第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕暮れ時ー……
女将に捕まる前にと急いで身なりを整えた鈴と炭治郎の二人は、鯉夏花魁の部屋へと訪れていた。
「鯉夏さん」
「……炭ちゃん?それに鈴ちゃんまで…」
そんな二人は変装に使用していた着物から、真っ黒な隊服へと既に着替えており、鯉夏は戸惑うようにパチパチと瞬きを繰り返した。
「不躾に申し訳ありません。俺たちはときと屋を出ます。お世話になった間の食事代など旦那さん達に渡して頂けませんか?」
「突然、すみません……短い間でしたが、ご親切にして頂きありがとうございました」
「え……二人共、どうしたの?それにその格好……」
そんな彼女へ炭治郎が簡単に事情を説明する。
須磨花魁や居なくなった人達を助ける為に潜入していたと伝えれば、彼女は安心したように息を吐く。
聞けば、鯉夏は明日この町を後にするという。
こんな自分を貰ってくれる人がいると話す彼女だが、やはり消息を絶った者達が心配なのだろう。
何処か不安そうな表情を浮かべる鯉夏に、鈴はふわりと笑みを浮かべる。
「安心してください。居なくなった人達は、私たちが必ず見つけ出してみせます」
「……鈴ちゃん……私は二人にも居なくなって欲しくないのよ?」
そんな鈴に、優しい彼女は二人を気遣い眉を下げる。
それに炭治郎と顔を見合わせた鈴は、困ったように笑みをこぼすと、鯉夏へと頭を下げた。
「ありがとうございます……鯉夏さんも、どうかお幸せに」
「ありがとう……気をつけて」
彼女の言葉に炭治郎も深く頭を下げ、そのまま静かに部屋を後にする。
******
心優しい鯉夏の言葉に背を押され、二人はときと屋を後にする。
「……炭治郎君、行こうか」
「はい!」
まずは伊之助と合流しようと、二人は萩本屋へと駆け出した。
しかしその道中、炭治郎がピタリと歩みを止めた為、鈴は不思議そうに振り返る。
「炭治郎君、どうかしたの?」
「……鬼だ、…鬼の匂いです!近くにいる!」
そう言って、炭治郎は突然来た道を戻り始める。
彼の嗅覚が他人より優れている事を知る鈴も、慌ててその背を追いかける。
「……まさかっ」
炭治郎のように嗅覚が優れている訳ではない鈴だが、彼の背を追う内に漂い始めた鬼の気配に、思わず唇を噛み締める。
その気配は、つい先程まで二人がいた鯉夏の部屋から漂っていて。
「「鯉夏さん!!」」
二人は無我夢中で彼女の部屋へと駆け込んで、その光景に息を呑んだ。
「「なっ、…」」
目にするまでは微かにしか感じなかった筈のその気配。
しかし、鯉夏を帯の様なもので縛り上げるその鬼からは、禍々しい邪の空気をひしひしと感じる。
肌がビリビリと痺れるような殺気。
それから、今にも帯に取り込まれそうな鯉夏の姿に、二人の背中には無意識に冷や汗が伝う。
「鬼狩りの子?」
そんな二人を気にもしていないのか、鬼は構える事すらせず笑いかける。
何人仲間が居るのか。柱は来ていないのかと問いかけて、馬鹿にしたように言葉を続けた。
「柱じゃない奴は要らないのよ、分かる?私は汚い年寄りと不細工は食べないし……」
そんな言葉を口にしながら、炭治郎の後ろにいる鈴へと視線を移した鬼は、へえ…と玩具でも見つけたかのように口元を吊り上げる。
それから〝上弦〟と刻まれたその不気味な瞳をスッと細めて、楽しそうに口を開く。
「アンタはいいねェ……綺麗な顔をしてるし、そこの坊やよりは強そうだ。何より美味しそうな匂いがする」
そう言って舌舐めずりをして見せた鬼に、鈴の刀を持つ手にも力が入る。
そんな鈴の様子に鬼が高笑いを浮かべれば、炭治郎がすかさず鈴を隠すように立ちはだかり、鯉夏を離すようにと声を荒げた。
しかし、その瞬間ー……
「誰に向かって口を利いてんだっ、お前は!」
炭治郎の言葉に激昂し、鬼は帯を振りかざす。
その攻撃は、今まで対峙して来た鬼達とは比にならぬ程の速さで。
咄嗟に反応を見せた炭治郎も、その背後にいた鈴諸共、思いっきり向かいの店まで吹き飛ばされてしまう。
「炭、治郎君……平気っ?」
「は、はい。……鈴さん、すみません!俺のせいで…」
「私なら大丈夫。……それより、今はあの鬼を何とかしないと……」
鈴に背中を庇われるような形で、起き上がった炭治郎ではあるが、上弦の一撃を受けてもなお生きている炭治郎に、鬼は関心したように口を開く。
「生きてるの。ふぅん……思ったよりは骨がある。目はいいね、綺麗。目玉だけほじくり出して食べてあげる」
そう言って無気味に微笑む鬼を前に、二人は大きく息を吸う。肺に精一杯の酸素を取り込むと、渾身の力を足に込め、上弦を討ち取る為に駆け出した。