第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぼんやりと目を覚ました鈴は、パチパチと瞬きを繰り返した後、思い出したように慌てて飛び起きた。
「痛っ、……」
その瞬間首筋がズキンと痛み、思わず顔を顰めれば、見慣れた顔が呆れたように口を開く。
「……碌に寝てないからだ」
「………」
きっとそのせいで真面に手刀を食らったんだろう、未熟者……とでも言っているのだろうが、言葉が足りないことを突っ込む事もなく鈴は気まずそうに下を向く。
恐らく義勇はしのぶちゃんから呼び出されたのだろう。
いつも心配してくれていた屋敷の娘達にも申し訳なくは思っているが、それでも煉獄さんの側にいたくて、居ても立っても居られなかったのだ。
しのぶちゃんに任務での怪我を指摘された時も、内心びくついたのも事実で……
自分でも体に限界が来ていることなんて、本当は随分前から気づいていた。
だから、しのぶや蝶屋敷の娘達……
それから強制的に病室から連れ出した義勇に、今更ながらなんて謝ればいいのか……
鈴は言葉が見つからず、口を閉ざしたまま俯いていた。
すると小さなため息が聞こえた後に、ぽふんと頭に重みが加わる。
「……煉獄はしつこい男だ」
「……へ?」
鈴の頭に手を置いて、無表情でそう呟いた兄弟子に、鈴はキョトンと顔を上げる。
「し、しつこい?」
「ああ‥‥煉獄は、どんな時も諦めない。だから安心するといい」
そう言って、ぽんぽんと2回手を上下に動かした義勇は、そのまま徐に立ち上がると少しだけ眉を下げて口を開く。
「………今日は任務も入らない、しっかり睡眠をとれ」
それだけ告げると、義勇は部屋から出て行った。
「ははっ……しつこい、かぁ。確かに言えてる」
残された鈴は義勇の言葉を思い返し、小さく笑みを落とす。
まさかあの口下手な兄弟子にさえ励まされるなんて思いもしなかったが、それ程までに周りが見えていなかったのだろう。
彼が目を覚ますまでは勿論安心なんて出来ないが、義勇が言った通り、煉獄さんならきっと……いや、必ず目を覚ましてくれると信じよう。
その時に、寝坊ですよと笑顔で言えるように、今は言われた通りしっかり睡眠を取るべきかと深く息を吐く。
重力に従い布団に体を沈めれば、ずっしりと重たく感じる自身の体に、思った以上に疲れている事を思い知る。
それに自傷気味に笑みを落とすと、そのまま眠気に逆らわず瞼を瞑った。
******
それから数日ー……、
未だに目覚めぬ煉獄の元へ、鈴は相変わらず毎日顔を出していた。
しかし以前のような無茶などせず、昨晩の任務の話や、近くに出来た定食屋の話。それから少しだけ彼への思いを口にすると……
「早く目を覚まして下さい。もう寝顔も見飽きてしまいたしたよ……煉獄さん、私……、また明日来ますね。」
鈴は蝶屋敷を後にするのだ。
勿論今も不安は変わらないが、いつまでも俯いていてはそれこそ煉獄さんに叱られてしまう。
そうやって自分を奮い立たせ、鈴が病室の扉に手をかければ、開いた先で驚き固まる炭治郎の姿。
恐らく自分も同じ表情を浮かべているのだろうと苦笑を漏らすと、鈴は静かに口を開く。
「炭治郎君、もう動いて平気なの?」
「……あ、はい。俺は、…大した怪我ではないのでっ、」
「そんな事ないでしょう?千寿郎君から、無理して屋敷まで行った話、聞いてるんだから」
「それは、そのぉ……」
まさか鈴の口から、千寿郎の名前が飛び出すとも思っていなかった炭治郎は、鈴の言葉にオロオロと視線を彷徨わす。
それに気づいた鈴は、クスクスと笑みを落とすと、煉獄さんのお見舞いかな?と道を譲るように隅による。
「いえ、俺は鈴さんに用があって……」
「私?」
「はい。煉獄さんのところに行けば会えるかなって、思って……」
そう言ってこちらを伺う炭治郎に、鈴がキョトンと首を傾げれば、躊躇うようなそぶりを見せた後炭治郎は再び口を開いた。
「気を失う前、煉獄さんから言葉を預かりました。」
「………煉獄さんから、私に?」
「はい。本当はもう少し早く伝えに来たかったのですが……すみません」
病室の前で深く頭を下げ始めた炭治郎に、鈴は慌てて場所を変えようと声をかけた。
それに炭治郎が頷くのを確認すると、鈴は煉獄をチラリと振り返り、今度こそ病室を後にした。