎の言葉にほっと小さく息をついた鈴は、目の前で口角を上げる鬼に冷や汗を流した。
普段から兄弟子と鍛錬を積んでいる鈴。
炭治郎も自分達と同じ水の呼吸を使うだけあって、その身のこなしから次の動作を先読みしやすい……だからこその連携技なのだが、やはり場数をこなしてきた隊士というだけあって、その動きは流石なものである。
しかし、そんな実力を持ってしても、上弦の攻撃を防ぎきるのは容易ではない。
「へぇ……空中での身のこなしは悪くない」
二対一でも余裕の笑みを浮かべる鬼は、ツラツラと楽しそうに感想を述べている。
その間に隙を窺う鈴だが、隙だらけのように見える鬼の周りには、ウヨウヨと帯が張り巡らされている。
先程弾き飛ばした帯の攻撃……
叩き斬るつもりで振り抜いたが、実際は受け流すので精一杯。数は勿論、その弾力は相当厄介なものである。
そんな事を鈴が考えている間にも、鬼は炭治郎の日輪刀の刃こぼれに気づき、ニタリと口元を吊り上げる。
〝刃こぼれをする程の攻撃……となると、長期戦になれば此方が不利っ、〟
「炭治郎君!援護するから、一気に片をつけよう」
「は、はい!」
そう言って駆け出したものの、やはり鬼からの攻撃も一筋縄ではいかない。
炭治郎が日の呼吸を使い、何とか帯を叩き斬ったが……呼吸は乱れ、体に負荷がかかっているのは明らかだった。
それに加え、先程から遠くで聞こえる爆破音。
違う場所でも戦闘が行われているのかと、鈴は内心焦りを感じていた。
「やっぱり……柱が来てたのね」
しかし、そんな鈴達を嘲笑うかのように、鬼の体に分裂していたであろう帯の束が戻り始める。
「良かった、これであの方に喜んで頂けるわ」
見る見るうちに姿を変えた鬼からは、禍々しい殺気が満ちていて。ニタリと口元に弧を描いた鬼に二人は、思わず息を呑んだ。
「五月蝿いぞ、お前らっ!!人の店の前で揉め事を起こすんじゃねーぞ!!」
そんな時、彼らの背後から突然、店主の男と数名の花魁達が姿を見せた。
鬼と対峙する二人に男性はズカズカと歩みを進めながら説教を口にし、花魁達も店の前から心配そうに此方を見守っていた。
「駄目だ!こっちに来ちゃ!!」
「建物の中に下がって下さい」
二人は大きな声で彼らを静止し、庇うように刀を構えたが……
ズドーーン、
一瞬で広範囲の建物が切り付けられ、あちこちからは悲鳴が上がり、突然の出来事に出遅れた二人も、それぞれに一般人を庇いその攻撃に巻き込まれた。