第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
蝶屋敷に訪れた鈴は、アオイに案内されるまま炭治郎のいる病室の前で足を止めた。
「アオイちゃん、ありがとう」
「いえ、これくらい構いませんよ。何かあれば、またお気軽に声をかけて下さい」
そう言って去って行ったアオイを見送り、鈴はひょこっと病室を覗き込む。
「……あ、炭治郎君!!」
「鈴さん、来てくださったんですね!!先日は、本当にありがとうございました」
「ふふっ、そんな事気にしてなくていいのに……」
そう言いながら眉を下げた鈴の様子に、炭治郎のその隣……やけに青白い顔をした金髪の少年が悲鳴を上げた。
「おおお、おいっ!?なんだよ炭治郎ぉー……先日何があったのォォオ!?いつの間に、こんなに綺麗なお姉さんと知り合ったのォォオ!?」
「ん?ああ、そうか。善逸は初めてだったな……鈴さんには那谷蜘蛛山で助けてもらったんだ」
「えェェエエエェー!!俺が蜘蛛になりかけている時に、炭治郎はこのお姉さんとお知り合いにィィィ!!?ずるいよォオ〜〜……」
「いや、鈴さんとは同門で……」
「ドウモン?」
青い顔をしていたかと思えば、叫び声を上げ出し、次の瞬間にはしくしく泣きながら首を傾げる。
そんな忙しない少年に、若干驚きながらも鈴は軽く頭を下げた。
「えっと、炭治郎君とは育てが同じなの。彼の姉弟子にあたる尾上 鈴です、宜しくね?」
「…‥姉、弟子?」
「そうだけど…‥って君、大丈夫?」
ぽつりと小さく呟いて完全に動きを止めた少年に、鈴は心配そうに眉を下げた。
それから、どうしたものか……とキョロキョロと視線を彷徨わせた後、ふと、そのまた隣の寝台を見つめ動きを止めた。
「あれ?……あの時の、猪頭君?」
鈴がそう問いかければ、それを見ていた炭治郎も同じように小首を傾げる。
それから、伊之助とも知り合いかと訪ねた炭治郎に、鈴は曖昧に頷いた。
「いや……知り合いって言うか……なんて言うか……」
「ちょ、待って待って待ってェ……炭治郎は百歩譲ったとしても、なんでそんな猪野郎までお姉さんとお知り合いなんだァァ〜!!お前ら、本当にあの山で何してたんだァァ〜〜」
うーん、なんて悩み出した鈴の様子に、金髪の少年が再び叫び声をあげ出すと、その瞬間、病室の入り口から凄い勢いでアオイが顔を出す。
そして、そのままの勢いで「善逸さん、貴方って人は……いい加減にしてください!!」と声を荒げ始めるものだから、鈴も慌てて口を開く。
まぁまぁ……なんて宥めながら、チラリと少年を伺えば、涙を目一杯溜めたその瞳と視線がかち合った。
「……ほ、ほら!彼も反省しているようだし、今回は私に免じて許してくれないかな?」
「……全く。鈴さんは人が良すぎますよ」
「ふふっ。そんなこと言って、アオイちゃんだって彼のこと心配しているんでしょう?」
「そんな、私はただ……」
鈴の問いかけに、ごにょごにょと言葉を濁したアオイは、善逸に目を向けると「今回だけですからね!」と言い捨てて、凄い勢いで病室を去って行った。
それをクスクスと笑いながら見送った鈴が、大丈夫?と少年へ笑いかけると、一瞬で顔を赤くした少年はコクコクと何度も頷いた。
「あ、あああの!俺、我妻善逸と言います!炭治郎と、そこの猪と同期です!!よ、宜しくお願いします」
「善逸君ね?こちらこそ、宜しくお願いします」
ふわりと微笑んだ鈴に、善逸がキャァァ〜と喜びながら飛び跳ねれば、ついに耐えきれなくって、鈴は小さく吹き出した。
******
それから炭治郎の口から改めて彼らの紹介と、今まで行ってきた任務や、怪我の説明を受けた鈴は、にこにこと三人を見渡した。
「そっか、それは大変だったね…‥でも蝶屋敷にこればもう安心よ?此処の子達は、とても優秀な子達ばかりなの。治療や身の回りの世話は勿論、皆が調子を取り戻す為の訓練まで手伝ってくれる筈よ!」
「…‥訓練?」
「あれ、しのぶちゃんから聞いてないかな?機能回復訓練のこと」
鈴の問いかけに、少し考える素振りを見せた炭治郎は、そう言えば…と口を開く。
今朝しのぶから受けた診察の際、明日から訓練に入りましょうと言われていたことを思い出したのだ。
それはどんな訓練なんだろう。炭治郎が、鈴に徐に問いかければ、鈴はうーん…と考え込む。
「訓練は行う人によるからなぁ。私が義勇に相手をして貰った時は、感覚が戻るまでひたすら打ち込み稽古だったけど……」
「「ひたすら……」」
その言葉に、炭治郎と善逸は引き攣ったように声を震わせた。
因みに伊之助は、鈴が病室に来てから黙りを決め込んだまま。今だってジーッと天井を見つめたまま、微動だにしていない。
那谷蜘蛛山では縛られた後ですらあんなに暴れていたのに、えらい変わりようである。
「ふふっ……そんなに心配しなくても、しのぶちゃんの訓練ならきっと大丈夫よ」
そう言って二人に鈴が笑いかければ、ガバリと伊之助が起き上がり、ビシッと鈴を指差した。
「おい、ヒョロ腕女!!お前、俺と勝負しろ!!」
「……へ?しょ、勝負?」
突然口を開いた伊之助に、鈴が戸惑いの声を漏らせば、「鈴さんに失礼だろう」と炭治郎も口を開く。
だが、そんな事など気にもしていない伊之助は、豪快に笑い声を上げたかと思えば、予想外の言葉を口にした。
「おう!!打ち込み稽古、受けてやるぜ!!」
「待って、伊之助君。稽古は私なんかじゃなくて、蝶屋敷の「 鈴さんからの、打ち込み稽古!!?……はい!俺もっ!!俺も受けたいです、鈴さんの稽古!!」
「ええ!?善逸君まで……」
伊之助の無茶な提案に、善逸まで鼻の下を伸ばしながら名乗りを上げる。
それに鈴が困ったように眉を下げた時、突然背後から、くすりと小さな笑い声が聞こえた。
「あらあら、鈴さんは随分後輩に懐かれているんですね?」
「しのぶちゃん、笑ってないで早く助けてよ」
「あら?それじゃあまるで、私が楽しんでいるようではないですか?心外ですよ〜」
そう言ってクスクスと再び可愛らしく笑い声を上げたしのぶに、鈴は小さくため息を吐いた。
それから、炭治郎達へと視線を移したしのぶは、にこりと満面の笑みで口を開く。
「君たちの訓練は明日からですよ?それに善逸君は一番重症なんですから、まだ安静にしていて下さい」
そう言ってチラリと鈴を盗み見たしのぶは、悪戯を思いついたように笑みを深くした。
「あんまり鈴さんを虐めてはいけませんよ?じゃないと婚約者の彼に、嫉妬の炎で燃やされかねません」
「「婚約者!?」」「ちょ、しのぶちゃんっ!!」
それに炭治郎君と善逸は驚きの声を上げ、鈴に至っては真っ赤な顔で何を言ってるのと詰め寄った。
そんな鈴に「あら?あんなに熱烈に迫られていたのに、
それに鈴が頬を引き攣らせていれば、暇なら彼らに稽古をつけてやって欲しいと口を開き、しのぶは何事もなかったように病室を去っていった。
〝そういえば、那谷蜘蛛山の時も怒ってたからなぁ、しのぶちゃん……〟
それを見送った鈴は、友人からの小さな反撃にため息を漏らし、渋々三人に鍛錬をつける約束をするのだった。