第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
少し休憩したからか、幾分か体調が回復した鈴は、屋敷前で別れた宇髄を探し蝶屋敷の廊下を歩いていた。
「音柱様〜!音柱……っもう、どこ行っちゃったのあの人」
ぶつぶつと文句を垂れながら徐に玄関の戸を開けた鈴は、目の前に広がる光景に首を傾げた。
「あれ?……音柱様、これどういう展開です?」
「おお!いい所にきたな!!」
此方を振り返り口角を上げた宇髄を、何故か蝶屋敷の娘達が睨みつけている。またその奥に、見知った三人の後輩隊士が立っていて。
珍しい組み合わせに鈴はパチパチと瞬きを繰り返す。
「えっと……、音柱様の心当たりがあるって言っていた隊士は、炭治郎君達の事ですか?」
「あーー、まぁ……そう言う事だな!!」
鈴の問いかけに、宇髄は明後日の方向へ視線を逸らし、ごまかすように笑い声を上げた。
……その不自然な間はなんだろうか。
思わず眉間に皺を寄せ、彼をじっと睨みつければ、すかさず善逸が大声を上げる。
「違うだろぉーー!!無理やりアオイさん達を、連れてこうとしたんだろぉがー……」
最後は随分と小さな声で、炭治郎の背中に隠れながら反論した善逸に、鈴は思わずため息を漏らした。
「………音柱様」
「ア?なんだよ?」
「………」
「何だっつってんだよ!?」
じっと見つめる鈴に宇髄は痺れを切らして怒鳴りつける。
それに、はぁ…と大袈裟な程大きなため息を吐いた鈴は、三人に向かって笑いかける。
「私も同じ任務に着くの。お互いに苦労するけど……よろしくね?」
「鈴さんと同じ任務なの!?イィヤッタ〜!!」
「はい、よろしくお願いします!!」
それに善逸と炭治郎が嬉しそうに返事を返した後ろで、伊之助は腕を組み気合い充分といった様子で鼻を鳴らした。
そんな彼らの様子に、随分と懐かれているんだな〜…なんて呑気に考えを巡らせていた宇髄だが、先程のまるで当てつけのような鈴の態度を思い出し苦笑いで口を開く。
「………なんかお前、雰囲気変わったなぁ。前はあんなちんちくりんの隊士にも言われたい放題だった癖に」
「そうですか?特に変わった自覚はありませんが」
「ふーん。まぁいいや」
キョトンと小首を傾げた鈴に、宇髄は興味が無さそうに返事を返す。
すると、その会話が途切れたタイミングで、伊之助が皆が気になっていた疑問を口にする。
「んで、何処行くんだおっさん」
その言葉に皆が宇髄を見上げれば、その視線に気づいた彼は鈴達四人に向き直る。
「日本一色と欲に塗れたド派手な場所、鬼の住む遊郭だよ」
「「………遊、郭」」
その言葉の意味を知る二人は、思わずその単語を繰り返す。
だが、その表情は双方極端で……
真っ赤な顔で慌て始める善逸の横で、鈴は真っ青な顔で頬を引き攣らせている。
その隣で炭治郎と伊之助は、不思議そうに彼らの反応を眺めていた。
******
その後、任務地へ向かう途中で藤の家に立ち寄った一向。
なんとも偉そうに、家主の夫婦へと指示を出した宇髄のおかげで、鈴達は着物を着せられ可笑しな化粧を施される事となった。
その間中、鈴はどうしたものか…と、ずっと頭を悩ませていた。
蝶屋敷を旅立つ前ー……。
任務地が遊郭だと明かした宇髄に、ことの重大さに気づいた鈴は静止の声を上げた。
「音柱様、遊郭だなんて……私、聞いてないです!」
「あ?そうだったか?」
「と、惚けないで下さい!!」
はぐらかすような宇髄の言葉に、鈴が慌てて詰め寄れば、彼は面倒臭そうに口を開いた。
「任務地が何処だってやる事は同じだろうが。鬼を見つけて斬る、それ以外は求めちゃいねェよ」
「でも」
「でも、何だ?鬼がいるってのに、お前は任務を投げ出すつもりか?」
「……いえ」
「いいか、これは上官命令だ。お前らもよ〜く聞け」
まだ納得いってない鈴を尻目に、宇髄は高らかに言い放つ。
「いいか、俺は神だ!!お前らは塵だ!!」
「「「「………」」」」
「まず最初はそれをしっかり頭に叩き込め!ねじ込め!俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ!!」
つらつらと偉そうな言葉を並べた宇髄に、鈴は呆れて言葉を失った。
その後、炭治郎が何の神かと尋ねたり、伊之助が自分は山の王だと答えたり……
馬鹿馬鹿しい会話が繰り広げられている間、鈴は……どうしてこうなった、と頭を抱えた。
しかし、その結論が出る前に宇髄が駆け出して行った為、こうして彼の後を追って藤の家まで来てしまったのだ。
「お綺麗ですよ」
「あ、ありがとうございます……」
女将さんが施してくれた可笑しな化粧に思わず頬を引き攣らせ、鈴は人知れずため息を落とす。
「………ほんと、どうしようかな」
まだ任務地にすら着いていないのに、不安ばかりが募っていくのだった。