第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鈴が毒針の血鬼術を負った任務から、早三ヶ月……
「水の呼吸 ニノ型 水車」
「ウギャアァァアァ……」
鈴は相変わらず、鬼狩りとして日夜任務に邁進する日々を送っていた。
******
あの日、鈴の元を訪れた煉獄は、後は俺に任せてくれと言い放ち、蝶屋敷を後にした。
そして驚く事に、そこからの彼の行動は、とてつもなく早かった。
僅か数日で、例の隊士の元まで辿り着いた煉獄は、どれだけ鈴が素晴らしい女性かと言う事を、その隊士に直接説き伏せた。
既に周りから責められ落ち込む彼女に、鈴は心優しい女性だと……、振り向いて貰うのに必死なのは自分の方なんだと、煉獄は文字通り、声を大にして彼女に伝えた。
まさか煉獄本人から、そのような説明をされると思っても見なかった彼女は、最終的に目一杯に涙を溜めて走り去り、その場に居合わせた隊士や隠は、あまりの出来事に固まった。
「うむ!無事、鈴の疑いは晴れた訳だな!!これで安心だ!!ハハハッ……」
そんな中、それを笑顔で見送った煉獄が、とどめの一言を言い放った事で
〝……見てはいけないものを、見てしまった〟
皆一斉に、彼から顔を背けたそうだ。
その後、勿論鈴の悪口を言う者もいなくなった訳だが、
「へ?……私が、煉獄さんに?」
それからと言うもの、煉獄への言伝やら届け物を頼まれる事が増えた鈴は、暖かい視線を送る隊士達に不思議そうに首を傾げた。
そんなこんなで、張本人達は分かってはいないものの、隊士達の間で煉獄と鈴は、もはや公認の仲となりつつあるのだった。
そして、鈴も鈴で、今まで煉獄から一方的に受けていた誘いを、隊士達から預かった言伝を口実に、煉獄を食事に誘ったりと……、まあ、それなりに心を許す仲にはなったわけだ。
「そっかぁ、明日は柱合会議があるんでしたね。義勇に言われていたのに、すっかり忘れていました。………蜜璃ちゃん、元気かなぁ〜」
「甘露寺なら、きっと元気一杯だろう!!彼女はいつもニコニコと明るいからな!!……それにしても、本当に君達は仲がいいな」
「ふふっ。当たり前ですよ!蜜璃ちゃんは私の大切な友人なんですから!」
「ハハハッ……甘露寺から鈴を紹介された、あの店を思い出すな!!あれからもう半年も経つとは…」
よもや、よもやだ…なんて呟く煉獄に、鈴も小さく苦笑を漏らした。
鈴だって、まさかあの出会いをきっかけに、こうして義勇やしのぶ以外の柱と食事を共にするようになるなんて思ってもみなかったし、
親友が恋柱になってからと言うもの、今まで会うことすらなかった柱達に、続々と出会う事になるなんて、
…‥半年前の自分は、想像すらしていなかった。
餡蜜を突きながら、チラリと彼を伺えば、モグモグと忙しなく口を動かすその姿に、鈴は自然と口元を上げた。
〝まさかこんな風に、煉獄さんと甘味処に来るなんて……思ってもみなかった〟
旨い!と感想を述べる彼に倣って、鈴も一口、餡蜜を口に入れる。
「どうだ?此処の餡蜜は旨いだろう?甘露寺が継ぐ子だった頃、千寿郎と三人で、よくこの店に来ていたんだ!!」
「ふふっ、そうなんですか!思い出の味なんですね〜……私も此処の餡蜜、気に入りました。とっても美味しいです。」
その甘さに、空間に、彼の優しい笑みに……
今まで感じたことがないほど穏やかな気持ちに包まれて、鈴はほんのりと頬を染めるのだった。
******
その晩ー……
『緊急要請!緊急要請!!那谷蜘蛛山テ被害拡大!!直チニ、現地ノ隊士ト合流セヨ!!』
煉獄と甘味処で別れた鈴は、元々依頼を受けていた任務を早々に片付け、今は見知らぬ鎹鴉の先導に続き、必死で山道を駆け上がっていた。
「っ、……」
山道を進む鈴の足元には、先程から、隊士の亡骸があちこちに散らばっており、そのどれもが、あり得ない方向に手足が曲がっている。
中には、絶望に顔を歪ませた状態で、首が捩れて絶命してしまったようなものまである……。
あまりに酷い仲間の姿に、思わず拳を強く握りしめた鈴は、ふーっと深く息を吐いた。
努めて冷静を保ち、瞳を閉じて鬼の気配に集中すれば、普段は群れない筈の鬼が、この山にはうじゃうじゃと感じられる。
耳をすませば、微かに聞こえた木々の折れるような音にー……
鈴はハッと顔を上げた。
そしてその方向へ、全速力で駆け出すのだった。