第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「炭子ちゃん、どう?もう仕事は慣れた?」
「鈴さん!!」
そう言って近づいてきた鈴に、炭治郎はへらりと笑みを浮かべる。
それから、辺りをキョロキョロと伺うと、小さな声で口を開いた。
「まだ何も掴めていないんですが……何か重たい、嫌な匂いは感じます」
「炭治郎君もか……うーん、私も妙な気配を感じてはいるんだけど……まだ何にも」
「そうですか……善逸達が何か手がかりを見つけてくれてればいいんですが……」
廊下の真ん中で二人して難しい顔で考え込む。
しかし、廊下の奥から姿を現した第三者によって、二人の会話はそこで途切れた。
「あら?鈴ちゃん、こんな所にいたのね?」
「鯉夏花魁、私に何か御用ですか?」
「女将さんが探していたわよ?」
煌びやかな着物を着た女性に呼び止められた鈴は、すぐにお礼を口にすると炭治郎へと向き直る。
「じゃあ、炭子ちゃん。お互い頑張ろうね?」
「は、はい!」
元気よく返事を返す炭治郎に、鈴はふわりと微笑むと花魁を追いかけて廊下の奥へと消えて行った。
******
昨日ー……。
藤の家で可笑しな格好へと着替えさせられた鈴達は、宇髄があらかじめ怪しいと踏んだ店に、彼の手よって遊女として売りつけられていた。
善逸は京極屋、伊之助は萩本屋。そして、ときと屋には鈴と炭治郎が……
連絡が途絶えた宇髄の嫁達との接触を試みるため、それぞれ別れて潜入する事となったのだ。
因みに、化粧を落とした宇髄に惚けて、炭治郎や鈴を買い付けたときと屋の女将は、炭治郎の厚化粧を落として癇癪を起こした。
「こんな痣があるなんて!……まさかっ、」
怒りくるった後、まさか鈴の化粧の下にも何か傷やら痣やらが隠されているのでは…と些か乱暴に化粧を拭う。
「わ……んんっ、」
「まあ、まあ、まあ!」
ゴシゴシと乱暴に化粧を落とされ、鈴は苦痛に声を漏らす。
しかし、そんな鈴の素顔を見た女将さんは、先程とは打って代わり、満面の笑みで口を開く。
「あらぁ!白く塗りたくられていたから分からなかったけど、綺麗な子じゃないの!歳は!?」
「じゅ、十八ですけど」
「十八かい……ちょいと行きすぎてるけど、まぁ、その方が都合もいいだろう!すぐにでも客を取れるよう、私がみっちり仕込んであげるからね」
そう言ってホホホ…と高笑いをした女将に、鈴が顔を青褪めたのは言うまでもない。
あれから一夜明け。
少し冷静さをとり戻した鈴が、鬼の気配を探ってあちこちを嗅ぎ回っていた所で、こうして炭治郎と出会した、と言う訳である。
花魁の後ろを追いかけながら、鈴はふぅ…とため息を吐く。
売られたからといって、遊女になるつもりもなければ、此処に長居するつもりは毛頭ない。
客の相手をするなど以ての外である。
しかし、潜入してみて分かったが、此処では人の出入りが頻繁だからこその闇がある。
遊女が姿を決しても〝足抜けだ〟と噂される程度。然程、怪しまれる事はない。
現に、宇髄から接触を試みるように言われていた嫁の須磨も、行方をくらまし、足抜け扱いされている。
あまりにも鬼にとって、都合が良すぎる場所。
自分達が来るまでに一体何人が犠牲になっているのか。
もしもこの遊郭に本当に鬼が潜んでいるのなら、一刻も早く片を付けなければ、これからも行方知れずの者達が後を立たないだろう。
目立たぬようにと思いながらも、ついつい捜索の手に力が入ってしまうのは致し方ない。
だが、それとは別に、彼女にはこの任務を早く終わらせなければいけない理由がある。
勿論、客の相手どうこうはあり得ない話だが、それ以上にこんな所に潜入している事を、想い人でもある煉獄に知られたくないのだ。……口が裂けても言えないだろう。
……しかし、現実問題。この状況を隠し続けるのには限界がある。
ただでさえあんな形で千寿郎と別れてきてしまったのだ。もうきっと音柱と合同の任務についた事くらいは、彼も知ってしまった頃だろう。
些か強引に連れ出された為、彼が鴉を呼びつけて文を寄越しているかも知れない……と言っても、鴉を使っての定期連絡は危険が伴う為、鴉との接触自体禁じられているのだが。
〝煉獄さんに心配かけちゃってるよね……〟
はぁ〜……
重苦しいため息を一つ吐いた鈴は、何も進展していない現状に頭を悩ませながら、女将さんの部屋の扉を開くのだった。