第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先程の隊士に気を取られたばっかりに、兄弟子から完全に置いてけぼりを食らった鈴はー……、
「もう、義勇の意地悪……少しくらい、待っていてくれてもいいじゃない」
薄暗い山の中を一人、兄弟子への恨み言をぼやきながら歩いていた。
先程まで感じていた複数の鬼の気配も、知らない内にもう残り僅かとなってきているし……水柱でもある義勇が来たという事は、残りの鬼もすぐに方が付くだろう。
でも……だとしても、置いていかなくてもいいじゃない……と、鈴は何度目かの恨み言を口にした。
しかし、このままいじけていても仕方はないし……と、これまた何度目か分からないほど落としたため息を再び吐いて、鈴は遠くに感じる微かな鬼の気配を頼りに、とぼとぼと歩みを進めるのだった。
******
「…そんなだから、皆んなに嫌われるんですよ?」
気配を辿って歩いてきた鈴の耳に、此処にいる筈のない友人の声が届き、鈴はピタリと歩みを止めた。
戦闘の音は聞こえないが、鬼の気配は変わらずこの先から感じているし……、何より先程の彼女の声色は……なんというか、無茶をして怒らせた時のそれと似ている様にも思えた。
〝……なんだか、とても嫌な予感がする〟
引き攣りそうな口元を堪え、鈴が重い足取りで其方へ向かえば、話声も段々と大きくなってくる。
「さぁ、冨岡さんどいてくださいね」
「……俺は嫌われてない」
「あぁ、それ……すみません。嫌われている自覚が無かったんですね。余計なことを言ってしまって、申し訳ないです」
はっきりと聞こえ始めたしのぶと義勇のやり取りに、自分と別れた後のたった数分で、二人の間に何があったのかと、鈴は思わず頭を抱えた。
だが、次に口を開いたしのぶの言葉で、第三者の存在に鈴は漸く気がついた。
「坊やが庇っているのは鬼ですよ?危ないですから離れてください」
「違います!いや…違わないけど、あのっ、……妹なんです、俺の妹で、それでっ……」
「まぁ、そうなのですか可哀想に」
その声を聞くなり、鈴は慌てて駆け出して、
「では、苦しまないよう優しい毒で殺してあげましょうね?」
目の前に飛び込んで来た光景に息を呑んだ。
******
「あら?鈴さんも此方にいらしていたんですか」
「……しのぶちゃんっ、」
可愛らしく小首を傾げたしのぶの手には、彼女の日輪刀がしっかり握られていて……
その矛先には、鬼の少女を抱きしめる少年の隊士と、そんな彼らを守る様に立ちはだかる義勇の姿。
明らかに対立する両者を前に、鈴の背中を冷汗が伝う。
〝なんとかこの場を収めなければ……〟
そんな考えを、鈴が必死に巡らせていれば、彼女よりも先に、口を開いたのはなんと義勇の方だった。
「……動けるか?動けなくても根性で動け。妹を連れて逃げろ」
「すみません、ありがとうございます」
鬼を抱きかかえ、駆けていく少年の後ろ姿を見送ったしのぶは「これ、隊律違反なのでは?」と、額に青筋を浮かべて呟いた。
「鈴さんも、冨岡さんに何とか言ってあげて下さい」
「あ、の………しのぶちゃん、……本当にごめんっ」
しかし、助け船を求めた筈の鈴が、大声で謝罪を口にした途端、くるりと背を向け走り出した為、しのぶは大きくため息を吐いた。
「全く……何をなさっているか、お二人ともしっかり理解できていますか?鬼を助けて何になるんです?」
「………」
「何とか言ったらどうですか?冨岡さん」
睨み合う二人を他所に、鈴は木々の合間へと消えていった。
******
「炭治郎君!!」
先を行くその背中に、鈴が大きな声で呼びかければ、先程の鬼を抱えた少年が振り返る。
「……鈴さん。すみません、俺……二人を巻き込んでしまって……」
「気にしないで?それに、しのぶちゃんなら義勇に任せておけば……多分大丈夫。とりあえず、落ち着いて話を聞いて貰えるまでは、逃げ切らないと」
そう言って眉を下げた鈴が、少年を励ました瞬間ー………、
ガキィィーン
暗闇から突然現れた隊士の攻撃を、鈴は鞘ごと受け止めた。
「鈴さんっ」
「私の事はいいから、逃げて!!」
無表情で刀を振り下ろす少女を前に、鈴が背後に向かって大声を上げれば、炭治郎と呼ばれた彼は、戸惑いながらも駆けて行く。
「カナヲちゃん……刀を下げてもらえないかな?」
「………」
それを背中越しに感じながら、鈴は考えを巡らせる。
しかし、この場に残された鈴には、目の前の少女相手に攻撃を仕掛ける事も出来ないわけで……
結局、困ったように眉を下げる他ないのだった。