第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
走り去る炭治郎の背中を見送り、どうしようかと頭を悩ませている鈴に、カナヲはふわりと笑みを浮かべた。
それにピタリと動きを止めた鈴は、必死で頭を回転させる。
〝………この状況で笑う所なんてあった?……も、もしかして、カナヲちゃんは此方の話を聞いてくれるの、……かな?〟
何を考えているのか読めないカナヲの表情に、鈴はグルグルと思考を巡らせる。そして少しでも彼らが逃げる時間を稼がなければと、懸命に言葉を紡いでいく。
「カナヲちゃん!あの、……彼も鬼殺隊の仲間で……炭治郎君はとても良い子なの!!だから……その、刀は取り敢えず下ろしてくれないかな?」
「………」
「えーっと……カナヲちゃん、聞いてる?」
だが、そんな鈴の努力も虚しく、あろうことか、目の前に立ちはだかる鈴を無視して、彼女はくるりと身を翻し、再び炭治郎の元へと駆け出した。
まさか完全にスルーされるなんて予想もしていなかった鈴は、一瞬ぽかんと立ち尽くし……
「えっ、…ま、待ってってば!」
慌ててその背中を追いかける。
しかし、随分とすばしっこい上に、炭治郎達を狙っているとしてもカナヲは自分と同じ、鬼殺隊の仲間である。さすがに味方相手に攻撃を仕掛ける事なんて出来ない為、なす術もなく、鈴はその背を追いかけた。
〝……先生、私、……どうしたらっ〟
天狗の面を被った恩師を思い浮かべ、鈴が険しい表情で駆け抜ける先で、遂にカナヲは炭治郎の元までたどり着き、その背中へと降り立った。そして、その衝撃で炭治郎の手から転がり落ちた少女の鬼へと、カナヲは遠慮なく刀を振り抜いた。
……スカッ
しかしその瞬間、炭治郎がカナヲの羽織を引っ張った為、その攻撃は空を斬る。
そして、何とか攻撃を阻止した炭治郎が慌てて口を開いたのと、ほぼ同時ー……
「危ない炭治郎君!!っ……、」
手加減なしで振り下ろされたその足に、鈴は思わず悲鳴を上げた。
「禰󠄀豆子、逃げろ!逃げ…ろ……」
渾身の一撃を喰らい、気絶するその寸前まで、必死で少女の鬼へと手を伸ばす炭治郎の姿に、鈴は強く拳を握りしめた。
〝あの子達を守ると決めたなら、……今は迷ってる暇なんてない筈〟
そう自分を鼓舞して、鈴は刀へと手を伸ばし、渾身の力で振り抜いた。
「水の呼吸 弍ノ型 水車!!」
その一撃は、迷う事なく真っ直ぐに伸びていき、
……バキッ、ズドーーンッ
激しい音を立てながら、カナヲのすぐ横の木をへし折った。
勿論、カナヲが避けられるだろうギリギリの場所を狙った攻撃は、足止めだけを目的としているもの。
「っ………」
「禰󠄀豆子ちゃん!!」
その攻撃は吉と出たようで、カナヲが一瞬気を取られた、その僅かな隙を付き、鈴はカナヲを追い抜かすと、そのまま少女の鬼を抱き抱え、全速力で走り出す。
それにはカナヲも呆気に取られたように一瞬足を止めたのだが、先ずは鈴から鬼を奪い返すのが先決だとの判断に至ったのだろう。今度こそ鈴の背中へとカナヲが刀を振り上げた、その瞬間……、
『伝令!伝令!!』
静かな山の中で、鎹鴉の声が鳴り響き、カナヲはピタリと動きを止めた。
『炭治郎、禰豆子、両名ヲ拘束!本部へ連レ帰ルベシ!!』
その鴉が続け様に炭治郎と禰󠄀豆子の特徴を口にすれば、漸くカナヲは刀を下ろし、此方に向かって口を開いた。
「……あなた、禰󠄀豆子?」
それに禰󠄀豆子がこくりと頷けば、もう追ってこないだろうと判断した鈴も、漸く足を止めて振り返った。
「……カナヲちゃん、さっきはごめんなさい」
「……」
「怪我はない?」
相変わらず返事は返って来ないものの、小さく頷いたカナヲの姿に鈴はほっと肩を撫で下ろした。
******
暫くすると、数名の隠達がやってきて、鈴に向かって申し訳なさそうに口を開いた。
「鈴さん、大変申し上げにくいのですが……胡蝶様から、鈴さんにも本部へ同行して頂くようにとの指令が出ております」
「へっ、……?」
「既に冨岡様は、胡蝶様と共に本部へと向かわれたので、……申し訳ありませんが、ご同行願えますか?」
そう言って頭を下げた隠の姿に、なんだか彼らには悪い事をさせてしまったと、鈴は苦笑いで頷いた。
それから隠に言われるまま、自身の日輪刀を預け、目隠しを施された鈴は、隠におぶわれる形で鬼殺隊本部へと連行されて行くのであった。