第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……私も、煉獄さんを誰よりも大切に想っていますっ、……煉獄さんが大好きです」
そう言って彼の病衣を握りしめた鈴に、煉獄も優しく目尻を下げる。
それから優しく彼女を抱きしめ直すと、自然と心が幸福な気持ちで満たされていく。
「ありがとう!これからは俺が鈴を守ってみせる!!必ず君を幸せにすると誓おう!!」
初めて出会ったあの日から、いつも笑っていて欲しいと……誰よりも側で支えてやりたいと願っていた少女が、今はこの腕の中で怯えながらも自分の想いを伝えてくれたのだ。
いつも心を押し殺してばかりいる彼女だから、一度断りの言葉を口にしたのも俺の為だと理解しているし、自身の想いを口にするのに、かなりの勇気を出した事も分かっている。
だからこそ彼女のたった一言でこんなにも嬉しく思えて、舞い上がってしまうのだろう。
何もしていなくとも勝手にニヤけてしまう口元がその証拠である。
しかし、漸く想いが通じ合えたのだ。少しばかり浮かれてしまうのは大目に見てほしい。
そんな事を思いながら、ふと、自身の腕の中でピタリと動かなくなってしまった鈴に気づき、思わず口元を吊り上げる。
「……鈴?」
恐らく想いを認めたまでは良かったのだが、その後の事を考えていなかったのだろう。
此処から鈴の表情を確認する事は叶わないが、チラリと見える耳が真っ赤に染まっているのを見つけ、堪らず小さく笑みをこぼす。
勿論、笑ってしまっては悪いと思い、必死で声は押し殺す。
「くっ、…くく」
しかし、本人は必死で隠しているつもりだが、鈴にはしっかり笑い声は届いていた。
そもそも堪えようにも、彼女は腕の中にいるのだ。
プルプルと震える振動で、安易に笑っている事は想像できるし、彼が思う程その声は抑えられてもいないのだ。
「…………煉獄さん、何笑ってるんですか」
「いや、……すまないっ、」
すると、今の今まで返事すら出来ずに固まっていた鈴から不満そうな声が漏れる。
しかし、咎めるような言葉を口にする割に、その顔はしっかり煉獄の胸板に押し付けられていて顔を上げる気配はない。
その小さな子供のような仕草に、煉獄は思わず眉を下げた。
〝こんなに素直で可愛らしい姿を見れるとはな〟
穏やかな幸せを感じながら、愛おしそうに鈴をじっと見つめていれば、それから暫くして鈴は漸く顔を上げた。
「……笑うなんて酷いです」
「すまない!あまりに愛いものでな!!つい……」
「愛いって……、そんなっ、揶揄わないで下さい!!これでも緊張したんです。それに心配だって……沢山しました!!」
真っ赤な顔で不満を口にすると、鈴はプイっとそっぽを向く。
だけど、その表情は怒っていると言うより照れていると言った方がしっくりくる。
「心配をしたと言われて申し訳ない気持ちもあるが……鈴に想われていたと思うと、喜びを隠しきれないな!!ワハハ!!」
「なっ!そんな事を喜ばないで下さい」
そんな鈴に、結局煉獄は耐えきれず、幸せそうに大きな笑い声をあげるのだった。
******
それから数分後ー……
「鈴さん……煉獄さんが起きたのなら、此方にも知らせて下さい」
「……」
「あら?どうしたんです?」
その大きな笑い声に釣られて病室にやってきたしのぶは、珍しく頬を膨らませ無言を貫く友人に首を傾げた。
それにすかさず煉獄が、俺が呼びにいかなくていいと指示したなんて言い出すものだから、しのぶは呆れたように口を開く。
「全く……一ヶ月近くも眠り続けていた癖に、何を大口叩いているんですか?」
「ハハハッ!それは苦労をかけた、すまなかったな胡蝶!!」
「いえ………起きたてで、それ程大きな声が出るならもう心配入りませんね。何処か痛むところはありますか?」
「うむ!大丈夫そうだ!!ありがとう!!」
しのぶの小言もなんのその。
大声で笑い飛ばす煉獄は、なんだか至極嬉しそうで……
その反応に、漸くしのぶも違和感を覚えた。
この満面の笑みを浮かべる同僚は、まぁ普段から笑顔を浮かべている事も多い為、そんなに珍しくもないのだが……
そんな彼の寝台のそばで、そっぽを向いている鈴を観察していると、異様に頬が赤い事に気がついた。
「睦み合うなら他所でやってくださいね」
「ちがっ、……そんなんじゃ……」
それに鈴がぴくりと反応を見せれば、あら?漸くくっついたんじゃないんですか?なんて、しのぶに可愛いく笑い返されて鈴は言葉を失った。
それにしのぶはクスリと笑みを深くすると、未だに上機嫌でニコニコと笑みを浮かべる煉獄に、念のため釘を指す。
「お分かりかと思いますが、当分は安静にしていて下さいね」
「うむ!!了解した!!」
その力強い返答に苦笑いを漏らすと、病状は落ち着いてからまたお話しますと一言残し、しのぶは病室を後にした。
だが、病室を出て数歩歩いたところで、しのぶはピタリと歩みを止めた。
そんな彼女の元に、煉獄の楽しそうな笑い声が耳に届き、しのぶは呆れたように独り言を呟いた。
「…‥煉獄さんには困りましたね」
そう言って人知れずため息を落としたしのぶは、ふと、部屋を出る際に見えた友人の表情を思い出す。
「ふふっ、……全くどいつもこいつもですよ」
憎まれ口を叩きながら再び足を踏み出したしのぶは、安心したように優しく頬を緩めるのだった。